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リアルな体験が大阪発のイノベーションを生む。オープンラボ「5G X LAB OSAKA」の現在地

リアルな体験が大阪発のイノベーションを生む。5G X LAB OSAKAの今

企業が5Gの技術検証やデモンストレーションの体験を行える施設「5G X LAB OSAKA」。大阪市にあるこのラボは、大阪市やソフトバンクなどにより共同運営されています。大阪発のビジネス開発拠点としてどのような活用がされているのか、最新展示を交えてご紹介します。

5G X LAB OSAKA(ファイブジー・クロス・ラボ・オオサカ)

5G X LAB OSAKA(ファイブジー・クロス・ラボ・オオサカ)

大阪市、AIDOR(アイドル)共同体、ソフトバンク株式会社が展開する5Gのデモンストレーションを体験できるほか、5Gを活用した製品・サービスの検証などが無償で行える施設。

  • 大阪産業局と一般社団法人i-RooBO Network Forumによって構成されたテクノロジービジネス支援を目的とした共同事業体

5G X LAB OSAKAを
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小西 康晴(こにし・やすはる)さん

一般社団法人 i-RooBO Network Forum 会長
株式会社ロボリューション 代表取締役

小西 康晴(こにし・やすはる)さん

今期より一般社団法人i-RooBO Network Forumの会長に就任、製缶工場の社長も務める。ロボット関連技術のビジネス化を推進しており、人と協働するロボットの実ビジネスを意識した製品開発に取り組んでいる。

坂本 俊雄(さかもと・としお)さん

一般社団法人 i-RooBO Network Forum IATC プロデューサー
株式会社ブリッジ・ソリューション 代表取締役

坂本 俊雄(さかもと・としお)さん

一般社団法人i-RooBO Network Forumの副会長を務める。長年にわたり生産設備や研究開発の現場で制御、計測、監視システムの開発に従事し、ロボット・自動化機器等の先端技術活用に精通している。専門家として製造業の課題解決のサポートを行う。

日野 行祐(ひの・こうすけ)

ソフトバンク株式会社
法人統括 法人プロダクト&事業戦略本部 5Gサービス統括部 統括部長代行

日野 行祐(ひの・こうすけ)

法人向け5G事業を担当。5G技術を活用したソリューション開発に従事。

体感することでこそ生まれるビジネスアイデア

2020年の開設から約4年が経とうとしています。開設からこれまでをどう捉えていますか?

日野 「5G X LAB OSAKAは、一言で表すと『オープンイノベーションの場』です。ソフトバンクは、関西エリアの製造業やスタートアップ企業とのつながりを強くしたいという思いから参画しました。開設した当初は大阪市に紹介されて見学に訪れる企業が多かったのですが、徐々にソフトバンクとの直接の関係性がある企業も増えてきました」

どのような企業が来館しているのでしょうか?

日野 「製造業を中心にスタートアップまで、幅広く来館いただいています。来館した企業からは、他社の事例や動向を実際に体感してみたいという思いを強く感じますね。われわれもその点を意識して、実際に他社で実証や導入が進んでいる事例を交えてご紹介したり、展示物をアップデートしたりしています」

ピックアンドプレイスソリューション

ピックアンドプレイスソリューション

外部の光に影響を受けずに透明なボトルを自動でピックアップして所定の位置に収納する。将来的には、工場内のロボットアームを無線化してクラウドなどに5G接続することで、現場に設置するハードウェアを少なくできる。

小西さん 「昨今の人手不足の課題に対して、自動化やDXなどを目的に5Gやロボットなどのテクノロジーで解決できないかと関心を持っているスタートアップや製造業が多いですね。要素技術の集合体と言われるロボットは、各社が持っている技術は一部分でしかなく、何かと組み合わせて横串で活用しないとビジネスとして通用するソリューションとして成立しにいくのですが、そういう思いを巡らせることができる場というのは、なかなか少ないのが現状です。そのような方たちが、5G X LAB OSAKAに来て、実際に体験することで、自社の技術と何を掛け合わせれば、新たなイノベーションを起こせるのか、自分たちの技術でこんな活用ができるのでは、と発想が得られる。きっとものすごい刺激になっているはずです」

坂本さん 「製造業関連の展示を案内すると言われるのが、『自分たちは製造業のプロフェッショナル。展示されている技術はもう十分知っている』という言葉です。それならなぜここが必要なのか? となりますよね。

5G X LAB OSAKAには、観光や映像など、製造とは違うジャンルの技術も展示してあります。そうしておくことで、見学に来たついでに違うジャンルの展示も見ることができる。製造業からするととても斬新なアイデアで、業界が違うとこんな見せ方があるのか、という気づきにつながっているということです。

将来的にはその斬新なアイデアと製造業が持つ技術をインテグレートする人材も、この5G LAB OSAKAから生まれてくれば、さらに広がりが生まれると期待しています」

無人化施工「RemoDrive」

無人化施工「RemoDrive」
無人化施工「RemoDrive」

メーカーを問わず既存の建機にそのまま取り付け可能。遠隔の操縦席から複数種類・台数の建機を操作、モニターに映し出された地形の映像と、鳥瞰(ちょうかん)を含む複数の視点を切り替えられるカメラ映像が合わせて映し出される。

来館する企業同士の連携やソリューションの紹介など、5G X LAB OSAKAはどんな役割を果たしていますか?

日野 「自社が持つ課題をもっと深掘りしたい製造業のお客さまとのディスカッションに、小西さんや坂本さんに参加してもらい、他に連携できる機能などの提案を行っています。また、3カ月に一度程度のペースでワークショップも開催しています。プライベート5Gを活用した新しいビジネスにアイデアを持っている、5Gコンソーシアムの参画企業やその関連会社などに、このラボに来てもらいアイデアや意見を出し合ってもらう機会も設けています」

人材育成という点では何か活動をしているのでしょうか?

小西さん 「i-RooBOの活動として、元々、ロボットや電子工作、プログラミングなどのワークショップをかなり早い段階から子ども向けに開催していて、今はロボットコンテストなどを小中学校・高校まで広げるために、いろんな他の組織とも連携して進めています。そのつながりで上のほうの学年や大学生は、タイミングが合えばこのラボに連れてきて、実際にソリューションに触れてもらっています。

XR遠隔医療支援ソリューション

XR遠隔医療支援ソリューション
XR遠隔医療支援ソリューション

CT-MRIで取得した人体の3DデータをVRで共有できるサービス。遠隔医療のための映像伝送や3Dデータ伝送は5Gの低遅延と大容量回線が必要となる。

学校では、最新の機材をリアルに体験できる機会が少ないのでここに来た子どもたちはすごく喜びますね。一度体験をすることで、社会で実装するためにはどんな技術が足りないのだろうか、などその先の発想は自然にすっと生まれていくものです。それまで点だった情報がつながって線になり、完成したソリューションのイメージを膨らませることができる。実際に目で見て触れる体験をすることは、特に若い人たちには重要なことではないでしょうか」

細胞培養向けピペット作業遠隔操作システム

細胞培養向けピペット作業遠隔操作システム

遠隔からロボットアームを正確に操作できる。将来的に、5Gで無線接続を用いることで、高画質映像や制御信号を大容量・低遅延の回線で伝送可能になる。

何事にも代え難い体験ですね。

坂本さん 「私は、大学でインタラクティブアートなどをテーマにした講義をしているのですが、チーム別のプレゼンテーションなどの際、代表して発表するのは女性が増えてきていると変化を感じますね。日本では、小さい頃はロボット教室などで男女一緒に学んでいたのに、工学系に進むのは男性のほうが多い傾向にあります。成長するに連れて、デジタル関連のことを学ぶ場が減ってしまうことも影響していると思いますので、子どもの頃から性別に関係なく興味・関心を持ち続けていく手助けを、この5G X LAB OSAKAが担っていければと考えています」

体感することでこそ生まれるビジネスアイデア

手作業に頼っていた製造業の工程を一変させるソリューション

展示されているソリューションの中で、実用化へ向けて進んでいる取り組みを紹介してください。

坂本さん 「工場など製造現場での設備やシステムを制御する技術であるOT(Operational Technology)に関連するソリューションの実証環境を、このビル内に構築しています。

5GやIoTを活用したOT可視化のシステム

5GやIoTを活用したOT可視化のシステム

中小規模の製造業の現場では、まだまだ人間が生産設備や制御装置などを24時間365日体制で監視し、手作業でデータの記録や収集を行っているのが現状です。生産数や温度などの記録をオペレーターに頼っているので、きちんとしたデータが取れていないことが多いです。そうした情報を自動で取得してサーバーにアップして蓄積し、可視化することができる仕組みになっていて、生産工程のあらゆるデータをいろいろなセンサーや制御盤からの信号を使って採取しています。

カーボンニュートラルに取り組む企業からエネルギーの消費量をしっかり計測したいとの要望があるなど、このソリューションを検討する企業が増えています。

手作業に頼っていた製造業の工程を一変させるソリューション

日野 「小西さんが運営する製缶工場で実際にこのソリューションを試験導入してもらい、効果測定や課題の洗い出しをしてもらいました。収集したデータを送るネットワークやデータの蓄積先は、ソフトバンクのソリューションを使っています。実際に稼働している工場で使ってみて得られた知見をもとに、われわれのお客さまへ提案すると非常に関心を持って話を聞いてくれますね。在阪の企業はもちろん、他のエリアの企業にも提案しています」

製造の現場で実際に活用されているソリューションの話は、とても説得力がありそうですね。

小西さん 「このソリューションそのものを導入しても売り上げが増える訳ではなく、導入した先に生産ラインの稼働率が上がるなどの改善があって初めて利益に貢献するものです。実際の工場で稼働させながら、継続してシステムを改良しているというのは、検討中の企業にとって導入の動機付けの大きい材料になっていますね。データをもとにオペレーションを変更したら不良率が下がったなど、可視化されることで現場のモチベーションアップにもつながります」

日野 「使う人が本当に効果があると感じてくれているか、5G X LAB OSAKAで率直な意見をもらうことで、われわれの提案活動に反映することができています。システムの使い手と作り手が軋轢(あつれき)なく、PDCAのサイクルを回すための場にもなっていますね」

今後、5G X LAB OSAKAをどのように発展させて行きたいですか?

小西さん 「サービス業などへも新しいソリューションを発展させていきたいですね。大阪岸和田市の商業施設で実際に動かして実験しているゴミ箱などもありますね。ネットワークにつながっているゴミ箱が自走してゴミを回収に行くという発想です」

自走するゴミ箱

日野 「製造業以外の業種・業界にも取り組みを広げて行きたいですね。モビリティやロボットなどがネットワークやクラウドにつながる世界は、ソフトバンクが実現したい未来でもあります。こうした未来につながるソリューションのアイデアを5G X LAB OSAKAから発信していければと思います」

(掲載日:2024年9月9日)
文:ソフトバンクニュース編集部