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人の流れから課題解決の糸口を見つけていく。交通渋滞の解消へ|SoftBank SDGs Actions #13

人の流れから課題解決の糸口を見つけていく。交通渋滞の解消へ|SoftBank SDGs Actions #13

「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」というコンセプトを掲げ、SDGsに取り組んでいるソフトバンク。「SoftBank SDGs Actions」では、いま実際に行われている取り組みを、担当社員が自らの言葉で紹介します。13回目は、ソフトバンクのグループ会社で、位置情報を活用したビッグデータ事業を手がける株式会社Agoop(以下、Agoop)の取り組みです。

話を聞いた人

藤井 幹(ふじい・もとき)

株式会社Agoop
事業推進本部 営業企画部 部長
藤井 幹(ふじい・もとき)

ソフトバンクに2015年に入社後、コンシューマー事業で量販の営業を経験し、社内のフリーエージェント制度を利用して株式会社Agoopに参画。人流データを活用したリテール企業の出店戦略や国・自治体の観光・交通・防災施策立案など多数支援。

株式会社 Agoop

スマートフォンアプリから位置情報やセンサー情報を集積して、独自の技術で解析することで人の動きを可視化し、「流動人口データ(人流データ)」などのビジネスに新しい視点をもたらす価値ある情報を提供している。ソフトバンク株式会社が100%出資するグループ会社。

人の流れを分析し、町全体の活性化に役立てる

ソフトバンクの経営理念である「情報革命で人々幸せに」の下、Agoopでは「社会や人々を幸せにする『仕掛け』をつくる。」というビジョンを掲げ、人流データを使った社会課題の解決に取り組んでいます。地域交通施策や観光振興、健康増進、防災訓練と危機管理強化、町全体の活性化など、活用事例は多岐にわたります。

AgoopではスマートフォンのアプリケーションからGPSデータを取得しています。そのデータを統計加工した上で、観光地や住宅街などAgoopとして定義した基盤データなどと組み合わせ、お客さまの課題解決に向けたサービス提供を行っています。サービスラインアップもデータ提供からダッシュボードサービスまで幅広く用意しています。

われわれが提供している人流データだけでは課題解決はできません。一方で、人流データを活用することでお客さまは現状を正しく把握し、課題に対しての適切なアクションを検討することが可能です。Agoopはそのためのエビデンスをお渡ししているというイメージです。

人の流れを分析し、町全体の活性化に役立てる

現在ご支援している滋賀県の日野町は、元々「渋滞」に対して漠然とした課題を抱えていましたが、明確な渋滞原因が分からない状況でした。日野町は人口2万人ほどで、町内に複数の工場団地があり、人流データを見てみると、その周辺で朝の通勤時間帯に渋滞が起きていることが分かります。

人の流れを分析し、町全体の活性化に役立てる

慢性的な渋滞が引き起こすCO2排出や通学路にひそむ危険

図の通り、朝6時台に比べて、7時台になると交通量が増加し、渋滞が発生しています。渋滞が起きていることは目で見れば分かるのですが、工業団地に通勤する方も日野町の行政も明確な渋滞の発生原因は分からない。そこで昨年、人流データを用いて原因の特定をご支援することになりました。人の流れの推移を時系列で観測できる「Papilio」というサービスと、「人流統計レポ―ト」を活用しています。人流統計レポートは、お客さまのご要望にあわせてカスタマイズできるので、交通など特定の課題の分析に有効です。

慢性的な渋滞の発生はCO2の排出量増加につながります。工業団地なので通勤の車以外に大型トラックも走っていますが、渋滞が起きる一般道路には歩道がなく、わき道を小学生が歩いて通学することもあるそうです。私自身、実際に渋滞が起きている場所を車で通ってみたところ、かなりのスピードで、田んぼの脇にある細い抜け道を車が通り抜けているのを目にしました。そういった危険も含めて、道が混雑している状態に行政は課題を感じていたと思います。

慢性的な渋滞が引き起こすCO2排出や通学路にひそむ危険

解決の糸口を見つける手段として人流データを活用

実際に人流データで調べて分かったのは、渋滞の原因は日野町の町民ではなくて、工業団地に通勤している近隣市町村の方であること。近くにある3つほどの市町村から人が流入し、工業団地に向かう道で渋滞が生じていました。

人がどこから来て、どこへ向かうのか、データを見ることでより適切な改善策を打てます。ほとんどの方が町外から来ていると分かれば、シャトルバスを運行することで、例えば自宅から乗り換え駅までは電車やバスで来てもらい、乗り換え駅からシャトルバスで出社してもらう方法もあります。帰りはスーパーに寄る方が多いと分かれば、スーパーの近くにシャトルバスの停留所を設置する。ただシャトルバスを走らせればいいのではなく、利用者が本当はどこに向かうのかを知った上で対策をしないと、結局利用されずに自家用車で来てしまいます。

去年、トライアルでシャトルバスを走らせ、今年はバスのルートを増やして実証実験を行って実際に利用していただきました。「カーフリーデー」という自家用車通勤禁止の日を設けて、工業団地にある民間企業を巻き込んだ取り組みも行うなど、今後は駅やバス停周辺へのキッチンカー導入も検討されています。大事なのは、どれだけ生活者に継続して利用してもらえるかなので、日野町さまと一緒に次のアクションを考えています。

解決の糸口を見つける手段として人流データを活用

元々、渋滞の課題解決から始まった取り組みですが、データから導き出した根拠に基づいて施策を実施することで住民の方に豊かな暮らしを届け、もっと多くの観光客に訪れてもらい、いずれは移住して来てほしいといった思いが日野町さまにはあります。実証実験を通して最終的に最適な解決策を見つけて、実際に街に実装する段階までぜひご支援していきたい。そしていずれは、他の自治体にも横展開していければと思っています。

住み続けられる地球をこれからの世代に残していきたい

住み続けられる地球をこれからの世代に残していきたい

SDGsの全てのゴールを把握しているかと言われたらそうではないです。ただ、渋滞軽減がさらにCO2排出量の削減にもつながるなど、われわれのサービスを生かしてSDGsに貢献していけるのかなと思っています。できることから始めて、持続可能な社会の実現へ貢献していきたい。子どもがちゃんと成長していける地球を次の世代に残していきたい、と思っています。

人流データという言葉は普及しつつありますが、どう活用できるのかはまだあまり広く知られていません。これまでは大学などでの研究用にデータを提供することが多く、「実際に人々の生活に反映されたのか?」が実感しづらかったのですが、今回の日野町さまの案件のように、データに基づいてアクションをすると、例えば渋滞が軽減されたり、子どもたちが安全に登校できるようになったなど、効果が分かりやすく見えてくると思っています。

いずれは、人流データを扱う他の企業とも一緒になって、人流データが当たり前に使われる世の中にしていきたい。われわれのデータを施策立案の参考データとして活用していただくことで、人々の生活や暮らしの中の課題を解決する一助になればうれしいです。

ソフトバンクのサステナビリティ

サステナビリティ

今回紹介した内容は、「DXによる社会・産業の構築」に貢献することで、SDGsの目標「1、2、3、8、9、11、17」の達成と社会課題解決を目指す取り組みの一つです。

サステナビリティの取り組み

(掲載日:2022年10月12日)
文:ソフトバンクニュース編集部