「Deep Research(ディープリサーチ)」は、生成AIに質問するだけで、ウェブ上の情報をもとに要点をまとめたレポートを自動作成する機能です。2024年末にはGoogle、OpenAI、Perplexityが相次いで同様の機能を発表し、話題を呼びました。この記事では、AICX協会代表理事の小澤健祐さんに、Deep Researchの概要や活用方法をお聞きしました。
新時代のリサーチ方法「Deep Research」とは?
本格的な調査レポートを短時間で作成できると話題の「Deep Research」。まずは、Deep Researchの概要や活用例、代表的なサービスの特長について、小澤さんに教えていただきました。
AIがウェブ上の膨大な情報を収集・整理・分析してくれる
はじめにDeep Researchとはどんなサービスか、概要を教えてください。
小澤さん 「Deep Researchは、生成AIによる高度なリサーチ支援機能です。AIがウェブ上の膨大な情報を収集・整理・分析し、背景や専門的な視点まで掘り下げた上で、指示された形式に従ってリサーチ結果を生成します。現在は、ChatGPT(OpenAI)、Gemini(Google)、PerplexityなどがDeep Research機能を提供しています」
Deep Researchの強みや活用するメリットはどの点にあるのでしょうか?
小澤さん 「例えば『ソフトバンクの最新動向を調べて』とDeep Researchに指示を出すと、まずリサーチ計画を立て、それにもとづいて調査を行ってくれます。従来の生成AIに比べて情報を深く読み解き、より詳細で網羅的なリサーチ結果を提供してくれる点が強みです。また、そのような人間が数時間かかるような作業を、わずか数分から数十分程度でできる点が大きなメリットと言えるでしょう」
ビジネス戦略や学術調査にも! AIが膨大なデータを深掘りし、詳細なレポートを自動作成
Deep Researchの主な機能について教えてください。
小澤さん 「Deep Researchには、次のような機能が備わっています」
- 多段階の調査と情報統合
質問(クエリ)に対して必要な調査範囲を定義したうえで、信頼性の高い情報源からデータを収集・分析します。収集された情報は要約され、必要に応じて文献レビューのような形式で整理されるため、単なる検索を超えた深い知見を得られます。
- 多様なデータ形式に対応
PDFや画像など多様なデータ形式に対応しています。文書の要点抽出や、画像内テキストの読み取り、グラフ・図表の解釈といった視覚情報の分析も可能です。
- 分かりやすいレポートを自動生成
調査完了後、要点を整理したサマリーや出典情報を含む完成度の高いレポートを自動生成します。
- 短時間での情報収集と分析
従来であれば数時間かかる調査や分析作業が数分で完了するため、時間やリソースが限られる場面で大きな効果を発揮します。
- チャット機能による内容のアップデート
レポート作成後も対話形式で内容を追記・アップデートできます。
Deep Researchの活用例について教えてください。
小澤さん 「インターネット上の情報をもとにしたあらゆるタスクに使えます。具体的な活用例としては、次のようなことが挙げられます。
- ビジネス戦略立案のための競合分析
- 医療・法務・技術など専門分野の調査サポート
- マーケティングにおけるトレンドリサーチ
- 学術研究の文献レビュー
- 従来の検索エンジンでは見つけにくいマイナー情報の検索
- ネットショッピングの比較検討
- 旅行プランの作成
また、ビジネスメールを作成するときにDeep Researchを活用すると『貴社では最近こういうニュースがございましたが……』など、リサーチ結果をもとに相手に合わせた文章を自動で生成することができます。例えば、以下のような形でChat GPTに指示を出すと…

こんな感じで、冒頭でクライアントの最新ニュースに言及したメールを作ってくれます」

すごい! これは便利ですね。逆に、Deep Researchに向いていない作業はあるのでしょうか。
小澤さん 「作業時間が5分から30分ほどかかるため、ちょっとしたことをすばやく調べたいときはおススメしません」
ChatGPT、Gemini、Perplexity AI。3つの代表的なサービスの比較
ChatGPT、Gemini、PerplexityそれぞれのDeep Research機能の比較について、詳しく教えてください。
小澤さん 「各ツールの現行モデルや機能の特徴を、以下にまとめました。現時点で機能に大きな差は見られませんが、Perplexityは検索に特化した生成AIで、他のツールに比べて出力スピードが速いため、急ぎで情報を調べたい場合はおススメです」
サービス名 | 提供企業 | 機能の特徴 | 出力形式 |
---|---|---|---|
ChatGPT Deep Research | OpenAI |
|
PDF、ドキュメント |
Gemini Deep Research |
|
Google ドキュメント、PDF | |
Perplexity Deep Research | Perplexity AI |
|
PDF、共有リンク |
ChatGPTにはさまざまなモデルが登場していますが、どのように使い分けをすればいいでしょうか?
小澤さん 「経営・戦略分析や高度なデータサイエンスなど、多段階での推論が必要なタスクは、o3、o4-mini、o4-mini-highなどの『oシリーズ』がおすすめです。単純な質問(クエリ)やスピード重視のタスクの場合は、GPT-4oとかGPT-4.5などの方が速いですね」
Deep Researchを使う時に注意すべきことは?
「Deep Research」を使用する際の注意点を教えてください。
小澤さん 「Deep Researchは、まだまだハルシネーション(AIが事実にもとづかない情報や、実際には存在しない情報を生成する現象)が起きやすく、検索の意図を正しくくみ取れないことがあります。例えばChatGPTに『AIモデルの使い分け方法を教えて』と指示すると、なぜかGPT-3.5やGPT-4など、古いモデルを含んだレポートを生成してしまうことがあります」
個人情報や機密情報の取り扱いに関してはいかがでしょうか?
小澤さん 「生成AIを業務で活用すると、情報漏えいのリスクが非常に高くなります。特に、個人情報やユーザー情報、ログイン情報、売上情報、営業機密、インサイダー情報などは絶対に入力しないように注意してください。プライベートで生成AIを使う際は、ChatGPTの『シークレットモード』のように、チャット履歴を保存しない設定にしておくのも手です」
実際に使ってみよう! Deep Researchの操作ガイド
ここからは、Deep Researchの使い方について、詳しく解説します。各サービスの操作手順を理解し、最適なリサーチ方法を把握することで、より効率的な情報収集が可能になります!
小澤さん 「理想的なアウトプットを得るためには、次のようなことを意識してDeep Researchに指示を出しましょう。
- 目的を明確にする
「営業メール用に」「初心者向けに説明して」など、 “何のための情報か” を具体的に伝える。
- 出力形式を指定する
箇条書き・要約・レポート形式など、希望する形を伝える。
- リサーチの深さや範囲を示す
「概要だけ」「最新情報も含めて」「競合3社との比較」など、どこまで掘り下げてリサーチするか指示する。
ざっくり依頼するのではなく、どんな目的で、どんな観点で調べてほしいかを明確に伝えると、レポートの内容が大きく変わってきますよ」

出力形式や条件を毎回細かく入力するのは面倒なため、テンプレート化しておき、つど調整すると便利
ChatGPTのDeep Researchの使い方
- ウェブサイトまたはアプリでChatGPTを開き、利用するモデルを切り替える画面で「ChatGPT Pro」を選択します。
- チャット入力欄下部の「Deep Research」を選択します。
- 調べたい内容を入力し、必要に応じてファイルやデータを添付します。
- リサーチを開始すると、リサーチの手順と参照したソースの概要がサイドバーに表示されます。
- リサーチが完了すると通知が届きます。リサーチにかかる時間は5~30分程度です。
GeminiのDeep Researchの使い方
- Geminiのウェブサイトにアクセスし、左上の「モデル切り替えボタン」をクリックして、「Deep Research with 2.5 Pro」を選択します。
- 調べたい内容を入力すると、まずはリサーチの計画が提案されます。リサーチ計画を変更したい場合は、「計画を編集」を選択します。内容に問題なければ「リサーチを開始」を選択します。
- リサーチが完了すると、レポートと参照したソースのリンクが一覧で表示されます。
PerplexityのDeep Researchの使い方
- ウェブサイトまたはアプリからPerplexity AIにアクセスし、検索ボックスのモードセレクターから「リサーチ」を選択します。
- 検索ボックスにクエリやプロンプトを入力し、「検索ボタン」をクリックします。
- リサーチが完了すると、レポートが作成されます。レポートには調査結果の要約、関連するデータ、参照したソースのリンク一覧などが含まれています。
Perplexityの詳しい使い方はこちらの記事をご覧ください。
今後、Deep Researchはどう進化する?
ビジネスにおいて強力なサポート役を果たしてくれそうな「Deep Research」。最後に、Deep Researchの今後の展望について、小澤さんに教えていただきました。
Deep Researchは、今後どのように進化していくのでしょうか。
小澤さん 「下の図の通り、2025年以降のトレンドは3つの大きな軸で分類が可能です。生成AIツールをGoogle ドライブなどの社内データベースに接続できれば、過去の企画書や議事録などを簡単に資料化できるようになるでしょう。また、社内の情報をディープリサーチしながら企画書を作ってくれるような、新しいタイプのエージェントがトレンドになるといったことも考えられますね。ここに記載された12個の要素が、それぞれ絡み合って進化していくというイメージを持っていただくといいかなと思います」

資料提供:小澤さん
Deep Researchは、単なる検索機能を超えて、情報収集の精度と効率を大きく向上させるツールです。今後、リサーチのスピードや正確性が求められる場面で、その価値がさらに高まると予想されます。本記事を参考にして、競合分析やトレンド調査、専門的な情報収集など、さまざまな用途にDeep Researchを活用してみてください。
(掲載日:2025年6月20日)
文:東谷好依
編集:エクスライト
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