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在庫リスクゼロで廃棄問題も解決。「Made by ZOZO」が描くサステナブルなアパレル業界の形|SoftBank SDGs Actions #35

大量生産・大量廃棄を “売ってから作る” 新たな形で解決。生産支援プラットフォーム 「Made by ZOZO」|SoftBank SDGs Actions #35

「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」というコンセプトを掲げ、SDGsの実現に向けて取り組んでいるソフトバンク。「SoftBank SDGs Actions」では、いま実際に行われている取り組みを、社員自らの言葉で紹介します。35回目は、ファッション業界の課題である大量生産・大量廃棄を解決するための生産支援プラットフォーム 「Made by ZOZO」を提供する株式会社ZOZOの取り組みです。

鈴木 大輔(ずずき・だいすけ)さん

株式会社ZOZO 生産プラットフォーム開発本部 本部長

鈴木 大輔(すずき・だいすけ)さん

大学を卒業後、IT系企業にてシステム開発に携わった後、2018年11月にプロジェクトマネージャとして株式会社ZOZOテクノロジーズ(現株式会社ZOZO)に入社。プライベートブランド事業に参画し、その後マルチサイズ事業のシステム開発を担当。2021年4月より生産プラットフォーム開発本部 本部長に就任。

オペレーションの仕組み化で多様なニーズに応えながら迅速な生産を実現

アパレル業界では長年にわたり、大量生産による過剰在庫や廃棄の問題が指摘されてきました。特に、大量の水やエネルギーを使用する製造工程は、環境への影響が大きく、深刻な課題です。アパレル産業は石油産業に次いで環境汚染の原因となる産業といわれており、水質汚染やCO₂排出量の多さが懸念されています。また、工場の作業員が業務を一度覚えて同じ作業を繰り返せば良い大量生産は、品質も安定しやすく、結果として1枚あたりの作業コストを抑えることができます。
これに対し、ZOZOは従来のアパレルの常識を覆す “売ってから作る” 受注生産方式を導入した生産支援プラットフォーム「Made by ZOZO」を提供し、環境負荷の低減や多様なニーズへ対応できるようにしました。販売商品はたくさんあるけど在庫はない、必要な分を必要なだけ作ることができる、柔軟かつ効率的な生産体制となっています。

ファッション業界を、「在庫リスクゼロ」へ。

「Made by ZOZO」の大きな特長は、ZOZOが持つ膨大なファッション関連データと、プライベートブランド事業のノウハウを活用した「マルチサイズ」などのサービス、D2C事業等を通じて培ってきた服づくりのノウハウを組み合わせている点です。注文が入ってから商品の生産を開始し、最短10日で出荷可能な体制を実現しています。ブランドさま側は在庫リスクを大幅に削減できるうえ、消費者にとっても多様な選択肢が提供されるというメリットがあります。

注文に応じて「1着から」生産注文から最短10日で発送

一般的なアパレル工場では、パンツのようにパーツが多い商品では、ポケットを縫う担当、ポケットを本体に取り付ける担当、ベルト部分を仕上げる担当など、工程ごとに作業者が分担し、流れ作業で製造が進む「ライン生産方式」を採用しています。
私たちも同様にライン生産の仕組みを採用していますが、3,000以上の商品を常時販売しているので、工場スタッフが「この商品のベルトはどんな仕様だったか」といった細かい情報を全て記憶するのは困難です。そこで、各作業ポジションの横にタブレットを設置し、縫製等の作業を行うタイミングで、手元の 画面上にその商品の情報や作業指示が自動的に表示される仕組みを導入しています。作業内容は基本的にポジションごとに共通化されていて、ポケット担当の人であれば、どの商品のポケットであっても一貫して対応できるようになっています。それぞれの作業に必要な手順も、タブレット上で適切に案内されるため、暗記しておく必要はありません。徹底したデジタル化に加えて、オペレーションを仕組み化することで、作業の属人性を抑え、複雑な商品展開にも柔軟に対応できる体制を構築しています。

オペレーションの仕組み化で多様なニーズに応えながら迅速な生産を実現

また、ZOZOTOWNの年間の購入者数は1,200万人以上にのぼり、日本の人口のおよそ1割の方が利用している計算になります。この膨大な販売データをもとに、「この先、何がどれくらい売れるのか?」という予測を行っています。具体的には「直近数週間後にどれくらい売れるか」という単位で需要を見積もり、それに合わせて素材を調達するという、細かいサイクルで運用しています。

受注生産方式を活用したサステナブルな製品づくりとインクルーシブウェアの開発

「Made by ZOZO」の受注生産方式を活用することで、アップサイクル素材を用いたサステナブルな製品づくりや、ユーザーニーズに対応可能なインクルーシブウェアの開発にも取り組んでいます。

海岸で拾ったゴミをアパレル製品にアップサイクル

海洋プラスチックの活用では、単に素材を取り入れるだけでなく、ではなく、自分たちも回収の活動に参加させていただき、実際に知る、見る、触れることを意識して行っています。2023年にはブランドさまと共同で漂着ペットボトル等を原料とした再生繊維等から生まれたデニム生地を用いたアイテムを展示するポップアップストアを開催し、ZOZOTOWN上で販売も行いました。千葉県の浜辺でも定期的にビーチクリーン活動を実施しており、2024年には、海岸で拾ったペットボトルのキャップを服のボタンなどに活用しています。微力ですが環境への配慮も考え、現場にも足を運んで、アップサイクルの可能性を広げていきたいと考えています。

オペレーションの仕組み化で多様なニーズに応えながら迅速な生産を実現

当事者のリアルな声を取り入れて多様なニーズにも対応

当事者のリアルな声を取り入れて特別なニーズにも対応

障がいを持つ方や介護者のリアルな声を取り入れて開発された、インクルーシブデザインの服を受注生産する「キヤスク with ZOZO」の取り組みも行っています。「Made by ZOZO」の受注生産方式の強みを生かし、多様な体型・身体状況に対応できる柔軟な設計で、誰もが自分に合った服を選べる環境づくりに注力しています。

たとえば「チェアーパンツ」は、車椅子利用者向けに設計されており、バックポケットがなく、臀部(でんぶ)中央の縫い目も省かれているほか、左右どちらか、または両方の側面が大きく開く構造になっています。介助する人にとっても非常に着脱がしやすい設計で、寝たきりの方でも服を着させやすいよう工夫されています。

障がいを持つ親族がいる社内メンバーが当事者家族としての視点を商品開発に生かし、インクルーシブな服づくりを形にしてきました。かつてインクルーシブウェアの展開は、多くのブランドがチャレンジして来ましたが、先に在庫を持たなければならず、サイズや仕様のバリエーションをそろえることが難しいため、持続的に続けるのが困難でした。受注生産方式のメリットを生かし、「脇が右だけ開く」「左だけ開く」といった細かい仕様違いも在庫リスクなしに提供可能で、1点からの生産でも利益が出る設計になっているため、ビジネスとしても持続可能なんです。
サイズ展開も豊富で、もともとZOZO独自のサービス「マルチサイズ」により最大56サイズ展開をしていましたが、それに加えて昨年冬には、身長・ウエストそれぞれ6XS~2XSまたは100cm~140cmの組み合わせによる小さい13サイズを追加しました。これにより、最大で69サイズまで拡張しています。生まれつきの障がいだけでなく、事故や病気で障がいを負った方など、身体状況が多様な方々にも対応できるよう設計されています。この豊富なサイズ展開も、Made by ZOZOだからこそ実現できている仕組みです。

チャックの深さもカスタマイズが可能

ファスナーは4分開き、9分開きなど複数パターンを展開

「キヤスク with ZOZO」は、は障がいや病気のある人への服のお直しオンラインサービスを提供する企業「キヤスク」との協業から生まれました。「既製品のパンツを買って脇を開けてほしい」といった依頼が多く寄せられていたという事実を受け、最初からその仕様で作るという発想が生まれたんです。
実際に特別支援学校などを訪問し、介助される方・介助する方の双方に意見をもらいながら試作品を作り上げています。その結果、小柄で痩せている方のニーズにも応えるため、予定以上に小さいサイズまで展開するようになりました。中には、「普段はキッズサイズを買わざるを得ないけどできれば大人用が着たい」という切実な声もありました。そのため、「大人サイズの中の小さいサイズ」「大人サイズの中の大きいサイズ」として、たとえば “6XS” や “3XL” のような表記を採用しています。

「こういう服が欲しい」と思ったときに形にできる圧倒的な対応力を持ちたい

「Made by ZOZO」は非常に新しい取り組みなので、ブランドさまにご紹介すると「本当にそんなことができるの?」と驚かれることが多いです。ファッション業界では一般的に、お客さまに実際に商品を手にとって魅力を感じていただくため、また店頭でいつでもお買い物をお楽しみいただくために、半年から1年前に生産計画を立て、商品を製造しています。これは、お客さまへのサービスを考えれば欠かせないプロセスです。

しかし、近年は販売予測が非常に難しくなっています。例えば、「今冬は暖冬だろう」と見込んで生産量を調整したところ、急な冷え込みで12月には商品が完売してしまうといったケースも珍しくありません。そこから追加生産をしようとしても、生地の手配や製造には最低でも1~2カ月かかり、販売機会を逃してしまうこともあります。もちろん、店舗に商品を並べるための在庫は必須です。

一方で、昨今の読みにくい気候やトレンドの変化を考えると、必要な在庫は事前に用意しつつ、後からでも需要に応じて柔軟に生産できる仕組みがあれば、よりバランスの取れた供給体制が築けるかもしれません。受注生産であれば、あらかじめリスクを取る必要がなく在庫過多になる心配もありません。素材は一定の需要予測に基づき、継続的に調達を行っているので、突然の売れ行き増加にも柔軟に対応できます。1枚だけの注文でも利益が出るように設計されていますし、受注量が増えた場合の生産体制も整えています。受注生産と需要に応じた素材調達の仕組みを組み合わせることで、リスクを抑えながら持続可能なビジネスができています。

「こういう服が欲しい」と思ったときに形にできる圧倒的な対応力を持ちたい

「Made by ZOZO」は、お客さま一人一人の「欲しい」に応えるための事業として、現在も成長を続けています。誰かが「こういう服が欲しい」と頭に思い描いた服を、きちんと形にできるような、そんな仕組みを目指していきます。

この事業は、ZOZOが長年かけて築いてきたブランドさまとのネットワーク、テクノロジーの力、そしてプライベートブランド事業等で培ってきた服づくりのノウハウがあるからこそ、「Made by ZOZO」というチャレンジが可能になっていると感じています。「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」というZOZOの企業理念を具体的な形にしていきたいです。

(掲載日:2025年8月26日)
文:ソフトバンクニュース編集部