お中元やお歳暮は、日頃お世話になっている方へ感謝の気持ちを込めて季節のギフトを贈る、とても素敵な文化です。しかし、最近はお中元やお歳暮を贈る人が少なくなっています。その理由のひとつに「マナーがよく分からない」という声があるのだとか……。そこで今回は、ギフトコーディネーターとして活躍する冨田いずみさんに、贈答品のマナーを教えていただきました!
ギフトコーディネーター 冨田いずみ(とみた・いずみ)さん
広告、映像および音楽制作プロダクションに従事し、コピーライター、作詞、構成、プランナー、プロデューサー業を経験しフリーに。食品・ファッション・インテリアなど多岐に渡る商品を紹介していく中で、メディアや企業・メーカー等からのギフト需要に応える機会が増え、様々な場面や人にふさわしいギフトを選び提案する「ギフトコーディネーター」としての仕事が定着。
目次
お中元、お歳暮に関する実態調査
今回「贈答品のマナー」をお伝えするにあたり、ソフトバンク社内の20代〜60代の社員約400名へお中元、お歳暮に関する実態調査を行いました。季節のご挨拶に対する現代の意識や贈りものの内容は、どのようなものなのか、調査結果を見ていきましょう。
- ※
結果は一部抜粋
お中元とお歳暮、それぞれの時期や違いは?
お中元・お歳暮の意味と時期
お中元の起源は、古代中国の三元という風習。1月=上元、7月=中元、10月=下元という三元のうちの「中元」が仏教と結びつき、日本では「先祖の霊を供養し、親族などへお供えものを配る」という習慣ができました。
お中元は、西日本と東日本で贈る時期が異なります。
- 【東日本】7月初旬~7月15日(新暦)
- 【西日本】8月初旬~8月15日(月遅れのお盆)
最近は東日本式のところが多いよう。お中元の注文が7月に集中するため、6月下旬頃から注文を受け付けるお店も増えています。
一方のお歳暮は、日本古来の習わしが起源。お正月に年神様に供える品を、年末に本家へ持っていく行事が由来です。贈る時期は一般的に12月初めから20日頃まで。
贈る時期を逸した場合は?
お中元を贈る時期を逸してしまった場合、熨斗紙の表書きを変えて贈ることができます。立秋(8月7日~8月22日頃)までは「暑中御見舞」、立秋から処暑(8月23日~9月7日頃)までは「残暑御見舞」です。
お歳暮は、関東の場合は1月7日まで、関西の場合は1月15日までに表書きを「御年賀」に変えて手配します。さらに間に合わなかった場合は、「寒中御見舞」として贈ってください。
お中元とお歳暮は、本来はカジュアルな季節のご挨拶。一度贈ったら最低でも3年は贈り続けるのがマナーと言われていますが、一度きりでも、『御礼』や『暑中御見舞』として贈ることもできますよ 。
気になる金額の相場
贈る相手との関係性にもよりますが、一般的な相場は3,000円~5,000円と言われています。最低でも3年は贈り続けるものなので、お互いに負担にならない程度を心がけたいですね。
日本人は縁起を担ぐため、昔から縁を「切る、割る、分かつ」ようなものは縁起が悪く贈りものにはタブーとされてきた品が多々あります。
有名なところで言うと、結婚祝いに刃物やもろく壊れやすい割れものを贈るのはタブー。
また、ライターや灰皿などの火器、真っ赤なものは火事を連想させるため、引っ越し祝い・新築祝いにはタブー。靴、靴下、スリッパ、マット類などの「下に扱うもの」を目上の方に贈るのもタブーとされています。
ただし、今は古いしきたりにとらわれない人が増えたため、それらの決まりもだいぶ緩和されつつあります。上質な品で相手が喜んでくれるのであれば、実用品として贈ってもいいかもしれませんね。でもそれはあくまでも、相手が縁起を気にしないことが前提です。
知っておくことで相手も喜ぶ! 贈るときのマナー
相手に喜ばれる贈りもの選びのポイントは?
意識調査でも、1番の悩みどころだった「贈りもの選び」。相手にとって不要なものを贈ってしまうのはお互いにとって悲しいことですよね。相手の好きなものや苦手なもの、家族構成やお子さんの年齢などをリサーチしておき、確実に喜ばれるギフトを選びましょう。
食品は「ちょっと贅沢」がポイント
定番のフードやドリンクは、信頼のネームバリューのあるお店を選ぶと安心です。アイスなどのチルド商品を会社に送る場合は、冷凍スペースのある冷蔵庫があるか、出勤している人がいるかどうかを事前に確認してくださいね。リモートワークで誰も出勤していないと受け取れませんから。
老舗の逸品や人気のお取り寄せグルメなど、『自分で買うにはちょっと贅沢だな』という品は誰しももらって嬉しいはずです。
冨田さんのオススメ
パティスリー銀座千疋屋 銀座プレミアムアイス&ソルベ
相手の住まいや趣味嗜好がわからないときは、ソーシャルギフトが便利!
最近、注目を集めているのがソーシャルギフト。相手の住所がわからなくてもギフトを贈ることができるサービスです。SNSで繋がっている友人に贈りものをしたいときに便利! 扱っているギフトも、ちょっとしたプチギフトから家電、旅行やエステなどの体験ギフトとさまざま。相手の好みが分からない場合は、カタログギフトという手もあります。
ソーシャルギフトはとても便利で、私もよく利用しています。特に私のお気に入りは「LINEギフト」。品物も充実していて、贈りかたも簡単。LINEでしか繋がっておらず住所は知らない……という人にも贈れるので、利用頻度は高くなっていますね。贈答は本来もっと気軽なものでした。そういった意味でも時代にフィットしたギフトと言えますね。
住所を知らなくてもギフトが贈れるLINEギフト
LINEギフトは、住所を知らなくても、LINEでつながっている友だちにギフトを贈ることができるコミュニケーションサービスです。誕生日やちょっとしたお礼などに気軽に利用してみてはいかがでしょうか?
日常使いできるライフスタイル商品もGOOD!
このご時世によく使う除菌スプレーは日用品ギフトの新定番。また、防災セットも、さまざまなブランドが出しており意外と喜ばれる商品です。ギフトとして人気の入浴剤はさまざまな種類があるので、温泉系やエステ系など、贈る相手によって選ぶといいそうです。
冨田さんのオススメ
配送にも心くばりを。知っておくと便利な渡すときのマナー
紙袋のまま渡すのはNG
お中元、お歳暮は配送することがほとんどですが、近所に住む親戚や取引先の方に直接会って手渡しする機会もあるはず。そんなとき、ついやってしまいがちなのが「会ってすぐ紙袋ごと渡す」こと。しかしこれはNGです。紙袋から取り出し、箱を両手で持って渡しましょう。
また配送をするときは、相手が受け取れる日程を事前に確認し、日時指定をすると親切です。ECサイトを利用するのであれば、ギフト包装対応のショップを選びましょう。目上の方に贈るときは、そのショップがどんな包装紙を使っているかもチェックして。
「特にご年配の方に贈る場合は、カジュアルすぎない、伝統的なデザインの包装紙だと安心ですね。今は、包装もさまざまに選ぶことができるので、相手の年齢や趣味嗜好に合わせてセレクトしましょう」
熨斗(のし)と水引(みずひき)
贈る相手との関係性によってはきちんと熨斗紙をつけましょう。高価なものには水引もつけますが、今は熨斗紙にあらかじめ水引が印刷されていることがほとんど。
水引にはいくつかの種類がありますが、お中元では「紅白の蝶結び」を使いましょう。
相手が喪中の場合は?
お中元とお歳暮は冠婚葬祭の「祭」に分類される年中行事のため、本来は気にする必要はありません。ただ、そのことを知らない方やどうしても気になる場合は、先方に事前にご連絡し、やや時期をずらし「暑中御見舞」として送ったほうが無難でしょう。
生ものに熨斗はつけない?!
目上の方へのお中元やお歳暮には欠かせない熨斗。現在は熨斗紙の右上に「熨斗飾り」が印刷されていますね。実はこの熨斗飾り、「魚や肉などの生ものにはつけない」というルールがあるんです。熨斗はもともと、神様へのお供えものとして生のアワビを添えていたのが、日持ちするようにと乾燥させた「のしあわび」になり、さらに印刷された熨斗飾りにまで簡略化されました。生ものに熨斗をつけると、「生ものに生ものを重ねる」ことに。そのため、「生ものには熨斗をつけない」というルールが生まれました。
返礼品と御礼状のマナー
お中元やお歳暮はお返し不要のギフト。頂戴しても、慌ててお返しの品を送る必要はありません。ただし、御礼状はなるべく早めに返すのがマナー。
御礼状は、基本的には
①頭語
②時候の挨拶
③お礼の言葉
④健康を気遣う言葉
⑤結びの言葉
の構成で書きますが、難しい場合はもっとカジュアルな内容でもかまいません。
そもそも御礼状はコミュニケーションなので、形式よりも気持ちを伝えることが大切。手紙を書くのが苦手な人は、電話やメール、LINEでお礼を伝えましょう。食べ物をいただいた場合は、食べてから感想を伝えるといいですよ。
今の若い世代には馴染みの薄い贈答文化。「お中元やお歳暮のマナーが分からない」という方も、冨田さんのアドバイスを参考にお中元デビューしてみては? 冨田さんいわく「本当に大切なのは形式ではなく相手への気持ち。そんなにかしこまらなくても、お中元はふだんの手土産やちょっとしたギフトの感覚で大丈夫。感謝や『お元気ですか?』の気持ちを込めて、気軽に贈ってみてくださいね」
相手の喜ぶ顔を想像すれば、ギフト選びもきっと楽しくなるはずです!
(掲載日:2022年6月28日、更新日:2022年11月24日)
文:吉玉サキ
編集:エクスライト