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6G時代に向けた新たな一歩へ。テラヘルツ無線を使った車両通信に成功 ―ギジュツノチカラ テラヘルツ編

6G時代に向けた新たな一歩へ。テラヘルツ無線を使った車両通信に成功 ―ギジュツノチカラ テラヘルツ編

ソフトバンクはBeyond 5G/6G時代に向けたさまざまな技術開発に取り組んでいます。2024年6月、独自のアンテナ技術を活用し、次世代の超高速無線通信として期待されている「テラヘルツ通信」の実現に向け、テラヘルツ通信エリアを構築する実証実験に成功したと発表。ソフトバンクの先端技術を紹介する「ギジュツノチカラ」と題するイベントで説明会とデモンストレーションが行われました。

独自開発のアンテナを使って、車両向けのテラヘルツ通信エリアを構築する実証実験を実施

独自開発のアンテナによる、車両向けのテラヘルツ通信エリアを構築する実証実験を実施

デモンストレーションはソフトバンク竹芝本社ビル付近の道路で行われました。地上から約10mにある歩行者用デッキに、独自開発の「コセカントアンテナ」を取り付けた基地局に相当する送信無線機を設置。受信アンテナを搭載した車両がデッキ下の直線道路を約140m走行し、車両向けのテラヘルツ無線通信が可能か、電波信号を測定します。

独自開発のアンテナによる、車両向けのテラヘルツ通信エリアを構築する実証実験を実施

小型化が実現できた独自開発のコセカントアンテナ

300GHzの電波の波長は約1mmと短いため、この周波数に対応したコセカントアンテナは、横幅1.53cmと10円玉よりも小さいサイズになります。実際にこのアンテナを利用するためには、通信機器に組み込む必要がありますが、車両などに搭載する上でもアンテナの小型化は重要な要件の1つです。

小型化が実現できた独自開発のコセカントアンテナ

超高速大容量の通信として期待される「テラヘルツ通信」

Beyond 5G/6Gに向けた12の挑戦

「テラヘルツ通信」はソフトバンクが2021年に掲げたBeyond 5G/6G(以下「6G」)に向けた12の挑戦の1つです。テラヘルツ波とは、電波の透過性と光の直進性をあわせ持つ0.1THz(テラヘルツ)から10THzの電磁波のこと。未使用の帯域であることから、6Gにおける超高速無線通信として期待されています。また、光ファイバーの敷設が困難なエリアでの通信格差を解消する技術として注目が集まっています。

テラヘルツ通信は高い周波数を利用するため、電波の伝搬損失が大きいという特性があります。そのため、これまでの基地局のような広範囲の通信設計では電力が分散されて、通信エリアが狭くなるという課題も。そこで、電波をビーム状に発射する工夫により、固定通信やタッチ決済のような近距離通信での活用が想定されてきました。

今回着目したのは、自動車同士や、自動車と交通インフラ、自動車と歩行者などが通信を行う技術「V2X(Vehicle to X)」です。将来、自動運転やコネクテッドカーの普及によって、車自体に大容量の通信が必要となります。車の位置や走行時の情報、ドライブレコーダーの情報など膨大なデータを常にアップロードし続けるため、現在の無線ネットワークだけでは通信がひっ迫し、通信容量も圧倒的に不足していることからテラヘルツ無線の活用が期待されています。

また、電波の伝搬損失が大きいというテラヘルツ波の特性も、直線道路にエリアを限定することで、電波の分散を抑え、結果的に広範囲に安定した通信を提供できるようになります。

FY23:車両向けテラヘルツ通信エリア構築実験

車道を走行しながら約140m直進し、安定した通信エリアを確認

車両にモニターを設置し受信電力を確認

車両にモニターを設置し受信電力を確認

受信電力の測定ツール

受信電力の測定ツール

車両内に設置したモニターで受信電力を確認。車の走行速度を徐行から道路の制限速度 時速30kmまで変化させ、約140mの走行中も安定した通信エリアを維持することができました。次の写真で色をつけた箇所が基地局情報の受信に成功した区間で、直線道路を曲がった後の黒色の部分は通信が途切れた区間です。

直進性をもつため、140m先で車が直線から曲がると通信エリアから外れてしまう

直進性をもつため、140m先で車が直線から曲がると通信エリアから外れてしまう

モバイル用途での活用も見据え、6G時代に向けた新しい周波数帯の拡張を目指す

モバイル用途の活用から、6G時代に向けた新しい周波数帯の拡張を目指す

ソフトバンクの先端技術研究所 6G準備室 室長の矢吹歩は、「テラヘルツ通信の取り組みは2017年から開始し、最初はNICTとの共同開発からスタート。2020年は小型アンテナの開発としてスマートフォンに搭載できるアンテナの開発、2022年は屋外の実証実験などを進めてきた」と説明。

「今回は車両通信の実証実験として、約140mの距離で実施したが、400m程度までエリア化が可能とみている。将来的には信号機への設置などをイメージしているが、全てをテラヘルツ通信だけでカバーしようとは考えていない。他の通信技術と併用するなど、6Gに向けた新領域にチャレンジしていきたい」と今後の意気込みを語りました。

(掲載日:2024年6月20日)
文:ソフトバンクニュース編集部

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