若者の起業をサポートする次の復興10年プロジェクト「Next Action→ Social Academia Project」。住民ゼロ地域が自走できる町づくりへ

若者の起業をサポートする次の復興10年プロジェクト「Next Action→ Social Academia Project」。住民ゼロ地域が自走できる町づくりへ

2011年3月11日に発生した東日本大震災で被災した地域では、インフラなどの復興が進む一方で解決すべき課題もまだまだたくさんあり、被災地域の未来を見据えた取り組みが必要とされています。

このような中、東日本大震災から10年の節目を迎える2021年3月10日、今後の被災地復興をサポートする取り組みが発表されました。

被災地復興の次の10年をサポートする「Next Action→ Social Academia Project」がスタート

一般社団法人パイオニズム、ソフトバンク、およびヤフーは、2030年までの10年間で多くの事業を創出することと、世界に通用し活躍する多数の人材を輩出することを目標として、将来福島県内に拠点を置いて起業を志す満16~29歳(募集開始時点)の支援を行う「Next Action→ Social Academia Project」を2021年3月10日に発足させ、参加者の募集を開始。3者が持つこれまでの起業・事業化のノウハウなどを最大限に活用し、人材育成と事業創出を目指します。

このプロジェクトは、一般社団法人パイオニズムが運営主体となり、コワーキングスペース「小高パイオニアヴィレッジ」を拠点に、オンラインとオフラインの両面から参加者をサポート。ソフトバンクは、講師の派遣や「つながる募金」を通して、このプロジェクトに関わる募金活動を実施し、ヤフーは「Yahoo!ネット募金」や震災10年のチャリティー企画「検索は、チカラになる。」を通じた運営資金の支援の他、「エールマーケット」を活用した商品の販売活動のサポートなどを行います。

 

小高パイオニアヴィレッジを運営する一般社団法人パイオニズムの和田さんと、ヤフーおよびソフトバンクの担当者に、本プロジェクト立ち上げのきっかけや、参加者に期待することなどを聞きました。

和田 智行(わだ・ともゆき)さん

一般社団法人パイオニズム
和田 智行(わだ・ともゆき)さん

福島県 小高出身で、「Next Action→ Social Academia Project」の活動拠点となる小高パイオニアヴィレッジを運営。

鈴木 哲也(すずき・てつや)さん

ヤフー株式会社 SR推進統括本部
鈴木 哲也(すずき・てつや)さん

Yahoo!ネット募金・Yahoo!ボランティア サービスマネージャーとして被災地への支援活動を担当。

箕輪 憲良(みのわ・のりよし)

ソフトバンク株式会社 CSR本部
箕輪 憲良(みのわ・のりよし)

ソフトバンクの募金サービス「つながる募金」や、被災地の次世代育成事業に従事。

募金や被災地に根付いたこれまでの10年の支援

ヤフーおよびソフトバンクでは東日本大震災後から、さまざまな形で被災地への継続した支援を行っています。

ヤフーは、これまでどのような支援を行ってきたのでしょうか?

鈴木 哲也(すずき・てつや)さん

大小さまざまな支援策を続けてきましたが、「Yahoo!ネット募金」や「Yahoo!ボランティア」などを通じて継続的な支援の他、販路をなくした生産者の方々の商品をPRして売るという「復興デパートメント」(現「エールマーケット」)を2011年に立ち上げ、2012年には「ヤフー石巻復興ベース」という形で宮城県石巻市に拠点を置いて、現地に根付いた復興支援を行ってきました。

その中で生まれた、東北の被災地を自転車で巡って地元の状況を分かっていただくという「ツール・ド・東北」や、これからの漁業を作っていくことを目的に立ち上げられた漁業従事者支援の団体「フィッシャーマン・ジャパン」を支援しています。

また2014年からは、毎年3月11日に合わせて、被災地の現状を伝える記事を発信したり、3月11日にYahoo! JAPANで「3.11」と検索していただくと、ヤフーが東北の団体に1人につき10円を寄付するという企画も行っています。

若者の起業を支援する次の復興10年プロジェクト「Next Action→ Social Academia Project」始動!住民ゼロ地域が自走できる町づくりへ

ソフトバンクも、募金や被災地域での支援活動を続けてきましたよね。

箕輪 憲良(みのわ・のりよし)

はい。さまざまな形で継続的に支援をさせていただいていますが、主なところではまず、ソフトバンクのユーザーの皆さまを中心に寄付をいただき、被災地で活躍するNPOに募金という形でサポートする「つながる募金」があります。

他にも、震災により部活動が思うようにできない、また大会に参加できないなどの課題を抱える小・中学生のスポーツの活動を応援するため、「SoftBank 東北絆CUP」を開催して、バスケットボールやサッカーなどの大会を開催してきました。

さらに、「TOMODACHIソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」(以下「TOMODACHIプログラム」)では、岩手・宮城・福島の高校生を対象に、地域課題を解決するようなリーダーを育てていくことを目的に、カリフォルニア大学バークレー校への留学プログラムを続けていまして、これまでの参加者は1000人を超えました。

写真(左):TOMODACHIプログラム、写真(中):SoftBank 東北絆CUP

写真(左):TOMODACHIプログラム、写真(中):SoftBank 東北絆CUP

そのような支援を通したつながりが、「Next Action→ Social Academia Project」立ち上げのきっかけになったのでしょうか。

箕輪 憲良(みのわ・のりよし)

10年という区切りの中で、TOMODACHIプログラムに参加いただいた皆さんの次の活躍の場を作っていきたいと思っていました。彼らは本当に素晴らしい子たちばかりで、彼ら自身すでに力もあり、とにかく思いが強いので、彼らが次の世代の福島や日本、さらに世界の課題を解決しようと思ったとき、その一歩踏み出せるようなフィールドを作りたいという思いがありました。

鈴木 哲也(すずき・てつや)さん

今後の支援のあり方を考えていく上で、住民がゼロになってしまった地域の課題というものがすごく大きいと感じました。これまで続けていたネットでの販売などももちろん大事ですが、やはり今後の10年を考えた時に、町づくりが重要で、そこには次世代を担う若者たちの力が必要だと考えました。

「Yahoo!ネット募金」や「エールマーケット」でのネット販売を通じてつながりがあった小高パイオニアヴィレッジでは町づくりにフォーカスした活動をすでに始められていたこと、またソフトバンクでは若者の活動を支援する取り組みをしていたので、今回のプロジェクトを一緒にやっていこうとお声がけしました。

避難区域に人を呼び戻し、自走できる町づくりを

若者の起業を支援する次の復興10年プロジェクト「Next Action→ Social Academia Project」始動!住民ゼロ地域が自走できる町づくりへ

左:2011年の小高駅前の様子、右:現在の小高駅前の様子

被災地では実際に今どのくらい復旧が進んでいるのでしょうか。

和田 智行(わだ・ともゆき)さん

震災から10年たってインフラが復旧したり新しい建物ができたりと、見た目では復興が進んでいるように見えるかもしれないですが、特に福島の避難区域に関してはまだまだ帰還できないエリアもありますし、小高のように避難指示が解除されて帰還が始まっているところでもなかなかその動きは鈍いですね。

国が大きな施設を造ったりしながら何とか体裁を保っているのが実情ではないかと思います。国や行政の予算はいつまでも続くものではないですし、やっぱりそこで暮らしている住民が事業を作って自走していく流れを作っていかなければならないと思います。

そのような地域の未来のために必要なのは、どのようなことだと思いますか?

和田 智行(わだ・ともゆき)さん

避難区域であった地域が、今後も持続可能な町として成り立っていくためには、地域課題解決のために事業を起こしたり、地域の資源を使ってビジネスをしたり、そういった人たちが生まれていく状態を作らなければいけないと思っています。

震災当時、私は小高に住んでいて、自宅が原発から近かったため避難生活を送っていました。自宅に帰れるようになるということが分かってきた時、私自身は小高に戻って何をしょうかなということを考えていましたが、周りのほとんどの人は戻らない選択をしてたんですね。

店がない、仕事がないといったような課題がたくさんあって戻れないと皆さんが話していて、その声を聞くうちに、課題ってビジネスの種なのでそれを解決するビジネスを作っていきたいと思うようになりました。

そして、2014年に株式会社小高ワーカーズベースという会社を創業して、まだ居住が認められないうちから食堂を作ったり、南相馬市から委託を受けて仮設のスーパーを作ったり、ガラス工房を作って地域の方々を雇用するということをやってきました。ただ、立ち上げから「地域の100の課題から100のビジネスを創出する」という思いで取り組んできたものの、自分たちだけでは難しいと思うようになって、この地域に起業家を呼び込んで同じような志の仲間を増やしていこうということを考えるようになりました。そのためのハードとして小高パイオニアヴィレッジを構想し始め、2019年3月にオープンしました。

そこが「Next Action→ Social Academia Project」の拠点となるわけですね。小高パイオニアヴィレッジはどのような場所ですか?

和田 智行(わだ・ともゆき)さん

目的は、地域の中に起業家のよりどころとなるようなコミュニティーを作ろうというところに重きを置いています。小高のようにハンディを負ったエリアで起業するのは結構大変なことで、私も経験しましたが、最初は「そんなことやったって無駄だよ」などと言われることもありました。

でもその時にチャレンジした人の心が折れて諦めてしまわないよう、同じような価値観の起業家たちが自分たちの先を走っていたり、並んで走ったり、足りないスキルを補いあったり、そうやって地域の中で事業を生み出していくコミュニティーを作ることを目的に作りました。

施設の機能としてはコワーキングスペースや、起業家たちが中期的に滞在できるようなゲストハウスも併設してます。また、ガラス工房も併設していて、モノづくりとデスクワークをする人が同じ空間で仕事をすることで、なかなか普段出てこないアイディアが生まれたり、外の人と中の人が自然にコミュニケーションを取ることによって、コラボレーションが生まれたり、そういうことが起こりやすいような工夫を設計に入れました。

若者の起業を支援する次の復興10年プロジェクト「Next Action→ Social Academia Project」始動!住民ゼロ地域が自走できる町づくりへ

若者の起業を支援する次の復興10年プロジェクト「Next Action→ Social Academia Project」始動!住民ゼロ地域が自走できる町づくりへ

参加者の目的に応じた三つの階層で若者の起業活動を支援

若者の起業を支援する次の復興10年プロジェクト「Next Action→ Social Academia Project」始動!住民ゼロ地域が自走できる町づくりへ

「Next Action→ Social Academia Project」は、出身地に関わらず、募集開始時点で満16~29歳で被災地の課題解決を目指す人であれば、誰でも参加申し込みできます。

参加者は具体的にどのような体験ができるのでしょうか?

和田 智行(わだ・ともゆき)さん

参加方法は三つの階層に分かれています。一つ目の「Apollo 」クラスは、具体的な事業計画があり、一年をめどに起業を目指す起業家向けで、私たちが伴走したり、小高パイオニアビレッジを利用している起業家たちとコミュニケーションをしながら起業を目指していただけるような場の提供です。

二つ目の「Rocket」クラスは、起業とまではいかなくても、福島に行って何かアクションを起こしたいという方に対して、「さとのば大学」のプログラムを提供し、一歩踏み出すためのメンタリティや、やりたいことを見つけるにはどうしたらいいのかといったプログラムを受けていただきながら、実際に現場でやりたいことを見つけて形にしていく場を提供します。

三つ目の「Booster」クラスは、福島に行くことはできなくても、企業を目指す人たちをサポートしたいと考える方にオンラインコミュニティーに参加していただき、情報交換をしたり、さまざまな講座を受けていただきながら、起業家や仲間たちをサポートしていくプログラムになっています。

「Next Action→ Social Academia Project」のクラス

若者の起業をサポートする次の復興10年プロジェクト「Next Action→ Social Academia Project」。住民ゼロ地域が自走できる町づくりへ

なんでも気軽に相談できる20代のメンバーが参加者をサポート

「Next Action→ Social Academia Project」に参加される方が安心して取り組めるよう、ソフトバンクから、10代の頃に震災を経験したメンバーが運営に参加予定です。

岩田 萌

ソフトバンク株式会社 CSR本部
岩田 萌

岩手県出身。小学5年生当時東日本大震災を経験、その後2016にTOMODACHIプログラムに参加。現在大学3年生で、長期インターンとしてソフトバンクに勤務し、「Next Action→ Social Academia Project」の運営に従事。

運営に携わることになったきっかけとプロジェクトでの役割を教えてください。

岩田 萌

私は高校2年生の時にTOMODACHIプログラムに参加し、そのつながりで今はソフトバンクの長期インターン生をしていて、自分が何かやりたいと思ったところに賛同してくださる大人の方や企業のありがたみをすごく感じることができました。そうした中で、自分も協力してもらうだけではなく、何か貢献したいという思いから、今回このプロジェクトに携わりたいと思ったのがきっかけです。

私は岩手県出身ですが、福島にはTOMODACHIプログラムに一緒に参加した大切な仲間も住んでいて、震災を一緒に乗り越えてきた仲間として福島を守りたいという強い思いもあります。

役割としては学級委員というような立場で、参加者の身近な相談役として活動する予定です。参加してくださる方が何でも相談しやすいような空気感を作っていきたいなと思っています。

若者の起業を支援する次の復興10年プロジェクト「Next Action→ Social Academia Project」始動!住民ゼロ地域が自走できる町づくりへ

若者の起業を支援する次の復興10年プロジェクト「Next Action→ Social Academia Project」始動!住民ゼロ地域が自走できる町づくりへ

TOMODACHIプログラム参加当時の様子

「Next Action→ Social Academia Project」をチャレンジの場として活用してほしい

最後に、参加者の皆さんに期待することなどを教えてください。

鈴木 哲也(すずき・てつや)さん

課題解決をしていく上で、その土地で「こういうことをやりたい」とか、「日本や世界に向けてこんなことがやりたい」などの思いがあると思うんですよね。そうした時に、チャレンジとして一歩踏み出してくれることが非常に重要で、そのためにこのプロジェクトをうまく使っていただきたいです。そこで自分がやりたいことや、やるべきことを社会と一緒にやっていくと大きな力を発揮するというところをまず感じていただければと思っています。

箕輪 憲良(みのわ・のりよし)

東日本大震災で揺れたのは地面だけではなく、東日本に生きる人々の価値観も揺さぶられたんじゃないでしょうか。そしてその価値観が揺さぶられた先に新しいものとか、新しい価値観、新しい幸せが作れるんじゃないかと思っています。震災当時10代だった皆さんは、本当に強い思いと力を持っていると思っていて、それはTOMODACHIプログラムを通して確信しています。そんな皆さん同士がつながりあい、思う存分チャレンジできる場を提供します。自信を持ってそのチャレンジの場を生かし切っていただきたいと思います。

和田 智行(わだ・ともゆき)さん

何かをしたいという思いがあってもなかなか一歩踏み出せなかったり、一歩踏み出したいけど、受け皿がなくて諦めたり、そういう思いをしてきた子たちに、ぜひ思い切って参加してみてほしいと思います。そして、そういった一歩踏み出せた子たちが、どんどん地域の中で躍動していって、事業に踏み出して、それが避難区域になってしまったこの福島 小高や日本の課題を解決していくような事業に発展していけばいいなと思っています。それこそ若い人たちがやるからこそ周りの視点も変わっていくと思うので、どんどん成果を出して福島という場所のイメージも変えて、その中心にこのプロジェクトがあるといいなと思っています。

2021年3月10日(水)から4月18日(日)まで「Next Action→ Social Academia Project」の参加者を募集中!

Next Action→ Social Academia Project

応募の詳細はこちら

(掲載日:2021年3月10日)
文:ソフトバンクニュース編集部

3.11 TOHOKU 応援はつづく ~忘れない、あの日を。つなげよう、未来へ。

「そのとき、つながるということ」 東日本大震災から10年、進化し続けるソフトバンクの災害対策

東日本大震災から10年。ICTのチカラで東北の未来の価値づくりを。 − ソフトバンク 宮川潤一 × ヤフー 川邊健太郎 特別対談

東日本大震災から10年。ICTのチカラで東北の未来の価値づくりを。 − ソフトバンク 宮川潤一 × ヤフー 川邊健太郎 特別対談

2011年3月11日、三陸沖を震源に発生した東日本大震災は、東北に未曽有の被害をもたらしました。発災から10年間、社会インフラを担うソフトバンクとヤフーはどのような決意で何に取り組んできたのか、そして今後の東北への思いを、ソフトバンクの技術部門トップの宮川副社長とヤフーの川邊社長が語りました。

宮川潤一(みやかわ・じゅんいち

宮川潤一(みやかわ・じゅんいち)
ソフトバンク株式会社 代表取締役 副社長執行役員 兼 CTO テクノロジーユニット統括 兼 技術戦略統括

インターネット企業の経営者を経て、2002年に当社グループに入り、2006年4月に取締役専務執行役(CTO)に就任。主にテクノロジー領域の事業統括責任者を務める。2018年4月から現職。2021年4月1日より代表取締役 社長執行役員 兼 CEOに就任予定。

川邊健太郎(かわべ・けんたろう)

川邊健太郎(かわべ・けんたろう)
ヤフー株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 CEO

ITベンチャー企業の経営者を経て、2000年にヤフー(現Zホールディングス株式会社)へ入社。「Yahoo!ニュース」などの責任者、COO(最高執行責任者)などを歴任後、2018年6月から現職。

大切なのは、震災を風化させないこと

東日本大震災の発生当時のことをお聞かせください。

宮川:当時、当社の携帯電話基地局の約3,800局が津波で流されてしまい、通信ができる状態に早く復旧をすることが最大の使命でした。震災後1カ月間は私も現地に滞在し、陣頭指揮をとりました。2011年の頃は災害に対しての備えがおろそかになっていて、本当に恥ずかしくなりました。とにかくあの時はネットワークの復旧に必死でした。

川邊:私は、「発災直後」と「その後」とあるのですが、発災直後は、当然困っていらっしゃる方の役に立とうと思いまして、忘れもしない3月11日金曜日から火曜日まで、会社に泊まり込んでさまざまな対応を行いました。地震、津波、原発事故、計画停電と、めまぐるしく状況が変わっていく中で、ユーザーの情報ニーズに応えようと一生懸命に取り組みました。

ただ、その数カ月後に振り返ってみると、津波による停電のため、被災して一番困っている方々はヤフーからの情報を見ることができなかったんですね。被災地に関する情報などを知りたい方々には役に立ったかもしれないけれど、実際に被災した方々には役に立てたかというと、必ずしもそうではなかったという忸怩たる思いをずっと今日まで持っています。

東日本大震災から10年。ICTのチカラで東北の未来の価値づくりを。 − ソフトバンク 宮川潤一 × ヤフー 川邊健太郎 特別対談

宮川:2年ぐらいかけて、ありとあらゆる考えられることはすべてやり遂げました。備えというものに対して、とにかく他社よりも一番だというところまでやり切ろうと。

ですから今は災害の復旧能力はソフトバンクが一番強いと言われるぐらいになったと自負していますが、それは当時の反省をふまえてやった結果だと思います。

近年自然災害が大規模化・多発化し、インフラの持つ役割がさらに増してきましたので、より強いインフラを作っていこうと考えて、現在も改善をし続けているというような状況です。

東日本大震災から10年。ICTのチカラで東北の未来の価値づくりを。 − ソフトバンク 宮川潤一 × ヤフー 川邊健太郎 特別対談

川邊:私もあのときの悔しさから、2012年にヤフーの社長が宮坂に、私が副社長に経営体制が変わったときに、「ヤフー石巻復興ベース(現石巻ベース)」を作りました。被災の時は役に立てなかったかもしれないけども、復興では大いに貢献しようということで、「復興ベース」を中心にさまざまな活動を行ってきました。

最も力を入れたのは、やはりメディア企業として「震災を風化させない」ということに、この10年取り組んできたつもりです。

毎年3月11日に「忘れない」というテーマで、必ずヤフーの上で復興の最新状況をレポートしたり、あるいは、「検索は応援になる」というテーマで、1回検索をすると10円をマッチングして寄付したりすることによって、みんな「3.11」って検索で入れてくれるんですね。そうして、3.11のことを忘れないというような努力を10年間行ってきました。

東日本大震災から10年。ICTのチカラで東北の未来の価値づくりを。 − ソフトバンク 宮川潤一 × ヤフー 川邊健太郎 特別対談

宮川:同じく、風化させないことが大事だと思っています。ソフトバンクは、ネットワークの防災訓練というものを毎年必ず大規模にやるようにしています。ネットワークの復旧に必要な機器の総点検として、セットアップや機器の動かし方といった訓練を定期的に行っています。

それと同時に、震災当時も社員有志を募って、1,300人ぐらいが東北に行き復旧活動を行ったのですが、災害時に技術部門の社員だけだと人手不足になる恐れもあるので、技術部門以外の社員も含めて活動できるような、「災害時復旧要員」づくりも進めています。

東日本大震災から10年。ICTのチカラで東北の未来の価値づくりを。 − ソフトバンク 宮川潤一 × ヤフー 川邊健太郎 特別対談

ソフトバンクは海上保安庁と、被災時に通信機材を海上輸送することを想定し、全国各地の海上保安部と巡視船に可搬型基地局を積載する合同訓練を実施している

川邊:技術部門以外の社員も参加するのですね?

宮川:社内公募のメンバーなのですが、震災のことを覚えている社員や、志を持った社員が、防災訓練にも率先して参加してくれています。通信機器も誰でも組み立てができるようなものを開発しました。

川邊:それは大事なことですね。

他にも風化させないということでは、株式会社河北新報社とともに「ツール・ド・東北」という、毎年全国から3,000人以上のライダーが集まってくださる、三陸の沿岸を走る自転車のイベントをソフトバンクにも協賛いただき、継続開催しています。

  • 2020年の大会は新型コロナウイルスの影響を考慮し中止に。

これも風化させないということと、現地にツーリズムのお金が落ちる、それで復興に貢献することにつながっています。

東日本大震災から10年。ICTのチカラで東北の未来の価値づくりを。 − ソフトバンク 宮川潤一 × ヤフー 川邊健太郎 特別対談

防災から、発災、復旧、復興まで、変わるニーズに応えていきたい

東日本大震災から10年。ICTのチカラで東北の未来の価値づくりを。 − ソフトバンク 宮川潤一 × ヤフー 川邊健太郎 特別対談

災害における、安全・安心の観点でソフトバンクとヤフーが目指すことはどのようなことでしょうか。

宮川:いま、いくつかの自治体と防災の取り組みということで、あらゆることをさせてもらっています。例えば、河川の氾濫ですね。大きな災害につながらないように、水位を常に測っておくようなシステムです。防災や減災につなげていただくため、これらの情報を行政へ提供する体制を整えています。

災害時の避難場所への誘導をスマートフォンの上で表示していくだとか、さまざまなことを行政と共に取り組んでいまして、それらがスマートシティ、スーパーシティ構想へのいろんな知恵として集まってきて、いいものが出来つつあると思っています。

東日本大震災から10年。ICTのチカラで東北の未来の価値づくりを。 − ソフトバンク 宮川潤一 × ヤフー 川邊健太郎 特別対談

川邊:やはり災害というのはその時その時で状況が目まぐるしく変わっていくものだと、3.11を契機に、あるいはその後起こった災害を見ても思いますね。

災害警戒時、災害発生時とその段階に応じて減災に向けた取り組みを実施しなければいけない。そして、復旧・復興のフェーズになると状況が変わり、ニーズも大きく変わってきます。

宮川:テクノロジーでできることは、何でもチャレンジしていきたいね。

川邊:ソフトバンクは、通信サービスも、人員やお店も提供できる。その通信の上で動くさまざまなITのシステムをヤフーは提供できるということで、平時はもちろん災害警戒時から復旧・復興まで、トータルに解決手段を提供できると思っています。

平常時もさまざまなサービスを一緒に進めていますが、こと災害に関しては、そういうときこそソフトバンクとヤフーは垣根なく、被災された方々の目まぐるしく変わるニーズに連携して応えてきたいですね。

東日本大震災から10年。ICTのチカラで東北の未来の価値づくりを。 − ソフトバンク 宮川潤一 × ヤフー 川邊健太郎 特別対談

自治体や支援団体と連携し、災害の発災から復旧・復興まで継続した支援をワンパッケージで行う「災害支援プラットフォーム」を2020年12月に発足した。

宮川:もちろん。ヤフーとソフトバンクは、それぞれの形でユーザーの方々と向き合っているわけですけども、それが足し算になれば、おそらく1+1が2ではなくて、3になり、4になり、5になるという組み合わせです。これはぜひグループを挙げて、防災に対しての取り組みをこれからも続けていきたいと思います。

東北の試行錯誤の成果を日本全国に広げることも大切だと考える

東日本大震災から10年。ICTのチカラで東北の未来の価値づくりを。 − ソフトバンク 宮川潤一 × ヤフー 川邊健太郎 特別対談

東北の未来について重要だと思うことがあればお聞かせください。

宮川:震災で受けたダメージというのは大変大きく、震災がなければ一番よかったと思いますけれども、これを乗り越えられた東北の人々というのは、より強くなっていると思いますので、日本をけん引するような集団、地域になっていくのかと想像しています。

川邊:日本は課題先進国とよく言われています。少子高齢化社会や自然災害という、どの地域にもやがて訪れるようなさまざまな課題が、東北の場合は3.11を契機に加速し、先に体験したと考えています。

東北の方々がこの10年で行った復興というのは、日本の未来を先取りする新しい形を試行錯誤されたのではないかと思っています。ぜひこの試行錯誤の成果であるとかノウハウを日本全国に伝搬させるような、そういう役割であってほしいです。

宮川:まさにそう思います。その先の、未来の価値というのを東北から作っていくというように。

川邊:当然、東北の人たちだけでそれをやるのではなくて、3.11を契機にわれわれも東北にオフィスを作って新たなネットワークを築きましたので、東北の人たちの支援を、ソフトバンクグループも連携させていただきながら、未来の価値を作り、それを日本中に伝搬させていく。そのようなことをこれからも東北の人たちと一緒にやっていきたいと思います。

東日本大震災から10年。ICTのチカラで東北の未来の価値づくりを。 − ソフトバンク 宮川潤一 × ヤフー 川邊健太郎 特別対談

若手水産事業者の団体「フィッシャーマン・ジャパン」の設立にヤフーも関わった

子どもたちの自己実現のサポートを、これからも続けていく

宮川:震災当時からこれまでの間、何度も東北を訪問して、多くのお子さんたちと会話をする機会がありました。震災直後の非常に暗かった顔から、だんだん明るくなってきたなと感じています。

復興支援という面では、ソフトバンクは東北の未来づくりに向けて次世代育成を中心に推進してきました。人型ロボット「Pepper」などの最先端テクノロジーを活用したプログラミング教育を提供し、AIやIoT、ロボットなどこれからの時代を生きるための人材育成支援も進めて来ました。これまでに東北においても、25の市町村で授業が行われています。

さらに、復興に向けた歩みを継続的に応援したいとの思いから、「SoftBank 東北絆CUP」を開催しました。住んでいる地域によって子どもたちの経験や学びに差が生まれないよう、ICTによるスポーツ支援をしたり、子どもたちの日頃の練習成果を発揮できる場の提供を通して、未来の東北の原動力につなげたいと思っています。

東日本大震災から10年。ICTのチカラで東北の未来の価値づくりを。 − ソフトバンク 宮川潤一 × ヤフー 川邊健太郎 特別対談

川邊:ヤフーの親会社であるZホールディングスはビジョンとして、『人類は、「自由自在」になれる。』という価値観を持っています。情報技術を用いてさまざまなサービスを提供することによって、人類を自由自在にしていこうという志です。

宮川さんのおっしゃる通り、みんな成長しているときに、ぜひ、われわれが提供する、「自由自在」にするためのさまざまな技術・ツールを用いて、大いに自己実現をしてもらいたいなと。

それがある意味生き残った、あるいは未来を背負った若い被災された方々の一つの使命なんじゃないかなと思いますので、ぜひ「自由自在」に駆け巡ってもらえればなと思います。

宮川:持続可能な未来や街を創っていくという観点では、今年新たな取り組みとして、原発の影響で退避を余儀なくされた小高地区(福島県南相馬市)を拠点に、若者の起業を支援する取り組みを、当社とヤフーのアセットやノウハウを活用し、現地のさまざまな団体と連携して一緒にやっていきます。

これからも東北の未来づくりのために、テクノロジーやノウハウを通して、人を育て、未来の活力と地域の活性化に貢献していきたいと思っています。

  • この対談はオンラインで行われました。

(掲載日:2021年3月10日)
文:ソフトバンクニュース編集部

3.11 TOHOKU 応援はつづく ~忘れない、あの日を。つなげよう、未来へ。

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