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スマホの “イライラ” を街からなくす。通信基盤を守る取り組みの最前線

スマホの “イライラ” を街からなくす。通信基盤を守る取り組みの最前線

私たちの生活になくてはならない、スマホやタブレットをはじめとしたICT端末。これらによる膨大な通信を支えるため、ソフトバンクは日々ネットワークの安定運用を図っています。2023年9月にモバイルネットワーク品質向上に関する最新の取り組みについて説明しました。

スマホが当たり前に使える環境を。人流やデータ通信量の変化に対応できるネットワーク整備

ソフトバンク株式会社 常務執行役員 兼 CNO(最高ネットワーク責任者)の関和智弘は、冒頭、「スマホにはあらゆる必要なものが詰まっているため、外出時に携行しないことが考えられないほど重要な存在。街中で使えなくなると、不満に直結してしまう。そのため、われわれは『スマホを当たり前に使える』点に主眼を置いた取り組みを行っている」と、「スマホの “イライラ” を街からなくす」というメッセージの背景を説明しました。

近年、通信環境を取り巻く状況は大きく変わっています。コロナ禍前後で人の密集地帯に移り変わりがありました。コロナ禍での在宅勤務の普及などにより、それまで重点的にネットワーク対策をしていた繁華街から、日中の住宅街へトラフィックが集中。コロナ禍を経て2023年の5月以降は繁華街へのトラフィック集中が見られるようになりました。こうした人の流れの変化に、いかに柔軟に対応できるかが問われます。

スマホが当たり前に使える環境を。人流やデータ通信量の変化に対応できるネットワーク整備

また、ユーザー1人当たりのデータ利用量も増加しています。20GBを一つの基準に傾向を追いかけたところ、月間20GB以上を利用するユーザーの比率が1年で約1.15倍に。それらのユーザーによる利用量は、全体の約80%を占め、データ利用量の増加傾向は今後も変わらないと予測。関和は、「データ利用量が多い人にも満足してもらえるようなネットワークを提供できるかが鍵」と話しました。

スマホが当たり前に使える環境を。人流やデータ通信量の変化に対応できるネットワーク整備

評価基準は「ユーザー体感」。AIなどを駆使して迅速なピンポイント対策を実現

対策にあたって重視するのは「ユーザーの体感。つまり、 “パケ詰まり” が発生しないこと」と、関和は強調します。アンテナが十分に立っているのにインターネットにつながらない「パケ詰まり」を起こさないためには、スマホからインターネットへ向かう通信(アップリンク)と、インターネットからスマホへ向けた通信(ダウンリンク)のバランスを取る必要があります。そのバランスが損なわれているポイントをいかに特定するか。ソフトバンクでは分析を重視しており、その概要を紹介しました。

評価基準は「ユーザー体感」。AI等を駆使して迅速なピンポイント対策を実現

従来は基地局単位のネットワークのデータをもとに品質を評価していたため、範囲が広く、どこで品質低下が起こっているのか、特定が困難でした。それを補完するのがユーザーの端末から送られるデータ。端末の位置情報と一緒に通信の状況に関する情報が得られ、100m~1kmの細かいメッシュ単位で把握できるようになります。これらの2種類のデータを掛け合わせることで、不安定になっているポイントと、その要因をパターン化することができ、迅速な対策を実現しています。さらに、これらの分析にはAIや機械学習も活用しており、年々その対象を増やしながら対策サイクルを早める努力をしています。現在は1週間単位での問題検知や要因パターンの分類を行い、1~6カ月のスパンで対策内容を判定し実行(工事を伴うケースでは~1年の場合あり)。なお、自動チューニングができる箇所はすぐに対応を行っています。関和は、「われわれが取得できるデータを生かしてプロアクティブに予兆を検知し、対策することで品質維持に努めてきた」と振り返りました。

こうして進めてきた対策の評価には、先に示した「ユーザー体感」を指標として採用しています。具体的には端末から通信要求が出され、データが戻ってくるまでの時間を独自の手法で測定したもので、ユーザーの体感が下がっていないかを推測します。他社との比較グラフ中、赤色で示す700ms超についてはパケ詰まりが発生する可能性がある、対策が必要な箇所と判断。同時に、青色の300ms以下と黄緑色の400ms以下は通信に余力があるため、この領域をいかに広げていくかにより、体感が下がったと感じるユーザーが少なくなると見込んでいます。

評価基準は「ユーザー体感」。AI等を駆使して迅速なピンポイント対策を実現

エリアに応じた対応を行いつつ、5Gを積極活用

ソフトバンクでは、通信の安定提供には5Gの積極的な利用が欠かせないと考えています。2023年9月時点で5Gの人口カバー率は92%を超え、基地局数も7万局以上に増加しました。関和は、「人が密集するエリアには5Gをさらに展開する。5Gの電波は飛びづらいためLTEの周波数も転用し、それぞれのバランスを保ちながら届きにくいエリアにも5Gを提供する。これがソフトバンクのネットワークの特長」と、品質維持のための対策方針を語ります。

周波数帯の特性と、5Gモバイルネットワークの構成

周波数帯の特性と、5Gモバイルネットワークの構成

ソフトバンクに5G用として割り当てられた周波数帯は、3.7GHz帯(ギガヘルツ)と28GHz帯という高い周波数帯です。高周波数帯は電波が遠くまで飛びにくいという特性があり、カバー範囲が狭いのが特徴です。また、建物などの遮蔽(しゃへい)物の影響を強く受けるため、電波の伝わり方が弱くなります。
それに対して、4Gに割り当てられている電波は5Gより低い周波数のためカバー範囲が広い反面、帯域幅が狭く、大量のデータ容量を扱えないという面があります。

周波数帯の特性と、5Gモバイルネットワークの構成

現在の5Gの主流はNSA(Non-Stand Alone)構成と言い、既存の4Gコアネットワーク(LTE)と5G基地局を連携し、それぞれの電波の特性を生かすことで高い品質を維持する仕組みが取られています。この仕組みでは、5Gに接続するためにまずアンカーバンドと呼ばれるLTEネットワークへ接続する必要があり、このアンカーバンドの通信が安定していることが、5Gの安定提供の前提になっています。

ユーザーが街の中心部に戻ってきたコロナ禍後、5G展開に関する3つの品質課題が見えてきました。ソフトバンクでは、先に紹介した分析手法により特定した原因に対し、それぞれ次のような対策を行いました。

①5G基地局をグループ化し、電波十分に届くエリアに絞って5Gを積極利用

①5G基地局をグループ化し、電波十分に届くエリアに絞って5Gを積極利用

5G化は現在も進行中のため、場所によっては5Gのエリアがアイランド(飛び地)のようになってしまうことがあります。5G範囲の端の部分にあたる電波が弱いエリア(セルエッジ)で5Gをつかむと、急激に通信が遅くなってしまうことが。そのため、都内のように5Gが面で広がっていて、基地局を束ねてグループにすることでセルエッジの発生を抑えることができるエリアに絞り、5Gを利用させるようにしています。

②細かいチューニングで5GとLTE通信を使い分け、アンカーバンドの輻輳(ふくそう)を回避

②細かいチューニングで5GとLTE通信を使い分け、アンカーバンドの輻輳(ふくそう)を回避

5Gの積極利用を進めると、その分アンカーバンドの輻輳が発生することに。LTEの周波数帯の一部をアンカーバンドに割り当てて使う中、5Gに接続しようとするユーザーが集中した際にアンカーバンドの増強に注力しても、品質が劣化し5Gへの接続ができなくなってしまうことがあります。そこで、細かいチューニングを行い、アンカーバンドを使って5G通信するユーザーと、それ以外のLTE通信をさせるユーザーに分散させ、アンカーバンドの使い過ぎにならないよう調整しています。

③低い周波数帯しか届かないスポットへは基地局を追加

③低い周波数帯しか届かないスポットへは基地局を追加

電波は周波数の値によって届き方が異なることから、スポット的に低い周波数しか届いていない箇所が電車内や屋内で発生してしまう問題もあります。これらの場所は人が密集している場所でもあるため、結果、900MHz帯といった低い周波数の基地局で輻輳が発生してしまうのです。こうした箇所を、先ほどのメッシュ分析で発見し、そこに届く周波数の基地局を追加しています。関和は、「これが一番難しい課題で、飛び道具はないため、地道に基地局設置をするしかない。ソフトバンクの歴史としてこれまで複数の通信事業者が合流しており、各社の基地局を活用しやすい点はよかった」と付け加えました。


その他、災害対策やイベント対策でも早期復旧や安定稼働に向け備えています。例えば自然災害ではネットワークの伝送路や電線が被害を受けやすいため、移動電源車や移動基地局の他、可搬型衛星アンテナも準備。2023年の8月に立て続けに発生した台風被害でも、2~5日で復旧を行いました。
また、今年も野外フェスやコミケ(コミックマーケット)などの大規模イベントで電波対策を実施しており、ここでも5Gを積極活用しています。X(旧Twitter)の反応などから体感を推測することで、一定の役割を果たせたと分析しました。

最後に関和は、「改めて、われわれはユーザーの体感を重視して、使用中のイライラを失くすためにさまざまな取り組みを行ってきた。5Gを適材適所で有効に活用することを基本とし、引き続き社会基盤としての通信を品質面で安定提供することで皆さんの生活を支えていきたい」と締めくくりました。

街で見かける「電波が改善しました!」というポスター。なにが変わったの?

街で見かける「電波が改善しました!」というポスター。なにが変わったの?

街やソフトバンクショップでこのような電波改善のポスターを見かけたことはありませんか?

実はこれ、ソフトバンクの携帯電話のつながりやすさがより良くなった一部の地域で見られるポスターです。2023年10月末からは同様の広告動画も配信され、その地域で改善された内容を「つながりやすさ」や「通話品質」、「データ品質」といった項目で分かりやすく伝えています。

街で見かける「電波が改善しました!」といポスター告。なにが変わったの?

では、実際にどんな取り組みでつながりやすさが改善したのか、具体的に紹介していきます。

データ分析だけじゃない。お客さまの生の声を生かしたネットワーク品質対策

お客さまの生の声を生かし、つながらないを無くす。データ分析から導くネットワーク品質対策

ソフトバンクでは、データ分析を生かしてネットワーク品質維持の取り組みを日々行っています。今回は改善対象エリアの特定に少し違った方法を取り入れたそうです。一体どんな試みなのでしょうか?

今回のプロジェクトで全体の管理や運用をしているソフトバンクの担当者が、通常のネットワーク改善プロセスとの違いを説明してくれました。

生内芳法(うぶない・よしのり)

エリア設計部
生内芳法(うぶない・よしのり)

谷昌俊(たに・まさとし)

関東ネットワーク技術統括部
谷昌俊(たに・まさとし)

河本智志(かわもと・さとし)

北陸ネットワーク技術部
河本智志(かわもと・さとし)

生内 「ネットワーク設計部門では、基地局や端末から得られるデータを用いて課題があるところとその原因を特定し、対策を進めています。今回はデータ分析に加えて、日々お客さまに接している現場の声を集約することにしました」

ソフトバンクショップに寄せられたお客さまからの情報や、ソフトバンククルーが受け付けた電波状況の報告、また自らが日々の生活圏内で気づいた内容といった、ソフトバンクが重視している『ユーザーの体感』の情報を収集。寄せられた情報をもとに、そのエリアの通信から応答までにかかる時間を測定するなどの品質評価方法をはじめ、さまざまな側面から評価を行いながら、今回対策するエリアを決定していきます。

 「データ分析だけでは分からないリアルな声は、とても参考になりました。データ上は電波が届いているエリアであっても、不満の声が上がっているということは実際に何かしら課題があるということです。報告されたエリアだけでなく、その周辺も含めて状況を調査していきました」

基地局や端末から得られるデータのほか、現地での調査も実施

基地局や端末から得られるデータのほか、現地での調査も実施

ネットワーク品質が改善し、お客さまの体感も向上

こうして特定された改善対象エリアでは、順次対策が進められています。

河本 「エリアごとに最適な対策を検討しました。例えば、ある周波数帯にトラフィックが集中してしまっている場合には、既存の基地局内に別の周波数の設備を追加します。他にも、アンテナを新たに設置したり、向きを変えたりといった対応なども行っています。また、既存の基地局を生かしつつ新たに基地局を建設する事案もありました」

ネットワーク品質が改善し、お客さまの体感も向上

生内 「対策していたエリアではそれぞれ品質が改善したと、データ上でも確認することができました。また、対策後に行った該当エリアでのアンケートでも、つながりやすくなったと感じるお客さまの割合が増えていると報告がきています。引き続きエリアの改善に注力していきたいと思います」

お客さまの声をもとに、つながらないの解消へ。あの街のネットワーク品質改善の現場は?

対象の地域では、ポスターなどを順次掲示中です。皆さんが住む地域で見かけたら、「あ、つながりやすくなった!」と感じるエリアを見つけられるかもしれませんので、チェックしてみてくださいね。

対策したエリアの一部を紹介!

日々のネットワーク品質維持業務とともに、改善施策は現在も進行中です。2023年夏までに対策が完了した一部のエリアを紹介します。

北海道函館市 西旭岡町 の一部
宮城県大崎市 古川南町/古川小稲葉町/古川塚目/古川沢田/鳴子温泉末沢/鳴子温泉末沢西/鳴子温泉大畑/鳴子温泉車湯 の一部
栃木県鹿沼市 西茂呂/緑町/栄町 の一部
東京都調布市 深大寺東町 の一部
東京都武蔵野市 吉祥寺東町/吉祥寺南町/吉祥寺本町/御殿山 の一部
東京都三鷹市 上連雀/下連雀/野崎 の一部
神奈川県平塚市 横内/大神/田村 の一部
長野県長野市 上野/大字若槻東条/徳間/浅川西条/大字吉/大字田子 の一部
富山県高岡市 戸出町 の一部
福井県丹生郡 越前町宝泉寺/越前町西田中/越前町朝日/越前町内郡/越前町東内郡/越前町米ノ の一部
福井県大野市 中野町/要町/鍬掛/元町/明倫町/新庄/城町・亀山/水落町/清瀧 の一部
滋賀県野洲市 六条/吉地/比留田/西河原/乙窪/北比江/小比江 の一部
奈良県天理市 田井庄町/富堂町/東井戸堂町/岩室町/平等坊町/荒蒔町 の一部
奈良県奈良市 青山 の一部
鳥取県米子市 上後藤/三本松/三旗町/旗ヶ崎/安倍/両三柳 の一部
山口県周南市 土井/政所/清水/中央町/古市/浜田/港町/平野/坂根町/河内町/新堤町/富田古市北/下上 の一部
高知県土佐市 蓮池/甲原/高岡町甲 の一部
高知県安芸市 川北甲 の一部
愛媛県宇和島市 築地町/寿町/曙町/津島町岩松/津島町高田 の一部
熊本県宇城市 松橋町松橋/松橋町松山/松橋町大野/松橋町きらら/不知火町御領/不知火町高良 の一部
  • 改善エリア内であっても通信状況により一部利用できない場合があります。

(掲載日:2023年10月4日、更新日:2023年10月26日)
文:ソフトバンクニュース編集部