
ソフトバンク株式会社は2025年6月26日、成層圏通信プラットフォーム「HAPS(High Altitude Platform Station)」に関する報道関係者向けの説明会を開催。2026年に日本国内でプレ商用サービスを開始することに加え、新たに米国Sceye社の「LTA型HAPS」を導入するなど、今後の事業展開について説明が行われました。
目次
8年越しの技術開発。ソフトバンクのHAPS実用化への歩み
説明会には、ソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット統括 ユビキタスネットワーク企画統括部 統括部長の上村征幸が出席し、ソフトバンクが業界のリーダーとしてこれまで取り組んできたHAPS研究開発の歩みを紹介しました。
HAPSは「空飛ぶ基地局」とも呼ばれ、高度約20km、成層圏からの通信で直径最大200kmの広範囲をカバー可能です。

2017年に技術開発に着手して以来、成層圏でのフライトテストの成功に加え、ルワンダで世界初の成層圏からの5G通信に成功。また通信機器やバッテリーなど要素技術の開発にも継続して取り組み、90以上の関連特許を保有しています。
さらに、HAPSの国際的な展開を見据えて、業界団体「HAPSアライアンス」の設立や、WRC-23でのHAPS向け周波数拡大の主導など、HAPS推進のリーダーとしてグローバルに活動を進めてきました。
LTA型HAPS導入で早期の商用化実現へ
今回、HAPSのプレ商用サービス展開に向けた新たな一手として、米国の航空宇宙企業Sceye(スカイ)社への出資と、LTA(Lighter Than Air)型のHAPSの導入を発表。Sceye社は、米国ニューメキシコ州に本社を置く航空宇宙用部品製造企業で、機体の開発からペイロード、運用までを一貫して提供しています。
導入されるLTA型HAPSは、ヘリウムガスの浮力を利用しており、機体も軽くて丈夫な素材で作られています。このため、強い紫外線、低温、低気圧など成層圏の過酷な環境下においても、長時間の滞空が可能です。ソフトバンクが現在開発を進めている、HTA(Heavier Than Air)型のHAPSである「Sunglider(サングライダー)」と比べて、より早い商用化が見込まれます。

なお、HTA型のHAPSについても引き続き商用化に向けて開発に取り組み、HTA型とLTA型を併用してサービス化を進めていく方針であることが示されました。
上空から通信を届ける。本格商用化に向けたロードマップ

2026年に予定されるHAPSのプレ商用サービスは、災害時における通信サービスの提供を想定して限定的に開始。2027年以降は災害時に孤立した地域への迅速な通信復旧や、山間部・離島などの既存のモバイルネットワークが届きにくい地域でのサービス提供が予定されています。
また、今後見込まれる利用シーンとして、通信以外にもHAPSを活用したリモートセンシング技術による道路状況や設備の被災状況の把握といった防災・減災の分野での活用を予定しています。
地上・空・宇宙をつなぐ新しい通信のかたち。ソフトバンクが描くUTX構想

ソフトバンクは、地上のモバイルネットワークとHAPS、静止衛星、低軌道衛星などの非地上系のネットワークを組み合わせ、いつでもどこでもつながり続ける世界を実現し、災害時の分断や通信網の整備格差など、現在の社会インフラの限界を超えて、世界中の人やビジネスにイノベーションを起こすユビキタストランスフォーメーション(UTX)を推進しています。
HAPSはその中核として位置付けられ、ドローンやUAVの活用が進む6G時代に欠かせない通信基盤であるとともに、「誰もがいつでもどこでも情報にアクセスできる」次世代社会の基幹インフラとしての役割が見込まれます。

これからの社会でHAPSが果たす役割について、上村は「HAPSは上空を自由に移動するモビリティの通信基盤となる。地上と非地上系ネットワークの融合で、都市部のみならず、離島や山岳部、さらには空や海の上でも、人も物もどこでもつながる社会を実現できる。これこそがHAPSの真の価値であり、私たちが目指すインフラの未来像」と展望を語り説明会を締めくくりました。

関連プレスリリース
「空飛ぶ基地局」のHAPS、2026年に日本でプレ商用サービス開始(2025年6月26日、ソフトバンク株式会社)
(掲載日:2025年6月27日)
文:ソフトバンクニュース編集部









