毎日のように目にする生成AIの話題。さまざまな企業や自治体で取り組みが進む中、ソフトバンクではグループ企業が参加する「ChatGPTなど生成AI活用コンテスト」を開催したり、日々の業務で生成AIの活用を推進するなどの取り組みを行っています。さまざまな部署が生成AIの活用方法を検討する中、法人のお客さま向けの提案活動に生成AIを活用するアイデアが生まれました。
営業自身が生成AIを理解し、自分の言葉で深く語るために
生成AIを活用した法人のお客さま向けの提案活動を支援するツールは、ある社員のアイデアをもとに開発され、今では数千人の法人営業の部門で広く活用されるまでになりました。考案した西原万純に話を聞きました。
ソフトバンク株式会社 法人統括 西日本営業本部 ストラテジー＆ソリューション開発室 室長
西原 万純（にしはら・ますみ）
近畿以西を担当する西日本営業本部の生成AI活用推進を担当。2024年4月からは、法人プロダクト&事業戦略本部 生成AIアクセラレーション室も兼務し、法人統括全体の生成AI活用推進を担当。
営業活動支援ツールを開発した背景を教えてください。
「生成AIが注目を集める中、ソフトバンクでは、マイクロソフトのAIサービス『Azure OpenAI Service』などを活用し、いち早く、法人のお客さまに生成AIを利用できる環境の提案活動を進めています。より深い生成AIの提案を行うために、私たち営業担当者自らが生成AIを詳しく理解し、自分の言葉で語れるための技術やスキルを身に付ける必要性がありますが、提案活動を始めた当初は、まだ十分とは言えない状況だと思っていました」
法人営業部門ではどのような課題があったのでしょうか。
「取り扱う商材が年々増加することで、ご提案の幅もどんどん広がり、商談の準備にかかる時間が増加傾向だったため、本来、増やしていきたい商談の機会や時間が減少傾向にありました。 また、最近は商品そのものによる差別化が難しいため、コンサルティング力をさらに強化していく必要性も感じていました。 そこで、提案活動を支援してくれる生成AIを作り社員自身が活用することで、生成AIへの理解が深まると同時に、商談の準備を効率化して、営業力の強化も図りたいとしようと考えました」
あらかじめ用意された50個のプロンプトで提案精度を向上
営業活動支援ツールではどんなことができるのでしょうか。
「『Azure OpenAI Service』のスターターパッケージを利用して、営業担当者が利用するために特化したプロンプトを、あらかじめセットしています。メニューボタンからプロンプトを選択するだけで、簡単に実行ができ、回答を導き出すことができるのが特長です。
プロンプトは、文書の作成や編集を行う『文書の要約』、ソフトバンクのサービスを埋め込んだ『商材学習済みBot』、そして提案時の企業分析に役立つ『企業・業界分析』など7つのカテゴリがあり、50個がプリセットされています。当初は3つのカテゴリ、12のプロンプトでスタートし、どんどん増やしてきました。
さまざまな商材のデータを読み込ませてありますので、資料を一から探さなくても、質問を投げかけるとどんな商材なのか、即座に詳しい回答が得られます。
プロンプトをうまく組み合わせて、提案に必要な業界動向などの分析や情報を収集し、提案書を作ってみる。出来上がった提案書をまた営業活動支援ツールに投げかけ、フィードバックをもらう。これを繰り返すことで、お客さまの課題解決に寄り添った提案がスピーディに考えられるとともに、コンサルティング力の加速度的な向上につながると考えています」
わずか3カ月後で数千人が利用、定着率7割以上のツールへ
開発にどのくらいの時間がかかりましたか。
「クイックに進めていくため私の所属する部署の2名で要件定義に着手し、途中で他部門やシステムエンジニアにも参加してもらいながら、2カ月程度で開発。部署内で利用を開始したところ、好評だったことから、法人の営業部門全体で使えるように準備を進めて、開発開始から3カ月後に全体への展開が完了しました。生成AIは仕組み上、毎回違う回答を返してくるため、いかに正しい答えを導き出してくれるプロンプトに仕上げるか。正答率を上げるためのチューニングにかなり時間をかけましたね」
実際に使っている現場からは、どのような反響がありますか。
「『企業分析やコンサルティング力を生かした営業活動をする上で、非常に便利』『業務効率化にもつながっている』などの声が寄せられています。通常AIツールは数カ月で利用率が2～3割程度まで下がることが多いと言われていますが、利用開始から約半年経っても定着率7割です。
営業担当者同士で勉強会などを行い、プロンプトの作り方などノウハウの共有を通じて、各自が作ったプロンプトを評価し合うコンテストを開催するなど、みんなでレベルアップを図っています。商談時に営業活動支援ツールをデモンストレーションすると、『同じような環境をつくってほしい』と要望をいただくことが非常に多く、お客さまの関心が高いことがうかがえます。引き続き営業活動支援ツールも活用して、提案力に磨きをかけ、お客さまの課題解決に貢献にしていきたいと思います」
生成AIのスムーズな導入を実現
ソフトバンクでは法人のお客さま向けに生成AIやChatGPTの環境作成支援を行っています。
（掲載日：2024年5月10日）
文：ソフトバンクニュース編集部
