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合言葉は「付けない」「増やさない」「やっつける」。知っておきたい食中毒予防12のポイント

合言葉は「付けない」「増やさない」「やっつける」。知っておきたい食中毒予防12のポイント

1年中発生する食中毒。中でも高温多湿な日本の梅雨から夏にかけては、細菌性食中毒が発生しやすい季節です。他のカラッと涼しい季節と同じ感覚で食材を扱っていると、食中毒になる危険性が高まってしまいます。そんなことはなんとしても回避したい! そこで、この時期におさえておきたい食中毒予防のポイントを、食品科学を研究する東京農業大学教授の小西良子先生に伺いました。

目次

聞いたのは、食中毒予防の研究者

小西良子先生

東京農業大学 応用生物科学部栄養科学科 教授
小西 良子(こにし・よしこ)先生

麻布獣医科大学獣医学部獣医学科卒業後、東京大学大学院農学系研究科で農学博士を取得。その後、約30年間にわたり、厚生労働省の国立予防衛生研究所、国立感染症研究所および国立医薬品食品衛生研究所で、食品衛生法に関する規格基準策定の科学的根拠に資する研究などを手掛ける。2020年から現職。

Webサイト:東京農業大学 小西良子

  • 取材はオンラインで行いました。

蒸し暑い時期に起こりやすい細菌性食中毒、その原因と予防の原則とは?

蒸し暑い時期に起こりやすい細菌性食中毒、その原因と予防の原則とは?

梅雨時になると食中毒が増えると言われますが、なぜなのでしょうか?

小西先生

「人間は、適度な温度と湿度を好みますよね。細菌も同じで、彼らにとっても快適な温度や湿度があります。それが、多くの細菌にとっては気温が20℃を超える梅雨時期から早秋にかけての季節です。その環境になると、細菌は仲間を増やし始めて、あっという間に増えるんです」

どんな種類の細菌が食中毒の原因になっているんですか?

小西先生

「細菌性の食中毒は大きく分けて、少量の菌で食中毒を起こすタイプと、たくさん菌が増えることで食中毒を起こすタイプがあります。夏場は菌にとって快適な気温や湿度の日が多くなるので、たくさん仲間を増やして食中毒を起こす菌(サルモネラ属菌)や、菌が増えた後に毒素を作るタイプの菌(黄色ブドウ球菌)による食中毒が増えると言えますね。これらはある程度大多数にならないと食中毒を起こしません。

昔はそういう菌が多かったのですが、最近は食中毒の原因菌で目立つものが変わってきています。今、原因菌の第1位は、カンピロバクターです」

カンピロバクター! 聞いたことはありますが、何に多く付いている菌ですか?

小西先生

「有名なのは、鶏肉です。買ってきた鶏肉を調べると、ほぼ検出されるというくらい多いです。それにカンピロバクターは、少量でも食中毒を起こすタイプの菌ですから注意が必要です。最近は鳥刺しなど、お肉を生で食べる人も多いでしょう。それにお総菜などで人気の鶏肉の唐揚げは、中まで火がしっかり通っているか確認せずに食べることがほとんどです。そういうことがカンピロバクターによる食中毒をはやらせている一因と言えます」

まだある! 気を付けるべき食中毒を起こす細菌

ウェルシュ菌:肉や魚、野菜の土などについている菌。芽胞(悪い環境に置かれた細菌が形成する耐久性の高い細胞構造)を形成し、熱に強いことが特徴で、加熱中はじっと耐え、常温になると一気に増殖する。カレーなどの煮込み料理を常温で冷ますなどすると増えやすいので注意。

セレウス菌:ウェルシュ菌と同じく芽胞を形成し、熱に耐性があり、熱に強い毒素を出す。お米や麺類など穀物を好むので、チャーハンやパスタなどを作り置く際は、要注意。

食中毒を起こす菌が付着している食品は、見た目やニオイなどの特徴があるのでしょうか?

小西先生

「食中毒菌がいるからといってニオイや見た目は特に変わらないんです。食べ物が傷んでくると、酸っぱいニオイがしたり糸を引いたりすることがありますが、あれは腐敗菌によるものです。通常、そういうものを食べようとする人はいないと思いますが、万一、食べたからといって、実は食中毒と比較するとそれほどひどい症状は出ないんです。逆に食中毒菌による汚染はそうした見た目やニオイなどに変化がない分、気を付ける必要があります。大事なことは、肉・魚・野菜には食中毒菌が付いているものだと思って扱うことです」

では、細菌性食中毒の予防方法を教えてください。

小西先生

「“食中毒予防の三原則”が基本です」

細菌性食中毒予防の三原則

細菌を 具体的には食材を
付けない 洗う(付着した細菌を水洗いする)
分ける(肉や魚、野菜でも根菜類と生で食べる葉物などが接触しないように分けて保存する)
増やさない 低温で保存する(料理の粗熱を取って冷蔵保存する)
やっつける 加熱処理する(中心温度75℃以上で1分以上加熱し細菌を死滅させる)

小西先生

「“付けない”は、例えば野菜には土やいろいろな菌が付着しているので、よく水洗いするということです。また、ジャガイモなど土のついた根菜類とレタスなど生で食べる野菜は、同じ冷蔵庫の野菜室でもそれぞれ違う袋に入れて、接触しないよう分けておきます。

“増やさない”は、温度をすぐに下げて、菌を繁殖させないことです。ウェルシュ菌やセレウス菌など、熱に強く、食べごろの温度で増殖する菌もいますから、作り置きの料理はすぐに粗熱を取って冷まし、小分けして冷蔵庫か冷凍庫で保存します。

“やっつける”は、煮たり焼いたりすることで殺菌することを言います。多くの細菌は中心温度75℃以上で1分以上加熱をすれば死滅しますから、しっかり加熱しましょう」

冬の代表“ノロウイルス”の食中毒は、夏にも発生する!

小西先生によると、夏の食中毒の原因第2位はノロウイルス。ノロウイルスといえばあさりや牡蠣などの二枚貝から感染する“冬場の食中毒”という印象ですが、実は夏場にも存在しているのです。ノロウイルスは細菌とは異なり、付着した食べ物の中で増えることはありませんが、食品や感染者の嘔吐物などを通して人の体内に入り、腸管で増殖することで食中毒症状を引き起こします。冬場は乾燥しているため、ノロウイルスが空気中に舞いやすく、感染者が増えますが、夏場でも食品に付着していたものが体内に入ったり、感染者から感染したら症状が出ます。

冬の代表“ノロウイルス”の食中毒は、夏にも発生する!

ウイルス性の食中毒を予防するには、四原則(持ち込まない、広げない、付けない、やっつける)の徹底が大切です。調理する人の健康管理(持ち込まない)、食品や調理器具を介して、またはヒトからヒトへウイルスを広げない、手洗いや調理器具の洗浄・消毒(付けない)、85℃~90℃で90秒加熱(やっつける)ことが基本です。

調理や保存するときのお役立ちテクニック

調理や保存するときのお役立ちテクニック

「食中毒予防の三原則」を踏まえて、調理する際にはどんなことに気を付けたらよいですか?

小西先生

「まな板は生肉・生魚用と野菜や調理済み食品用に分けた方がいいですね。まな板が1枚しかない場合は、裏と表で使い分けるのでも構いません。できれば、包丁も使い分けたいところです。

野菜を洗うときや切るときは、周りに肉類を置かない方がいいです。生で食べる野菜と肉類が接触して、細菌が付着することもあり得ますから。

コツとしては、最初に野菜やそのまま生で食べるものを切ることです。サラダ用などの野菜は洗って、切って、そのまま冷蔵庫へ入れておきましょう。その次に肉や魚を扱います。また、調理したものは、温かいうちに食べてください」

食品や食材の保存についてはどうでしょうか?

小西先生

「作り置きは、できるだけ早く粗熱を取って、小分けにし、冷蔵庫や冷凍庫に入れます。ウェルシュ菌が繁殖しやすいカレーなどの煮込み料理は、鍋ごと氷水や流水につけて、鍋の中をかき混ぜ酸素にたくさん触れさせると、5分もすれば粗熱が取れるので、簡単ですしおすすめです。残った食べ物は速やかに冷蔵庫に入れ、再加熱をして早めに食べましょう。

また、冷凍庫で保存していた肉などを常温に出して解凍してはいけません。10℃以下の冷蔵庫内で一晩かけて解凍してください。菌は寒いと死ぬわけではなく、おとなしくしているだけなので、活動できる温度になればすぐ増えようとしてしまいます」

冷蔵庫で保存するときのコツはありますか?

小西先生

「冷蔵庫は10℃以下を保つようにできていますが、気温の高い夏場はドアの開け閉めで庫内の温度変化が起きやすいかもしれません。ですから設定は強にしておくといいと思います。

夏休みで、お子さんが冷蔵庫のドアを開け閉めすることも増えるでしょうから、100円均一ショップなどで売っている温度計をドアポケットに入れておいて、『15℃になっちゃったよ!』とお子さんに温度を数字で見せれば、ドアの開閉の回数を減らすことに協力してくれるかもしれません」

温度計を置くのは名案ですね! 庫内の温度がはっきりわかると安心です。

小西先生

「あとは冷蔵庫への食材の詰め方も少し工夫するといいですよ。冷蔵庫内は、冷気が上から下に向けて落ちるようにできています。その冷気が全体に流れないくらい、ぎっしり詰め込むことはやめた方がいいです。冷気の通り道を考えて、同じ形のプラスチック容器を積み重ね、あえて隙間を直線的に空けるようにするなど、冷気の循環を意識して置きましょう。そうすると冷蔵効率がよくなり、電気代も安くなるかもしれません。

また、冷蔵庫内を定期的にアルコールなどで拭くことも、細菌性の食中毒予防になります。忘れがちなのは、ドアの縁のゴムパッキン。調味料が飛んだものやおかずの汁などが付いていることが多く、菌の温床になりそうな場所ですから、アルコール消毒を忘れずにしましょう」

調理や保存するときのお役立ちテクニック

節電状況を確認できる「エコ電気アプリ」

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設定温度を保って食材の痛みを遅らせるために冷蔵庫の開け閉めを減らすことは、節電にもつながります。
節電に役に立つのが「エコ電気アプリ」。前日までの電気代の確認や、1カ月分の電気代を予測してくれるほか、目標金額の設定ができて達成見込みもひと目でわかります。

また、電力需給のひっ迫が予想されるなど、節電が必要とされる際に行われる「節電チャレンジ」に参加して節電に成功するとポイントがもらえ、100ポイント貯まると100円分のPayPayポイントに交換できるといううれしい特典も!

夏場はお弁当も心配なのですが、食中毒予防のテクニックはありますか?

小西先生

「基本的に、おかずやご飯の粗熱を取ってから、お弁当箱に入れることです。また、最近のお弁当用の冷凍食品には、自然解凍でもよいという商品もありますが、よく表示を読んで、加熱が必要とあるものは必ず電子レンジなどで加熱し、冷ましてから入れましょう。

あとは保冷剤と保冷バッグを使って、細菌が繁殖しないよう20℃以下にしておくと心配を減らせます」

昔から言われる梅干しやレモン汁には、食中毒予防効果はあるのでしょうか?

小西先生

「pHが3.0以下になると菌は生えにくくなりますから、梅干しやレモン汁には、一定の抗菌作用があると言えますね。梅干しは1個をそのまま入れるよりも、ほぐして数カ所に分散させて入れた方が効果が高くなります。お弁当箱に入れておく市販の抗菌シートを使うのもおすすめです」

Yahoo!ショッピングで食中毒予防に役立つキッチングッズを探そう

まな板や包丁などの調理器具や、食品保存容器、除菌グッズなど、食中毒予防に役立てられるキッチングッズがたくさんそろっています。

食品の調理・保存7つのポイント

  1. まな板や包丁は、生肉・生魚用と野菜や調理済み食品用に分ける。
  2. 野菜を洗うときや切るとき、周りに肉類を置かない。
  3. 野菜や生で食べるものを一番初めに調理する。
  4. 冷蔵庫の温度は10℃以下、夏場は「強」設定に。
  5. 冷蔵庫内に食品を詰め込まず、冷気の通り道をつくる。
  6. 作り置きを保存する場合、素早く粗熱を取ったら、小分けして冷蔵庫や冷凍庫に入れる。食べ残しは速やかに冷蔵庫に入れ、食べる前に再加熱後早めに食べる。
  7. お弁当のご飯やおかずは粗熱を取ってからお弁当箱に入れる。保冷剤や保冷バッグ、抗菌効果のある梅干しやレモン汁、市販の抗菌シートの使用もおすすめ。

手指やキッチンの除菌・殺菌テクニック

手指やキッチンの除菌・殺菌テクニック

食材を扱う際、手指に付いていた菌が食材に移ることも心配です。手洗いではどんなことに注意すればよいですか?

小西先生

「調理前後で手を洗うタイミングは、次のように分けられます。調理前や調理中の手洗いは、なんとなくでしている人も多いと思いますが、このタイミングになぜ手を洗うのかを意識すると、習慣化できると思いますよ」

手を洗うタイミング 手を洗う意味
調理前 食材に手指の菌を付けないため
調理中 肉、魚、野菜に触れて手指に付いた菌を、他の食材に移さないため
調理後 盛り付け時、手指の菌を料理に付けないため
食事前 手指の菌を料理や口に入れないため

手を洗うときは、必ず石けんを使うべきでしょうか?

小西先生

「調理前や肉などを扱ったときや食事前は石けんで洗った方がいいと思いますが、石けんの香りが付いた手で盛り付けるのを嫌がる人もいますから、絶対にとは言い難いですね。ただ、菌や汚れは手指のしわに結構入っているので、石けんで洗う際には特に丁寧に洗っておきましょう」

キッチンの手拭きタオルは、家族と共用している人が多いと思いますが、先生はどうされていますか?

小西先生

「私の場合、調理するときの手拭きは、ペーパータオルを使い捨てています。洗い物などが終わった後に手を拭くときは、普通のタオルを使っています」

なるほど、それなら安心ですね。では、調理器具の除菌などについては何に注意すべきですか?

小西先生

「鍋類などの火にかけて使う調理器具は、中性洗剤で洗っていればそれほど気にしなくていいと思います。逆に、まな板や包丁、食器を洗うスポンジは、中性洗剤でよく洗ってから次亜塩素酸水や次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)で定期的に除菌しましょう。肉や魚を切ったときは、特に除菌しておきたいですね。

キッチン用のアルコールスプレーを使っても構いませんが、必ず乾いたところに振りかけてください。ぬれ布巾で拭いて、表面に水分が残っている状態でアルコールスプレーをしてもダメです。アルコールの濃度が薄まってしまい、除菌効果が落ちてしまいます。

また、ノロウイルスの場合は、アルコールが効きません。次亜塩素酸水や次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)で除菌してください」

キッチン全体の除菌については、どうでしょうか?

小西先生

「忘れがちなのは、キッチンシンクです。シンクやその周辺には、魚や肉の汁などが飛び散っている可能性があるので、常にキレイにしておきたいですね。一番手間のかからない消毒方法は、野菜のゆで汁を捨てるときにシンクのふちなどに流すことです。そのような方法で熱湯消毒するのも手ですよ。

それから、キッチンではありませんが、スマートフォンやタブレットでレシピを見ながら調理することがありますよね。スマートフォンなどの画面は静電気で覆われているので、いろいろな菌が付着していると考えられます。調理前にアルコールティッシュなどで画面を拭いておきましょう」

手指やキッチンの除菌・殺菌テクニック

大変勉強になりました! ありがとうございました。

手指やキッチンの除菌・殺菌5つのポイント

  1. 調理前、調理中、調理後、食事前には手を洗う。特に調理前、肉を扱った後、食事前には石けんを使って念入りに。
  2. まな板や包丁、食器を洗うスポンジは、中性洗剤でよく洗ってから次亜塩素酸水や次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)で定期的に除菌。
  3. アルコールスプレーは必ず乾いたところに吹きかける。
  4. シンクも汚れているので除菌する。
  5. 調理中にスマートフォンやタブレットを使う場合は、調理前にアルコールティッシュで除菌を。

スマートフォンを除菌して食中毒を予防

スマートフォンを除菌して食中毒を予防

静電気によってスマートフォンの表面に付着したさまざまな細菌は、手指に移った結果、食中毒の原因になってしまうことも。こまめに除菌して清潔に保つことが大事です。ソフトバンクやワイモバイルでは、洗えるスマホや抗菌スマホケース、抗ウイルス抗菌保護ガラス・フィルムも取り扱っているので、気になる人はチェックしてみてくださいね。

(掲載日:2022年6月30日)
文:森田香子
編集:エクスライト