皆さんは、「人流データ」と聞いてどんなことを思い浮かべますか?
ソフトバンクは、総合建設コンサルタントのパシフィックコンサルタンツ株式会社(以下「パシフィックコンサルタンツ」)の協力のもと、人の移動に関する統計データ「全国うごき統計」を提供しています。その一部データを活用し、ウェブサイトから誰でも人流データを分析できる「全国うごき統計 見える化マップ(以下「見える化マップ」)」が公開されました。どんなサービスか、特長を紹介します。
目次
人の移動量だけじゃない。移動手段や経路も一目で分かる「見える化マップ」
人流データは、その名の通り、人々の動きや流れを示すデータのことで、人が移動する時間や場所、人の流れのボリューム、滞在時間などを把握できるようになります。観光や交通、防災、街づくりなど、さまざまな分野で人流データの活用が期待される一方で、「手軽にデータを入手できない」「データの扱い方が分からない」など、利活用へのハードルがまだまだ高いことが課題としてあるそうです。
そのようなハードルを下げたいという思いで生まれたサービスが「見える化マップ」。ウェブサイトから誰でも利用することができ、人の移動の多さだけでなく、人がどこからどこに移動したのか、どの交通手段・経路を使ったのかも確認できます。この「見える化マップ」には、ソフトバンクが提供している、人の移動に関する統計データ「全国うごき統計」の一部過去データを使用しています。「全国うごき統計」は、全国にあるソフトバンクの携帯電話基地局のログから得られる数千万台の端末の位置情報データ(十分に匿名化したもの)に、パシフィックコンサルタンツが保有している社会インフラに関する知見やノウハウを融合した人流データです。
「見える化マップ」は、マップ上で、調べたい駅や空港、地域などをワンクリックするだけで、さまざまな人流データの分析が可能になります。
① 人がどこからどの交通手段で移動したかを確認
マップ上で調べたい地域をクリックまたは検索すると、100m四方の区画単位で範囲が選択されます。指定した区画を到着地点として、そこに訪れた人たちが、飛行機、新幹線、在来線、高速道路、一般道のどの交通手段を使って来たのか、どこの地域からその場所へ来ているのかがグラフで表示され、確認することができます。
② 駅や空港などの交通手段をどのような人が利用しているのかを確認
飛行機や新幹線、在来線、高速道路などの交通手段別に、どこからその交通手段を使って訪れたのかや、訪れた人の居住地などを確認できます。交通手段のアイコンをクリックすると、移動元となる10カ所が地図上に青い線で表示されます。
画面右上のメニューから人流ヒートマップを表示すれば、特定した場所の人流の多さを確認することも。他にも移動によるCO2の排出量の多さ、高齢者の外出率などを確認することもできたり、休日または平日別の変化の違いも見られます。
誰もが人流データを使えるようになることで、新たなアイデアが生まれるきっかけに
「見える化マップ」の開発を一緒に進めてきた、パシフィックコンサルタンツとソフトバンクの担当者に、サービスを開始した経緯や期待することなど話を聞きました。
「見える化マップ」を一般向けに公開することになった理由は何ですか?
「『人流データ』という言葉は、コロナをきっかけに見聞きするようになった方も多いと思います。しかし実際に利用するとなると、そもそも人流データでどんなことが分かるのかが十分に理解されていなかったり、データ購入するには費用が高かったりなどの理由で、多くの企業や自治体が利用を控えてしまっているのが現状です。でも実は、人流データをいろいろな角度から見てみると、新たな発見や気付くことがたくさんあるんです。特に『見える化マップ』では、人流ビッグデータの特長に加えて、全国うごき統計ならではの特長である、交通手段なども掛け合わせて見ることができるので、より深い分析をすることが可能です。人流データを使うことへのハードルを少しでも下げたいという思いから、まずはお試し感覚で、人流データを誰もが使えて有効であること知ってもらう目的で『見える化マップ』を公開しました」
たしかに「人流データ」と聞くと小難しい印象がありますが、「見える化マップ」は直感的に使えるので、いろんな場所の人流データを見たくなってしまいますね。
「そうなんです。例えば、富士山付近を訪れている人の居住地を見てみると、地元の静岡県や山梨県の人はあまり行かないんだなとか、意外と福岡県の人が多かったりして、高い山が少ないことから富士山に登山しに行くのかな… なんていろいろと考察できたりするんです。このように遊び感覚で見てもらうだけでも気付くことがたくさんあると思いますし、今まで知らなかったことや、逆に言うと当たり前だったことも可視化されますので、何か皆さんのアイデアが生まれるきっかけになったり、意思決定がよりスマートな方向に向いていければいいなと思っています」
「まさに直感的に使えるというところは、開発をする上で一番意識をした点です。UIはシンプルにしつつも、多角的な視点で分析ができるように、複数の切り口からグラフを表示させたり、マップ形式でアイコンの表示をしたり、分かりやすくて使いやすいUI・UX設計をしています。また、ビッグデータを使っているので、データが重くて挙動が遅くなってしまうことのないように、データ処理や見せ方というところにも工夫をしています」
「見える化マップ」の一番の特長はどこにあるとお考えですか?
「交通手段別にデータを見られることが『見える化マップ』および、基になっている『全国うごき統計』ならではの分析だと思います。さまざまな活用方法がありますが、例えば、あるテーマパークの来場者数が増加してしまい、テーマパーク周辺の渋滞が慢性化している問題があるとします。このとき、『見える化マップ』があれば、車で来る人の来訪元や、パーク周辺の公共交通機関の乗降場所などが分かりますので、パークアンドライドの考え方から、どこで車から公共交通機関にシフトさせるか、いかに渋滞緩和につなげるか検討する材料にお使いいただけると思います。また、その地域の交通インフラの強化や整備などの検討にも人流データを詳細に見ることは重要であると考えています」
誰がどの交通手段を使ったなどの個人情報も特定されてしまうのではないかと、少し不安になったのですが…
「そこはまさに心配になる点だと思いますが、『誰が』という個人を特定できないような形でデータを加工して統計データ化しています。また、人の動きがほとんどない地域などでは、個人を容易に特定できないよう処理をして個人のプライバシーには最大限に配慮しています」
そうなんですね、安心しました。人流データの活用を通じて、どのような課題解決につなげていきたいですか?
「通信データを含めてさまざまなセンシングデータを持つソフトバンクと一緒に共創をすることで、いろんな側面で社会課題に貢献できると思っています。人流データを活用したより良い街づくりはもちろんのこと、防災面においても、災害時の避難場所の設置計画や避難経路の策定などを最適化することにも貢献できると感じています。日本の人口が減っていく中で、社会インフラの維持もしっかりと考えていかなければいけません。そうしたときに、誰もが人流データを使って定量的かつロジカルに考えながら社会をつくっていけるような未来が来ればいいなと願っています。そのためにも、『見える化マップ』のようなサービスを通して、まずは人流データを扱うことに対するアレルギー反応を下げていき、データをこう使ったら面白いんじゃないかっていうアイデアをどんどん生んでいってほしいなと思います」
最後に、今後のサービスの展望について教えてください。
「『見える化マップ』では、一部まだ見られないメニューがあるので、そこを順次対応をしていきたいと考えています。また、実際に使ってくださっているお客さまからのニーズにもしっかりと応えていくことも必要だと思います。『見える化マップ』の基となる『全国うごき統計』も日進月歩で開発を進めていますので、それに応じて『見える化マップ』の方もアップデートしていきたいと考えています」
「まずはサービスの認知を広げていくために、営業部隊からお客さまへの提案で『見える化マップ』を積極的に活用してもらったり、案内をしていただくために連携をしていきます。また今後は、現在の統計データに、例えば、PayPayやLINEヤフーが持つデータを掛け合わせるなど、ソフトバンクのグループ企業が持つデータを重ねていくことで、サービスの拡大も実現していきたいと思います」
(掲載日:2024年9月26日)
文:ソフトバンクニュース編集部