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今や、誰もが気をつけたいスマホを通じた詐欺被害。高齢者だけでなく若年層も含めたあらゆる世代が被害者になっているといいます。そうしたスマホを通じた詐欺被害を水際で防ぐために、ソフトバンクが開発した「SNS型詐欺被害仮想体験bot(AI自動応答ツール)」と「安心スマホ検定」。2つのツールの開発に携わった担当者に、 お笑いコンビ「ぺこぱ」の松陰寺太勇さんがお話を伺いながら、実際にツールを体験してもらいました。
PROFILE
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松陰寺 太勇
TAIYU SHOINJIお笑い芸人
1983年山口県生まれ。2008年、お笑いコンビ「ぺこぱ」を結成。M-1グランプリ2019で初の決勝進出を果たし3位に輝く。「時を戻そう」などの印象的なフレーズが大きな話題を呼び、一躍人気者に。テレビ、ネット、ラジオとさまざまな媒体で活躍中。
ソフトバンク株式会社 CSR本部 中四国・九州・沖縄地域CSR部
乃村 美奈(のむら・みな)
ソフトバンク株式会社 コミュニケーション本部 Y!mobileコミュニケーション部
萩原 竜太(はぎわら・りょうた)
若い世代も被害に遭う? スマホを用いた詐欺の実態とは

乃村さんと萩原さんのお2人は、ソフトバンクで詐欺被害防止の取り組みをされていると聞きました。最近のスマホ詐欺の実態ってどんな感じなんですか?
リアルで対面することなく、スマホで詐欺が完結してしまうというのが大きな特徴ですね。詐欺師はさまざまな手口で接触し、SNSやメッセージアプリでのやりとりを通じて信頼関係を築いた後に、オンラインで巧みに投資などに誘導してお金を騙(だま)し取ります。
そんな簡単に騙されちゃうものなんですか? 正直、僕はめちゃくちゃ疑り深いんで、絶対に騙されない自信がありますね。
そう思うでしょう? でも実際に詐欺被害に遭った人を対象にしたアンケートによると、松陰寺さんのように「自分は絶対に大丈夫」と思っていた人がほとんどなんです。加えて本人は騙されたという実感がないまま騙されているのが怖いところです。
それくらい手口が巧妙ということか...。やっぱりターゲットにされるのは高齢者が多いんですか?
いえ、実は被害者の年齢層は幅広く、30〜50代が占める割合も大きくなっています。比較的ネットリテラシーが高いと思われる年齢層も被害に遭っているんですよ。特に投資詐欺やロマンス詐欺が増加傾向にある例ですが、将来の金銭的不安や寂しさにつけこまれ、時間をかけてマインドコントロールされてしまうわけです。いずれのケースも本人に騙されている自覚がないことが多いので、発覚も遅れてしまいます。

ロマンス詐欺については、以前出演したとある番組でも取り上げたことがあるんですが、人の寂しさにつけ込むなんて本当にひどいですよ。僕も漫才で「い〜や、出会いの形は人それぞれ!」なんて言ってますけど、さすがにダメな出会いもあるぞと。
そうした詐欺被害を世の中から少しでも減らそうと、ソフトバンクが開発したのが「SNS型詐欺被害仮想体験bot」と「安心スマホ検定」です。それぞれ私と萩原が開発に携わりました。実際に松陰寺さんに体験していただいた方が、話が早そうですね。やってみましょうか。
実際に体験! 松陰寺太勇vs正義の詐欺防止bot

じゃあ、まずは 「SNS型詐欺被害仮想体験bot」から。これは乃村さんが開発に携わったんですよね? どんなツールなんですか?
生成AIを活用して、架空の犯人がどんなふうに近づいてきて誘導してくるのかをLINE上で疑似体験できるツールです。いわば「詐欺防止bot」みたいなものですね。香川県警察からの相談が開発のきっかけで、急増するSNS型投資・ロマンス詐欺被害を未然に防ぐことを目的に、県警とソフトバンクが連携して開発しました。現在は詐欺防止のイベントなどで香川県だけではなく全国で利用いただいています。

香川県で行われた詐欺被害防止イベントの様子
botにはこれまでイマイチいいイメージがなかったのですが、これは正義のbotというわけですね! いいじゃないですか、正義bot。早速やってみましょう。
わかりました。投資詐欺とロマンス詐欺、どっちのバージョンを体験してみますか?
ここでロマンス詐欺を選ぶと、寂しい人みたいに思われちゃいそうだから、投資詐欺の方にしようかな。 リアルに投資には興味がありますしね。僕は100%騙されないと思いますよ。僕対AIの戦い、負けてたまるか!

体験開始っと。なになに、「あなたにとって非常に有利な投資機会をお話したい」ときましたね。なんか、横から別の人も話に入ってきたぞ。
これはおとりですね。実際の被害でもこうしたおとりを利用して、信ぴょう性を高めようとするわけです。
なるほど、リアルだ。ここからは自由にメッセージを送っていいんですね。しばらく普通にやり取りしてみよう。

どうやら、僕にスタートアップ企業への投資プランを紹介したいみたいですね。でも、具体的な銘柄とかを聞こうとすると、うまくはぐらかしてくる。怪しい...。ちょっと挑戦的なメッセージを送ってみようかな。「そんなにもうかるなら自分でやってみては?」「興味はありますが、いまいち信用できません。僕を口説き落としてください」っと。

「あなたの不安は理解できます」、なんか寄り添ったメッセージを返してきた! 具体的なデータとか運用実績の資料はあるのかな?

「はい、もちろんです」だって? おお、ちゃんと実績の資料があるのか!なるほど、アプリをダウンロードしたら資料を閲覧できるわけね。まあ、一度資料を見てみるくらいならいいか... ダウンロードっと。

あれ...?
松陰寺さん、騙されちゃってます。
「相手は詐欺師でした。クリックによりお金とスマホのあらゆるデータが盗まれました」だと...!? えっ、これで情報を抜き取られちゃうんですか?
必ずしもというわけではないですが、抜き取られることもある、ということですね。
普通に負けてるやん、俺。「自分は騙されないぞ」と常に優位に立っていたつもりだったんですけどね。「具体的な実績とか説得力あるデータを出せるもんなら出してみろ」と上から攻めてたつもりが、いつの間にか下から三角絞めを決められていた気分です。本物じゃなくてよかった...。正義のbotで。

「普通に騙されました!」と衝撃を受ける松陰寺さん
自分は大丈夫と思っている人こそ受けてほしい!
普通に騙されちゃいましたけど、気を取り直していきましょう。萩原さんが開発に携わった「安心スマホ検定」というのは?
先ほども話が出ましたが、高齢者だけではなく全年代が詐欺被害に遭っていることは通信事業者として見過ごせない喫緊の課題だな、と。そこで、ワイモバイルで以前から実施していた親子向けの「全国統一スマホデビュー検定」というものを参考に、警察庁の協力を得ながらクイズ形式の検定を作りました。
問題は全12問。直近で発生している詐欺事例を具体的に取り上げながら、事前対策と起こってしまった場合の対応方法も学べるのが特徴です。無料で受検できますし、ソフトバンクユーザーだけではなく誰でも使えます。
クイズ形式なのはいいですね! 手軽に受けられるし。百聞は一見にしかずということで、ちょっと本気で解いてみます。

真剣な面持ちで問題に取り組む松陰寺さん
気になる問題がいくつかありますね。例えばこれ、インターネット上で知り合った異性とのやり取りに関する問題。

過去の僕だったら「会いに行くための旅費を送ってほしい」なんて言われたら、つい振り込んじゃうかもな〜。昔は本当に寂しかったんで...。でも、今の僕なら大丈夫。 Cの「会ったことがない人からの話なので断る」で。
正解です、松陰寺さん。
よし! 次は特殊詐欺に関する問題か。これはちょっと迷うな...。

なんとなくIP電話番号が多そうな気がする。これもCで!
残念、不正解です。答えはAの国際電話番号。特殊詐欺の犯人は「+1」「+44」などから始まる国際電話番号を使用することが多いんです。
なに〜、普通に間違えてしまった! 思ってたよりもちゃんと難しいな。
実践的な知識をつけてほしいと思い、実際に発生した事例をもとに作っています。
全問解き終わりました! 結果は12問中9問正解...! 全問正解する気満々だったのに、意外と間違えてしまいましたね。シンプルに問題文を読み間違えて不正解になってしまった問題もありましたが、特殊詐欺に関する問題なんかは本当に知らなかった。間違えた問題は後から解説を詳しく見直せるのもいいですね。

あなたは何問正解できる? 松陰寺さんが体験された「安心スマホ検定」
警察庁の協力を得て制作した「安心スマホ検定」。急増するスマホ使用時の詐欺とその対策に関する正しい知識を無料で学べます。
ありがとうございます。操作性や理解度向上のため、公開前に一部のユーザーにテスト受検をしてもらって、いろいろとご意見をいただいたんです。その時に「知らない詐欺手口もあって勉強になった」というコメントを多数いただいたのはうれしかったですね。
普通にめちゃくちゃ勉強になりました。さっきの詐欺防止botもそうですけど、まさに僕のように「絶対に自分は騙されないぞ」と自信を持っている人こそ、受けてみた方がいいですね。自分だけは大丈夫と思っている人が実は一番危ない。それが身に染みてわかりました。
「時を戻そう」は詐欺には通用しない

やっぱり、ソフトバンクがこういったツールを開発・提供しているのって、通信事業者としての責任を感じているからですか?
そうですね。スマホは本来私たちの生活をとても便利に、快適にしてくれるもの。だけど、それと同時に巧妙な犯罪に使われたりもする。それを可能な限り、水際でブロックするのが、私たち通信事業者としての責務だと思っています。
スマホを活用して多くの人に幸せになってもらうことが私たちの理想なんですけど、残念ながら一部で悪用されている現状がありますし、実際にその被害に遭われる方も多い。そういった現状を少しでも変えたいんです。だからこそ、「安心スマホ検定」はソフトバンクやワイモバイルユーザーに限らず、誰でも受検できるものにしています。
草の根的な活動も大事ですよね。警察や地域の人たちとも協力したりとか。
そうですね。私自身、このツールを開発するにあたって、机上の数字ではなく現場のリアルな課題を知ることから始めようと思いました。そのために、香川県警察のみなさんも惜しみなく時間を取ってくださいました。社内外の組織を超えて多くの方々にご協力いただき、感謝の気持ちでいっぱいです。一人では到底作ることができませんでした。
「安心スマホ検定」は警視庁戸塚警察署と共同で高齢者向けのスマホセミナーを実施するなど、より警察と連携を深めながら啓発活動を行っていきたいと考えています。全国の警察とも連携を取りながら、各地でイベントなどもやっていきたいですね。リアルなコミュニケーションを通した啓発活動も、本当に大事だと思いますので。そうした活動を通じて、ワイモバイルやソフトバンクのユーザーだけではなく、全国のスマホユーザーの皆さんに使ってもらえるサービスになるといいな、と。

警視庁 戸塚警察署で行われた詐欺防止イベントの様子
めっちゃいいですね。個人的には、年に1回「安心スマホ検定」を受けないとスマホにロックがかかっちゃうとか、啓発のためには、それくらい極端なことをやってもいいじゃんと思いました。
だいぶ極端ですけど、アイデアありがとうございます(笑)詐欺被害はお金を騙し取られるという金銭的な被害だけではなく「騙された」という精神的な被害も大きいものです。誰もがそんな被害に遭わない、傷つかない世の中を実現できたらいいな、と思います。
やっぱり、スマホは便利で楽しいものであってほしいですからね。それにそぐわないようなことは少しでもなくしていきたいですし、通信を担う会社として「誰も傷つかない」社会の実現に少しでも貢献できたらいいなと。
僕も人前に立つ仕事をしている者として、スマホ詐欺の実態についてもっと伝えていけたらと思いました。そしてお2人にはぜひ、今日の僕みたいに「自分は大丈夫」と思っている人たちを、botや検定でどんどん負かしてもらいたい(笑)騙されてからでは遅いですからね。「時を戻そう」は詐欺には通用しませんから!

文・編集:X PROJECT編集チーム
写真:山﨑悠次