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陸路が寸断された被災地域に上空から通信を。ヘリコプター搭載型DRUの実用性を高知県黒潮町で実証

大規模災害が発生すると、地上の基地局が被災し、通信が途絶える可能性があります。さらに津波などによって道路が寸断されると、復旧要員の現地入りが遅れインターネットや通話が利用できない「通信空白」が発生します。

こうした状況に備え、ソフトバンクでは、上空から電波を届ける通信装置「DRU(Disaster Relief Unit)」の研究開発を進めています。

2026年3月、南海トラフ地震による津波の被害が想定される高知県幡多郡黒潮町で、ヘリコプターにDRUを搭載し、上空から通信エリアを構築する技術を検証する飛行実証が行われました。

災害で通信が途絶えたとき、空からの電波で通信を復旧

この実証は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の委託研究(採択番号 JPJ010017C07601 )「災害時の応急エリアカバレッジのための無線通信技術の研究開発」の一環として実施されたものです。大規模災害などで通信インフラが被災した場合に、臨時の通信エリアを迅速に提供することを目的に、上空から通信エリアを構築するさまざまな技術の検討が進められています。

災害時の復旧手段としては、ドローンや可搬型基地局などもありますが、運搬や設置など道路の復旧状況や現地の安全確保に左右されるため、発災直後のもっとも過酷な条件下では、展開までに一定の時間を要するという課題がありました。

無人航空機などに搭載して上空から電波を提供するDRUは、発災直後の「数時間〜72時間」という人命救助のゴールデンタイムにおいて、道路の寸断に左右されず、遠方から即時に飛来して広域な通信エリア確保が可能なため、初動対応における極めて有効な解決策となります。

広域カバーを前提とするHAPS等に対し、DRUは被災エリアを限定して電波を届けることで、地上局と同等の高品質・大容量な通信を提供します。また、現地搬送が必要なドローンに対し、DRUは無人機やヘリコプターに搭載するため、電源や重量の制約が少なく、より高出力で安定した運用が可能です。さらに、通信エリアの構築と同時に、上空からの観測によって被災状況や通信断絶エリアを即座に可視化できる点も、DRUならではのメリットです。

今回の実証では、将来的な無人航空機での運用を見据え、ヘリコプターにDRUを搭載して飛行試験が行われました。

高知県黒潮町の沿岸エリアでヘリコプターによる飛行実証

実証は2026年3月2日から7日にかけて、高知県黒潮町の沿岸エリアで実施され、ヘリポートでは、機体に搭載されるDRUが公開され、担当者より飛行実証の概要説明が行われました。

今回の実証は、地上局からヘリコプターに搭載されたDRUへ通信を中継し、そこから地上のスマートフォンへ電波を届けるというもの。このDRUはヘリコプターだけでなく、小型飛行機や無人航空機などさまざまな機体への搭載を想定しており、災害状況に応じた柔軟な通信エリア確保に寄与するべく開発を進めています。地上の複数地点で上空から発信された電波強度や通信速度を測定し、設計どおりの通信エリアが構築できているかを確認しました。地上局の回線は、将来的にはソフトバンクの通信ネットワークをバックボーンとして利用する想定ですが、今回は実証環境のため、衛星通信サービスが活用されました。

準備を終えたヘリコプターがいよいよ離陸。ローターの音が響く中、機体に吊り下げられたDRUがゆっくりと持ち上がり、海上の上空約1,000〜3,000メートルまで上昇していきます。

圏外だったスマートフォンが「圏内」に。避難タワーで通信デモ

離陸を見届けた後は、通信確認のため、実際の災害発生時にも使用される黒潮町にある津波避難タワーに移動。デモ用のスマートフォンを使ってヘリコプターからの通信が届くのを待ちます。

避難タワーのあるこのエリアでは通常、今回の実証で使用する2.1GHzの周波数の電波は提供されていないため、スマートフォンは当初「圏外」の状態。しかし、ヘリコプターが接近してくると端末に4Gのアンテナ表示が出現。通信が可能になる様子が確認できました。

約10キロメートル離れた地点でも、高度3,000メートルからの電波による通信を確認

DRUからの通信がつながると、ヘリポートに残ったスタッフとのLINEのビデオ通話や、テキストメッセージの送受信、防災アプリや地図アプリの利用、ウェブ閲覧など、実際の災害時の安否確認や情報収集を想定したアプリの動作確認も実施されました。

またこの日以外にも数日間に渡り実施された電波強度の測定では、高度約3,000メートルのDRUを中心に半径10キロメートルまで通信可能であることが確認されるなど、DRUによる上空からの通信エリア構築の実用性が実証されました。

実証で見えてきた課題。無人航空機での実証に向け次のステップへ

飛行実証を終え黒潮町役場で開催された意見交換会では、実証結果と今後に向けての課題について協議が行われました。

今回の実証では成果だけでなく、上空を移動する基地局として安定した通信を提供するためのビーム制御や電波干渉への対応、通信エリアの設計などいくつかの課題も確認されました。意見交換会では、黒潮町災害対策課の担当者より、黒潮町が取り組む防災施策が紹介されたほか、「通信によって情報を得ることは初動対応において非常に重要。飛行機を使って通信ができるようになれば、災害の初動体制や防災対策にも大きく役立つ」と災害の初動段階での通信確保の重要性が示されました。また、この日視察に訪れていた総務省の担当者からは、「通信の強靭化は社会インフラとして極めて重要であり、被災時の人命救助に不可欠であると認識している。非地上系ネットワークを含めた多様な通信手段の確保は国の重要施策であり、本実証もその一環」として、取り組みへの期待が寄せられました。

これまでの災害時の通信復旧は、主に地上からのアプローチに頼ってきました。しかし今後は、初動数時間のフェーズではDRU、 その後復旧までの臨時の基地局として稼働するドローンや可搬型基地局、 そして地上基地局による恒久復旧という、災害フェーズに合わせたシームレスな通信復旧モデルの確立を目指します。今回の実証は、その実用化に向けた一歩となる取り組みとなりました。

今後は今回の実証結果を踏まえ、次世代通信装置の開発や、無人航空機を用いた本格的な飛行実証などが予定されています。

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