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能登を再び襲った災害。豪雨被害からのネットワーク復旧に携わった社員に話を聞いた

地震と豪雨の“二重被災”。能登半島でのネットワーク復旧へ再び訪れた社員に聞いた作業の裏側

2024年9月21日から22日にかけて、石川県能登半島北部を襲った記録的な豪雨。同年1月1日に起きた能登半島地震からの復興を目指す中、"二重被災" という厳しい状況をもたらしました。
ソフトバンクの通信ネットワークにおいても、地震の被害から恒久復旧を目指す道半ばでの被災。豪雨発生当日から復旧作業に取り組み、実際に現地へ向かった社員に話を聞きました。

左:課長 水上 雄斗/右:佐々木 隆洋

テクノロジーユニット統括 エリア建設本部
北陸ネットワーク技術部

左:課長 水上 雄斗
右:佐々木 隆洋

左:南部 和浩/右:岩井 郁也

テクノロジーユニット統括 エリア建設本部
ネットワーク推進部

左:南部 和浩
右:岩井 郁也

左:黒島 睦志/右:星川 修司

テクノロジーユニット統括 エリア建設本部
関西ネットワーク技術部

左:黒島 睦志
右:星川 修司

能登半島地震からわずか8カ月後に起きた豪雨災害

輪島市町野町(石川県ホームページから)

輪島市町野町(石川県ホームページから

現地の状況はいかがでしたか?

佐々木 「能登半島全域が被害を受けた地震の規模と比較すると、豪雨は北部地域だけだったので局地的な災害でした。ただ、大雨による河川の氾濫や土砂崩れによって、昨日まで通れた道が今日は通れなくなっていたり、雨が落ち着いても土壌が緩くなることで二次被害が発生するなど、改めて水害の恐ろしさを感じました」

能登半島地震からわずか8カ月後に起きた豪雨災害
輪島市久手川町(石川県ホームページから)

輪島市久手川町
石川県ホームページから

南部 「地震のときも、豪雨のときもですが、被災地から離れた金沢市内では、何もなかったように普段の生活が続いていました。実際に現地へ行ってみると、道路が寸断されたり、半分崩落していたり。おそらく地方のあまり使われていないような道路は、地震が起こった当時のままなんじゃないでしょうか。そういったところが数多く残っているように思います」

能登半島地震からわずか8カ月後に起きた豪雨災害
能登半島地震からわずか8カ月後に起きた豪雨災害

黒島 「私が現地に入ったのは、発災から1週間ほど経過していました。機材を車に乗せて現場に向かい、高速を降りたら、もう本当に大変な状況で。南部さんもおっしゃっていたように、そのギャップが強く印象に残っています」

震災からの教訓。官民一体で取り組み迅速な復旧を

震災を受けて、能登豪雨では石川県や自治体から各事業者へ、可及的速やかに現地で困っている方やお客さまの通信手段の確保を行うよう要請がありました。

ソフトバンクは、避難所での通信サービス提供を優先し、衛星ブロードバンドインターネットサービス「Starlink Business」による無料Wi-Fiサービスの提供を開始。また、CSR部門などと連携しながら、仮設住宅のケアを行ったり、避難所やソフトバンクショップ・ワイモバイルショップでの無料充電サービスの提供などを行いました。

震災からの教訓。官民一体で取り組み迅速な復旧を

Wi-Fiで避難所の通信を確保。初動対応は「Starlink Business」で

通信事業者間の取り組みにも変化があったそうですね。

水上 「大規模な災害が発生した際は自治体や総務省、自衛隊など各関係省庁とのパイプ役となる “リエゾン” を、主に県庁で設置される災害対策本部に派遣し、企業間で情報連携し合いながら復旧・支援にあたります。今回、石川県庁から、1社以上電波がつながっていない避難所に対し、通信事業者間で分担してWi-Fiを配置するよう明確な指示がありました。発災から3日後には全ての避難所へ『Starlink Business』のアンテナ設置が完了しています」

Wi-Fiで避難所の通信を確保。初動対応は「Starlink Business」で

震災を受けて改善されたことだったのでしょうか?

水上 「県や北陸総合通信局、通信事業者間で震災時の振り返りを行う中で、被災者に対する『通信手段の早期確保』がポイントになっていました。震災時は、各通信事業者が五月雨に同じ場所へ、同じような対策を行っていたんです。お客さま目線でいうと非効率ですよね。いずれかの事業者1社が、避難所でWi-Fiを設置できればいい訳ですから。その振り返りが、今回生きたと思います」

「避難所向けシステム」でソフトバンクの通信ネットワークを応急復旧

Wi-Fiによる避難所での通信が確保された後、新しく開発された「避難所向けシステム」が導入されました。

南部 「『避難所向けシステム』は、暫定的な通信ネットワーク復旧手段として、『Starlink』とソフトバンクの小型無線機およびWi-Fiルーターを組み合わせたもので、2024年7月から全国のネットワーク拠点に配備し始めたばかりのものでした」

2024年9月 石川県珠洲市の避難所で設置
2024年9月 石川県珠洲市の避難所で設置

2024年9月 石川県珠洲市の避難所で設置

岩井 「無料Wi-Fiサービスでデータ通信が使えるようになるので、LINEで連絡を取ったり、ネットが使えます。ただ、LINE電話は使えるものの、通常の通話はできません。このシステムを設置した避難所では、ソフトバンクの通信サービスが使えるようになるので、ソフトバンク回線をご利用のお客さまは電話やSMSなど、普段使っているサービスと全く同じものが使えるようになります」

設置する場所にはいろいろと制約もありそうです。

南部 「そうですね。避難所の皆さんの迷惑にならない場所というのが一番です。また、衛星通信を受信するため屋外にアンテナを設置し、避難所へケーブルを引き込むので、アンテナからの距離も考慮する必要があります」

岩井 「例えば、運動場の真ん中や屋上など、周りに電波を遮るようなものがない場所だと、衛星通信を受信しやすいものの、そこから避難所となっている体育館にケーブルを敷くには、結構な距離となり現実的に厳しい。ギリギリ通信ができるような場所を探して折り合いをつけないといけないので、そういったところは現地に行かないと分からないことです。今回の災害でうまく稼働したので、今後台数を増やしていく予定となっています」

待ち受ける困難。一刻も早い通信エリア復旧を

待ち受ける困難。一刻も早い通信エリア復旧を

「行きたいけど、行けない」ー。
地震でも、豪雨災害でも、一刻も早く被災した基地局へ向かい、通信ネットワークを復旧したいと焦る気持ちがあります。しかし、土砂や崖崩れなどで行く手を阻まれ、なかなか現地へ向かうことができない状況がありました。

日々状況が変わる中での基地局復旧活動

周辺基地局はどのような状況でしたか?

佐々木 「いくつかの基地局では、豪雨による河川の氾濫や大量の雨が降った影響で、設備が水没したり、流されるなどの被害が発生しました。地震ではなかったことです。また、前述の通り、道路状況が悪く、現地へ向かう車がスタックする事案が何件か報告されています。日々状況が変わるので、どうやったら現場にたどり着けるのか、現場で復旧を行う班の安全確保やケアには気が抜けませんでした」

水上 「行きたいけど行けないという基地局が、豪雨災害でも多々発生しました。基地局までたどり着くためには、県や北陸総合通信局、通信事業者間で連携し、土木事業者に依頼して土砂や流木を撤去します。基地局に安全にたどり着けたら、晴れて応急復旧にとりかかる。このプロセス調整は、震災時と同様に苦労しました」

日々状況が変わる中での基地局復旧活動

佐々木 「ようやくたどり着けた基地局では、衛星通信とつなぐ可搬型衛星アンテナなどを伝送路として利用することで、応急復旧を行います。豪雨災害では累計30台ほどの可搬型衛星アンテナを使って対応しました」

日々状況が変わる中での基地局復旧活動

通信不通の空白エリアをドローン基地局で広範囲にカバー

発災から1週間ほど経過して、ドローン基地局が立ち上がりました。どういう条件で稼働するのでしょうか?

黒島 「復旧までに時間がかかりそうなエリアという前提があるのですが、お困りのお客さまがいるエリア、居住している方がいるエリアなど幾つかの条件で選定しています。ただ、ドローンが飛行できる場所というのは、半径30m以内に人が入れないことが必須なので、その条件に見合った場所が必要となります」

どのくらいの広さをカバーできるのでしょうか?

星川 「ドローン基地局は、移動基地局などと比較すると、カバーエリアの範囲が圧倒的に広いということが利点です。おおよそアンテナが見える範囲に通信サービスを届けることができます」

星川 「今回ドローン基地局が飛行したのは、石川県輪島市の門前町になりますが、他にも候補地が3つほどあって。現地に行かないと飛行できるかどうか分からず、第一候補が駄目なら、第二候補に行こうという話を事前にしていました」

黒島 「ただ、候補地が変更になると改めて許可申請が必要となり、復旧が遅れ、お客さまにご迷惑をおかけすることになります。実は、当日行ってみると飛行が難しい場所だったんです。本当に時間との勝負なので、焦りしかなくて。そのとき、すぐ近くで農作業をしていたおじいさんがいらっしゃって、ドローンを上げに来たことを伝えると、『うちの畑を使いなよ。車も入れていいよ』とおっしゃっていただいて。本当に助かりましたね」

通信不通の空白エリアをドローン基地局で広範囲にカバー

恒久復旧への長い道のり。8カ月積み上げた対応が振り出しへ

恒久復旧への長い道のり。8カ月積み上げた対応が振り出しへ

ソフトバンクは、震災後、全社を挙げて通信ネットワークの早期復旧に取り組み、進入困難箇所を含めた被災地全域において、2024年2月27日に応急復旧しました。その後、恒久復旧対応に取り組んでいる中での再びの被災。長い道のりが再び始まります。

地震で被災した基地局の復旧を進めている中での豪雨災害となりました。

佐々木 「8月末に私が現地で立ち合い、恒久復旧した局があったんです。周りに木が生い茂っていた場所でしたが、豪雨で焼け野原みたいに何もない状態になっていました。洪水で一気に流されて、基地局もフェンスも倒壊していて。どう考えても流木が流れてくるようなところじゃないんですけどね」

恒久復旧への長い道のり。8カ月積み上げた対応が振り出しへ
恒久復旧への長い道のり。8カ月積み上げた対応が振り出しへ

8カ月かけて取り組んでいたものが流されてしまったと。

水上 「恒久復旧に向けて、いろいろと取り組んでいた中での災害は、やはりショックです。震災以降、今まで積み上げてきたものが振り出しに戻ってしまったという感覚が、しばらく残りました」

被災した基地局の現在の状況は?

佐々木 「震災前に稼働していた基地局のうち、豪雨災害時点でも暫定運用している局がある中で、さらに今回の災害が起きました。いまだにたどり着けていない基地局があるというのが実情です」

水上 「今もなお、道路啓開が必要なところが多く残されていて、被害の大きい箇所では数年かかるだろうと言われてます。なので、もしかしたらこの先数年、復旧できない基地局があるかもしれない。サービス復旧が必要なエリアについては、地道な取り組みが必要になってくると思います」

被災地の皆さんと共に向かう復興。受けた温かさへの感謝

「ソフトバンクさんがいち早くたどり着いてくれてよかった」という声をいただくこともあった災害対応。被災地の皆さんから復旧活動をサポートいただく場面もあったと言います。

私たちの活動をお手伝いいただくことがあったそうですね。

水上 「発電機の燃料がなくなると、通信サービスも止まってしまうのですが、地元の方がガソリンの給油を手伝ってくださるなど、ご協力いただいたことがありました。本当に感謝しています」

星川 「震災での話になるのですが、ベースキャンプとなるホテルで、われわれの作業に手を貸してくださったり、何かお願いするような場面でもすぐ口頭で承諾いただけるような、そういうことが多かったですね」

黒島 「ドローン基地局を立ち上げるにあたって、農家の方に会えたっていうのは幸運でした。被災された中でも、われわれのことを受け入れてくださったことが、非常にありがたいなと。温かいなと」

そんな皆さんの生活を立て直すためにも、ソフトバンクができることをしていきたいですね。

黒島 「実は災害対応で、被災地に行くことが初めてだったんです。そのこともあって、被災された皆さんが普段の生活を営もうとしていらっしゃる姿が、すごく心に残っています。
現地へ行く途中、家が土砂に覆われていたり、流れ込んでいたりしているのを目の当たりにして、誰もが避難所などに行ってるんじゃないかと思っていたんです。でも、そこには日常の生活があって、家を建てる工事が進んでいたりする。被災地の皆さんの姿を見ていると、いち早く復旧させなきゃいけないと改めて強く思いました」

水上 「通信の確保はわれわれの使命であると再認識し、その重要性を心に刻みました。能登復興に向けた思いはソフトバンクも同じです。一日でも早く恒久復旧できるよう、北陸一体となって取り組んでいきたいと思います」

(掲載日:2024年12月2日)
文:ソフトバンクニュース編集部