ヘッドホンを着けて、音楽を聴きながらウトウト。誰しも一度は経験があるのでは? しかし、不特定多数の人が利用する電車には、いつどんなトラブルが起こるのかわからない、というリスクが…。もし、あなたが電車内でトラブルにあったとしたら、一体どうすればいいのでしょうか?
正しい知識とすぐにできる小さな行動が防災意識を高め、あなたとあなたの大切な人を救います。今回は、トラブルが起きやすい電車内のシーンや、危害から身を守るための方法をご紹介します。
このテーマのポイント
- 電車に乗るときは、自分の世界に入りすぎずに周囲の状況に意識を向けよう
- 自分や周囲の人が「トラブルを回避しづらい」状況、傾向を知っておこう
- トラブルや危害が起きてしまったら、逃げることと身を守ることを最優先に
目次
- リスク:とにかく自衛をするしかない! 電車内でのトラブル・危害
- 対処法①:電車で見かけたら注意を払うべき人物の特徴と、トラブルを回避しづらい人の傾向を知ろう
- 対処法②:電車内でのトラブルや危害から身を守るための行動ステップを知ろう
- 被害にあわないために:トラブルや危害から身を守るためのコツを知っておこう!
リスク:とにかく自衛をするしかない! 電車内でのトラブル・危害
私たちが普段何気なく利用している電車は、実はとても閉鎖的な空間です。混み合う路線なら人との距離が近く、遮るものもほとんどありません。万一、走行中に何らかのトラブルにあったら、逃げ場は隣の車両に限られます。さらに、停車駅の少ない急行列車は、なかなか降りることもできません。ましてや地下鉄なら、降車できたとしても簡単には地上に出られないので、リスクはさらに高まります。
鉄道各社では、電車内でトラブルが発生した際に、次の駅で緊急停車する、駅のホームのスペースが確保されていて乗客が降りやすい駅で止まるなど、もしもの時に備えた行動指針やマニュアルを検討中。しかし電車内のすみずみまで監視しながらの、状況に合わせた対応は難しく、その対策は難航しているそうです。
そのため、私たち一人ひとりが自衛の意識を持って、気をつけるべきことを事前におさえて、電車内でのトラブルを避けられるように心がけましょう。
対処法①:電車で見かけたら注意を払うべき人物の特徴と、トラブルを回避しづらい人の傾向を知ろう
電車で見かけたら注意を払うべき人物の特徴は?
まず、このような人物に遭遇したら、念のためなるべく離れた車両に乗るようにしましょう。
- 割り込みをする、大声を出すなど乗車マナーが悪い人
- 電車の移動にそぐわない大きな荷物を持っている人
- 持っている荷物をしきりに気にするなどして落ち着きのない人・泥酔状態の人
- 顔を過度に隠している人 など
乗車前、乗車中を問わず周囲に意識を払い、どんな人が周りにいるのか、異変が起きていないかをすぐに察知できるようにしておくことが大切です。
トラブルの回避が即座にしづらいのはどんな人?
誰にでもトラブルにあう可能性はありますが、次のようにトラブルが起きたときに即座に回避しづらい人もいます。
- 高齢者
- 子ども
- 子どもを連れた保護者
- 身体などに障がいがある方
- けが人
- 病人 など
もし気を遣う余裕があれば、こういった人たちと一緒に逃げるようにすれば、被害を最小限にとどめることができます。そのためにも、事前に自分の近くにどんな人が乗っているのか、観察しておくことが重要です。しかし、あくまでも「自分の身を守りながら」であることを、よく心得ておきましょう。(けが人が出たときの対処法)
対処法②:電車内でのトラブルから身を守るための行動ステップを知ろう
どんなに気をつけていても、運悪くトラブルに遭遇してしまうことはあるかもしれません。もしトラブルに巻き込まれそうになったら、次のステップにしたがって行動しましょう。(旅先移動中のトラブル対処法)
- 守る
もし危ないものが飛んできたり、電車内のものにぶつかってけがしたりしそうな場合、バッグなどを盾にして身の安全を守る。 - 逃げる
危険な状況から距離を置くため、停車中なら降車し、走行中なら速やかに隣の車両へ逃げる。 - 知らせる
走行中なら乗務員に知らせることが重要です。車両連結部のドア近くにあるケースが多い「車内非常ボタン」を押して、乗務員などに対応を求めるようにしましょう。他にも「緊急停止ボタン」という、電車を速やかに停止させるボタンもありますが、意図しないところで停車し、かえって逃げ場をなくしてしまう可能性も。押すなら「車内非常ボタン」優先、を意識してください。
また、ボタンを押すことと同時に、周囲の乗客にも電車内で起きていることを大声で知らせて、すぐに逃げるように促しましょう。
トラブルが起きたときに取るべきでない行動
一方で、トラブルが起きたとき、以下のような行動は厳禁です。
- トラブルの様子をスマホなどであからさまに撮影する
- 危害を加えてくる人物を挑発するなど、目立つ行動をする
こういった行動は被害を大きくしたり、自分に危害が及んだりする可能性があります。どうしても証拠を押さえたい、と撮影等のアクションを取る場合は、可能な限り離れた場所で。あくまでも優先すべきは防御や逃避行動であることを念頭に置いておきましょう。
被害にあわないために:トラブルから身を守るためのコツを知っておこう!
いつトラブルが起きてもいいように、素早い行動を起こせるようにしておくことが大切です。乗車中は次のようなことに気をつけて、常に周囲に気を配りましょう。
- 不審物を見つけたら、乗務員や駅の係員に知らせる
- スマホの操作、読書などに集中し過ぎない
- 音楽を聴く場合、周囲の音が聞こえる程度のボリュームに抑える
- 熟睡しない
- なるべくドアの近くや車両の隅を選んで乗る
また、身の回りのものを使って防御ができるように心がけておくことも大切です。以下のようなアイテムはいざというときに役立つでしょう。
- 傘…目の前でパッと開けば相手がひるみ、視界を遮ることができる。
- 楽器や大きな本など重いもの、バッグ…飛来物や相手からの攻撃を防ぐ盾になる。
- 消火器…連結部分の近くに置かれていることが多い消火器は、相手の顔面に向けて噴射して、目くらましになる。
いずれも「退避の隙(げき)」を確保するための防御手段としてとらえましょう。積極的に戦う意識を持つ必要はありません。逃げることが何よりも自分の身を守ることにつながります。
電車の中でのトラブルや危害への備えに役立つサービス・ウェブサイト
① Yahoo!ニュースオリジナル 鉄道版「安全のしおり」
Yahoo!が作成した鉄道でのトラブルに関する対応策をまとめたページ。車内通報ボタンの位置や車両からの避難の仕方などを図解を通して知ることができます。
② 国土交通省 鉄道のテロ対策
鉄道各社におけるテロ対策を紹介している国土交通省のページ。駅構内における警戒強化、車内における警備員の巡回など、これまで実施されてきた対策を紹介しています。いざという時、どんな人、サービスに頼れるのか、知っておくのに役立ちます。
③ JR西日本 鉄道事業の安全対策
JR西日本による安全対策を紹介しているページ。車内の防犯カメラの配置、警察や消防などとの連携体制について知ることができます。
監修者:防災講師・防災コンサルタント 高橋 洋(たかはし・ひろし)
1953年、新潟県長岡市生まれ。1976年、練馬区に就職し、図書館、文化財、建築、福祉、防災、都市整備等に従事。1997年より防災課係長として、地域防災計画、大規模訓練、協定等に携わる。現在は、防災講師・コンサルタントとして、自治体等で講演、ワークショップ指導などを行う傍ら、復興ボランティア、終活ガイド・エンディングノート認定講師としても幅広く活動。防災関係著書・論文、防災関係パンフレット類監修多数。
(掲載日:2022年11月17日、更新日:2022年12月23日)
監修者:高橋洋
文:佐藤葉月
編集:エクスライト
イラスト:高山千草