2024年6月20日、ソフトバンク株式会社の第38回定時株主総会が開催されました。今年も、会場とオンラインでのハイブリッド形式で開催。代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一が議長を務め、報告事項、決議事項議案、成長戦略の説明および質疑応答を行い、3つの議案について決議が行われました。
中期経営計画目標の達成と次期中期経営計画に向けた成長投資の両立を目指す
2023年度の業績などをまとめた事業報告映像からはじまり、決議事項議案の説明に続き、ソフトバンクの今後の成長戦略についての説明を行いました。
宮川は、連結営業利益予想を示し、2023年度に発表した中期経営計画予想を上回って24年度は9,300億円、25年度には1兆円レベルの利益を出せる実力がついたとし、「上振れた利益を持って次の中期経営計画でのさらなる成長に向けて、AIへの投資を決定した。生成AIは今後あらゆる産業に浸透していく。当社はこの領域でマーケットリーダーになりたい」と述べ、中期経営計画で掲げた目標の達成と、次の中期経営計画に向けた成長投資の両立を目指す方針を示しました。
中長期的な成長と株主還元の両方を重視
株主還元については、1株あたり86円の配当を維持する方針とともに、2021年4月からのTSR(株主総利回り)が約60%と高水準であったことや株価の推移においても競合他社を大きく上回っていることを紹介し、企業価値の最大化に向けて、引き続き中長期的な成長と株主還元の両方を重視して取り組んでいくと述べました。
「中期計画の達成には自信がある」とする宮川は、長期目線でのさらなる成長に向けた取り組みについて紹介しました。
生成AIサービスの著しい進化
生成AIサービスは、OpenAI社がChatGPT3.5を発表してからたった1年半で「想像を絶する速さで進化している」といい、進化の事例として、ソフトバンクが現在開発に取り組んでいる生成AIを活用したコールセンターのほか、全社を挙げて行っている生成AIコンテストの成果を紹介。コンテストは過去6回行われ、16万件以上の提案と1万件を超える特許の出願がありました。優れた企画は、社長の直轄部門で事業化を進めていることが明かされ、その事例の一つとして、教員の過重労働が課題となっている教育業界向けのパーソナルAIアシスタントサービスを動画で紹介。今秋のサービス提供を目指していると述べました。
2024年は6G元年
続けて宮川は、AIとの共存社会を見据え、ソフトバンクの本業の通信インフラも戦略的に高度化しているとして、6G時代においては、高速・大容量、低遅延、多数接続という5Gの特徴の進化に加えて、「通信とAIの融合」「通信とセンシングの融合」「ユビキタス接続」という特徴が追加されると解説。「今年は6G元年。今後、本格的に始まっていく」との見方を示しました。
通信とAIの融合については、無線アクセスネットワークをAIで高度化する「AI-RAN」が生み出す、さまざまなエッジアプリケーションの開発を、NVIDIAと共に取り組んでいることを紹介。
通信とセンシングの融合については、すでにソフトバンクの竹芝本社で、プライバシーに配慮したセンシングの実現に向けて実証を行っていることを紹介。
また、ユビキタス接続については、NTN構想として衛星通信のほか、成層圏に浮かぶ基地局「HAPS」を使った取り組みを業界リーダーとして2017年から推進。要素技術の研究などさまざまな取り組みを続け、この領域で世界一多くの特許を保有しているとコメント。
「通信は昨今、人類にとって必須のアイテムになってきている。これから訪れるAIとの共存社会の中では、通信の有無が格差に直結してくる。そのような格差の是正に向けて、ユビキタス通信の実現にチャレンジし続けていきたい」と力を込めました。
次世代社会インフラとして、産業を支える分散型AIデータセンターを構築
宮川は、未来を支える次世代の社会インフラが必要であると強調し、ソフトバンクが現在構築に取り組んでいる分散型AIデータセンターの進捗(しんちょく)について説明しました。AIデータセンターはAIの頭脳にあたるもの。現在、東京と大阪に集中しているデータセンターは、電力面などでこれ以上増設ができない状況であることから、地産地消型の次世代社会インフラである分散型AIデータセンターの構築が進められています。
ソフトバンクはこの構想の実現に向けて、昨年11月には再生可能エネルギーが豊富な北海道に300MW(メガワット)のAIデータセンターを構築することを発表。数百MWクラスの複数のデータセンターを一つのデータセンターのように扱えるxIPFというオリジナルの技術開発にも取り組んでいると説明。AIデータセンターを中心に産業を活性化できるエコシステムを作り上げ、データセンターによって生み出されるAIサービスを周辺企業が活用することで、人手不足の解消や生産性の向上などにつなげたいとの考えを示しました。
宮川は「就任以来、10カ年計画を立てて逆算で実行してきた成果が少しずつ形になってきている。われわれは通信企業からAIとの共存社会を支えるテクノロジー企業に進化して、さらなる成長を目指してまいりたい」と意気込みを示しました。
社会課題に、アンサーを。
最後に、ソフトバンクのロゴである「イコールマーク」は、現在そしてこれから起こりうるさまざまな社会課題に対して、アンサーを出し続けるとの意志を表現したものであると語り、「社会課題に、アンサーを。」というスローガンを掲げた映像を紹介して、プレゼンテーションを締めくくりました。
ソフトバンクの新たなスローガンはこちらでご紹介しています。
3つの議案が承認可決。新たに社外取締役2名が就任
質疑応答を経て、今年度上程された「定款一部変更の件」「取締役11名選任の件」「補欠監査役1名選任の件」3つの議案は、投票の結果、全て承認可決されました。 この決議で新たに就任した社外取締役2名が紹介され、坂本真樹氏は「AIの研究をしてきた人間でございますので精いっぱい貢献できるよう努めてまいりたい」とあいさつし(写真右)、佐々木裕子氏は「多様性推進や社会課題解決に向けて挑戦をしてまいりました。ソフトバンクのガバナンス・企業価値向上に最大限努めていきたい」(写真左)と語り、株主総会は閉幕しました。
第38回定時株主総会についてはこちらからご覧いただけます。
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決議内容・資料 | 第38回定時株主総会 |
(掲載日:2024年6月19日、更新日:2024年6月21日)
文:ソフトバンクニュース編集部