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文章だけで動画が作れる。誰でも気軽に始められる「動画生成AI」の使い方

カメラも編集ソフトもいらない。生成AIで始める新しい動画制作の可能性

「動画って、作るのが難しそう…」。そんな常識を覆すのが、「動画生成AI」。撮影や編集の手間を大幅に省き、誰でも手軽に動画が作れる時代がやってきました。最近では企業のCMやSNSコンテンツにも使われるようになり、ますます身近な存在に。そこで今回は、動画生成AIの基礎知識や、使い方などについて、AICX協会代表理事の小澤健祐さんにうかがいました。

編集・字幕・翻訳までAIが対応! 専門的なスキル不要で動画が作れるように

最近、動画プラットフォームやSNSで存在感を増している「動画生成AI」。まずは、動画生成AIがどのようなツールなのか、そしてどんな機能があるのかについて、小澤さんに解説していただきました。

はじめに、動画生成AIとはどのようなツールなのか教えてください。

小澤さん 「動画生成AIとは、テキスト(プロンプト)や画像、音声などを入力することで、リアルな映像やアニメーションを自動的に作成できるツールです。カット割りや効果音、BGMの追加などもAIが補完してくれるツールもあり、専門的なスキルがなくても、誰でも手軽にクリエイティブな映像を制作できるのが特徴です」

動画生成AIを活用するメリットについて教えてください。

小澤さん 「動画生成AIの最大のメリットは、撮影や編集にかかるコストを大幅に削減できる点にあります。それにより、動画活用の幅がこれまで以上に広がる可能性があり、とても面白いツールだと感じています。

例えば、今後はインターネット上のさまざまな静止画像が動画として動くようになるかもしれません。記事内の画像がすべて5秒程度の短い動画になったら、よりリッチな表現ができて面白いですよね。また、タレントがアバター化してメディアに登場するケースが増えていく可能性もあります」

動画生成AIを使うと、どんなことができるのでしょうか?

小澤さん 「例えば、テキストで指示したイメージに沿った動画の生成や、静止画をもとにしたアニメーションの生成が可能です。また、アバターを使った動画制作や、既存の動画に対する編集、さらには自動で字幕をつけたり、翻訳したりすることもできます」

文字や画像だけで動画が完成!? 動画生成AIツールの使い方と選び方

文字や画像だけで動画が完成!? 動画生成AIツールの使い方と選び方

ここからは、動画生成AIの基本的な使い方について、小澤さんに解説していただきます。さらに、代表的なツールを比較し、それぞれの特徴や適した用途もご紹介。使い方のポイントを押さえて、オリジナルの動画を作ってみましょう!

動画生成AIの基本的な使い方

動画生成AIを初めて使う方に向けて、基本的な使い方を教えてください。

小澤さん 「動画生成AIで動画を作る方法は、大きく次の2通りに分けられます。

  1. テキストから動画を作る
    AIにプロンプトを入力して、その内容に沿った動画を生成する方法です。例えば『海辺を歩く犬』と入力すれば、そのイメージに近い動画が作られます。
  2. 画像から動画を作る
    写真やイラスト、スケッチなどの静止画をもとに、動画を生成する方法です。画像生成AIを使い、動画にしたいシーンの画像を用意しておくのも有効です。

個人的には、画像から動画を作った方が、イメージ通りの仕上がりになりやすいと感じています。というのも、例えば『渋谷のスクランブル交差点』と一言で言っても、何人くらい人がいて、時間帯は何時で、背景の広告はどんな感じかなど、描きたい世界観を細かく指定しようとするとキリがないからです。細部までこだわるほど、テキストだけで表現するのは難しくなります」

初心者でも使いやすい!代表的なツール4つを紹介

動画生成AIの代表的なツールについて教えてください。

小澤さん 「現在、さまざまな動画生成AIツールが登場していますが、今回は代表的なツールを4つピックアップしました。ツールごとに得意な機能や特徴が異なるので、まずは①どんなデータをもとに動画を作るのか、②どのくらいの長さの動画を作りたいのか、を明確にしてからツールを選ぶのがおススメです」

サービス名
(提供企業)
特徴
Sora
(OpenAI)
テキストから動画を生成するツール。単純な動きだけでなく、「カメラが追いかけながら」などのシネマティックな構図や演出もある程度再現できる。
Veo3
Google
テキストや画像から動画を生成するツール。映像だけでなく、環境音、効果音、人物の会話などの音声も同時に生成。
Runway
(Runway AI)
テキストや画像から動画を生成するツール。直感的で使いやすいインターフェースで、初心者でも使いやすい。
Canva
(Canva Pty Ltd.)
テキストから動画を生成するツール。テンプレートが豊富で、各種SNSに合わせた動画が簡単に作成できる。

動画生成AIを使いこなすには? 文章生成AIとの組み合わせで精度アップ!

初心者でも、理想に近い動画を生成するコツはありますか?

小澤さん 「動画生成AIを使用する前に、作りたい動画のイメージを、ChatGPTやGeminiなどで生成するといいと思います。例えば、犬が歩いている動画を作りたい場合、ChatGPTに『犬が歩いている動画を生成したいからもっと詳しくプロンプトにして』と指示すると、犬種やシーン、歩き方、背景、時間帯、視点、カメラの動きなど、動画生成に必要な要素を提示してくれます」

動画生成AIを使いこなすには? 文章生成AIとの組み合わせで精度アップ!

小澤さん 「必要な要素を提示した後、AIが具体的なプロンプトの例を生成してくれます。例えば、今回の場合は以下のようなプロンプトが生成されました。

早朝の柔らかい日差しが差し込む広い草原で、穏やかな顔をしたゴールデンレトリーバーがゆったりと歩いている動画。カメラは犬の横顔を並走するようにスムーズに動き、犬の毛並みや筋肉の動きがはっきりと分かるように高画質で描写する。背景にはわずかに揺れる草や、遠景にぼんやりとした森林が見える。全体的に温かく落ち着いた雰囲気で、リアリスティックな描写を心がける。

より都会的な雰囲気の動画にしたいので、ChatGPTに「もう少し、都会感を出すプロンプトにして」と入力してみましょう。

動画生成AIを使いこなすには? 文章生成AIとの組み合わせで精度アップ!

すると、犬種がゴールデンレトリバーから、フレンチブルドッグやトイプードルなどの小型犬に変わりました! 場所も都心部の大通りや、洗練された街路樹がある歩道などより具体的に。

プロンプトは、以下のように変更されました。

夕暮れ時、都会の洗練されたショッピングストリートを、スタイリッシュなトイプードルが飼い主とともに軽やかに歩いている動画。トイプードルは丁寧にトリミングされ、おしゃれなリードを着けている。背景には明るく照らされたブランドショップのショーウィンドウや、街灯の柔らかい光が映り込み、都会らしい上品な賑わいが伝わる。カメラは犬の目線に合わせて並走し、時折正面や足元を映しながら、毛並みの質感や表情を細かく鮮明に捉える。全体的にシネマティックかつリアルな4K映像で、都会の活気と洗練された雰囲気が伝わるよう描写する。

上の文章を動画生成AIに入力してみると、トイプードルが街中を飼い主と歩く、まるでCMのような動画ができました!

動画生成AIを使いこなすには? 文章生成AIとの組み合わせで精度アップ!

このように、プロンプトを一度生成した後、イメージに合わせて調整を加えてから動画生成AIに入力すると、プロンプトに沿った動画が生成されます。ツールによって生成される動画が少しずつ異なるため、自分の理想に近い動画を作るためにも、さまざまなツールを試してみることをおススメします」

動画生成AIはどこまで進化する? 活用時の注意点と今後の展望

ここからは、動画生成AIの活用事例と、使用する際の注意点について、小澤さんに教えていただきます。さらに、急速に進化する動画生成AIの今後についても、見解をお聞きしました。

業界問わず活用が進む動画生成AIの活用事例

動画生成AIは、どのようなシーンで活用されているのでしょうか? 具体的な活用事例を教えてください。

小澤さん 「広告やPR動画の制作、SNS用のショートコンテンツ、製品マニュアルやデモ映像、さらにはオンライン研修用の資料作成など、さまざまなシーンで活用されています。

動画生成AIは、クリエイティブな業界で使用されるイメージが強いかもしれませんが、実は多くの業界で有用なツールです。例えば、『渋谷のスクランブル交差点のど真ん中に一軒家を建てたらどうなる?』と入力すると、そのシミュレーションを生成できます。この例は少し極端ですが、このようなシミュレーションは不動産業界などで活用できそうですね」

業界問わず活用が進む動画生成AIの活用事例

作るとき・見るときの注意点

ビジネスシーンや日常生活で動画生成AIを使用する際の注意点を教えてください。

小澤さん 「注意点は3つあり、1つ目は著作権侵害のリスクを考慮することです。例えば人物やキャラクターなど固有名詞を入力して動画を生成すると、著作権を侵害したり、不正競争防止法などに違反したりする恐れがあります。

2つ目は、商用利用の確認です。ツールによっては商用利用が許可されていない場合もあるので、利用前に確認が必要です。

3つ目は、生成された情報の正確性です。フェイクコンテンツや不正確な情報を意図せず生成してしまうリスクがあるため、その点にも十分注意が必要です」

動画生成AIを用いて作成された動画を「視聴する」際の注意点はありますか?

小澤さん 「2016年の熊本地震の際には、『動物園からライオンが逃げた』という画像付きのデマがSNSで拡散され、瞬く間に広まりました。動画生成AIは非常に便利なツールですが、その反面、悪用しようとする人も存在します。情報を鵜呑みにせず、必ずその情報がどこから来ているのか、信頼できるソースかどうかを確認することが重要です」

次なる課題は、現実世界を知ること。動画生成AIの未来とは

動画生成AIは、今後どのように発展し、活用されていくと思われますか?

小澤さん 「現在の動画生成AIには、大きな課題があります。それは、現実世界のあらゆる概念を完全に理解・学習するのが難しいということです。例えば、Soraに『きびだんごを持ちすぎた桃太郎』というプロンプトを入力したところ、生成されたのは子どもが肉まんを抱えているアニメーションでした。これは、生成AIがきびだんごという日本固有の文化的概念を正しく理解していなかったために起きた例です。つまり、現実世界を学ばなければ、動画生成AIはこれ以上進化しないんですね。

次なる課題は、現実世界を知ること。動画生成AIの未来とは

ただし、今後AIロボットが発達していくことで、動画生成AIも現実世界の概念をより深く学習できるようになると考えられます。例えば、AIロボットが実際に渋谷のスクランブル交差点を歩くようになれば、その体験をもとに、動画生成AIでもよりリアルな渋谷の交差点の映像を再現できるようになるかもしれません。

このように、現実世界の情報とAIが連携していくことで、表現のリアリティが増すだけでなく、シミュレーションなどの応用もより簡単かつ正確に行えるようになるなど、AIの可能性はますます広がっていくと感じています」

動画生成AIは、表現のハードルを下げ、誰もがアイデアを形にできるツールです。「動画の制作って難しそう」というイメージを持っていた人にこそ、動画生成AIは強い味方になってくれるはずです。ぜひ気軽に試して、自分だけの動画表現を楽しんでみてください!

小澤 健祐(おざわ・けんすけ)さん

教えてくれた人

AICX協会代表理事

小澤 健祐(おざわ・けんすけ)さん

「人間とAIが共存する社会をつくる」をビジョンに掲げ、AI分野で幅広く活動。著書『生成AI導入の教科書』の刊行や1000本以上のAI関連記事の執筆を通じて、AIの可能性と実践的活用法を発信。一般社団法人AICX協会代表理事、一般社団法人生成AI活用普及協会常任協議員を務める。また、さまざまなAI企業の経営にも参画。

(掲載日:2025年7月7日)
文:東谷好依
編集:エクスライト