2025年5月8日、ソフトバンク株式会社の2025年3月期 決算説明会が開催され、代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一が2024年度の業績や2025年度の業績予想および中期経営計画の進捗、次世代社会インフラの構築に向けた取り組みなどについて説明。2025年度の業績予想を上方修正しました。
目次
中期経営計画の財務目標を上方修正。2025年度で過去最高益を目指す
2023年度に発表した中期経営計画での2026年3月期の営業利益目標9,700億円に対し、事業が順調に推移した結果、1年前倒しで2025年3月期に目標を達成。これを受けて、2026年3月期の営業利益目標を1兆円超に上方修正しました。純利益目標も5,400億円に上方修正し、過去最高益の実現に意欲を示しました。
2025年3月期 累計の売上高は、前年比8%増の6兆5,443億円。営業利益は前年比13%増となる9,890億円で、全セグメントが増収増益となり、売上高・営業利益ともに中期経営計画を1年前倒しで達成しました。メディア・EC事業、ディストリビューション事業が2桁の増益になったほか、ファイナンス事業が通期で300億円を超える黒字になりました。
純利益は、前年同期比で8%増の5,261億円。また、普通株式一株当たりの配当金は年間8.6円と、引き続き高水準の株主還元を行う予定です。
各セグメントが順調に推移。グループ経済圏拡大に向けた取り組みを目指す
コンシューマ事業は、モバイル売上高が引き続き増収し1兆5,745億円、営業利益が7%増益の5,304億円となりました。 スマートフォン契約数は年間104万件純増し、累計3,117万件となり、ワイモバイルなどからソフトバンクへのブランド移行収支がプラス基調で定着していると説明しました。また、モバイルネットワークでは、5G端末比率が上昇する中でも高い5G接続率を実現していることに加え、データ通信量の急増に対応しつつ高い通信品質を維持していることに言及しました。
エンタープライズ事業は、ソリューションなど売上高は前年比で27%増収の9,224億円。営業利益は1,703億円で増益。2025年度は前年比2桁成長を目指すとしました。 AX(AI Transformation)インテグレーターとしての基盤を整備する取り組みとして、子会社であるGen-AX株式会社が2025年1月に発表した、生成AIを用いてカスタマーサポートを効率化する自社開発SaaS「X-Boost(クロスブースト)」を紹介。将来的に、AIによるコールセンター業務の自動化を実現し、企業のAI導入を支援していくと説明しました。
金融ビジネスの再編が完了。PayPayの上場準備を開始
上場準備を開始したPayPay株式会社の2025年3月期の連結決済取扱高は、前年比23%増の15.4兆円となり、20%超の成長を継続し、連結EBITDAは456億円で2年連続の黒字。連結営業利益も通期で300億円を超える黒字化を達成したと報告しました。
2025年4月に金融ビジネスの再編が完了し、PayPay証券およびPayPay銀行を子会社化したPayPay株式会社のリーダーシップの下、銀行・証券サービスの成長を加速させる方針を示しました。
決済代行サービスを展開するSBペイメントサービス株式会社の2025年3月期の決済取扱高は、9.8兆円で前年比22%増となり順調に推移。「非通信領域を中心に引き続き成長を目指す」と述べました。
次世代社会インフラの実現に向け、積極的な取り組みを継続
業績の報告に続いて、次世代社会インフラの構築に向けた取り組みの進捗を共有しました。大規模AIデータセンターの構築に向けて、シャープ株式会社の堺工場の土地や建物などを約1,000億円で取得したことを紹介。AIエージェントの重要運用拠点として活用していくと述べました。
自社開発の国産LLM「Sarashina」の進捗として、「Sarashina mini」という商用モデルが完成し、2025年秋までに商用展開を見込んでいると報告。「GPT-4o」や「GPT-4o mini」との回答を比較したデモンストレーションでは、日本の法律や慣習など、日本を深く理解した回答を提示。「あらゆる業界ごとの専用モデルを作っていき、IoTやロボット、自動車などで活躍するAIにしていきたい」と今後の展望を語りました。
また、ソフトバンクが目指すクラウド事業の方向性として、「ソブリンCloud」と「ソブリンAI」を紹介。データ・技術・運用を自身で行うことにこだわり、「このビジネスモデルを作り上げて次の成長戦略の軸にしていきたい」と語りました。
さらに、AIの中心が推論になる時代を見据えて、処理能力が高く省電力な次世代メモリの開発に向け、今後2年で約30億円を投資すると明らかにしました。
OpenAIと取り組んでいる「クリスタル・インテリジェンス(Cristal intelligence)」の進捗について、開発に向けた議論を継続している段階と報告。業務ごとの個別最適にとどまらず、各部門のAI連携によって経営全体を最適化し、経営変革できるプロダクトを目指すと述べました。
個人株主数は1年間で50万人増加速
2025年3月末の個人株主数は、前年3月末の86万人から1.6倍となり136万人を突破しました。個人株主の年齢構成は、40歳代以下の若年層の割合が41%となり、前年比で14ポイント増加したことを紹介し、「若年層の株主が増えていくことが将来的な企業価値の向上につながる」と考えを示しました。
最後に、女性取締役の比率向上や、実質再生可能エネルギー比率を2030年度に100%にする目標に向けた進捗など、ESG経営に関する取り組みを述べ、プレゼンテーションを締めくくりました。
2025年3月期 決算説明会
(掲載日:2025年5月7日、最終更新日:2025年5月9日)
文:ソフトバンクニュース編集部