
旅行やお出掛け、友人の結婚式など、スマホで全身写真を撮る機会は意外と多いもの。でも、いざ撮った写真を見て「なんだかイマイチ……」と感じた経験はありませんか? 実は、スマホで全身をスタイル良く撮影するには、ちょっとしたコツがあるんです。
今回は、ファッション誌を中心に活躍し、個人や企業向けの写真講習も行うフォトグラファー・神戸健太郎さんにインタビュー。Google Pixel を使って、全身写真を上手に撮影するためのテクニックから、人に撮影をお願いする際の「指示の出し方」までを教えていただきました!

目次
全身をうまく撮るコツは「スマホカメラの特性」を知ること
「SNSで見るようなすてきな全身写真が撮りたい!」——そんな思いで同じように撮ってみたのに「なぜかスタイルが悪く見える……」「なんだかあか抜けない……」と感じたことはありませんか?
全身写真が盛れない理由は、いったいどこにあるのでしょうか。そんな疑問に、神戸さんがズバリ答えてくれました!
理由①レンズの角度が下向きになっていて、頭でっかち・短足に見える
神戸さん 「全身写真を撮影するとき、撮影者は顔の高さあたりでスマホを構えることが多いですよね。すると、カメラのレンズが自然と下向きになり、撮られる側を見下ろすような角度になってしまいます。
スマホで撮影する際、ついこんなふうにレンズが下を向いてしまっていませんか?
スマホのカメラは基本的に広角レンズなので、遠近感が強調されやすいんです。そのためレンズが下を向いた状態で撮ると、カメラに近い顔は実際よりも大きく、カメラから遠い脚は短く写り、スタイルが悪く見えてしまいます」
理由②広角レンズのゆがみで、顔が大きく見える
神戸さん 「広角レンズには、画面の端に写るものが外側に引き伸ばされる特徴があります。全身を写真に収めようとして顔を画面の端にもってくると、引き伸ばされて大きく見えてしまいます」
広角レンズのゆがみにより引き伸ばされ、顔が大きく足は短く写る
理由③カメラの自動調整機能で、肌がくすむ
神戸さん 「人物写真を撮るなら、スタイルだけでなく顔や肌もキレイに見せたいですよね。そこでやりがちな失敗が、白い壁の前で撮ることです。白い背景は明るい写真が撮れそうなイメージがありますが、実は逆効果になることもあります。
スマホのカメラには、周囲の明るさに応じて、写真全体の明るさを自動で調整する機能が備わっています。背景が白いと、写真が白飛びしないようにカメラが明るさを抑えるため、肌がくすんで見えてしまうことがあるんです」
肌がくすんで顔色が悪く見えてしまった
思い当たることばかりでびっくりです……! スマホで全身写真が盛れない理由がよく分かったところで、次はいよいよ “スマホカメラの特性を生かして上手に撮るコツ” を、レクチャーしてもらいましょう!
まずはここから! “自然にスタイルよく見える” 全身写真の基本テク5選
全身写真をスマホで上手に撮るコツを、まずは基本的なテクニックから教えてください。
コツ①膝立ちになり、下からあおるように撮る

神戸さん 「膝立ちで下からあおるように撮るのは、全身撮影の基本です。こうすると、顔がカメラから遠く、脚が近くなるため、小顔&脚長に見えるんですよ。ただし、下から撮りすぎると脚が不自然に長くなってしまうので注意が必要です」

確かに、脚が長く、小顔に見えるけれどちょっとやりすぎかも……?
神戸さん 「脚を広げたり、目線をはずしたりといったモデルっぽいポーズをすれば、あえて下から撮った感じがオシャレに見える写真になります。ただし、これはやや上級者向けのテクニック。失敗すると『脚を無理に長く写そうとしている人』にも見えかねません」

下から撮るとスタイルがよく見える一方、不自然になるリスクもあるんですね。では、自然かつスタイルアップできる撮り方はあるのでしょうか?
コツ②カメラを2倍ズームにして、離れて撮る
神戸さん 「カメラの設定を2倍ズームにして、被写体から少し離れて、下から撮るのがおススメです。おさらいですが、広角レンズで撮った写真は遠近感が強調され、端っこのゆがみが強くなりますよね。目線の高さから撮れば顔が大きく写るし、下から撮れば脚が長くなりすぎます。
この問題を解決できるのがズームです。離れた距離からズームを使って撮れば、普通に撮るよりも遠近感の強調が抑えられ、ゆがみが少なくなるんです」
なんだか難しくて、よく分からないのですが……。
神戸さん 「大丈夫! 実際に撮影してみると、違いを実感できますよ。まずはカメラを2倍ズームに設定してみましょう」

神戸さん 「被写体が大きく写るので、必然的に少し離れることになりますよね。ちょうどいい位置で膝をつき、目線の位置にスマホを構えて撮ります。
……どうでしょう? ちゃんとスタイルがよく見えるのに、さっきみたいに脚が長すぎず、自然な仕上がりの写真になっていませんか?」

本当だ! スタイルは良く見えるけど、やりすぎ感がなくていいですね。
神戸さん 「2倍ズームのもう1つのメリットは、背景に余計なものが写り込むのを防げること。遠近感が弱まることで前後の被写体の距離が縮まって見えるので、背景に写る範囲が自然とせまくなるんです。それでも写り込んだものは、消しゴムマジックで消しちゃいましょう!」
コツ③壁に寄りかかって脚を前に出す
より “映える” 1枚に仕上げるためには、どんなポージングが効果的ですか?
神戸さん 「スタイルよく見せたいときは、壁に寄りかかり、片方の脚を少し前に出しましょう。自然と脚が長く見えます」


神戸さん 「顔は真正面でなくても大丈夫です。光が差す方に顔を向けると、顔に光が当たってキレイに見えます。『顔は正面に』という固定観念にとらわれず、いろいろな角度を試してみましょう」
コツ④画面の上側に、1/3程度の余白を作って撮る
ちなみに、さっきからモデルの頭の上にスペースを空けていますよね? なにか理由があるのでしょうか。
神戸さん 「いいところに気がつきましたね! 理由は4つあります」
- 上に余白をつくることで、レンズが自然と上向きになり、下からあおる角度になるため、スタイルがよく見える
- 顔が写真の中央に来るため、広角レンズのゆがみの影響を受けにくくなる
- 被写体を画面いっぱいに収めるよりも抜け感が出て、こなれた雰囲気の写真になる
- 背景に風景や建築物などを入れやすい
神戸さん 「目安としては、写真の縦幅の上1/3くらいを空けるといい感じになります。でも、そこまで細かく考える必要はありません。もし上が空きすぎても、あとでトリミングすれば大丈夫です」

コツ⑤後ろが暗いところで撮る

神戸さん 「先ほど『白壁の前で撮ると肌の色がくすむ』とお話しましたが、逆に暗い背景や濃い色の壁の前で撮ると、顔色がよく写ります。黒やネイビー、濃いグレーなどの壁があったらぜひ試してみてください」
比較すると一目瞭然! 黒い壁の方が肌に透明感が出て明るく見える
屋外でこうした写真を撮影したいときは、どんな場所を選んだらいいでしょうか?
神戸さん 「後ろが薄暗く、前から光が差し込む場所を探してみましょう。たとえば、屋外から地下に続く階段などはおススメですね。階段の外からカメラを構え、被写体が階段でたたずむ様子を撮影すれば、雰囲気があって人物の写りもいい写真が撮れますよ」
自撮りで全身写真を撮るときのポイント

神戸さん 「自撮りの場合も基本は同じ。下から2倍ズームで撮りましょう。Bluetoothリモコン付きのスマホスタンドがあると便利ですが、身近なものでスマホを支えて地面に置き、セルフタイマーで撮影してもOKです。スマホを逆さまにして撮る人もいますが、下からあおりすぎることになるので僕はおススメしません。
スマホを置く位置や、光の取り入れ方、ポーズなど、自分が満足できるまで試行錯誤できるのが自撮りの魅力です。ベストショットが撮れるまでの過程も含めて楽しんでみてください」
脱マンネリ! “盛れる1枚” をさらに引き出す応用テクニック
基本のコツを押さえたところで、もう少し応用的な撮影テクニックも知りたいです!
神戸さん 「いつも同じ構図や表情だと飽きちゃいますよね。そんなときには、こんなアレンジはいかがでしょうか」
あえて全身を写さず、目の錯覚で脚長効果を狙う
神戸さん 「脚を膝下あたりでカットすると、画面の下に脚が長く続いているような錯覚を起こし、背が高く見えます。あえて全てを写さないことで盛れて見えるので試してみてください」

真上から撮影して、キュートなキャラクター風ショットに

神戸さん 「広角レンズのゆがみを生かし、顔を強調したアングルも面白いですよ。顔がドーンと大きく、体が小さくなり、キャラクターっぽいコミカルな写真に仕上がります」

これはかわいいですね! 少人数の集合写真でも映えそうです。
神戸さん 「あとは、人物を撮るとき、つい『笑って~!』と声をかけがちですが、笑うのが苦手な人もいます。どうしても笑顔がほしいときは、まず自分が笑うのがおススメです。僕はよく声に出して『わっはっはっは~!』と言っていますが、みなさんつられて笑ってくれます(笑)」
初対面の相手でも大丈夫! 伝わる&失敗しにくい撮影の頼み方

旅行先やテーマパークなどで、知らない人に写真をお願いしたけど、あとで見たら「なんだか微妙……」。そんな経験ありませんか? そういった “ちょっと残念” を防ぐために、伝わりやすくて、失敗しにくい撮影の頼み方も、神戸さんに教えてもらいました!
依頼のポイント①位置や角度のお手本を見せる
神戸さん 「『膝をついて、目線の位置で構えて…』と撮り方を口で説明されても、ピンとこない人もいるはず。そんなときは、撮影者の目の前で撮影方法を実演したあと『この位置から同じように撮ってください』とお願いすれば、求めている位置や角度が正確に伝わりやすくなり、失敗が減ります」
依頼のポイント②自分で試したあと「背景をここまで入れて」と伝える
神戸さん 「背景をどこまで入れるかも、まずは自分が撮影して確認してから相手に伝えましょう。どの位置からどう撮ればうまく写るかを把握したうえで『この場所からカメラを構えて、○○のあたりまで写してください』と説明するとスムーズです」
依頼のポイント③複数枚撮ってもらえるようお願いする
神戸さん 「1枚だけだと、まばたきしてしまったり、ブレたりしてしまい、イマイチな仕上がりになることもあります。あらかじめ『○枚ほど撮ってください』『連写してほしい』などと伝えておけば、あとからベストショットを選ぶことができるので安心ですよ」

角度や構図・ポーズをちょっぴり工夫するだけで、全身写真はグッと洗練された印象になります。また、撮る側・撮られる側両方の視点を知っておけば、初対面の相手に撮影をお願いするときも、ベストショットが撮れるはず! 本記事を参考に、次のお出掛けでぜひ試してみてくださいね。
(掲載日:2025年8月13日)
写真:山﨑悠次
文:小晴
編集:エクスライト





