量子の特性を利用し、従来のコンピュータでは困難な計算を効率的に処理できる新世代のコンピュータ
量子の特性「重ね合わせ」「量子もつれ」によって並列処理での高速計算が可能に
量子コンピュータは、量子力学の原理を使って計算をする新世代のコンピュータです。従来のコンピュータ(古典コンピュータ)では複雑すぎて解くのが困難とされる問題を、量子力学の法則を利用して効率的に解くことを目指しています。
量子力学は、原子や電子のようなミクロの世界で物質がどのように動くかを説明する科学です。量子は、エネルギーや物質が極小の単位で存在する様子を表すもので、粒子と波の性質を併せ持つという特徴があります。量子コンピュータは、量子力学の基本的な現象である「重ね合わせ」や「量子もつれ」と呼ばれる特性を利用することで、古典コンピュータより大量の並列処理を可能にするものです。
古典コンピュータで用いられる情報の単位「ビット」は、必ず0か1のどちらかの状態です。それに対し、量子コンピュータで用いられる情報の単位「量子ビット(キュービット)」は、0と1の状態を同時に持つ「重ね合わせ」の特性から、1つの量子ビットで複数の状態を一度に表すことができます。さらに量子ビット同士の間での、一方の量子ビットの状態が他方に影響を与える相関性「量子もつれ」を利用することで、同時に多くの計算を処理できるようになることから、量子コンピュータは特定の問題において古典コンピュータよりも高速に計算を行うことが可能になります。
ただし、量子コンピュータが全ての計算において古典コンピュータより優れているわけではありません。量子ビットは温度や振動、電磁波などの環境ノイズに非常に敏感で、計算中にエラーが起こりやすいという課題があります。エラーの訂正技術や問題に適したアルゴリズムの開発など、現時点では量子コンピュータの開発・実用化には技術的な課題が多く残されていますが、新しい薬を開発するための分子シミュレーションや、物流や交通計画の最適化、金融のリスク分析をはじめ、医療・科学・金融・ビジネスなどさまざまな分野で大きな変革をもたらす技術として期待されています。
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(掲載日:2025年1月14日)
文:ソフトバンクニュース編集部