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車両周辺データを集め分析する “つながるクルマ” が、自動運転車の実現を加速

車両の周辺からデータを集積・分析する “つながるクルマ” が、自動運転車の進化を実現

日本の自動運転技術はレベル3に到達し、2020年4月からは、高速道路を中心に走行が可能な状況にまで進みました。自動運転車はさまざまな先端技術の集大成として研究開発が進められていますが、今後さらなる安心安全な走行に欠かせないのが通信技術です。特に5Gの特長である「超高速」「高信頼・低遅延」(リアルタイム)を活用することで、自動運転技術のレベル4やレベル5の実現が加速されることが期待されています。

自動運転の高度化に欠かせない通信の役割について、5Gを活用した車両間での通信実証実験を担当したソフトバンクの技術者に話を伺いました。

  • レベル3(条件付き運転自動化)、レベル4(高度運転自動化)、レベル5(完全運転自動化)

お話を聞いた人

三上 学(みかみ・まなぶ)

ソフトバンク株式会社 技術戦略統括 先端技術開発本部
三上 学(みかみ・まなぶ)

吉野 仁(よしの・ひとし)

ソフトバンク株式会社 技術戦略統括 先端技術開発本部
吉野 仁(よしの・ひとし)

安全安心走行のためのデータをセンサーで取得。自動運転技術の高度化に必要な新しい技術概念「CAV」

ソフトバンクは2017年から3年にわたり、5Gを使った車車間通信システムの開発と実証に取り組み、自動運転車の安全走行に必要な高信頼・低遅延車車間通信システムを国際標準化に先駆けて世界で初めて開発。また、高速道路での後続車自動運転トラック隊列走行の実証試験に成功しました。

これらの実績は、自動運転技術の高度化に必要な新しい技術概念である「CAV(Connected Autonomous Vehicle:コネクテッド自動運転車)」の標準化を決めるうえで、非常に役立つと考えられているそうです。

CAVはどんな技術なのでしょうか? なぜ、CAVは自動運転に重要な要素なのでしょう

吉野「現在、自動車に実装されつつある通信を用いた技術の主流は、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver-Assistance Systems)といって、自動車の安心安全を支援するためのシステムです。自動運転技術に関しては、基本的に車体に設置したセンサーが収集した情報を使用するというものです。車両側のセンサーだけで周りの様子を判断するので、自動運転のレベル3の場合には十分なのですが、完全自動運転のレベル5を実現するとなると、車両の少し先の直接見えない状況や周囲の道路状況など、あらゆる情報が必要になるため、車載センサーだけで得られる情報では不十分なのです」

三上「例えば、物かげからの人の飛び出しや、前方で事故が発生した場合など、素早い検知が求められるような時に、見通し外の必要な情報も得られていれば、より安全な車両の走行につながるわけです。そこでCAV、つまり自動運転車がコネテッドすることにより、従来自車の車載センサーで取得していたセンサーデータに加えて、コネクテッドしている他の車両のセンサーデータ(拡張センサーデータ)を取得し、より完璧な自動運転ができるように高度な自動運転をサポートするための通信のあり方が求められるようになっています」

CAV(Connected Autonomous Vehicle)とは

コネクテッド機能(=常時通信機能)を備えた自動運転車のこと。完全自律走行する自動運転車の実現において欠かせない技術で、車両の状態や周囲の道路状況などさまざまなデータをセンサーにより取得し、ネットワークを介して集積・分析することで、さまざまな価値を生み出す「つながるクルマ」を指す。
CAVは、完全自動運転を実現する未来の自動運転車を象徴すると考えられている。

CAV(Connected Autonomous Vehicle)とは

実験ではどのような事を実証したのですか?

三上「高速走行中のトラック3台を5G通信で接続し、無線端末間の直接通信を行う技術を開発しました。基地局を経由せずに車両同士が5Gで直接通信するので、無線区間の転送遅延はわずか1/1,000秒。隊列走行する車両間で、後続トラックの自動操だ制御や自動車間距離制御に必要な情報を低遅延で伝送しました。同時に5Gの低遅延ブロードバンド伝送の特長を生かし、後続トラックのカメラの映像を先頭に転送する技術を開発しました。この技術によって走行中の後続車両周囲の状況が高精細な映像でリアルタイムに確認できることが可能となるわけです」

吉野「映像によって後続車の周囲の状況が先頭車のドライバーに詳しくわかるため、より安全な走行が可能になります。これは自車以外のセンサー情報を用いる『拡張センサー』の初期の実証試験となります。この技術と、車間距離保持および自動追尾に必要な情報を隊列車両間で高信頼かつ低遅延に共有する技術を用いて、実際に新東名高速道路を走行して、安全走行に有用であることを確認しました」

新東名高速道路でトラック3台の隊列走行を実施
各車両に車載アンテナを搭載

新東名高速道路でトラック3台の隊列走行を実施(左)。各車両に車載アンテナを搭載(右)

三上「自動運転は、そのレベルが上がるにつれて、各要素技術の技術レベルも高いものが求められるようになります。今回の実験では、コネクテッド機能を備えたトラックを用いて実際に公道を走行することで、CAVが自動運転車の安全走行をどう支援できるかを実証しました」

自動運転がカンタンにできるよう、世界に先駆けて通信技術の要求条件を提案

CAVは自動運転に必要な、新しい通信の概念なのですね

吉野「そうです。実験ではCAVを実現するための5G通信の一例として、後続車両のサイドミラーやバックミラーの4K映像を先頭車両に集めリアルタイムに伝達しました。後続車両の周囲の映像が共有できると、周囲の情報がより詳しくわかります。つまり、自動運転車での安全運転や協調運転には通信が大きな役割を果たすのです」

三上「センサーを拡張し自動運転車同士をコネクトするという考え方は、ITU-Rでも重要視されていて、自動運転車をさらに進化させようという概念が出てきています。自動運転車をコネクトするときの要求条件のひとつはブロードバンド。われわれはCAVの標準化が検討される前に5Gを使った実験でデータを収集したユースケースを作り、ノウハウも蓄積しています」

  • 通信技術の標準化を推進する国際的な組織、国際電気通信連合の無線通信部門(ITU-R: International elecommunication Union Radiocommunication Sector)

5Gの高信頼・低遅延通信車車間通信システムの開発と実証実験の成果が評価され、電波功績賞「総務大臣表彰」を受賞

5Gの高信頼・低遅延通信車車間通信システムの開発と実証実験の成果が評価され、電波功績賞「総務大臣表彰」を受賞

5Gの低遅延・高信頼通信という特長を使ったトラックの隊列走行では、車間距離を10メートルまで縮めて実験を実施。他の国に例を見ない世界に先駆けたユニークな実績は、第32回 電波功績賞「総務大臣表彰」にもつながりました。

電波功績賞「総務大臣表彰」とは

電波功績賞「総務大臣表彰」とは

電波功績賞は、総務省所管の公益法人の一つ、一般社団法人電波産業会(ARIB)が、電波の有効利用の普及を推進するための研究開発において特別の功績をあげた個人または団体を表彰するものです。その中でも、特に大きな貢献を示したものに対しては「総務大臣賞」として、その功績をたたえられます。

第32 回電波功績賞の表彰を実施

  • 今回の受賞対象となった”トラック隊列走行用5G高信頼・低遅延車車間通信システムの開発と実証” に関する記事は、2021年9月末発行のARIB機関誌に掲載予定

今回の受賞の評価ポイントはどんなところだったのでしょうか?

三上「大きく三つあります。まず、後続車自動運転トラック隊列走行の早期実用化・高度化に向けて、世界で初めて5G高信頼・低遅延車車間通信システムの開発に成功したこと。それから、このシステムを車両制御系システムと結合させて、5G通信を用いた後続車自動運転トラック隊列走行の実証試験を成功に導いたということが、電波の有効利用への貢献として高く評価されました。さらに、技術の先進性のほかに、実証試験の成果をベースにCAVの要求条件を世界に先駆けて提案し、ITU-Rでの国際標準化の枠組みをつくることに貢献したことです」

吉野「ITU-Rは、新しい技術の方向性(ビジョン)を決めています。通信が自動運転の高度化をどう支援できるのか? ソフトバンクは実際に実験をして得られたノウハウを蓄積しているので、ITU-Rが標準化の方向性を決めるのに必要な要求条件の核となる具体的な提案ができたわけです。最近は日本発のITU-Rへの提案が少なくなっています。しかし今回、総務省5G技術試験事務の成果を通じてCAVの標準化に向けたひとつの “ひな型” を提示できたので、今後はこれをベースに各国からの議論が促進されるのではないかと思います。そのためのビジョンを示せたうえに、賞までいただけたことに非常に感謝しています」

これからどんなことに取り組んでいくのか教えてください。

吉野「実験を通じて、自動運転にコネクテッドがどう貢献できるかを考えてきました。通信を加えるといろんなメリットが出てくるという結果は、自動運転の実用化に向けたステップのひとつ。5G車両通信分野でのソフトバンクの技術先進性を、自動運転車の開発に生かしていきたいと思います」

ヒト・モノ・コトをつなぐ通信で、新たな可能性を

ヒト・モノ・コトをつなぐ通信で、新たな可能性を

空気や水と同じように、誰もが意識せずに通信を利用できる未来へ。ソフトバンクは常に技術革新に挑戦し、通信をベースにした新しい技術を提供しています。

通信が変える人々の生活

(掲載日:2021年8月11日)
文:ソフトバンクニュース編集部