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近隣住民宅にも導入!地域ぐるみで新しい水インフラを体験 ー270日間「WOTA Unit」生活【後編】

近隣住民宅にも導入!地域ぐるみで新しい水インフラを体験ー270日間「WOTA Unit」生活【後編】

上下水道に頼らない生活は可能なのか。

2024年10月末から2025年7月にかけて秋田県仙北市(せんぼくし)でとある実験が行われました。ソフトバンクの社員が、生活用水を再生・循環利用する家庭用水循環システム「WOTA Unit(ウォータ・ユニット)」を備えた住居に実際に住み込み、新たな水インフラの可能性を検証する挑戦です。東北の厳しい冬の環境下で、生活者として上下水道に頼らない暮らしを体験したソフトバンクの石井ゆめみに話を聞きました。

石井 ゆめみ(いしい・ゆめみ)

ソフトバンク株式会社 次世代戦略本部 第二戦略企画統括部 第4部

石井 ゆめみ(いしい・ゆめみ)

秋田県出身。学生時代は地理・空間分野を専攻し、人口減少地域のスマートシティ政策に関する研究に取り組む。ソフトバンクに入社後、スタートアップ支援施設の運営などを経て、過疎地域のインフラを自律分散化する社会基盤事業に従事。秋田県仙北市の住宅に約9カ月間住み、「WOTA Unit」が寒冷地で安定して稼働するか検証を実施。

7カ月に及ぶ物件探しから住み込みでの実証開始まで、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

内覧会をきっかけに近隣住民宅にもWOTA Unitを設置

住み始めて間もない頃、「WOTA Unit」や今回の試みについて、地域の方々にも知ってほしいという思いから、内覧会を開くことを企画しました。地域の代表の方の協力を得て、一軒一軒、集落を回り、自作のチラシを配ったんです。

内覧会をきっかけに近隣住民宅にもWOTA Unitを設置

内覧会には17名が参加してくれました。雪解け水が豊富で水に困らないと感じている住民が多い地域ですが、老朽化した水道管の更新には1kmあたり1億円もの費用がかかることや、水道料金が将来大幅に上がる可能性を説明すると、多くの方が関心を寄せてくれました。参加した住民の方からは「実際に見て初めてイメージが湧いた」「冬に凍らないか見てみたい」などの声が寄せられ、この経験が、技術を伝える場であると同時に、住民との距離を縮める大切な時間になったと感じています。

実は、内覧会が、今回の実証実験の中で、大きな転機になるきっかけにもなりました。内覧会で「WOTA Unit」に興味を持っていただいた方へ、実証への協力を依頼したところ理解が得られ、なんと住民宅に「WOTA Unit」を設置する展開に!

住民宅に導入されたWOTA Unit

住民宅に導入されたWOTA Unit

住民宅に導入された「WOTA Unit」

住民の家でも検証できたことで、実際の暮らしの中での使い勝手に関する貴重なフィードバックが得られました。「モニターで水の残量が確認できて安心」「水の使い方はさほど変化がなく不便さはない」などの声もあり、取り組みを広げていくための次の一歩へとつながりました。

山菜採りや伝統行事。住み込み生活を手助けしてくれた地域への恩返し

9カ月にわたる実証生活では、地元の中学生に勉強を教えたり、山菜採りや毎月の飲み会に誘っていただいたり、夕食のおかずをお裾分けしてもらったり、と住民の皆さんと思い出深いたくさんの交流がありました。自分では処理しきれない自宅前の除雪は、近隣の方に毎回機械で手伝ってもらっていました。

山菜採りや伝統行事。住み込み生活を手助けしてくれた地域への恩返し

そうした経験を重ねる中で、“何とか恩返しをしたい” という思いから即興でスマートフォンの操作を教える教室を開いたところ、延べ30名が参加してくださり、ソフトバンクの社員としての知識が役立つ場にもなりました。

山菜採りや伝統行事。住み込み生活を手助けしてくれた地域への恩返し

中でも特に心に残ったのが “紙風船祭り” です。住民の方々と一緒に紙を貼り、下絵を写し、絵を描き、ソフトバンクのロゴをあしらった紙風船を作りました。祭り当日、それが夜空に舞い上がった瞬間、地域の一員として迎え入れてもらえたと感じて胸が熱くなりました。

祭り当日に夜空へと舞い上がりました!

祭り当日に夜空へと舞い上がりました!

厳冬期でも安定稼働する新しい水インフラの可能性

厳冬期の9カ月間、「WOTA Unit」は一度も止まることなく動き続け、雨水タンクの容量や凍結対策を含めた運用性も確認できました。また、設備の設置や保守は地域の会社と連携して行い、外部からの常駐サポートがなくても地域が主体的に運営できる体制を整えることもでき、寒冷地でも安心して暮らせることを示せたのではないかと思います。

仙北市役所での月次報告の様子

仙北市役所での月次報告の様子

行政には毎月定期報告を行い、データに基づいた丁寧な説明を重ねることで信頼関係を築いてきました。この実証を通じて凍結防止のためにかかる電気代や雪囲いなど、寒冷地ならではのコストが明らかになってきました。仙北市が持つ上下水道インフラの新設・維持管理にかかるコストと今回の実証データを比較した結果、試算では「WOTA Unit」導入により40年間で約12億円のコスト削減が見込まれることも分かりました。

今後はこの取り組みを、東北、そして全国へと広げていきたいです。

実証実験の場となった仙北市 建設部上下水道課の堀川課長から、以下の通りコメントが寄せられました。

実証実験の場となった仙北市 建設部上下水道課の堀川課長から、以下の通りコメントが寄せられました。

大きなコストメリットが実証でき、自治体としても手ごたえを感じています。この事業は、石川県珠洲市で実証実験の補正予算が決まるなど、国に認められた取り組みです。水循環システムは今後、展開が加速していくのではと期待しています。

(掲載日:2025年10月31日)
文:ソフトバンクニュース編集部

持続可能な次世代水インフラ

持続可能な次世代水インフラ

ソフトバンクは、WOTA株式会社と資本・業務提携し、水利用の課題解決に向けて取り組んでいます。水に関する自由の実現と環境への責任を両立し、より創造的で持続可能な暮らしの実現を目指しています。

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