生理中の症状は人それぞれ異なりますが、不快な思いをすることは誰しも同じです。また、性別や年齢に関わらず、生理の知識や対処法を正しく知ることは、プライベートからビジネスまで生活のあらゆる面で、男女がお互いに円滑なコミュニケーションを築くために欠かせません。
そこで今回は、産婦人科医の高尾美穂さんに、生理中の女性に対して周囲の人ができることや、生理期間を心地よく過ごすために知っておきたいポイントなどについて、教えていただきました。また、LOHACOで販売するサニタリー商品の開発担当・中村さんには、開発の背景や商品を通じた社会課題へのアプローチについて話を伺いました。
教えてくれた人
イーク表参道副院長 産婦人科医
高尾 美穂(たかお・みほ)さん
女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長、医学博士・産婦人科専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。婦人科の診療を通して女性の健康をサポートし、 女性のライフステージ・ライフスタイルに合った治療法を提示している。漫才コンビ博多華丸・大吉の博多大吉さんとの共著『ぼくたちが 知っておきたい生理のこと(辰巳出版)』など、著書多数。
目次
生理中は体にどんなことが起こる? 男性も知っておくべき理由とは
ここ数年、テレビでも「生理」という言葉を聞く機会が増えました。生理のイメージが「隠すべきもの」から「オープンに話していいもの」へと変わってきている中、男性の生理に対する理解はどのくらい進んでいるのでしょうか。まずは男性や周囲の人が、生理について理解しサポートする必要性や、知っておきたい生理の基本について、高尾さんに解説していただきました。
生理に対する男性の理解はどのくらい進んでいる?
ひと昔前は「生理は女性だけの問題であり、男性は知らなくていいもの」といった雰囲気がありました。現在、男性の生理に対する理解はどのくらい進んでいるのでしょうか?
「女性に生理があること自体を知らないという人はあまりいないと思いますが、生理のメカニズムや、どんな症状が起こるかなど、“その先” まで理解しているかどうかはグラデーションがあると思います。また、家族構成や世代によっても、生理に対する意識は異なります。これは男性に限った話ではなく、女性間においても言えることでしょう。
では、なぜ今メディアで生理が取り上げられるようになってきたのか? それは、ビジネスの場において、女性の比率が上がってきたからです。性別を問わず働きやすい環境をつくるには、女性特有の健康課題を理解することも必要不可欠。一緒に働く上司や同僚、部下が毎月経験している生理は、男性にとって決して縁遠いものではないんですよ」
男女問わず理解を深めることで、お互いをサポートしやすくなりますね。では、男性は生理についてどの程度まで理解しておけばいいのでしょうか。
「大前提として、女性はゆらぎのある生き物であり、一定の周期で不調になるタイミングがあるということを、まずは知っておいていただけたらと思います。症状や対処法について理解を深めるに越したことはありませんが、ざっくり知っておくだけでも、ある程度の対応やサポートができるはず。コミュニケーションを円滑にし、お互いをサポートために、共通言語を持つようなイメージですね」
生理を “ざっくり” 知るための基礎知識
生理をざっくり知るための基礎知識として、正常な生理とはどのような状態か教えてください。
「一般的に、経血量は20〜140ml、出血は3〜7日続くと言われています。ただ、自分の身に生理が起こるわけではないため、男性はこれらの数字を聞いてもいまいちピンとこないかもしれません。まず知ってもらいたい生理の基本は、毎月数日のあいだ、血が出続ける状態が続くこと。メインになる日があり、その日は特につらいと感じる人が多いこと。それに伴って頭痛や腹痛などさまざまな症状が起こることなど。
それから、1日に何枚もナプキンを替えるため荷物がかさばったり、会議中にトイレに行けなくて不安になったり、薄い色のボトムスが履けなかったり… といった面倒がともなうことも、ぜひ知っておいてほしいですね」
生理中の症状にはどのようなものがありますか?
「生理中の症状は人それぞれで、その程度も人によって異なります。
女性が『生理痛が重い』と言っているのを聞いたことがある男性もいると思いますが、症状が重く生活に支障が出る場合は『月経困難症』と診断されます。そこまでではなくても、痛みやだるさを我慢して仕事をしたり、家事をしたりしている女性は多いもの。痛みだけでなく、経血の量が多い、生理前に不調が起こる(PMS)など、さまざまな悩みが混ざっていることを知っておくと、サポートできる範囲も広がってくるでしょう」
<生理中のおもな症状>
- 下腹部の痛み
- 腰痛
- おなかの張り
- 乳房の痛み・張り
- 吐き気
- 頭痛
- 関節痛・筋肉痛
- 疲労・脱力感
- 手足のむくみ
- 体重の増加
- 食欲不振
- 精神の不調(イライラや不安感)など
- 下腹部の痛み
- 腰痛
- おなかの張り
- 乳房の痛み・張り
- 吐き気
- 頭痛
- 関節痛・筋肉痛
- 疲労・脱力感
- 手足のむくみ
- 体重の増加
- 食欲不振
- 精神の不調(イライラや不安感)など
一般的な生理の状態とは? 正常な生理の目安と体温のサイクルについて解説
一般的に言われている、生理の正常な範囲は次のとおりです。
- 月経周期:25〜38日
- 経血量:20〜140ml
- 出血持続日数:3〜7日
- 月経中の痛みなどの症状はあっても軽度
女性の体温は月経(生理)と排卵を境に変化するもの。生理が始まってから排卵までの期間は一定の体温が続くため「低温期」、排卵後から次の生理開始までの期間を「高温期」と言います。また、高温期は低温期にくらべて体温が約0.3〜0.4度上がります。
誰もが知っておきたい、生理中の女性へのサポート方法と気配りのコツ
生理の基本について理解したら、周囲はどんなサポートができるか知りたいところ。特に男性は「生理について聞きづらい」「何から始めればいいか分からない」といった悩みを抱える人が多いと思います。また、相手との距離感によってサポート範囲は変わってきます。サポートする側、される側の基本的な考え方や、ビジネスシーンやプライベートにおけるサポート方法について、高尾さんにそれぞれ教えていただきました。
お互いが快適に過ごすために、生理中のサポートにまつわる基本的な心構え
サポートする側:つらさに耳を傾け、困っている人に寄り添おう
- 男性の同僚が、おなかが痛くて早退するときも同じこと。不調を抱える人に対して何ができるか、想像力を働かせよう
- 生理による不調は生産性にも影響する。当事者意識を持ち、困りごとやサポートについての理解を深めよう
「まずは『困っている人に対して何ができるか』というスタンスでいることが大事だと思います。生理のサポート方法について知らなかったことを恥ずかしいと思う必要はありません。今は知るべき情報が徐々に発信されつつあるので、少しずつ変わっていきましょう」
サポートされる側:まずは自身が改善アクションを。そのうえでサポートを依頼しよう
- 生理中、4人に1人はメンタルの変化があることを知っておく
- 我慢するのではなく、鎮痛剤を飲む、婦人科で相談するなど、改善策を積極的に試してみる
- 女性同士で生理について話す機会を持つことで、個々人の違いを知る
- 上記の方法を試しても追いつかない部分のサポートを周囲に相談する
- 今は過渡期。生理のサポートについて、すぐに思ったような反応が得られなくても諦めず伝え続ける
「生理の症状が重い人でも、婦人科にかかっている割合は3割強。残り6割の人たちは、自力でどうにかしようとしているのが現状なんです。医学が徐々に進歩し、毎回起き上がれないくらいの症状がある人は減りつつあります。まずは『つらい』と医師に伝えて、周囲がサポートしやすくなるための行動を起こしてみてください」
シーン別サポート方法
ビジネスシーン:チームでサポートし合える関係に
- 同僚との距離感が近ければ『なにかできることはある?』『仕事は進められそう?』と率直に聞いてみる
- チームでサポートするスタンスで、『カバーするね』と提案する
- 自分の組織や部下が調子がよくないときに休みを取りやすい環境づくり、仕組み化に取り組む
「相手との関係によってできることは変わります。よく、部長クラスの男性から『女性社員から、生理について相談されたらどうすればいいか』といった質問をされますが、症状や対処法について答えるのは上司の役割ではありませんし、女性社員も望んでいません。組織のリーダーにぜひ進めてほしいのは、普段からのチームビルディング。周囲につらさを伝えやすい雰囲気づくりや、欠員が出たときにカバーできる仕組み化をお願いしたいもの。生理用品を備品化するといった取り組みもいいと思いますね」
プライベートシーン:「察して」ではなく言葉にして伝え合う
- 何に困っているのか、どうしてほしいのかを尋ねてみて、相手に共感する
- 女性側も、自身の状態や希望を具体的に伝える
「お互いに察してくれるのを待つのではなく、言語化して伝え合うことが大事です。温かいココアが飲みたい、甘いものが食べたい、体が冷えているから温めたい、今日は家デートにしてゆっくり過ごしたいなど、より具体的な気持ちや要望が伝わると、お互いが快適に過ごせますよ」
生理中の女性が心地よく過ごすための6つのポイント
女性が生理期間を少しでも楽に、心地よく過ごすには、どのような工夫が必要でしょうか。生理とうまく付き合うための6つのポイントを、高尾さんに教えてもらいました。男性も、より良いサポートに向けてぜひ参考にしてみてください。
- 痛み止め(鎮痛薬)を上手に使う
痛み止めは、服用するタイミングが大事です。我慢を続けた後に服用しても、あまり効果を発揮しません。先月も先々月も生理で寝込んだという人は『少しおなかが痛いな』と感じたタイミングから1錠目を飲んでみましょう。外来でも実際に伝えていることですが、1日3回飲むタイプを2日間くらい飲んでみると、比較的楽に過ごせることが多いです。用法・用量を守れば、効きにくくなってしまうということもありません
- 体を冷やさない
体の冷えは、生理痛を重く感じる理由になります。シャワーではなくなるべくお湯に浸かって全身を温めたり、おなかまでカバーできるサニタリーショーツや腹巻きなど保温効果のあるアイテムを使ったりして、体を冷やさないようにするのもよいでしょう
- 適度に運動をする
運動習慣がある人の方が、生理痛もPMSも軽く過ごせることが研究で分かっています。とはいえ、無理にハードな運動をする必要はありません。家の中でヨガやストレッチをしたり、出勤時に1駅歩いたりするなど、日常生活の中で体を動かす時間を設けてみてください
- 睡眠をしっかりとる
生理前や生理中にメンタルが落ちやすい人は、とにかく睡眠をとることが大切です。睡眠時間を確保するためにも、生理期間はなるべく早く家に帰れるように、1日のスケジュールを組みましょう
- 自分の体調をよく観察する
生理前や生理中の体調を客観的に眺めてみることで、自分との付き合い方がうまくなっていきます。今日は少し調子が悪いから、ジムに行く予定をやめて家でリラックスしようといった感じで、心地よく過ごすための調整ができるようになっていきますよ
- サニタリーアイテムを見直す
生理中は出血にともなって、ムレやかゆみなどの不快感が生じます。最近は、機能性の高いサニタリーアイテムも続々登場しているので、種類を変えてみることで、ストレスを軽減できるかもしれません。人それぞれ好みのサニタリーアイテムがあると思いますが、旅行用の少量パックなどを利用して、新しいものを試してみるのも手です。また、ジェンダーバイアスが強いデザインのものが多かったこれまでに比べ、徐々にデザインも見直されてきています。そうした商品が今後も増えていくといいですね
生理周期の管理アプリや、吸水ショーツ、月経カップなど、テクノロジーの力で女性特有の心身の悩みを解決に導く製品やサービスを「フェムテック」と言い、今注目を集めています。
生理用ナプキンの新しい使い方を提案。アスクル限定「DAY&NIGHT」
さまざまな日用品を扱う個人向け通販「LOHACO」や事業所向け通販「ASKUL」では、サニタリー用品も購入することができます。アスクル株式会社でサニタリー商品の開発担当を行う中村さんに、独自の商品設計による限定製品の特長や背景を聞きました。
アスクル株式会社 メディカル ヘルスケア&医薬品
中村 夏希(なかむら・なつき)さん
商品MD(マーチャンダイザー)としてヘルスケア商品の市場調査・企画・生産・販売プロモーションなどを担当。2児の母として仕事と子育てに奮闘中。
LOHACOやASKULで扱うサニタリー用品は、どんなコンセプトのもとラインナップされているのですか?
働く女性がどんどん増加すると共に、仕事場での生理に関する悩みとして、さまざまな声が出てくるようになりました。フェムテックにより女性でも活躍しやすい社会の実現を後押しできるような、「女性に寄り添う」サニタリー関連の商品設計を行っています。SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」にも通じる考え方です。
さまざまなメーカーによる、特色のある商品がそろっていますね。
そうですね。例えば大王製紙「エリス 素肌のきもち ナチュラルシリーズ」はパッケージや個包装に無漂白の紙を採用しており、見た目も生理用品らしくなく、そのまま置いておいても違和感のないナチュラルなデザインです。また、職場や学校などで備品化することで多くの人が安心して過ごせる場づくりを目指し、花王「職場のロリエ」をBtoB向けのASKULで提供しています。各メーカーさまの強みを生かした商品企画を行っており、それぞれご好評をいただいています。
そうした中に、ユニ・チャーム「ソフィ DAY&NIGHT 極上フィット」という新しい商品が加わりました。
今年の10月から販売開始しています。名前の通り昼夜兼用のナプキンで、ユニ・チャーム「ソフィ 超熟睡 極上フィット 340」という夜専用ナプキンを元にパッケージを一新する形で発売しました。一般的な昼用ナプキンは20~30cmのところ、この商品は34cmと夜用のサイズです。それでいて、夜用の特徴としてよくある「分厚くてごわごわ」しているものではなく、スリムな形状でもしっかりフィットする構造になっているので、昼間につけても違和感なく、安心感との両立を実現しています。
ユニ・チャーム「ソフィ DAY&NIGHT 極上フィット」
生理用ナプキンの昼夜兼用という新しい使い方を提案。使い分ける必要がなく、商品選択や交換の手間を軽減してくれる商品です。
昼夜兼用は、ありそうでなかった商品ですね。
オフィスでの長時間会議や店舗で接客をする女性社員は、こまめにトイレに行けないといった困りごとがあります。ユニ・チャームさまの調査によると、日中帯に夜用の商品を使っている方が一定数いることが分かりました。これは、いつでも安心して過ごしたいというニーズがあるということ。そうした心理的負担に対して解決できる商品だと思います。また、生理期間中の状態に合わせて複数の商品を使い分けている方が多いと思いますが、この商品であれば1種類で済みますので、在庫管理の面でもメリットがあります。実際、管理が面倒だという意見も多いんです。
忙しい毎日の中、気にしなければいけないことがひとつ減るのは確かにありがたいです。
ユニ・チャームさまの生理用ナプキンは、昼用と夜用でそれぞれブランドが分かれています。しかし先に挙げたようなニーズを受け、夜用に適した商品を昼間にも使っていただけますというメッセージを込めて「DAY&NIGHT」を発売しました。お客さまファーストでモノ作りが進められた成果だと思っています。
パッケージも今までにないようなデザインですね。
「DAY&NIGHT」をデザインで表現するために、表と裏にそれぞれ朝日と月の写真をあしらいました。生理のときでもさわやかな朝を迎え、夜は安心して眠りについてほしいというメッセージを込めています。写真以外の部分はあえて真っ白にすることで、いい意味で生理用品ぽくない印象に。余白があるシンプルさが、コスメのようで女性に受け入れやすかったようです。また、LOHACOで購入した他の商品と一緒に梱包(こんぽう)されることを考えると、誰が段ボールを開けても違和感がないデザインはうれしいですよね。
商品自体もパッケージデザインも新しい試みですが、商品開発はスムーズに進んだのでしょうか?
昼夜兼用のコンセプトを初めて見たとき、「お客さまの反応はどうだろう」と少し懸念していました。ですがユニ・チャームさまと打ち合わせを重ね、社内でテストなどを経た結果、とてもフィットして使いやすく、昼も夜も使える商品だと自信を持って提案できるものになりました。パッケージも、検討段階ではさまざまなバリエーションがありました。コンセプトを伝えるには文字で強調した方がいいかと考えていたところ、お客さま調査では違う結果に。写真とシンプルな背景の組み合わせに20~30代から多くの支持が集まったんです。ジェンダーレスなデザインになじみのある世代がどんなものを好むのかを知る良い機会になりましたね。
生理用ナプキンの新しい使い方が広まっていくといいですね。
発売したばかりなので、お客さまからの反響はこれから分かると思います。女性一人一人が自分に合う商品を選べるよう、これからもお客さまに寄り添った商品を提供していきたいと思います。
仕事場やくらしのお悩み、社会課題の解決につながる商品が勢ぞろい
2024年11月9日(土)~10日(日)に開催される「いい明日がくる展」では、ASKUL・LOHACOがパートナー企業とともに開発した「いい明日をつくる商品」を展示。10月から販売開始した「ソフィ DAY&NIGHT 極上フィット」も紹介されています。
(掲載日:2024年11月5日)
文:ソフトバンクニュース編集部