2023年4月上旬、千葉県にある東京大学柏の葉キャンパスに、木箱に入った一台の車両が運ばれてきました。自動運転レベル4対応の新型自動運転EV「MiCa(ミカ)」です。
日本に初上陸した日に開梱作業があると聞き、いち早く現場へ行ってきました。
世界で2台目。エストニア共和国からやってきた「MiCa」と対面
遠路はるばる、空路でやってきた車両。当初の予定より4日遅れで日本に到着しました。待ちわびた車両との対面に、続々とBOLDLY社のメンバーがキャンパスに集まってきます。MiCaの導入を担当する米井さんが、「無事税関を通って向かっているそうです。まもなくですよ」と教えてくれました。
外に出て今か今かと待ち構えます。
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あ、きたきた!!
大きな木箱を乗せた12トントラックがようやく到着です!
当日は強風で危険も予想されるため、風を避けられる建物の側にフォークリフトで慎重に降ろされた木箱。早速、ベニヤ板に撃ち込まれたネジを順番に外していきます。
そしてついに… 手前の板を外す準備ができました。いざ、開梱です!!!
「おおー」
「導入が決まってから約半年、ついにきたか!」
待ちわびた新車両とようやく対面です。
各々が車両に近づいてまじまじと眺めたり、写真を撮ったり。
「あれ、この部分は…??」と、大事な車両を隅々までチェックしているメンバーもいます。
ここからは、残りの板を外していく作業。メンバーたちが息を合わせて総出で解体が進められていきます。長い距離を安全に運ぶために、車両が木箱内にしっかり固定されており、すんなりとはいきません。こういう場面のために免許を取得しているメンバーが、フォークリフトを操作する場面もあり、その場で試行錯誤しながら一つ一つクリアしていく様子が見られました。
開始から約2時間、ようやく開梱作業が完了しました!!
米井さん 「当初の予定から遅延したので、税関を通過したと報告があるまでは心配で、昨日も眠れませんでした。無事に到着してよかったです! 1年前にエストニアで初めて見た車両が、5年前から運用しているこの研究施設に並んでいると思うと、とても感慨深いですね」
IT産業が盛んなエストニア。街中には自動運転車やロボットが
エストニアは北ヨーロッパにある国です。周辺諸国に比べてよく知らない人も多いのではと思います。エストニアと自動運転の関係について、エストニア共和国大使館のアイト・オリバー商務官に話を伺いました。
エストニアでは、自動運転車の普及が進んでいるのですか?
自動運転車は「動く携帯電話」のようなもので、車体部品よりもソフトウエアが重要になってきます。エストニアは製造だけでなく、ソフトウエアや人工知能といった「脳」の部分の開発に長けている国で、ユニコーン企業も多いです。背景には政府が推進する柔軟な規制緩和があり、新しい技術やソフトウエアを試しやすく、イノベーションが生まれやすい環境があると思います。
国内の特定の地域では数年前から自動運転車が走行していて、一般市民や観光客が利用しています。一方、自動運転車に関するルールなどが国全体に広まるまでに時間がかかっていますね。
より一般的なのが、町中を走っている配達用のロボットです。家まで食べ物を届けたり、雪が降っている日は荷物の配達を頼んだりしています。エストニアには歴史的な建造物もありますが、当たり前のようにITが人々の生活に浸透していると思います。
町中に自動運転車やロボットが走る…。日本とはだいぶ違う景色が想像できますね。
そうですね。ただ、日本は規制緩和の点では時間がかかるかもしれませんが、茨城県境町のように自治体のサポートが充実している地域もあります。日本には素晴らしい交通インフラがありますし、今回の取り組みでもよいスタートを切れるのではないかと思います。エストニアから導入されたMiCaが日本中を駆け回り、あらゆる課題の解決につながっていくことを楽しみにしています。
「MiCa」という子どもを通じて家族に。海を隔てて共に自動運転の未来へチャレンジ
「MiCa」は、ドライバー不在の走行が可能になるレベル4に対応した車両です。開発した Auve Tech は、自動運転車両を設計・製造するエストニア共和国の企業。車両が日本に到着した数日後に、エストニアと日本をオンラインでつなぎ、セレモニーが行われました。
Auve Tech とBOLDLYの関係者が勢ぞろいしたセレモニーは和やかな雰囲気で進められました。オンライン越しの再会を喜ぶ Auve Tech のチーフ・エグゼクティブ・オフィサーのヨハネス氏は、「エストニアで初めて会ったときから、素晴らしい未来を実現するのを楽しみにしてきました。日本に行ったことのないメンバーもたくさんいますが、心は皆さんと一緒です。共に日本でMiCaを走らせましょう」とコメントしました。
また、セレモニーに立ち会ったエストニア共和国大使館のオリバー商務官は、「MiCaの導入、おめでとうございます。日本からエストニアにはさまざまなものを輸入していますが、この度、初めてエストニアのスマート車両を日本へ届けました。今日の皆さんのスピーチを聞いて、社会課題を解決したいという気持ちが本物であると感じました。今後も緻密なコミュニケーションをとり、国際的にも素晴らしい成功事例になることを期待しています」と、エストニアと日本をつなぐ事例に期待を寄せました。
導入に関わったメンバー全員が、さまざまなエピソードを振り返りながらMiCa到着の喜びを共有し、最後にBOLDLYの代表取締役社長 兼 CEOの佐治氏が、熱い思いを語りました。
「世界で2台目となる車両を迎え入れられてとてもうれしく思います。使いやすいユーザーインターフェースや丁寧なサポートに魅力を感じ、今回の協業が実現しました。が、日本仕様車両の開発のため、日々努力してくれたAuve Techのエンジニアの皆さんに感謝しています。皆さんと一緒に自動運転をさらに発展させてきたいです」
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BOLDLY とエストニアの Auve Tech が提携して Auve Tech の新型自動運転車両「MiCa」を日本で展開(2022年10月24日 BOLDLY 株式会社、 Auve Tech )
(掲載日:2023年5月16日)
文:ソフトバンクニュース編集部