エストニアからやってきた新型自動運転EV「MiCa(ミカ)」の開封から約1カ月半、千葉県の東京大学柏キャンパスで、報道関係者向けにMiCaの試乗会とお披露目会が行われました。
死角は無し。四角い車体が特徴の車両は最新の技術と性能を搭載
MiCaは、エストニア共和国で自動運転車の設計や製造を行う Auve Tech(オーブテック)社(以下「Auve Tech」)の製品。日本で自動運転を活用した持続可能な公共交通の実現を推進するBOLDLY株式会社(以下「BOLDLY」)が、自動運転レベル4に対応した自動運転車両として、2022年10月に日本での導入を発表しました。
まず目を引くのが車の形ですね。最近の自動運転車両は上部が丸くカーブしているものをよく見ますが、MiCaは四角い箱のような形が印象的です。どこかクラシカルな雰囲気があり、走る姿をずっと眺めていると、だんだんかわいらしく見えてくるのですが… 機能的でもあるんです。


MiCaに搭載しているセンサーやカメラ
車体の上部を中心に、7つのLiDAR(ライダー)センサーと8つのカメラがついていて、限りなく死角を減らし、周辺環境を把握することが可能。センサー自体も高性能で、100m以上先の障害物を検知することができます。完全自律型の無人運転をより安全に行うために欠かせない要素です。
他にも、自動運転レベル4での運行を見据えたさまざまな特長があります。
- コミュニティバスの用途を想定した8人乗りで、コンパクトな車体のため、日本の狭い道路での走行に適応
- 1時間の充電で20時間の走行が可能で、冷房でバッテリーを消耗しやすい夏でも運行への支障を最小化
- 雨や雪のような悪天候の中でも走行可能
- BOLDLYの運行管理プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」との連携を前提とした車両設計になっており、最新の遠隔監視システムによる運行が可能
もう1つ、BOLDLYがすでに国内で運行させている「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」と違うところは、日本仕様モデルの開発段階から Auve Tech 社に協力している点です。車体の前後が同じデザインのARMAは、反対向きに走らせることで左側通行に対応していますが、MiCaは前後が違うため、日本での運行のために乗降口を左に変更。他にも、「Dispatcher」による連携を前提とし、はじめから遠隔監視に必要な機器類を搭載した設計になっているそうです。当たり前のように感じてしまいますが、自動運転レベル4で必須となる遠隔監視を前提とした車両はまだ国内の市場に出回っていないのが現状。MiCaは、ハード面でもソフト面でも、最新の車両だということですね。
MiCaの姿を360度紹介!
いざ試乗! 肝心の乗り心地は?
8人乗りだという車内をのぞいてみると、外から見たときの印象より、思いの外広々としていました。座席は前方と後方に3席ずつと、折りたためるシートが2席。大きめの荷物を持っていても余裕そうです。
すーっと動き出したMiCaは、すぐに加速し、時速20Km近くで走行します。想像していたよりもずっと速いです! タイヤまわりのパーツは乗用車と同じものを使用しているそうで、乗り心地もとても良い感じ。試乗ルートには道路にせり出した木の枝や障害物が現れますが、なめらかな動きで回避し、加速や減速もスムーズなので安心して乗車することができました。
走行中、車の動きを表示しているモニターを
見ているスタッフたち
コントローラーを持ったり、前方を見たりすることなく走行
2023年度中にはMiCaの公道走行を。実現に向け産官学による協力を誓う
試乗会後のセレモニーでは、MiCaを背に登壇者によるスピーチと、MiCaの導入に関する茨城県境町とBOLDLYの覚書締結書が披露されました。
東京大学 生産技術研究所 中野公彦教授が、2017年頃からBOLDLYの前身であるSBドライブと共に自動運転の社会実装に向けた研究を開始した経緯を振り返り、さまざまな自動運転車両が全国各地で走ることを目標に活動継続すると、今回のお披露目会の趣旨を紹介。BOLDLYの代表取締役社長 兼 CEOの佐治氏は、中野教授の話を受け、東京大学との共同研究やさまざまな規制緩和に関する協力を得て公道での自動運転の実現を果たしてきたことへの感謝を述べ、「自動運転の定期運行を行う自治体としてトップランナーである境町の協力を得て、今年度中にMiCaを境町の公道で走行させるべく準備をしていく」と意気込みを語りました。
駐日エストニア共和国大使館のヴァイノ・レイナルト大使は、「自動車製造の歴史がないエストニアが、世界最大の自動車製造国に自動車を売ると、誰が想像したでしょうか」と喜びを表現するとともに、境町で開始されるMiCaの実証実験に期待を寄せ、MiCa導入に際し来日している Auve Tech のクリスチャン・ヴィリポルド氏は、BOLDLYチームと働くことの充実感についてコメントしました。
境町の橋本正裕町長は、2年半前に自動運転を開始したときの報道陣の数と比較し、世間の注目度が上がってきたことを実感したと言います。「最新テクノロジーを有した車両を国内で展開するための礎になりたい」とし、日本の自動運転の未来を推進し、地域の課題解消に意欲を見せました。
MiCaは公道走行のためナンバーの取得を予定しており、引き続き走行試験を行い、関係省庁による認可を受けるための準備を行います。BOLDLYは2023年度中に国内で約10台のMiCaを導入することを目指しており、皆さんが公道を走るMiCaを目にする日も近いかもしれませんね。
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(掲載日:2023年5月24日)
文:ソフトバンクニュース編集部