動物園での効果的な撮影方法を紹介する本企画。基本編では、「動きが速くてブレる」「柵やガラスが写り込む」といった、動物園ならではの撮影の難しさを確認し、その対処方法を写真家の佐藤朗さんに教えていただきました。応用編でも引き続き Google Pixel を使い、構図を意識した撮影テクニックや、動物と人を一緒に撮影する方法など、ワンランク上の動物園での撮影術を佐藤さんに伺います。
目次
まわりと差がつく、ワンランク上の動物園撮影テクニック4選
動物園での撮影のコツをつかんできたら、次にこだわりたいのが構図やシーンの選び方。簡単なポイントを押さえるだけで、まわりの人とは一味違う “プロっぽい” 写真が撮れるかもしれません。「いつもの写真に変化をつけたい」「動物たちの魅力をもっと引き出したい」そんな方は必読です!
①「空間」を生かした構図でストーリー性を持たせる
動物は魅力的なのに、写真に撮るとどうしても面白みに欠けてしまう…。そんなときは、「構図」を見直してみましょう。まずは引いたところから全体を見て、その動物の魅力や特徴を捉えます。例えば背が高いキリンなら、画面を縦に使って、あえて背景に高層の建物を入れることで高さを強調してみました。
パンダなどのおっとりした動物なら、動物の視線の先に空間をあけることで「考えごとをしている風」に撮るのもかわいいですね。
写真の構図については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
②群れの動物は一部にフォーカスか、俯瞰して撮影
動物の群れはかわいいけど、写真に収めると「何を撮ったのかよくわからない…」なんてことになりがちです。まず群れを観察して、撮りたいと思う個体やシーンを見つけてみましょう。そして、その個体やシーンだけにフォーカスして撮影します。
また、これは群れの撮影以外でも言えることですが、背景も大事です。例えばペンギンのようなモノクロの動物は、グリーンを背景にすると引き立ちますよ。
たくさん群れている感じを出すのであれば、思いきり上から撮ってみたり下から撮ってみたりと、いろいろな角度から撮ってみてベストなアングルを見つけましょう。
③ズーム機能を使ってパーツをドアップにしてみる
前編でも紹介したズーム機能。Google Pixel のようにかなりズームしてもキレイに撮れる機種なら、それを生かして顔やしっぽなど体の一部を画面いっぱいに撮影してみるのもいいですね。一部のパーツにフォーカスすることで、毛の質感や体の模様、形、表情など、これまで意識していなかった新しい魅力に気づくことができますよ。
④撮影後の加工でクオリティアップ
何も設定を変えずに撮った写真は少し青っぽく写りますが、『色温度』の目盛りをプラスにすると、肉眼で見ている色に近くなります。さらに彩度やコントラストを上げたり、背景をぼかしたりすることでダイナミックな印象に。
基本編で紹介したサイの写真は、「フィルタ」→「VOGUE」でモノクロに変換してから、コントラストをやや上げて皮膚の質感を強調し、周辺減光でスポットライトが当たっている印象にしました。最後にポートレートのぼかしを使ってサイに目がいくようにしています。モノクロにするときは、先にフィルタを指定してから明るさなどを変えた方が結果が想像しやすくなりますよ。
Google フォトでの加工ポイント
「調整」からコントラスト、色温度を周辺減光プラスに。その後にポートレートのぼかしを。先にぼかし処理をするとその後の調整中に無効になることがあるので順番に注意。
さらに、Google Pixel の「消しゴムマジック」機能もぜひ活用したいですね。柵などが写り込んだ部分を違和感なく消すことができました。
動物たちと一緒に写りたい! 動物+人物写真の撮り方
誰かと動物園を訪れたら、動物と一緒に記念写真を、というシーンもよくありますよね。そこで、動物と人物を1枚の写真にキレイに収めるコツも教えていただきました。
「人と動物を一緒に撮る場合は、撮影者がちょっと離れて、遠くからズーム機能を使って撮るとうまく写ります。『手前に人がいて奥に動物がいる』構図を広角で撮ると、どうしても奥にいる動物が小さくなってしまいますが、望遠にすることで写せる範囲が狭まり、遠近感が目立たなくなるんです。離れたところからスマホを構えて、動物が近くに来るのをじっと待ちましょう」
「じっくり観察」が撮影上達のカギ。プロが教える、動物園での撮影がさらに楽しくなる方法
コツがつかめると、動物の撮影はとても楽しいですね! せっかく行くなら狙いたい時間帯や、事前に押さえたり準備しておいたりすることはありますか?
基本的に午前中がおススメです。夕方だと展示が終わってしまうこともあるし、お昼頃は暑くて屋内から出てこない動物もいますしね。開園と同時に入場すると、たくさんの動物のアクティブな姿を見やすく、エサやりタイムなどのイベント時間を考慮して回ることもできます。食事のタイミングは、野生を思わせる活発な姿を見せてくれることが多いので楽しいと思いますよ。
動物園の公式サイトやSNSは事前にチェックしておいて損はないです。動物の展示時間やエサやりタイムの情報収集のほか、目当ての動物の写真をチェックしておき、どんな写真を撮りたいのか、イメージを膨らませておくといいでしょう。
持っていくと便利な撮影グッズなどがあれば教えてください。
手首にかけるストラップがあるといいですね。ショルダーストラップに比べて自由度がありつつ、落とす心配も解消され、ガラスや柵にできるだけ近づけて撮影するテクニックなどが実践しやすいです。あとは、スマホのレンズ周辺に取り付けて写り込みを防止するレンズフード。暗めの服装でないときも、これがあればガラスの向こうの動物を撮るときに写り込みを気にする必要がありません。
動物園で撮影する際に気をつけることはありますか?
当たり前ですが、動物が嫌がることをしないこと。動物の中には、スマホを向けられるだけでビックリしてしまう種類もいます。動物が逃げたり怖がるしぐさをしたら、撮影を控えましょう。また、撮影中はつい夢中になって視野が狭くなってしまいがちです。まわりの来場者にも気を配り、「ゆずりあい」の気持ちを忘れないようにしたいですね。
動物に熱中しすぎて迷惑にならないよう気をつけます…! 最後に、写真が上達するコツや、撮影がさらに楽しくなるポイントを教えてください。
動物の撮影に限らず言えることですが、写真の上達には対象をじっくり観察することが大切です。動物園では、いざ動物を目の前にすると気持ちも高ぶり、「早く撮影しなきゃ」とすぐにスマホを構えてシャッターを押してしまいがち。まずは一呼吸おいて、動物の様子やしぐさをよく見てみましょう。「サイって横顔のイメージしかなかったけど正面から見るとこんな顔なんだ!」とか「プレーリードッグのお母さん、育児で疲れてそう…」とか、今回の撮影中にもさまざまな発見がありました。撮影を通して個体ごとの性格や新たな魅力に気付ける。これが動物園での撮影の醍醐味(だいごみ)だと思います。
動物の撮影は難しいイメージでしたが、佐藤さんのレクチャーのもとで撮影していると、編集部もだんだんとコツをつかんで写真が上達してきました! 動物の思わぬしぐさや表情が撮れると、とても楽しいもの。皆さんも9つのテクニックを参考に、ぜひ動物園での撮影にチャレンジしてみてくださいね。
(掲載日:2024年8月16日)
写真:山﨑悠次
文:吉玉サキ
編集:エクスライト