
高齢化が進む日本では、65歳以上の割合が総人口の約29%を占めています。また、高齢者のおよそ8〜9人に1人が認知症と推計されており、認知症による行方不明の届け出は年間約1万8,000件に上っています。※
こうした中、自治体や企業には、限られた人手の中でも早期発見につなげる仕組みづくりが求められています。ソフトバンクは2017年から、スマートフォンを活用した認知症の方の見守り支援サービス「オレンジセーフティネット」を提供し、この課題に取り組んできました。
この記事では「オレンジセーフティネット」を3年前から導入・運用している宇都宮市の取り組みと、三重県内の認知症カフェで開催された、当事者やご家族向けのアプリ体験会の模様を紹介します。
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目次
行政がICTを活用して進める認知症高齢者サポート
2026年1月、認知症高齢者の人が行方不明になったことを想定した捜索訓練が、宇都宮城址公園で行われました。訓練には宇都宮市の職員とソフトバンクの社員が参加。行方不明者の捜索を支援するスマホアプリ「オレンジセーフティネット」を使って、捜索依頼の発信や協力者への情報伝達、行方不明者発見時の情報共有の流れなどを確認しました。

宇都宮市は、認知症により行方不明になるおそれがある方が、住み慣れた地域で安心して暮せるよう、地域の方が声がけや手助けをしやすくなる「認知症高齢者地域生活安心サポート事業」を推進しています。認知症の方が身に着けることで目印となる「認知症見守りグッズ」の配布の他、行方不明時に家族などがスマホから捜索を依頼でき、依頼を受けた協力者が地図機能や掲示板機能を活用して捜索できるアプリ「オレンジセーフティネット」を市民に提供しています。
認知症による行方不明が発生したとき地域で捜索する仕組み
「オレンジセーフティネット」は、認知症の方が行方不明になった際に、地域住民などの協力者のスマホに捜索協力依頼の通知が届き、協力者が捜索に当たることで、早期発見による事故防止や保護の迅速化を図ることを目的としたアプリです。認知症の方の家族などがアプリを利用して捜索依頼を行い、捜索協力者はグループトーク機能や位置情報機能を活用して捜索する仕組みです。

この日の訓練では、高齢の男性が散歩に出かけたまま行方不明になった想定で、男性の情報を入力するところからスタートしました。捜索依頼のボタンを押し、行方不明になった日時や場所、服装、その時の状況、捜索してほしい範囲などを入力します。
「グレーのコート」といった行方不明時の服装などの他、あらかじめ顔写真や全身の写真を登録しておくことができるため、捜索がしやすくなっています。また、本人が行方不明になった場所だけでなく、捜索に協力している人の位置や人数をマップ上に表示し、リアルタイムで共有できるので、効率的な捜索が可能です。さらに、捜索範囲は居住する市町村だけでなく、全国まで広範囲に指定することも可能です。




顔写真と全身写真を登録できる(左)捜索者が位置情報をマップで共有(右)
顔写真と全身写真を登録できる(上)捜索者が位置情報をマップで共有(下)
捜索依頼の通知を受けた協力者は、行方不明者の服装や見失った場所などをスマホで確かめながら周辺を捜索。行方不明者に似た人を見かけた場合は、アプリに特徴や場所などの詳細な情報を投稿します。それらの情報を基に、依頼者は行方不明者本人かを早期に確認することが可能です。

スマホを確認しながら公園周辺を捜索
しばらく捜索すると、行方不明者情報の特徴と一致する男性が、公園広場の階段を上った先の見晴らしの良いベンチに座っているのを発見。アプリの情報と見比べながら「こんにちは」「お散歩中ですか?」と優しく声をかけ、「このあとはお家へ帰るのですか?」などと会話を進め、本人であるかどうかを確認します。

捜索対象者であることが確認できたら、アプリに情報を入力し、協力者に共有します。
捜索情報は、協力者が「捜索に協力します」とアプリ上で同意した場合にのみ閲覧できる仕組みになっており、捜索終了後は閲覧が自動的に制限されます。

捜索力を高め、安心につながるツール。協力者の登録を増やしていきたい
訓練を主催した宇都宮市 保健福祉部 高齢福祉課の小沢主任主事は、認知症の人やその家族が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、正しい知識の周知啓発や、認知症の人や家族を支援できる人材の育成などに取り組んでいると説明。「オレンジセーフティネット」を導入した理由については、「本人の写真や特徴を確認でき、捜索力を高められるだけでなく、捜索依頼数や協力者数、依頼発信から完了までに要した時間などを確認できるため、効果を把握しやすい点が導入の決め手になった。捜索依頼が協力者の方に速やかに届き、実際に保護に至った事案もあり、捜索力を高めるよいツールだと思っている」と話しました。


訓練に参加したソフトバンク CSR本部 CSR企画2部 課長の大田圭一は、「オレンジセーフティネット」の取り組みについて「認知症の方とそのご家族が安心して暮らせる社会を、ICTの活用で実現したいという思いから始まった。本来は使われないことが一番良いが、このアプリを使って捜索が早く終わったという声をいただくところに手応えを感じている。2025年にはアプリの機能強化と使いやすさの改善を行った。誰もが安心して暮らせる社会の実現にはICTの活用が必要だ。これから認知症の方が増える中、『オレンジセーフティネット』をさらに広げていきたい」と思いを語りました。
認知症カフェで当事者の家族が操作体験
三重県四日市市にある認知症カフェ「メモリーカフェ “日永”(ひなが)」で、2025年11月、「オレンジセーフティネット」の体験会が行われました。認知症カフェとは、認知症の人やその家族、地域住民、介護や福祉の専門家などが気軽に集える場所です。「認知症カフェ」という名称に限らず、「オレンジカフェ」などさまざまな名前で、全国で8,000カ所以上運営されています。

「メモリーカフェ “日永”」は、認知症の早期診断後のつながりをつくるため、認知症支援団体のNPO法人 四日市Dサポートが、三重県下で最も人口が多い三泗(さんし)区域の連携型認知症疾患医療センター指定医療機関である医療法人社団 三原クリニックと連携して運営する認知症カフェです。民間企業などとも連携して「もの忘れ大学」という名称で認知症に関する学びができるミニ講義が開催されています。
ソフトバンクは「メモリーカフェ “日永”」と5年前から連携しており、コロナ禍でカフェがオンライン開催となった際にはタブレット端末の貸し出しを行うなどのサポートをしています。
今回の「もの忘れ大学」では、「オレンジセーフティネット」を当事者のご家族に体験していただき、使い勝手などについての意見を頂くことを目的とした操作体験会を実施しました。認知症の方とそのご家族14組が実際にアプリを使い、行方不明が発生した想定で、日時や場所、行方不明者の服装や特徴、その時の状況、捜索範囲などを指定して捜索依頼を出す流れを体験し、意見を寄せました。


体験後のアンケートでは、当事者から「早く迎えに来てもらえたら安心する」といった声が寄せられました。また、ご家族からは「便利で安心できるアプリだと思う」というコメントの他、「認知症の家族以外の方にもアプリを入れてほしい」といった声がありました。
主催者の四日市Dサポートの三原貴照氏は「認知症になっても大丈夫な地域づくり、高齢化社会の街づくりに寄与する取り組みの最前線を進めていきたい」と、「メモリーカフェ“日永”」の目的に触れました。アプリについては「当事者の目線で、体験してみて意見を聞いて改良していくことが大切。企業からの企画提案も受け入れながら、認知症フレンドリー社会のモデルを作っていきたい」と語りました。
ソフトバンクは、認知症の人が主体的に企業や社会と関わり、当事者の真のニーズをとらえた製品・サービスの開発を行う「当事者参画型開発」の普及と、その持続的な仕組みの実現に向けた取り組みを推進する「オレンジイノベーション・プロジェクト」に実践企業として参画しています。今後も、誰もが自分らしく暮らし続けられる共生社会の実現を推進していきます。
(掲載日:2026年2月17日)
文:ソフトバンクニュース編集部

認知症のある方が安心して暮らせるよう、地域の住民がスマートフォンを活用して協力し、行方不明者の早期発見を支援する共助型アプリ「オレンジセーフティネット」を自治体向けに提供しています。




