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マイナス2度の強風下でドローンが40kmの長距離飛行。物資運搬や災害対策など、実用化を見据えた技術を検証

マイナス2度の寒冷地でドローンが40kmの連続飛行。物流や災害時に不可欠な技術を北海道標津町で検証

物流や災害対策などの分野で、ドローンの社会実装に向けた取り組みが進んでいます。ソフトバンクはドローンを次世代社会インフラの重要なソリューションの一つと捉え、実社会での活用に向けたさまざまな検証を行っています。2024年12月、寒冷地における約40kmの長距離飛行の技術検証が、北海道標津町(しべつちょう)で実施されました。

寒冷地で長距離をレベル3で飛行。物資運搬や災害対策など、実社会での活用を見据えた技術を検証

北海道の東部、根室海峡沿岸の中央部に位置する標津町は人口約5,000人、海岸には根室海峡の眺望が広がります。海、森、川などの自然環境に恵まれた町は、冬の間、最低気温がマイナス10度になることも珍しくありません。

寒冷地で長距離をレベル3で飛行。物資運搬や災害時など、実社会での活用を見据えた技術を検証

実際の社会でドローンの活用を進めていくためには、さまざまな技術検証が必要です。標津町は、スローガンに「試せる大地 しべつ町」を掲げ、地域課題や地場産業の課題解決を試みる民間企業、大学などを支援しています。苫小牧市で大規模なAIデータセンターの建設を進めているソフトバンクは、2024年2月に北海道と包括連携協定を締結。北海道との協力関係を通じて、標津町が今回の技術検証の場となりました。

寒冷地で長距離をレベル3で飛行。物資運搬や災害時など、実社会での活用を見据えた技術を検証

寒冷地で長距離をレベル3で飛行。物資運搬や災害時など、実社会での活用を見据えた技術を検証

現在、日本ではドローンの飛行レベルは1〜4に分類され、それぞれ飛行エリアや操縦方法の規定がされています。レベル1・2が目視内飛行(操縦者が直接肉眼でドローンを常時監視しながら飛行)であるのに対し、レベル3では、目視外飛行(操縦者がドローンを直接目視しない状態で飛行)が可能です。今回は、レベル3で「寒冷地という条件下で連続40Kmの長距離飛行」を検証しました。

飛行
レベル
レベル1 レベル2 レベル3 レベル4
飛行
エリア
無人/有人地帯 無人
地帯
有人
地帯
飛行
方法
目視内飛行 目視外飛行
操縦
方法
手動
操縦
自動操縦(プログラム飛行)
操縦者の役割 直接
操縦
監視・必要時に介入 遠隔監視・必要時に介入

寒冷地で長距離をレベル3で飛行。物資運搬や災害時など、実社会での活用を見据えた技術を検証

ドローンが飛行したのは、標津川上空、高度約100mで黄色で囲われた経路を2往復する約40kmのコースです。

寒冷地で長距離をレベル3で飛行。物資運搬や災害時など、実社会での活用を見据えた技術を検証

使用されたのは、本体重量14kg、ガソリン+バッテリーを燃料とする「ハイブリッドドローン」。充電式のバッテリーを用いた同等の重量のドローンは、15~20分程度の飛行が可能であるのに対し、ガソリンを燃料にして飛行中に発電を行うハイブリッドドローンでは、最大140分の飛行ができます。

寒冷地での長距離飛行と合わせ、現在、開発中のクラウドGCSの機能や、長距離飛行における遠隔操縦の有用性の検証も実施されました。

  • GCS:Grand Control System、地上管制ステーションのこと。ドローンを遠隔で操作・監視するための中枢システムで、遠隔操作、飛行計画リアルタイムモニタリングなどの機能がある。

寒冷地で長距離をレベル3で飛行。物資運搬や災害時など、実社会での活用を見据えた技術を検証

この日は、風速12m/s、気温マイナス2度という過酷な状況。ドローンが強風に流されてしまい、正常な飛行や操縦ができなくなる可能性もあります。また、強い風寒冷地でのドローンの飛行は、電圧が下がってバッテリーの消耗が急速に進んでしまったり、雪や結露でプロペラが凍結したりするなどが懸念されましたが、出発したドローンは、86分後に離発着場所の第一しべつ展望パーキングに到着。予定していた検証を無事に終えることができました。

寒冷地で長距離をレベル3で飛行。物資運搬や災害時など、実社会での活用を見据えた技術を検証

今回の技術検証は、民間企業などの事業成長や事業創出を支援し、地場産業の高度化、人材育成、関係人口の増加を目指している標津町の全面的な協力を受け、実現に至りました。

標津町で窓口を務めた企画政策課の西山一也さんは「人口減少による地域産業の担い手の不足という課題は全国的なものではありますが、特に過疎地域の指定を受けている当町にとって大きな課題として捉えています。そのような中において少ない人員で地域産業を持続していくため、『試せる大地』をキーワードに多様なフィールドを保有し人口密度が低いからこそできる取り組みを始めさせていただきました。実証実験当日はこの時期には珍しい強風と低温で、まさに『試せる大地』でありましたが、無事にドローンの着陸を見届けることができました。今後は『実証を実装に』するために関係者の皆さまとともにアイデアを出し合っていければうれしく思います」と振り返りました。

ソフトバンク株式会社 次世代社会インフラ事業推進室の南野洋は「今回、発着場所や通信環境を専用に整えた検証フィールドではなく人々が実際に暮らしている町で実証実験をさせてもらえたことは、非常に有意義でした。技術面では、長い飛行時間と経路の中で目まぐるしく変化する気候条件下でも目標距離を飛行できたことで、ハイブリッドドローンと遠隔操縦の仕組みが過酷な環境下での物資輸送や情報収集における有効な手段となり得ることが実証できました。また、地元の方々には、日々の暮らしの中でのドローンの活躍を想像いただくきっかけにしていただけたと思っています。

今回の実証実験を通して新たな気付きも得られたので、引き続き自治体の皆様と一緒にドローンの社会実装を見据えて具体的な社会課題を想定した実証を進めていきたいと考えています」とコメントしました。

(掲載日:2025年1月9日)
文:ソフトバンクニュース編集部