IBM CloudⓇでVMware環境を構築してみた!ソフトバンクの技術力とIBM Cloudの特長を実践的に紹介!

2024年2月29日掲載

IBM Cloud

ソフトバンクのIBM Cloud担当の山中です。

本記事ではソフトバンクが実施した、IBM Cloud for VMware Solutionsを用いたVMwareクラスタ構築技術検証の内容を紹介します。

VMwareの環境を各種クラウドあるいはオンプレミスに導入・構築する機会は多いと思います。その時の選択肢の一つであるIBM Cloud for VMware Solutionsは、要件に合わせて物理サーバ(ベアメタルサーバ)のスペックを選択できる使い勝手の良いソリューションであり、またESXi等ソフトウエアの自動導入により構築にかかる時間、手間、エラーを削減し、設定の一貫性が図れる等、利用者に多くのメリットをもたらします。クラウドでVMwareの環境構築をお考えの方に参考になるよう手順をわかりやすく解説します。ぜひご一読ください。

目次

この記事では
  • IBM CloudのVMwareソリューションを使った環境構築の検証結果を紹介しています。
  • IBM CloudでVMwareクラスタ環境を構築する手順の概要を理解していただけます。
  • VMware環境を小規模からクイックに構築したい方々の参考にしていただけます。

VMware環境構築におけるIBM Cloudの価値

IBM Cloud for VMware Solutionsは、IBM Cloud 上でVMwareワークロードを活用することができるサービスの総称です。既存のリソースを活かしつつ、クラウドのメリットを享受することが可能であり、IBM Cloud提供のクラウドネイティブ・サービスとも連携することができます。

IBM Cloudのプロダクト

 

IBM Cloud for VMware Solutionsは以下の図にあるように、お客さまのニーズに合わせてさまざまな利用形態を選択できます。ハイパーバイザー以下の管理を、オンプレと同じように利用したい場合は「利用者管理」のサービスを、管理の手間を削減したい場合は「クラウドベンダー管理」のサービスを選択できます。今回の検証では、日本のお客様でも多数利用されている専有型かつ利用者管理のサービス(下図右下の赤枠内)、その中のVMware vSphere (以降VSS)を利用しました。

IBM Cloud for VMware Solutions の特徴

注:

  • 上図内のVMware Shared(*)はNSX-Vベースのサービスであり、今から利用することは推奨しません。現在利用中の場合は、VMware as a Service (Multitenant)への移行が求められる予定です。  
  • 上図内のVMware as a Serviceは2023年12月時点では北米、欧州での提供となり、日本国内リージョンでの提供はありません。

 

 

VSSは物理サーバ1台からの比較的小規模な構成から選択でき、かつVMwareのソフトウエア製品を必要なものを選んで利用できる点に特徴があります。また物理サーバに加えてESXiも自動的に導入できます。(下図の赤矢印で指しているのがVSSとなります)。

IBM Cloud for VMware Solutionsでは、VSSの他に、ESXiだけでなくvCenter/NSX/vSANおよびAdd-onサービスも自動導入可能なVMware vCenter Server on IBM Cloud(VCS)も提供されており要件に応じて選択が可能です。

IBM Cloud VMware ソリューションの選択肢

技術検証の手順と結果

【検証概要】

・IBM Cloudの東京リージョンのTOK04データセンターに、VSSを用いてESXiクラスタ環境を構築しました。

・構築対象は以下となります。

   ・ESXi用物理サーバ(ベアメタル) 2台

   ・外部ストレージ(IBM Cloud Block Storage)

   ・vCenterサーバをESXi上に仮想アプライアンスのvCenter Server Appliance(以降vCSA)で導入

   ・ISOイメージのマウント用として仮想サーバ(VSI) 1台(この仮想サーバの構築手順は当ブログでは省略)

・検証担当者はDirect Link経由接続されたソフトバンク作業サイトからWindows PCで接続し作業を実施

 

【検証構成イメージ図】

IBM Cloud Classic

【検証実施手順サマリー】

VSS環境の構築を以下の順番で実施しました。

1.サーバ導入・設定(IBM Cloud VSSで物理サーバおよびESXiのオーダーと各種設定)

2.ストレージ導入・設定(IBM Cloud Block Storageのオーダーと各種設定)

3.vCenter(vCSA)導入・設定

4.VMwareクラスタ作成

 

【検証(構築)手順】

以降で手順を順番にご紹介します。

*画面のスクリーンショットは適宜抜粋して掲載しています。

手順1. サーバ導入・設定手順

(以下図の赤枠内が当手順の対象とするリソース)

IBM Cloud Classic Infrastructure

・IBM CloudカタログのVMware Solutions画面から左下のVMware vSphere(VSS)を選択

IBM CloudカタログのVMware Solutions画面

・必要なライセンスの確認(ESXi)と選択(vCenter等)、データセンターの選択

IBM Cloud ライセンス交付

・物理サーバのスペック(CPU種類、コア数、RAMサイズ)と台数を選択

・ホスト名やドメイン・ネームを設定とネットワーキング・タイプ、アップリンク速度、VLANを選択

・オーダー後、デバイスリストにて、2台のESXi用物理サーバのプロビジョニング完了の確認(上から二行目と三行目です)

・上の画面で、ESXiホストのパスワードの確認のため確認するESXiホストを選択しクリック

・表示された以下の画面の最下行にあるESXiのIPアドレスの右横にある「i」を押すと、IPアドレスとサブネット・マスク、デフォルト・ゲートウェイが表示されるので、メモに記録。その後、左側のナビゲーターペインにてパスワードをクリック。

・「👁」マークを押すとrootのパスワードが表示されるのでメモに記録。同様に他のESXiホストもIPアドレスとパスワードの情報を確認して、メモに記録。

手順2. ストレージ導入設定手順

(以下図の赤枠内が当手順の対象とするリソース)

・IBM Cloud Block Storageのオーダー

 

データセンター(物理サーバと同じロケーション)、課金方式、サイズの指定

・オーダー後、リソースリストの「ストレージ」で作成完了していることを確認

・作成したストレージにアクセスできるサーバを指定(許可ホスト設定)してストレージの設定は完了

・VSSの二台の物理サーバが許可ホスト設定されたことを確認

ユーザー名、パスワード、ホストIQNが設定されていることを確認して、メモに記録。この情報は後程ESXiデータストアの容量追加の工程にて必要。

・ストレージIPアドレスの確認

リソースリストにて、プロビジョニングされたストレージを選択し、IPアドレスを確認してメモに記録。この情報は後程ESXiデータストアの容量追加の工程にて必要。

・VSSの物理サーバにVMware Host Clientでログイン

 *VMware Host Client は単一の ESXi ホストを管理するのに使用します。(vSphere Client は   vCenter Server に接続して複数の ESXi ホストを管理するのに使用します)

・iSCSIターゲットへのアクセスの追加

ESXi Host Client インベントリ内で [ストレージ] > [アダプタ] の順にクリック。ストレージの中でアダプタを選択し、ソフトウェアiSCSIをクリック。

・iSCSIターゲットの設定

・ホストIQNの変更

*ホストIQNがVMware Host Clientからは変更できなかったのでESXiのCLIにて変更しました。(IBMクラウドのDocsの手順では変更可能とありますが、今回はできなかったのでCLIで変更しました)

・iSCSIターゲット設定完了の確認

・データストアの作成

・データストア設定

手順3.vCenterサーバ(vCSA)の導入・設定

(以下図の赤枠内が当手順の対象とするリソース)

・vCSAのインストーラー入手(サポートCase起票)

vCSAのインストーラーはIBM CloudのポータルからダウンロードできないのでIBM Cloudのサポート窓口にCaseを通じて依頼しました。

 *利用者からの質問や要望に対する回答や、メニューから選択できない注文、IBM Cloudによるメンテナンスの通知などはすべてCaseを通してやり取りされます。

 

・ポートグループの作成

 *VSSでESXiサーバをオーダー・構築した際にはポートグループが作成されていません。そのため後工程のvCSAのインストールの際のネットワーク構成にてネットワークが選択できずインストールできないため、この段階でポートグループの追加が必要です。(以降手順はVSSの物理サーバ1台目に対するポートグループ作成作業です。2台目は同じ手順のため割愛します)。

 *ポートグループ(port group)とは、VMwareの仮想スイッチ(vSwitch)内で、仮想マシン(VM)との通信に用いられる仮想的なポート。個別のポート毎ではなく複数のVMを束ねたグループ毎に管理するためこのように呼ばれます。

 

・VSSの物理サーバにVMware Host Clientでログインしポートグループの追加を開始

ESXi Host Client インベントリ内で [ネットワーク] > [ポートグループ] の順にクリックし、ポートグループの追加をクリック

・ポートグループ VM Networkを作成

・ポートグループが追加されたことを確認

・vCSAのインストール

ISOイメージをダウンロードした仮想サーバ(VSI)にリモートデスクトップで接続

*当仮想サーバの構築は当手順書には含めていませんが、別途事前に作成しています。

・vCSAインストーラーを起動

仮想サーバのエクスプローラーにてinstallerをダブルクリックして起動

互換性は、VMware Compatibility Guideにて事前に確認する必要があります。2023年12月時点でのIBM CloudのVSSのvSphereのバージョンは7.0u3でしたので、当検証では8.0.2を使用しています。

 ※vSphere7では、ESXi のバージョンが vCenter Server より新しいバージョンである構成は非推奨です(vSphere8からはサポート対象外)。

 

・vCSAのインストーラーが起動するので画面に沿ってインストールする

・導入するサーバの指定(VSSの物理サーバとユーザー名、パスワードを指定)

・vCSAのVM名、ユーザー名、パスワードの設定

・vCSAのデプロイのサイズでTinyを選択

 *今回の検証では予算の関係より最小サイズ(Tiny)を選択しましたが、用途等考慮し少し余裕をもったサイズを選定することをお勧めします。

・vCSA用のデータストアを選択

・vCSA用のネットワークを設定しNEXTをクリック

 

・設定が正しいことを確認した後、FINISHをクリック

・vCSAのインストールのスタート

・vCSAのインストールの完了

・インストール後のvCSA設定としてStage2を選択

・vCenter Server Configurationを設定

時刻同期モードとしてNTPサーバと同期することを選択し、続いてNTPサーバのFQDNを記入し、NEXTをクリック

IBM Cloud(Classic)ではNTPサーバはtime.service.networklayer.com

・SSOの設定

SSOドメイン名を記入、続いてSSOのパスワードを記入し、NEXTをクリック

・CEIPの設定

VMware Customer Experience Improvement Programへの参加が求められるので、NEXTをクリック

*CEIP(カスタマ エクスペリエンス向上プログラム) に参加すると、匿名のフィードバックや情報を VMware社に提供して VMware社の製品およびサービスの品質、信頼性、機能の向上に貢献できます。

 

・Ready to completeの画面にて設定を確認して、FINISHをクリック

・vCSA設定のスタート

・vCSA設定の完了

手順4. VMwareクラスタの作成手順

(以下図の赤枠内が当手順の対象とするリソース)

・ブラウザーを起動して、設定したvCSAのIPアドレスへ接続し、vSphere Clientの起動をクリックし、vSphere Cleintにログイン

・vSphere Clientの画面で、アクションをクリックし、新規データセンターを選択

・新規データセンター作成

・作成したデータセンター選択してからアクションをクリックし、新規クラスタを選択

・新規クラスタ作成1/3

・新規クラスタ作成2/3

・新規クラスタ作成3/3

・作成したクラスタを選択し、アクションをクリック、ホストの追加を選択

・ホストをクラスタに追加

・VMware ESXiクラスタの稼働を確認

クラスタにホストが全て追加され作業完了。

まとめ

今回の技術検証を通じて、IBM Cloud for VMware SolutionsのVSSを活用することにより、VMwareのESXiクラスタ環境を小規模構成からクラウド上にクイックに構築できることが確認できました。このようにIBM Cloudには最新のITソリューションを利用するための準備が整っていますので、VMware環境のクラウド化に限らず、さまざまな目的でのクラウド活用に際しても選択肢として是非検討してみてください。     

今後もソフトバンクは、お客様のビジネスニーズに合わせた最適なクラウドソリューションを提供するために、技術力と知識の継続的な向上に努めてまいります。

本記事がご覧いただいた皆様のお役に立てることを願っています。お読みいただき、ありがとうございました。

【注釈】

※当記事の内容は 2023 年 12 月時点で公開されている情報をもとにしております。今後変更となる場合もございますのでご了承ください。

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