わずか、0.5秒。「AI温度測定」が人々の安全を守る

2020年6月30日掲載

新型コロナウイルスの流行により、企業の危機管理において感染症対策は最も重要なテーマとなった。感染防止の基本は、感染者との接触を避けること。

安全な環境確保のためにオフィスや病院、店舗の入口で、検温が実施されるが、大勢が出入りする場所では対応が追いつかず、人手もかかる。人が入る場所、と考えると検温するシーンは、オフィス、病院だけでなく、学校や保育園、学習塾、映画館、美術館や博物館、ホテル、遊園地、テーマパークなど多岐にわたる。

そんな中、日本コンピュータビジョン株式会社(以下JCV)は、サーモグラフィカメラによるAI温度検知ソリューション「SenseThunder」の提供を開始した。企業の感染症対策の有効手段となり得るのか。担当する中島宏幸氏に話を聞いた。

目次

  • 今後、企業は感染症のリスクと向き合いながら、事業活動を継続しなければならない。
  • 「SenseThunder」(センスサンダー)は、人手をかけず自動で入館者の体表温度を測定。
  • 顔認証機能を利用することで、人事・労務ソリューションとの連携も可能。

中島 宏幸

日本コンピュータビジョン株式会社
営業&マーケティング本部 マーケティング部

AIアルゴリズムで温度を推定。誤差0.3度の温度検知ソリューション

2020年5月の緊急事態宣言解除後、多くの事業者がさまざまな感染防止対策を行いながら事業を再開した。入口での検温実施やアルコール除菌スプレーの設置。ソーシャルディスタンスを守る座席配置に、アクリル板などを用いた仕切りの設置。少しずつ暮らしの中に溶け込みつつある。

ソフトバンク本社ビルでも、出社してきた社員に入館ゲートで検温を実施している。施設での検温にはガンタイプの体温計が用いられることが多い。入口に検温係が立ち、1人1人検温していくのが一般的だ。

しかし、ソフトバンク本社の入館ゲートには、検温係がいないだけでなく、社員はウォークスルーで入館ゲートを通っていく。ここで採用されているのが、JCVが提供しているAI温度検知ソリューション「SenseThunder」だ。

入館ゲートに設置された専用端末の赤外線サーモグラフィカメラが0.5秒で温度を測定。ソフトバンクでは体温が37.5度以上の場合はアラート音が鳴り、警備員が声をかけるというルールになっている。

同様の温度検知ソリューションはいくつか登場しているが、このサービスの大きな特徴はAIを活用している点だ。JCVの中島氏は次のように語る。

「まず『SenseThunder』の画像認識技術を用いて人物の『額(ひたい)』の位置を特定。そこから額の複数点の体表温度を取得します。

なぜ、複数点を取る必要があるかというと、額の体表温度は箇所により温度が異なるためです。前髪は表面温度が低いなど、測定箇所によっては体表温度を低く計測してしまうこともあります。複数点の体表温度を取得し、その中で一番高い温度を体表温度とすることで、より正確な測定をすることができます。

現在AI検温ソリューションでは2タイプの専用端末を提供しており、高性能なタイプの『SenseThunder-E』では11万点、低コストで手軽に利用できる『SenseThunder-Mini』では1万点の体表温度を収集することができます」(中島氏)

赤外線サーモグラフィカメラで測定できるのは、「(体内)温度」ではなく、「体表温度」。体表温度は室内温度の影響を受けるため、取得した「体表温度」から「温度」に変換する必要がある。「SenseThunder」では、この部分にもAIを活用している。

「『SenseThunder』には、最先端の顔認証技術が使われています。

開発段階で体表温度と体内温度の相関性に関するビッグデータAIに学習させ、アルゴリズムを組んでいます。そのため、取得した体表温度から瞬時に温度を推定することができるのです。

体温は一般的に脇の下で測ることが多いのですが、『SenseThunder』で測定した場合と脇の下の体温との誤差は0.3度ほど。ほぼ正確な温度を測定することができます」(中島氏)

密を作らず、感染リスクを抑える。企業の導入事例

多くの企業が従業員や顧客の温度検知を行っているが、いくつかの課題を抱えている。

従業員に検温を義務付け、熱がある場合は出社を控えるように伝えていても、企業側は本当に従業員が検温をしているか判断できないし、来訪者に事前の検温をお願いすることも難しい。

また、ガンタイプの温度計を使う場合であっても、接触感染のリスクがあるほか、専用のスタッフを配置するための人員確保が課題となる。

今後、長期にわたり感染防止対策として検温を実施していくことを考えると、こうした課題は企業にとって負担になっていくだろう。安全に、効率良く、人的コストを抑えて取り組む方法が必要だ。

これらの課題を解決するために、すでに多くの企業で「SenseThunder」が導入されている。

「イオン様では、緊急事態宣言解除後にイオンモールの営業を再開するにあたって『SenseThunder-Mini』を導入していただきました。従業員通用口に設置し、従業員の体調管理を効率良く実施したいというのが導入理由です。

瞬時に温度検知できることに加えて、デバイスから1.2m離れた場所から顔を認識して測定できるので、密な状態を作りにくいという点もこの『SenseThunder-Mini』の強みです。測定待ちの行列を作らず、従業員の健康管理と入館手続きをスムーズに実施することにつながっていると思います。

また、一部の店舗では店内入口にも『SenseThunder-Mini』を設置して、来店客の温度測定を実施しています。(中島氏)

以前は担当スタッフを配置し、手動での検温を検討していた、飲食店や企業の導入も相次いでいる。
「一部の飲食店では入口に『SenseThunder-E』を設置し、来店客向けに検温を実施しています。これまでは検温実施のスタッフを配置していましたが、人員コスト、時間的コストがかかりすぎていたという課題があったようです。

マスクの有無を判定する機能もあるため、マスク未着用の方に対してアラート音を鳴らし、マスク着用を徹底するという取り組みも行われている企業もございます。」(中島氏)

JCV中島宏幸氏。取材はZoomミーティングで行った。 JCV中島宏幸氏。取材はZoomミーティングで行った。

このほかにも、新型コロナウイルスの感染第2波、第3波に備える医療機関では、『SenseThunder-E』で発熱の疑いがある方を速やかに特定し、院内感染の予防につなげる取り組みを実施。各種イベント施設などでは、興業再開時に来場客が安心して楽しめるよう、イベント時の入場ゲートなどに端末を設置する予定だ。

「今は感染防止対策として検温ソリューションのニーズが高まっています。今後、人の移動が増えていく中で、企業は従業員や顧客に安心を提供することが求められます。

無理なく継続していける感染症対策の1つとして、このAI温度検知ソリューションを活用していただければと思います」(中島氏)

顔認証ソリューションとの連携で広がる可能性

「SenseThunder」で計測した温度は、社員のデータベースと連結も可能。社員に紐づいた検知情報を管理画面で確認できる。 「SenseThunder」で計測した温度は、社員のデータベースと連結も可能。社員に紐づいた検知情報を管理画面で確認できる。

現在は温度測定のみで利用されるケースが多いが、「SenseThunder」は温度検知機能と顔認証機能を同時に使うこともできる。

「『SenseThunder』では温度測定に加えてビルディングアクセスソリューションも提供可能です。入館方法をICカードから顔認証に切り替え、将来的なスマートオフィス化につなげていくことができます。

また、APIを提供することもできるので、勤怠管理ソフトなどと連携することも可能です。お客さまの使用用途に合わせて、最適なかたちでご提供していきたいと考えています」(中島氏)

オフィスビルでICカードによる入館が当たり前になっているように、今後は検温と顔認証の入館者がスタンダードな時代がくるかもしれない。目の前の課題の対処で終わらせるのではなく、次に進むための準備期間として役立てていくことが将来的な企業の成長にもつながるはずだ。

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