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古くから、人間は常に未来を予測しようとしてきた。その証拠に、世界にはさまざまな占いが存在する。そして現代においては、未来の予測はデータに委ねられることになった。ビッグデータの時代とは、すなわち予測の時代でもある。
予測は常に計画の前提となるため、日々の業務は、さまざまな予測の連続だ。流行、天気、相場、需要、売り上げ、在庫──。これまで、これらの予測は主に現場担当者の経験や勘に基づき、行われてきた。
予測の精度は企業の利益に直結する。それ故に、予測精度が高い人材は重用され、また予測のために企業は少なくない時間を割いてきた。
もし、AIによるデータ分析でこの予測の精度が向上したら。向上しないまでも、予測にかかっていた工数を大幅に削減することができるのなら。企業にとって大きなアドバンテージになることは容易に想像できる。
Findability Sciensesは米国のマサチューセッツ州ボストンに本社を置く、ビッグデータ、コグニティブ・コンピューティング、AIによる予測分析プラットフォームを提供する企業だ。
CEOのアナンド・マフルカル氏は「ビッグデータテクノロジーを活用して顧客企業が有用な情報を発見することを支援する」というビジョンの下、ビッグデータテクノロジーとその分析アプリケーションを専門とする会社として2010年にFindability Sciencesを設立。
Findability Sciencesの提供するAI予測サービス「Findability Platform®」は、予測モデルの開発にかかる時間をこれまでの数週間、数ヵ月レベルから数時間に短縮し、統計分析へ深い理解がない一般ビジネスユーザでも直接使用しやすいプロダクトだ。
アナンド氏は同社のプロダクトの特長について、次のように語る。
「Findability Platform®では、モデリングと予測を自動化する独自のAIテクノロジーを提供しています。これにより企業がデータサイエンティスト、ドメインエキスパート、ソフトウェアプログラマーなどの専門家に依存することなく、AIを活用した予測を利用できるようになっています。
予測に利用する基礎データの日々の傾向の変動をつかみ、常にアップデートされた最新の予測モデルを利用することで、高い予測精度と精度の維持を実現します。
Findability Platform®のマルチモデルテクノロジーは、競合他社と一線を画す技術です。これは単に複数の予測モデルを自動的に作成するだけでなく、全ての予測モデルをデータセットに適用。各レコードに対して最高の確率となる最適な予測モデルを自動的に選択するインテリジェンスを備えています。
競合他社のプロダクトはシングルモデルを採用していることが多いですが、そうすると利用企業はデータセット全体を予測するために、1つのアルゴリズムを選択する必要があります。
本来は予測対象(顧客ごと、日付ごとなど)によってモデルが変わるべきですが、シングルモデルの場合は予測データファイルに存在する全ての顧客、全ての日程を通して1つの予測モデルで予測がされます。
これでは予測結果は平均的なものとなり精度も低くなってしまいます。当社の提供するプロダクトは、独自開発したマルチモデルテクノロジーでそれらの課題を解決するものです」(アナンド氏)
「データサイエンティストいらず」で、複数の予測モデルを自動で使い分けることによって実現される高い予測精度。これらを武器にFindability Sciencesは米国、カナダ、インド、そして日本で事業を展開。
通信、小売、銀行、保険、医療機関などの業界に対して需要予測、価格予測、顧客の傾向予測を行い、マーケティングだけでなく根幹となるビジネスオペレーションにも影響を与えている。
「当社のテクノロジーにより、企業にとって必要な未来の情報を高精度で予測できます。
これにより企業は、より多くのデータに基づいた意思決定を行うことができ、将来のビジネス成果を向上させることができます」(アナンド氏)
アナンド氏が語るように、AI予測に関わる夢のような未来は日本でも訪れるのか──。一方で、これまでAI予測が日本で普及してきたかと問われると、まだごく一部の限定的なものだろう。
そんな現状を打破するべく、ソフトバンク株式会社は、2017年にFindability Sciencesと日本における合弁会社としてFindability Sciences株式会社を設立。
Findability Sciences株式会社のCEO 中林真人氏は、日本でAI予測が普及するにあたっての壁を次にように話す。
「日本だけの話ではありませんが、データサイエンティストの数がまだまだ足りていないというのが現状です。アメリカでもデータサイエンティストは不足していて、その希少さ故に、年収1億円を超えるデータサイエンティストもいると言われています。
企業にデータサイエンティストがいない場合、予測分析をできるツールを提供しても、結局企業側では『どうすれば良いかわからない』『使えない』となってしまうこともあります。
アメリカやインド、中国と違い、日本は歴史的に統計学部というものが存在しなかった。それもあって、データ分析の分野ではまだまだ日本は成熟していません。また、学校でデータ分析を学んでいたからといって、すぐに現場の仕事ができるようになるわけでもありません。
いかに現場で通用するデータサイエンティストを育成していくかは、今後の日本の課題となるでしょう」(中林氏)
「実は、日本企業は他国と比べても積極的にデータを取得し、貯めています。しかし、やみくもにデータを取得してしまっているために、いざAI予測をしようとしてもバラバラで使えないというケースが多い。データを貯めることが目的化してしまって、使うことを意識できていなかったのです。
組織の中の部署間でも異なるデータの取り方をしてしまっている。例えば、日付の入力形式が違うなど、そんな些細なことの積み重ねでも、データを連携させる際に大変な労力がかかることになります。
最近では、AI活用を前提とした統合的なデータベースサービスが数多くリリースされていますが、それらが普及していくと、AI予測をするのに必要な土壌も出来上がっていくのではないでしょうか」(中林氏)
「AIの予測結果がなぜそうなったのか。マシンラーニングの特性上、それを明確に答えることはできません。『こういう変数が売り上げに影響を与えたのでは』という傾向までは説明することができても『これが理由でこれだけ売れたのだ』ということまでは言い切れない。
アメリカやインドなど、データ分析の先進国ではこういった理由を求められることはあまりありません。結果が出て、それで何かのメリットが出るのであれば、それでOKだと。
しかし、日本の特に大手企業はそれらの理由を明確に求める傾向があります。さらに言えば、海外のまずは結果を求めるジョブ型組織と、日本のプロセス重視のメンバ型組織の違いにもつながる話だと思います。
今、ニューノーマルの働き方が求められている中で、日本もジョブ型に移行すべきだという議論がありますが、こういった企業風土の違いが、AIに対するスタンスにも影響を与えているように感じます」(中林氏)
Findability Platform®は、これらの課題を3つのサービスによって解決しようとしている。
1つ目はAI予測のツールを提供し、クライアント企業のデータサイエンティストがデータを準備、予測を実行するライセンス提供型のサービス。
多くのAI予測サービスを提供する企業がこのライセンスモデルを採用しているが、前述の通りデータサイエンティスト不足の現状では、人材の不在がボトルネックになる。「Findability Platform®」は一般の企業担当者でも使用しやすいUIではあるが、やはりデータ活用への最低限のリテラシーは求められる。
2つ目のサービスは、Findability Sciensesのデータサイエンティストが、データを預かり、データのクレンジングや形成を行い、予測結果を戻すというフルサービスモデル型だ。
インド出身のCEO アナンド氏が率いるFindability Sciencesは、データ分析の先進国であるインドで50名以上のデータサイエンティストを抱えている。インドのリソースを活用することで、クライアント側のデータサイエンティスト不足を補うサービス提供を可能にする。
そして、3つ目は、彼らが「データサイエンスラボ」と呼ぶ、ゼロベースで「何を予測するか? それにより何を達成するか?」という目標や目的の設定からコンサルティングする型だ。
クライアント企業の事業部のメンバーとともにプロジェクトを立ち上げ、AI予測が企業の利益に貢献するところまでを考え、伴走する。
「特に日本では、データサイエンスラボのニーズが高いのが現状です。フルサービスモデルの場合は、『何を予測したい』というのがクライアントサイドにあるところから始まります。データサイエンスラボは、『AIで何か変革を起こしたい』といったまだ漠然としたニーズのところから、お付き合いしています。
クライアント企業とともに課題解決をしていくというスタイルは、競合他社が取り組んでいないこともあり、非常に好評をいただいています」(中林氏)
これらのサービスにより、Findability Sciencesはすでに日本においてもさまざまな実績を上げている。
これまで人によって行われていた「予測」をAIが行うことで精度を高め、効率化する。ソフトバンクとの合弁会社であるFindability Sciences株式会社では、両社の連携により、「予測」のその先を見据えている。
「当社の強みでもありますが、プラットフォームから上がってきた予測結果をクライアントの別のシステムへとつなぎこみ、自動で出力をすることもできます。どんどんと自動化していくことで、予測結果を基に人が判断しやすいようなフローを構築していく、それこそがAIの本来の姿です。
また、日本ではまだ実績はありませんが、例えば、予測結果に基づいて自動で発注するというようなことも想定できます。ソフトバンクにはデジタルオートメーションで目指す『見える化』『業務自動化』『業務プロセスの自律化』という3つの柱があります。
予測を自動化するところから、最終的には予測結果に業務プロセスに乗せて、自律化させる。ソフトバンクが提供するRPAソリューションなどと連携することで、これらを実現させていきたいと考えております」(中林氏)
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