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国内最大級の野外ロックフェスで「5Gプレサービス」を提供! ソフトバンク モバイルネットワーク本部 担当者インタビュー

この夏、国内最大級の野外ロック・フェスティバル「FUJI ROCK FESTIVAL '19」(以下「フジロック」)の会場で、次世代のモバイル通信技術「5G」を活用した、新しいエンターテインメントが体験できる「5Gプレサービス」が提供されました。

音楽フェスでは日本初となる今回のプレサービスでは、移動通信のネットワーク構築を担うモバイルネットワーク本部の中でも、5Gに特化した部門である5G戦略課が担当。エンジニアとして、プレサービスのネットワーク構築に携わった香川成矢に、5Gの取り組みや、自身がソフトバンクで描くキャリアについて話を聞きました。

目次

5Gはスマートフォンだけでなく産業界の新しい基盤となる技術

香川さんが所属する5G戦略課について教えてください。

5G戦略課は、ビジネスや社会課題へのソリューションとして、5Gをはじめとした新しいテクノロジー全般の活用について検討と展開を考える部署で、2020年の商用サービス開始に向けて本年度に発足しました。これからのビジネスや社会課題へのソリューションを考えるとき、5Gはインフラの中心になる基盤技術なので、単に応用技術を考えるだけでなく、その先のビジネスプランや事業化も考えています。

主に法人企業向けに5Gの技術活用を提案されているということですか。

5Gは、皆さんが使うスマートフォンへの利用だけでなく、自動車、ロボット、IoTといった産業界のニーズ、つまりB2BやB2B2Xの技術としてもとても有望視されています。それらの産業ニーズ全般に応えるため、法人営業部門と共に、企業ごとの課題やニーズに対して、5Gがどのように活用できるのか、5Gを使った新しいソリューションを設計し、提案しています。

一方で、もちろんB2B向けだけではなくコンシューマ向け、つまりB2Cのプロモーションやサービスも検討しています。5G時代になれば、高画質な映像がリアルタイムに配信できるなど、コンシューマ向けのサービスとしても期待しています。

しかし、一般消費者からは今の4Gの通信速度が上がるといっても具体的なサービスやメリットが見えにくいのも事実です。今回のフジロックでのプレサービスは、一般のお客さまにも5Gを意識してもらえる良い機会になったと思っています。

5Gでつながる! 苗場と六本木のファンがVR空間でハイタッチ!

多くのお客さまが来場したソフトバンクブースではVR体験が可能

今回のプレサービスではどのようなことを行ったのでしょうか。

一般のお客さまに体感いただける取り組みとして二つありました。

一つは5Gの大容量・高速通信を利用したライブ配信映像のVR視聴体験です。苗場会場内のソフトバンクブースに用意したVRヘッドセットを装着することで、CGで再現したVR空間にアバターとなって入場でき、5Gネットワークを通してVR空間のスクリーンに映し出されるライブ映像を視聴できるなど、実際のステージを疑似体験できるというものです。さらに、「テレビ朝日・六本木ヒルズ 夏祭り SUMMER STATION」の特設会場からも光回線ではありますが同じVR空間に入場してライブ映像を体験できるようにしました。これまでのVR体験は、同じ場所からVR空間に入った人がアバターを通して会話を楽しむことができましたが、今回、苗場と六本木といった異なる場所にいる利用者が、アバター同士でハイタッチをするなどのコミュニケーションを取ることも可能となり、体験された皆さんは盛り上がっていましたね。

手に持ったコントローラーでアバターを操作

もう一つは、各会場に設置した8台のカメラで撮影した会場の模様を5Gネットワークを通して、アプリに配信するサービスです。フジロックの会場はステージが多く、分散しているのですが、次に移動するライブ会場の様子や混雑状況が事前にアプリでチェックできるようにしました。

会場内に8つのカメラを設置

各会場に設置した映像をソフトバンクブース横のモニターにも投影

構成図

【現地レポート】フジロックで5Gを使った“未来のフェス”を体験してきた

新潟県・苗場スキー場で行われる夏フェス「フジロック」では、ソフトバンクによる次世代通信技術5Gのプレサービスを利用した未来のフェス体験ができるんです。 一体どんなものなのか、現地よりレポートします!

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音楽フェスでの「5Gプレサービス」は日本初とのことで、苦労もあったのではないでしょうか。

フジロックでのプレサービス実施にあたって、まずは総務省から無線局開設の免許をいただく必要がありました。昨年(2018年)12月から検証を開始し、予備免許のための申請を2月に行い、申請したとおりに現地で構成できているかなどの検査に合格して、初めて本免許が与えられます。

そのリードタイムを考えながら作業を行うわけですが、スキー場としても有名な苗場は、冬は豪雪のため会場には入れず、現地調査は約2カ月前から、実際にスタッフやエンジニアが現地に入りネットワークの工事に入れたのは1週間前。最終的なコンテンツを含めた現場での調整はイベント開催前の2日間に集中し、お客さまに提供できる品質になるまで時間との勝負でした。

ハード面でもソフトの面でも、東京で何度も検証を繰り返し現場で設置したものの、現場でないと分からないこと、現場に行ったらうまくいかないことや、イベント直前に電源に問題が発生し思ったような性能が出ないなど、さまざまなトラブルもありました。そんな中でもチーム一丸となって対策を行い、無事イベントが終わってホッとしています。

フジロックでは例年イベント対策を実施していますし、昨年からソフトバンクがYouTube配信をサポートしていたこともあり、主催者との連携が取りやすく助かりました。社内外の協力体制の中、これまでのイベント対策での経験も生かせたと思います。

ネットワーク構築の特長を教えてください。

5Gの商用サービス前ということで、今回現地では実験局の3.7GHz帯を利用するとともに、5Gの設備と併用し4Gの設備も利用する「ノンスタンドアロン(NSA)」方式でネットワークを構築しています。既存の4Gエリアがある中に、プレサービス用の4Gのエリア構築が必要になるため、既存の4Gとの電波干渉が起こらないように設計しないといけません。
フジロックを楽しみに来ているお客さまが持っているスマートフォンの通信品質を保ちつつ、今回のプレサービスではVRやアプリなどのコンテンツを提供するため、ソフトバンクブースやカメラをカバーできるような設計と品質が求められました。5Gに関するエリア設計ノウハウも少ない中、試行錯誤の連続でしたね。

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5G用アンテナを搭載した移動基地局車。エリアをカバーするため高い位置にあるのが4G用のアンテナ

黒いステッカーが目印の5G用アンテナ。
5Gはソフトバンクブースやカメラに向けて電波を飛ばす必要があるため低い位置に設置

5Gで日本中どこでも快適な高速・大容量通信が可能な未来へ

なぜ、フジロックの会場を5Gプレサービスに選んだのでしょうか。

5Gを利用することでどんなメリットがあるのか、一般のお客さまには、なかなか分かりづらいものですが、ソフトバンクでは、お客さまへの5G訴求ポイントとして「ライフスタイルをアップデートしたい」という思いがあります。高画質の映像が通信速度を気にせず使えるという5Gの利点を実感いただくためにどうすればよいのか。その答えとして、「スポーツ」や「音楽」などの「エンターテインメント」が伝わりやすいのではないかと考えました。

大勢の人が集まるスポーツ観戦や音楽フェスなどは、大容量通信が可能な5Gと相性が良いと言えます。 プレサービスという観点では、5G時代の新しいコミュニケーションを提案する場として、毎年約12万人のお客さまが訪れるフジロックであれば、より多くの方が5Gをイメージし、そのメリットを体感いただけると思いました。また、VRについては、3月に福岡 ヤフオク!ドームで実証実験を実施し、大変好評だったので5Gとの相性の良さは確認済みでした。ヤフオク!ドームではスポーツ×5Gの実証実験をしたわけですが、フジロックでは音楽×5Gのプレサービスを提供し、改めて5Gとエンターテインメントの相性の良さを認識できました。8月に行われる、「バスケットボール日本代表国際試合 International Basketball Games 2019」でも5Gプレサービスを提供する予定です。

さらに、5Gはコミュニケーションだけではなく産業基盤としても期待されています。そういった意味で混雑状況の配信のように何かの課題を解決する手段としての5Gを、お客さまに提供できる場としても最適だったと考えています。

今回のプレサービスで新しい知見は得られましたか。

報道陣向けの説明会を実施

技術的に、5Gは高精細な映像や音声を遅延なく伝送できる半面、高周波数帯のため、電波の直進性が高く減衰しやすい特性があり、建物などの遮蔽物があると電波が届きにくくなります。ルーラルエリアや広大な敷地を利用した屋外イベントの場合、そもそもの通信環境をどのように整えるかという問題がありますが、山間部のように高低差があるエリア、木が多いエリアでの特性、さらに多数の来場客が移動している。この環境下で5Gの電波がどのような影響を与えたのか、基地局のアンテナの最適な高さは何メートルなのかなど、データ収集するには格好の場所でした。

また、山間部で光ファイバーが来ていなくても、5Gの圏内ならケーブルの敷設工事や投資が必要ありません。コスト的にもオペレーション的にも、これまでよりも容易になり、フジロックのような自然の中で行われるスポットイベントでのニーズに対しても、柔軟に対応することができます。

このような技術的な実験データや知見が得られたのは大きなメリットでしたが、今後全国に5Gが広がれば、場所にとらわれることなく遠隔地に居ながらでも現場同様の体験ができるという、VRが持つ新しいコミュニケーションツールとしての可能性が見えたことも大きな発見でした。

5Gプレサービスでの経験を生かして、今後はどんなことに取り組みたいですか。

5Gは、単にスマートフォンの通信速度が速くなるための技術ではありません。高速大容量通信も大きな特長ですが、低遅延、多接続という特徴は、挑戦できる範囲が広く、新しいデバイスを生み、新しい産業基盤となるものです。間違いなく、これからの未来に必要不可欠になるでしょう。

コンシューマ向け、法人向けを問わず、さまざまな課題解決にあたり、国内外の多くの先進的な企業と連携し、常に新しいテクノロジーの導入やサービス構築にチャレンジしてきたソフトバンクで、5Gのような先端技術を基盤としたサービスのローンチに、積極的に携わっていきたいと思っています。

(掲載日:2019年8月16日)
文:中尾真二(フリーライター)
写真:栗原大輔(Roaster)
編集:大崎安芸路(Roaster)、尾畑舞(Roaster)

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