スマホやSNSの普及で、自分が写った写真をたくさんの人に見られるのが当たり前になりましたが、いまだに「撮られるのが苦手」「写真写りに自信がない」という方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、現役モデル兼フォトグラファーの史奈/んちょさんに「上手な写真の撮られ方」について、マンツーマンで教えてもらいました。いろいろなシーンでの「撮られ方」のコツをマスターして、写真への苦手意識を克服しちゃいましょう!
目次
モデル兼フォトグラファー 史奈/んちょさん
「史奈(ふみな)」としてCMや企業広告のモデルを中心に活躍する傍ら、フォトグラファー「んちょ」名義で、人物や広告、写真作品などの撮影も行う。第65回ニッコールフォトコンテストWeb入選。アニメ・ゲームオタクという一面も持ち、自身のYouTubeチャンネル「ふみなのささやかない部屋」ではゲーム実況なども配信。
写真嫌いの陰キャから撮る&撮られるプロへ。大切なのは、撮影を“楽しむ”こと
さっそくなんですけど、写真を撮られるのがすごく苦手なんです…私。
史奈さん:分かります。実は私も、写真が嫌いなタイプの人間だったんですよ。
えっ! モデルさんなのに?
史奈さん:はい。もともと目立つのが苦手な陰キャなので(笑)。写真写りがすごく悪くて、プリクラでさえうまく撮れませんでした。
めちゃめちゃ意外…。そんな史奈さんが、どうしてモデルに?
史奈さん:大学時代にモデルのアルバイトを始めたのがきっかけです。最初はぎこちない笑顔を振りまいていたんですが、フォトグラファーからポージングの指示をもらいながら撮られているうちに、だんだん「撮られるのって楽しい!」という気持ちが強くなっていったんです。
なるほど。では「フォトグラファーもやろう!」と思ったのはなぜですか?
史奈さん:もともとイラストレーターになるのが夢で、大学はデザイン学科に通っていて。2年生のときに写真の課題があったんですが、その評価がものすごく良かったんです。イラストはいつもボロクソに言われていたのに(笑)。
それをきっかけに思い切って画材を全部捨てて、「フォトグラファーをやろう!」と決めました。「ラブグラフ」という出張撮影サービスの会社に所属して、4年生のときから本格的にフォトグラファーとしての活動を始めたんです。
ちなみに、史奈さんは撮られることへの苦手意識をどうやって克服したんですか?
史奈さん:私の場合は、モデルとしてたくさん撮ってもらっていたので「慣れ」もありますが、他のフォトグラファーに「いい写真」「自分が気に入る写真」を撮ってもらった体験は大きいと思います。やはり、自分が気に入る写真を撮れた体験があると「撮られること」自体を楽しめるようになるんじゃないでしょうか。
なるほど!
史奈さん:それに写真って、その瞬間を思い出として残せること自体が楽しいですよね。私はよく昔の写真を見返すんですが、どんなくだらない瞬間も、撮っておいてよかったなって思う。写りの良し悪しも大切だけど、「この瞬間を残したい!」という気持ちで、楽しく写るのが一番なのかなと思います。
史奈の撮られ方アドバイス(心構え編)
- 一度、自分が気に入る写真を撮ってもらおう
- 「この瞬間を残したい」という気持ちで写ろう
- 撮られることを楽しもう!
口元リラックス&秘技・目線外しで、自然な表情を撮る!
撮られ方の「心構え」を教わったところで、さっそく実践へ。ここからは、実際に史奈さんに写真を撮ってもらいながら、コツを教わっていきます!
史奈さん:まずは、身近なスマホで撮ってみましょうか!
はい…。うっ…、やっぱりレンズを向けられると緊張してしまいます…。
史奈さん:口角が下がっているし、緊張しすぎて、目がガン開きになっていますね(笑)。無理やり笑おうとしちゃってる。
自然に笑いたいんですけど、なかなか難しいです…。
史奈さん:そんなときは、口を「ん!」の形にしてみてください。口角がキュッと上がりますよ。目は力を抜いて、ふわ〜っと緩めるくらいがちょうどいいです。
やってみます。「ん!」からの、目ふわ〜。
史奈さん:お、さっきよりも顔が柔らかくなりましたね!(パシャパシャ)
本当だ。さっきよりも口元がナチュラルになった気がします!
史奈さん:撮る前に唇をとがらせて、「うー」「いー」という口の形を何回か繰り返すのも、口元をほぐすのにオススメですよ。
「うー」「いー」「うー」「いー」。あははっ、なんか面白い(笑)。
史奈さん:(パシャパシャ!)いまの笑顔、いいですね! 自然な笑顔を撮るときは、キメの顔よりも、その後の緩んだ表情の方がよかったりします。撮影者と会話をしながら、何枚か表情をおさえてもらうのもオススメですね。
写真を撮るからってビシッとかしこまらなくてもいいんですね。おしゃべりしながら撮るのは楽しそう。
史奈さん:次は目線を外してみますか! レンズを意識しなくていいので、もっと楽に撮れますよ。ポーズはきれいめで、澄ましたイメージでいきましょう。
窓際で撮ったほうがいいんですか?
史奈さん:「自然光」が一番肌をキレイに見せるので、室内で撮るときは窓際がいいですね。夏で日差しが強すぎる場合は、レースカーテン越しにすると柔らかい光になりますよ。
目線を外して…、こんな感じでしょうか?
史奈:うん、リラックスできていて、すごく良い表情です!(パシャパシャ)
最初に撮った写真と全然違う…!
史奈さん:私は普段、一般の方を撮影することが多いんですが、皆さん最初は緊張して、なかなかいい表情が出ないんです…。でも、1枚上手に撮れたカットを見せると、そこからは自分でポーズを取ったり、表情もぐっとよくなったりするんですよ。
確かに、いい写真を1枚撮ってもらえると、テンションが一気に上がります!
史奈さん:じゃあ、テンションが上がってきたところで、天気もいいことですし、移動して、外でも撮ってみましょうか。
わーい、なんだか楽しくなってきました!
史奈さん:うーん、このあたりが良さそうかな…。よしっ!
うわあ、ガチなカメラだ! 慣れてないから、スマホより緊張しちゃいます…。
史奈さん:大丈夫。大きいカメラのときは、レンズの奥の方を見る感覚でいると意識しすぎなくて済みますよ。じゃあ、ちょっと片足を上げて、髪を耳にかける感じのポーズ、いってみますか。
レンズの奥を見ながら…こ、こうですか?(パシャパシャ)
おぉ、さすが史奈さん! 自分じゃないみたいな写真が撮れてます。
史奈さん:いい感じです! あと自分の“利き顔”を探っておくのもいいかもしれません。
利き顔?
史奈さん:自分の顔が一番良く見える角度のことです。例えば、左右の目の大きい方、髪の分け目のボリュームの多い方、アゴのラインがきれいだったらそれを見せたり、鼻が高い方は横顔など、パーツの良い方を見せたりすることが多いです。
自分の“キメ角度”ってことですね。それ知ってたら最強かもしれないです。
史奈さん:鏡を見ながら、感覚で「いいな」と思う角度があれば、それが利き顔です。でも、利き顔にとらわれすぎるのはもったいないので、いざというときの必殺技に使うくらいがいいんじゃないかと思います。
今夜さっそく探してみます!
史奈の撮られ方アドバイス(モデル編)
- 「ん!」の口で口角を上げて、目元は緩ませよう
- 「うー」「いー」という口を繰り返して、口元をほぐそう
- 撮影者と雑談しながら、リラックスした状態で撮ってもらおう
- レンズから目線を外してみよう
- 大きいカメラはレンズの奥を見よう
- 利き顔を知っておこう
自撮りは、斜めの構えとトリミングでいい画角を探る!
続いては、私が最も苦手な「自撮り」です。
史奈さん:私がやるときはスマホを斜めに構えます。なんとなくですけれど、斜めにすると画角がオシャレになるんです。高さも真正面じゃなく、ちょっと上から撮ることで、上目遣いがいい感じになりますよ。
斜め上から…、こうですかね。
史奈さん:頭は全部入れなくてもいいですよ。顔のいい部分をトリミングする感覚で。
なるほど。じゃあ分け目のアホ毛部分はトリミングすることにします(笑)。
史奈さん:あと、目に「キャッチライト」を入れましょう。窓の光が目に入るように、窓のほうを向いて…、そうです。キャッチライトがないと、生気のない死んだ目になっちゃうので。あとは良い角度を探ってシャッターを押してください!
(パシャ!)わぁ。さっき一人で撮ったセルフィーとは雲泥の差ですね。
史奈さん:いいですね! 私はたまに、片目だけ写したりもします。口元を隠すとかわいく見えるのと同じ原理ですね。
そんなのもアリなんですね! ちなみに、証明写真など、きちんとした顔の写真を撮るとき、何かオススメの方法はありますか?
史奈さん:証明写真はアゴが上がってしまいがちです。アゴを下げて、顔全体を後ろへスッとスライドさせる感じで前傾にならないようにしましょう。また、一度うつむいて、シャッターのタイミングに合わせて3、2、1でパッと顔を上げた瞬間に撮ると、目が自然に開きますよ。
3、2、1、パッ、ですね。練習します! そういえば、何人かで集合写真を撮ることもよくありますよね。あれのコツもありますか?
史奈さん:画面の端だと、顔が伸びて写ることがあるので、一番腕が長い子にカメラを持ってもらって、全員できるだけ画面の中央に寄って撮ったほうがいいですよ。
なるほど。では今度から、腕の長い友達をシャッター係に任命したいと思います!笑
史奈の撮られ方アドバイス(自撮り編)
- 自撮りは上から、スマホは斜めに構えよう
- いらない部分はトリミングしよう
- 目にキャッチライトを宿そう
- 証明写真はアゴの位置を意識しよう
- 目が自然に開くよう、一度うつむいてから、3、2、1で顔を上げた瞬間に撮ろう
- 集合写真は画面の中央に集まって、腕の長い友達にシャッターを託そう
今日はありがとうございました! なんだか写真に写るのが楽しくなっちゃいました。
史奈さん:よかったです! やっぱり写真は楽しいのが一番ですからね。
あの…最後に、本気のモデルカットを見せてもらってもよいでしょうか…?
史奈さん:おっ、いいですよ〜!
先ほどまでのフォトグラファーモードからモデルモードにガラリと変わって、バシバシとかっこいいポーズを決める史奈さん。超かっこいい…!
ここまでの写真は撮れないかもしれませんが…、今回教わったちょっとしたコツと、撮られることを楽しむ気持ちさえ持つことができれば、写真写りがこれまでとは劇的に変わるかもしれません。皆さんもいい写真で、いい思い出を記録していきましょう!
(掲載日:2020年12月16日)
文:井上麻子
編集:エクスライト
撮影:山野一真