8月にオーストラリアを訪問した、旅エッセイスト・ライターとして活動中の中村洋太さんが、前回のシドニー編に引き続き、今回はメルボルン編をレポートしてくれます。
さまざまな文化が共存するオーストラリア第二の都市で、中村さんはどんな体験をし、何を感じたのでしょうか。メルボルン市内の魅力はもちろん、郊外の観光情報もたっぷりと加え、スマホ撮影テクニックとともに紹介していきます!
オーストラリア第二の都市 メルボルンはさまざまな文化が混在する暮らしやすい街
メルボルンは、ビクトリア州の州都で、シドニーに次ぐオーストラリア第2の都市です。
古いヨーロッパ風の建築が残るクラシカルな街並みと、オープンな雰囲気。都会でありながら、「ガーデンシティ」と呼ばれるほど緑が多いこと。豊富な野菜やフルーツが手に入るマーケットがあちこちにあること。そしてイタリア系移民によりコーヒー文化が発達した街でもあり、通りのいたるところにカフェが点在していること。
そのような魅力が多くの人々をひきつけ、過去には英エコノミスト誌の「世界で最も住みやすい街」ランキングで7年連続1位に輝いたこともあります。
中村さん 「メルボルンではカフェ文化を堪能したほか、街のシンボルであるフリンダースストリート駅、メルボルン最大の市場クイーンビクトリアマーケット、『死ぬまでに行きたい図書館』に選ばれたビクトリア州立図書館などを訪ねました。また、『世界で最も美しい海岸道路』グレートオーシャンロードや、メルボルン市民に人気のモーニントン半島など、郊外の観光名所へも足を延ばしました」
まずはメルボルンの市内散策! 歴史あるマーケットでは世界を旅している気分に
まずはメルボルンの市内観光から。
この街の中心部も、シドニーと同じように「シティ」と呼ばれています。約1km×約2kmの長方形になっているシティは、京都のように碁盤の目状に区画されているため、街歩きがしやすいです。
中村さん 「シティ内は『フリートラムゾーン』といって無料でトラムに乗れるため、観光客にとっても非常にありがたいです。といっても、コンパクトな街なので、健脚な方なら徒歩でも十分散策を楽しめます。大通りにはいろんな国のレストランが並んでいて、眺めているだけでもおもしろいですよ」
対角線構図
広く、奥行きのある被写体は、写真の対角線上に被写体を配置する「対角線構図」により、遠近感が出てダイナミックな表現になる。
中村さん 「雑貨や衣料品もありますが、やはり市場の主役は食料品。魚や肉、野菜や果物が並ぶエリアはとりわけ活気がありました。名産のかきやえびをはじめ、魚介類も新鮮そのもの。立派なえびとカニがあったので、これを『ポートレートモード』で撮りました。周囲がボケることで、ピントの合った被写体がよりフレッシュに見えます。レモンの黄色もアクセントになっていますよね」
中村さん 「デリのエリアもあり、フランスのベーカリーと見紛(まが)えるような雰囲気の良いパン屋さんではポルトガル風のエッグタルトが売られていて、そのすぐ近くにはトルコ料理や南アフリカ料理のテイクアウト専門店があります。『あれ、今どこの国にいるんだっけ?』と、ここを歩いているだけで世界を旅しているような感覚になりました。商品だけでなく、お店で元気良く働く人々の表情もとても良くて、ついカメラを向けてしまいました」
中村さん 「色とりどりの野菜やフルーツは、先ほどの写真のように『対角線構図』で空間の広がりを含めダイナミックに表現しても良いですし、逆にいくつかの種類に絞ったうえで、『ハイアングル』で多様性を表現するのも良いでしょう。この撮り方の利点は、一つ一つの果物がハッキリと見えることです」
ハイアングルでの撮影
上から被写体を見下ろす視点で撮ること。客観性やかわいらしさを表現することができる。料理なら小物を含めた全体感を見せたり、街並みや建築物であれば俯瞰(ふかん)して壮大さを表現したりなど、旅行時に便利な効果がある。他にも、安定感のある印象を与える「水平アングル」、威圧感やかっこよさを表現する「ローアングル」など、アングルの違いによって被写体の印象は変わってくる。
続いて向かったのは、街のシンボル「フリンダースストリート駅」。19世紀、ゴールドラッシュのさなかに造られたオーストラリア最初の鉄道駅で、ドーム型の屋根が特徴的な古いヨーロッパ風建築です。
中村さん 「荘厳(そうごん)で、絵になる建築物ですよね。駅舎は横に長いので、写真では正面ファサードのみでなく、横幅いっぱい使って全体を入れたくなります。駅前の交差点を渡って振り返ると、ようやく全体が収まりました」
フリンダースストリート駅から東の大通り沿いを歩き、セント・ポール大聖堂を通り過ぎて少しすると、左側に有名な「ホージア・レーン(Hosier Lane)」があります。
中村さん 「ここはグラフィティが市から公式に許可されている通り。そのため、両側の壁が全て鮮やかなストリートアートで埋め尽くされています。この日もはしごに登って描いているアーティストがいたので、臨場感を出すため、スプレーを向けている瞬間を狙いました」
メルボルンの食とコーヒー文化を満喫し、美しき州立図書館へ
そろそろおなかもすいてきたので、ランチの時間に。メルボルンは食文化の豊かさでも知られる街。各国の料理が味わえますが、中村さんがこの日選んだのは、地元の方におススメしてもらった「Claypots Barbarossa」というシーフードレストラン。
中村さん 「パエリアがあまりの絶品で驚きました。今回の旅行中、おいしいものをたくさん食べましたが、中でも一番おいしかったのがこのパエリア。もちろん他のお店も含めてですが、メルボルンの食のレベルは本当に高いと感じました」
ポートレート
料理写真は光の使い方にも注目。背景をぼかして被写体にピント(焦点)をあてて際立たせる「ポートレート」で奥行きを出しつつ、左斜め前から「サイド光(被写体の左または右側の側面から光を当てる)」で撮影することで、凹凸に合わせて影ができやすく、立体感を表現できる。
食後のコーヒーは、たくさんの椅子が天井からぶら下がるユニークなカフェ「ブラザー・ババ・ブダン」で。
第二次世界大戦後、イタリアからの移民たちによってエスプレッソ式のコーヒーを出すカフェが次々とメルボルンにオープンしました。そこからコーヒー文化が花開き、現在市内には2,000軒を超えるカフェがあり、世界トップクラスのバリスタたちが集まっています。平日の朝にはオフィスへ向かう途中にコーヒーを買い求める人で行列ができます。それくらい、この街の人々にとってコーヒーは欠かせない飲み物なのです。
中村さん 「オーストラリアのカフェといえば、『ロングブラック』と『フラットホワイト』が定番です。アメリカーノがエスプレッソにお湯を注ぐのに対し、『ロングブラック』はお湯にエスプレッソを注いだもの。『フラットホワイト』は、カフェラテよりもミルクが少なめで、エスプレッソの味をより強く感じられます。どちらも日本ではなかなか飲めません。
注ぎ方の違いだけでも味や香りは『アメリカーノ』よりも強く、朝に飲むとガツンと目が覚める一杯で癖になります。ただし、『写真映え』という観点では、ロングブラックよりもフラットホワイトに軍配が上がります(笑)」
3分割構図
コップなどのシンプルな被写体は、フレームに縦横に3本の線を引いたと仮定する「3分割構図」がおススメ
中村さん 「スチームミルクの口当たりが良く、とてもおいしい。ラテアートがきれいに映るよう、できるだけ近づきハイアングルで撮りました。ただし、自分の影が入らないよう角度は調整します」
1856年設立のビクトリア州立図書館は、オーストラリア最古の歴史を持つ州立図書館です。その夢のような美しさから、トリップアドバイザーのランキングで「死ぬまでに行きたい図書館」にも選ばれています。
中村さん 「吹き抜けのドーム天井と、放射線状に配置された机の美しさに圧倒される空間でした。このような対称性のある場所では、『シンメトリー構図』が力を発揮します。安定感があり、かっこいい写真が撮れますよ。縦の中心線を決めたら、きちんと水平を取り、左右が対称になるように意識します。真正面から捉えることがコツです」
シンメトリー構図
左右対称の建物などは、左右または上下が対象になるように撮影する「シンメトリー構図」により、鏡で映したような印象になる。
夕食後、中村さんが最後に向かったのはフリンダースストリート駅に隣接するプリンセス橋でした。
中村さん 「街の夜景が、美しく『ヤラ川』に反射していました。水面のスポットがあれば、ぜひすてきな『リフレクション』に挑戦してみてください。手ブレしないよう、しっかりと固定して撮ることが大切です。また、夜景の場合は、『長時間露光(レンズから光を多く取り込む撮影方法。光量の少ない夜景向き)』モードが備わっているスマホできれいに撮ることができます」
郊外のモーニントン半島で、オーストラリア特有の動物たちとふれあう
メルボルンには郊外の魅力もたくさんあります。
メルボルンの南東、ポートフィリップ湾に沿って弧を描くようにして伸びるモーニントン半島は、1870年代から保養地として発展してきました。メルボルン市民にも人気で、週末やホリデーシーズンになると多くの人々が訪れるそうです。
中村さん 「最初にやってきたのは、モーニントン半島最南端の『ケープ・シャンク』。ここは荒波によって浸食されたダイナミックな景色が楽しめる場所で、断崖の上に遊歩道が整備されています。絶景を眺めながら気軽に散歩できて、素晴らしい場所でした。このような絶景をバックに人の後ろ姿を撮影すると、ストーリー性のある写真が撮影できます。この写真は『三分割構図』で、海の水平線が上から3分の1の場所にくるように撮ってもらいました」
この日のハイライトは、「ムーンリット・サンクチュアリ・ワイルドライフ保護公園」。広々とした園内ではオーストラリアならではの動物たち約70種が飼育されています。動物とふれあえるプログラムも充実していて、コアラやウォンバットにさわりながら写真撮影できるほか、放し飼いされているカンガルーやワラビーには餌やりもできます。
中村さん 「動物とのふれあいは、オーストラリアで楽しみにしていたことのひとつです。特に会いたかったのは、カンガルーやワラビー、ウォンバットなどの有袋類。そしてなんといっても、コアラです。コアラたちはユーカリの木をムシャムシャと食べたり、のんびりと木を移動したり、寝ていたり、そういった姿を眺めているだけで癒やされました。1日のうち18〜20時間は眠る生き物だそうなので、大きくアクビしている姿を見て、やっぱり眠いんだなと(笑)。ここでは表情がよく見えるよう、『ズーム』で撮りました」
日の丸構図
日の丸のように被写体を中心に置いた「日の丸構図」で、コアラを落ち着いた雰囲気に。シンプルな構図なので、被写体の力が強い際はインパクトを出せる。その反面、平凡な印象にもなりがちなので、被写体外の要素を減らしたり、背景をぼかしたりなどの工夫が必要になる場合も。
圧巻の大自然。「グレートオーシャンロード」で海の絶景を楽しむ
メルボルン南西部の海沿いに続く「グレートオーシャンロード」は、「世界で最も美しい海岸道路」として知られています。中村さんは現地ツアーでこの場所を訪れました。
中村さん 「グレートオーシャンロードで最も有名な『12使徒』までは、メルボルン市内から約230km離れているため、片道で3時間もかかる長いドライブでした。それでも、この圧倒的な光景を見たら、『やっぱり来て良かった』と思いました。海と断崖絶壁が果てしなく続く絶景なので、ここは『パノラマ』か『ワイド(16:9の画角比率)』で撮りたいですね。今回はダイナミックな岩の迫力を伝えるために、『ワイド』にしたうえで『ズーム』で撮りました」
中村さん 「3つの遊歩道からこの複雑かつ波の激しい海岸線を眺めていると、『これは難破するよなあ』という気持ちになります。『12使徒』も素晴らしかったですが、個人的には『ロックアードゴージ』の方がより手つかずの大自然という感じで好きでした。自然の雄大さを表現するために高い場所から撮り、断崖と海、空だけでなく、緑の大地を入れて奥行きを意識しました」
メルボルン旅行を通してのまとめ・感想「暮らしやすく、コーヒー好きにはたまらない活気あふれる街」
中村さん 「メルボルンは街歩きがしやすく、マーケットも充実していて、確かに『暮らしやすさ』を感じる街でした。語学留学やワーキングホリデーの滞在先としても人気なようで、市街には本当に若者が多いです。活気にあふれ、自然とこちらも元気になってきます。
コーヒーが好きなので、レベルの高いローカルのカフェがたくさんあることも気に入りました。最終日は朝8時頃にカフェを訪ねたのですが、狭い店内は出勤前の人でいっぱいで、これがメルボルンの日常なんだなと感じました。ワインの名産地として有名な『ヤラバレー』などまだまだ郊外の魅力もあり、4日間の滞在では全然足りなかったので、またいつか訪れたいです」
前回のシドニー編を見逃した方はこちらから
(掲載日:2023年10月3日)
撮影・文:中村洋太
編集:ヤスダツバサ(Number X)
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