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AI投資戦略で優良案件発掘に注力 -ソフトバンクグループ株式会社 2024年3月期 第2四半期 決算説明会レポート

2023年11月9日、ソフトバンクグループ株式会社(以下「SBG」)の2024年3月期 第2四半期 決算説明会が開催され、取締役 専務執行役員 CFO 後藤芳光が今年9月のアームの上場や連結業績、今後の方針について説明しました。

アームが上場、さらなる成長へ

冒頭、後藤は今期一番の出来事として9月14日付のアームの上場について触れ、「上場時の時価総額は520億ドル、これは日本円で約7.5兆円。その後の株価も順調に推移し、まずまずの船出と捉えている。アーム投資の実績として当初の投資額から株式MOIC(投下資本倍率:初回投資実施から2023年9月30日までの株式価値に係る投資およびリターンをもとに算出)は3.2倍になった。アームの成功は、すでに今の時点でアリババなどの過去の大型投資と遜色ない。アームは、全社で取り組むAI戦略の最重要企業と位置付けてさらなる成長を期待」と力強く語りました。

アーム IPO サマリー

アーム投資の実績

2023年度上期の連結業績は、売上高3兆2,271億円、投資損失9,636億円、税引前損失9,074億円、純損失1兆4,087億円となりました。2023年8月にSBGは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下、SVF)から25%相当のアーム株式を取得したが、これは子会社株式のグループ内取引のためSVFで計上される売却益は連結消去されること、またアームはIPO後も引き続き子会社であるため、IPOに伴う株式の売却益相当額はP/Lに影響せず、B/S資本の部に計上されていることを説明しました。

連結実績

投資損益(連結ベース)については、昨年に比べて一見変化がないように見えるが内訳は大きく変わっていることについて触れ、「SVF事業は昨年度上期4兆3,535億円の損失から2023年度上期で5,833億円へと縮小し、目覚ましい改善を遂げている」と述べました。

投資損益

加えて、昨年同期比で1.2兆円ほど税引前利益が悪化した大きな要因は、SVFの外部投資家持分の変動による影響だと説明しました。

税引前利益

2023年9月末時点におけるSBGの最重要指標について、NAVが16.4兆円と再び上昇傾向であること、LTVが10.6%と低水準で推移していること、手元流動性が5.1兆円と高水準を維持していることに触れ、「安全性という観点から、極めて健康な状況が続いている」と説明。上昇傾向にあるNAVの増加要因は主に為替と株価によるものとしました。

重要指標の変動

保有株式価値の内訳については、アームを中心に株式価値が増加していること、またアリババ株式は実質売却が完了していることから比率が低下し、ここ数年でポートフォリオが分散化し、地政学リスクにも対応できていると説明しました。

保有株式価値

円安による為替影響は、連結純利益では0.6兆円のマイナス影響があるものの、投資会社として重要な指標はNAVであり、NAVに1.9兆円、資本に1.8兆円のプラスの影響があると言及しました。

為替影響

AI革命をけん引する最優良案件の発掘に注力

続いて後藤は、上場したアームのビジネスモデルや業績について「ビジネスの根幹となるアームベースチップは、2023年6月までの累計出荷実績が2,700億個と、2016年の買収時に二次曲線的に上昇すると予測した通り順調に推移している。ITからAIへと時代が進化していく中で、アームのチップが欠かせないと考えており、期待通りの成長をしている」と説明。

アームベースチップ出荷数

アームの成長市場として、モバイルを筆頭に、クラウド、オートモーティブ、IoT組込機器など2020年から2022年にかけて市場シェアを拡大していることについて触れ、これらの領域においてさらなる収益機会を見込んでいると期待を示し、GoogleやNVIDIAなど業界リーダーとの戦略を通して身近な分野でアームチップを活用したサービスが提供されていると説明しました。

業界リーダーとの戦略が進展

この四半期のアームの売上高は過去最高に。高額のライセンス契約を複数締結したことに起因するとした一方で、調整後営業利益は前年同期比92%増と力強く成長、年間売上高は30億ドル前後で着地見込みと半導体市場は弱含むも売上高は堅調に推移しているとしました。

四半期売上高(米国会計基準)

SVF(SVF1、SVF2、ラテンアメリカファンド)の2023年度第2四半期の投資利益は、合計2億3,200万ドルで着地。活動開始以来の累計投資成果(公正価値+売却額)については、SVF1は投資額89億6,000万ドルに対してリターン104億4,000万ドル、SVF2は投資額52億2,000万ドルに対してリターン31億5,000万ドルでした。

SVF:投資損益(四半期)

直近2四半期連続で黒字を計上していること、累計投資損益は改善が続いていることから、引き続きモニタリングしていく必要があると考えを示しました。

活動開始以来、50件の株式公開実績があることに触れ、「IPOは成長過程の通過点に過ぎないが、その時点で市場に評価されている。ここ数年は市場が厳しい環境で、上場を果たしても投資の価値がまだ発揮できていないポートフォリオもまだ多く、今後に期待したい。また、今後のパイプラインであるレイトステージのポートフォリオの公正価値は290億ドル以上ある状況」と説明しました。

後藤は、SBGとSVFで投資を再開したことについて、「2023年度第2四半期は合計1億5,000万ドルの投資を行い、昨年度と比べてクォーター単位で投資は2倍3倍と増えている。SVFで投資することがわれわれの基本的な考え方とする一方で、SBGによる自己勘定投資は戦略的に重要なポイントである。長期での価値創造となる本質的なビジネスモデルを考える上で、今後重要なパーツとして機能していく可能性が高いポートフォリオについては、SBG単体で持っておこうという考えがある」と2023年度に増加傾向にある自己勘定投資の重要性について触れ、SBGのAI投資戦略について喧々諤々議論を行っていることを説明。

投資額の推移

取締役 専務執行役員 CFO 後藤芳光

「2023年度の財務方針は『守り』と『攻め』で変更はない」とし、「通常時LTV25%未満で運用(異常時でも上限35%)」「少なくとも2年分の社債償還資金を保持」「SVFや子会社から継続的な配当収入を確保」の3つの方針に則って、新規投資、株主還元、財務の安全性のバランスを常に考慮していくことを強調。「10年以内に、全産業を再定義するとしていたAIは、全産業を変革していくAGI(Artificial General Intelligence)へと進化する。今すべきことを真剣に考え、われわれは世界で最もAIを活用するグループとして、企業群を結びつけリードできる存在になるようパフォーマンスの向上に努めていく」と締めくくりました。

2024年3月期 第2四半期決算説明会

免責事項

(掲載日:2023年11月8日、更新日:2023年11月13日)
文:ソフトバンクニュース編集部