小売業界が抱える課題をDXで解決するには

2020年12月22日掲載

ニューノーマル時代の「消費者行動」は大きく変化し、商品やサービスに対する購入意欲や購買方法に大きな影響を与えています。また、先行きが見えない不安から、消費者は商品やサービスの購入に対して、よりシビアな判断をするようになっています。 小売業界は、消費者のニーズに合わせて柔軟に新しいサービスや販売方法を取り入れながら、自社の商品やサービスの情報を対象となる層に確実に届け、必要と思ってもらえるよう工夫していかなければなりません。従来のマーケティングだけでは事業の維持・拡大は難しくなるでしょう。 今回は、小売業界の現状や課題を確認した上で、DXの導入によって小売業が課題を解決し、ニューノーマル時代の消費者行動に対応して売り上げをアップする方法について考えていきます。

目次

小売業界の現状

時代の移り変わりや新型コロナウイルス感染症の拡大は、小売業界に大きな影響を及ぼしています。まずは、小売業界が置かれている現状と背景を確認しておきましょう。

モノが売れない・売りにくい時代

近年、日本の小売業界では、モノが売れない時代だといわれています。要因はさまざまですが、そのひとつに、デフレーション(物価が持続的に下落する現象、以下デフレ)があります。総務省統計局がデフレについて示しているところによると、1999年以降は継続して消費者物価指数が下降線状であり、2001年から2012年までの時期は長く続くデフレの時代であったと言えます。その長引くデフレ経済は労働者の賃金をも抑制し、不安定な就労状態の労働者を増やしました。当然ながら家計は冷え込み、人々は消費を先送りするようになりました。

デフレの影響で企業の開発競争が進んだ結果、質の良い商品が巷にあふれるようになったことも要因のひとつです。今や誰もが手ごろな価格で、満足できる品質の商品を簡単に手に入れられるため、消費者は商品自体に価格に見合った魅力がない限り、高額な商品を買おうとはしません。

さらに、時代の変化を背景に消費者の意識が変化したことも、少なからず影響しています。1950年代半ばからの高度経済成長期の日本では、新しい商品が次々と世に出され、消費されていきました。人々は物質的な豊かさを追い求め、最新の機能を備えた家電や車、ブランド物の服やバッグなどを所有することに価値を感じていました。しかし、人々の間に便利なモノが行き渡ると、“モノ消費”は限界を迎え、1990年代後半ごろからは、人々の消費行動は、モノを所有することよりも体験することに価値を見出す“コト消費”へと移り始めます(独立行政法人国民生活センター2019年4月版「モノの所有から利用へと変わる消費」参照)。

IT技術の発展とインターネット、スマートフォンの普及は、こうした消費者行動に拍車をかけました。近年では、個人が所有しているモノや場所をほかの人が共有できるよう仲介する「シェアリングエコノミー」や、音楽や動画、ソフトウェアなどを定額料金で一定の期間使い放題にする「サブスクリプション」が人気を集めています。

シェアリングエコノミーやサブスクリプションのようなインターネットを介した新しいサービスの流行は、消費者の意識の変化を象徴する現象です。モノが売れない・売りにくい現代において、小売業は、時代のニーズを捉えた新しい価値やサービスを生み出すことが求められているのです。

ニューノーマル時代における消費者行動の変化

モノが売れず苦戦する小売業界に、さらなるショックを与えたのが、パンデミックです。2019年末以降、新型コロナウイルスが感染拡大したことで、私たちの生活と社会は大きく変わりました。感染予防のため、マスクを着用したりソーシャルディスタンスを保ちつつ、接触や移動をできる限り控えるという新しい生活様式が浸透し、消費動向にも変化が生じています。小売店には、消費者が店舗に行かずに商品を購入できるEコマースの導入、店員と消費者が接触せずにすむキャッシュレス決済など、ニューノーマル(新しい常態)への対応が求められています。

また、感染拡大が収まらないなかで、消費者は節約志向になり、その商品が本当に必要なものなのか、慎重に判断して購入する傾向が強くなりました。小売業は、より的確に消費者のニーズを把握し、消費者にとって本当に役立つもの、価値のあるものを提供していかなければなりません。

なお、先述のとおり、近年はシェアリングエコノミー型やサブスクリプション型のビジネスが注目されていますが、新型コロナウイルス感染症の流行で、モノを共有することに抵抗を感じる消費者が増え、消費動向にもその影響が表れています。

例えば他人と車を共有するカーシェアよりも、月単位の定額料金で自分専用の車を利用できるサブスクリプション型の人気が高まっています。住宅業界では、共用スペースでの人との接触を避けたいという観点から、マンションよりも一戸建て住宅への関心が高まっているとも言われています。

シェアリングエコノミーのようにニューノーマル時代以前は好調だった商品やサービスでも、新しい生活様式に合わせてその内容やマーケティング戦略を見直す必要があるでしょう。

店舗のショールーム化

インターネットの普及や新型コロナウイルス感染症の流行を背景に、ECサイトの利用は拡大していますが、買い物をするなら店舗で実物を確認してから買いたい、という根強いニーズも存在しています。

また、人によっては、実店舗で商品を見たあと、より安い価格で販売されている他社のECサイトで購入する場合もあり、店舗のショールーム化が進んでいるといわれています。つまり、マーケティング施策によって店舗への集客に成功しても、購入にはつながらず、他社に売り上げを奪われるリスクがあるということです。

これからの時代を小売業が生き残るには、店員の接客スキルを強化し、顧客との関係づくりに力を入れる、他社のECサイトでは買えない自社開発の魅力ある商品を増やすなど、店舗のショールーム化を見越した戦略が必要です。自社のECサイトと実店舗、両者の強みを生かして連携させながら売り上げを増やすオムニチャネル的な視点も欠かせません。オムニチャネルというのは、マーケティング用語として使われるチャネル(流通経路)に「あらゆる」という意味合いを含むオムニという語をつなげたマーケティング用語です。つまり、全ての流通経路を統合的に連携させた状態をつくり出し、顧客にアプローチしていく、という戦略なのです。

小売業界が抱える課題

では、このような厳しい状況のなか、小売業は、業務を進める上でどのような課題に直面しているのでしょうか。ひとつずつ確認いきましょう。

ECビジネスへの対応

コロナ禍で外出を自粛する傾向が続いたことで、外食産業やアパレルといった生活必需品以外の業種の多くが打撃を受けました。一方、それまで実店舗で購入していた層の消費者がECサイトで購入するようになったため、Eコマースの利用は増加しました。

また、飲食店の配達を代行するフードデリバリーや、ECサイトからの配達を近くにいるドライバーに依頼できる配送クラウドソーシングサービスのように、急速に需要を広げ、成長した業態もあります。いずれも、注文やドライバーへの仲介の多くにアプリケーションが使われています。

新しい生活様式が常態化するなかで、人との接触を抑えらえるインターネットを活用したサービスが求められる傾向は、今後も続くでしょう。小売業は、時代のニーズに合わせて、インターネットとデジタル技術を使った便利で新しいサービスやマーケティング手法を積極的に導入していくことが求められています。

多様化する決済方法

日本では、2020年の東京オリンピックに向けて決済方法のキャッシュレス化が進められてきましたが、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、そのニーズが急速に高まりました。特に、現金をチャージしたカードやスマートフォンを店頭の決済端末にかざして支払う「電子マネー決済」や、スマートフォンのアプリで店頭に掲示されたQRコードや二次元バーコードを読み込んで決済を行う「QR・バーコード決済」など、非接触型のキャッシュレス決済の利用者が増えています。

規模の大小にかかわらず、小売店では、非接触型のキャッシュレス決済への対応は不可欠となりつつあります。消費者のニーズに応えるには、できる限り多様な決済方法を導入していく必要があります。

勤怠管理

一般的に、スーパーマーケットや家電量販店のような小売店では、アルバイトやパートなどさまざまな雇用形態の従業員を抱えていて、シフト制の勤務を導入しています。そのため、勤怠管理が複雑化しがちです。特に、タイムカードを使っている場合、従業員全員分の勤怠情報をシステムに入力し集計するという作業を毎月行う必要があります。このように勤怠管理にかかる多大な時間と手間は、担当者に負担をかけ、業務の効率化を阻んでいます。

社員教育

業種や業態にかかわらず、多くの企業にとって社員教育は大きな課題となっています。人材を一から育てるには時間、労力、コストがかかります。人手不足の上に、新型コロナウイルス対策でさまざまな負担を強いられている現場は、余裕がないのが現状です。また、社員を一定の期間、1ヵ所に集めて行う集合研修が実施しにくくなっているという問題もあります。

顧客データの活用

消費者の価値観や動向が目まぐるしく変わるニューノーマル時代において、小売業が生き残りを図るには、データの活用がますます重要になると考えられています。なぜなら、顧客の消費行動といったデータを集めて分析することで、消費動向を把握したり、今後のニーズを予測したりしてマーケティングに生かし、売り上げアップにつなげることができるからです。

しかし、実際にはデータ収集が十分にできていない企業も少なくありません。せっかくデータを集めても、活用できていないケース、店舗とECサイトの連携が不十分であるためにうまく生かしきれていないケースもあるでしょう。

小売業界のDXによって実現できること

これら小売業界が抱える課題を解決し、業務を効率化したり売上向上に貢献したりする有効な手段がDXです。ここからは、DXの推進によって実現できることを、詳しく見ていきましょう。

DXとは

DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略で、一般的に、最新のデジタル技術を活用した企業変革という意味で使われています。2018年に経済産業省が取りまとめた『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)』では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

DX導入を支えるデジタル技術には、AI(人工知能)やVR(仮想現実)のほか、あらゆるモノをインターネットに接続することで、自動制御や計測を可能にするIoT(モノのインターネット)、定型化されたPC作業を自動化したりAIなどと連係してより高度な業務プロセスを自動化したりするRPAなどがあります。ビッグデータ(巨大で複雑なデータの集合体)をAIやIoTなどの技術と組み合わせて分析、活用していくことも、DXの手法のひとつです。

また、2020年から商用化がはじまった5G(第5世代移動通信システム)を活用することでIoTやRPAなどで使用する巨大で複雑なデータやVRの映像などを遅延無く活用することを支える技術だと言えます。

小売業のDX

では、小売業では、具体的にどのようなDXの取り組みが考えられるのでしょうか。ひとつずつ確認していきましょう。

OMO(オンラインとオフラインの融合)

実店舗での買い物を楽しみたい人もいれば、実店舗に足を運ぶことなくネットショッピングですませたい人、実店舗で商品をチェックしてECサイトで購入したい人もいる…というように、ニューノーマル時代に入って、消費者のニーズはますます多様化しています。小売店は、消費者のニーズ合わせてECビジネスに対応するとともに、販売スタイルやマーケティングの方法を工夫していかなければなりません。

そのひとつとして注目されているのが、OMOです。OMOとは、「Online Merges with Offline」の略で、オンライン(ECサイトのような、インターネットを介したサービス)とオフライン(実際の店舗)を融合するマーケティング概念や販売方法のことです。OMOの手法はさまざまですが、例えば、店舗とECサイトの顧客データを一元化して、店舗での購買データをもとに顧客が好みそうな商品をECサイトでおすすめ商品として表示するといった取り組みが考えられます。OMOを導入することで、顧客のさまざまな購買ニーズに応えられるようになり、業務効率化や売上向上が見込めます。

ちなみに、OMOと似た言葉に、オムニチャネル、O2O(Online to Offline)があります。オムニチャネルは実店舗とECサイトなどの複数の販売チャネルを連携させて消費者との接点を増やすという手法で、O2OはECサイトの顧客に実店舗で使えるクーポンを配布して店舗に誘導する、といったオンラインからオフラインの購買へとつなぐ手法です。

オムニチャネル、O2Oは、いずれもオンライン、オフラインを分けて考えた上で、売上向上のために両者を連携させるものです。一方のOMOは、オンラインとオフラインの違いや購買行動だけにこだわらず、顧客のあらゆる体験をより良いものにしようという考え方であり、オムニチャネル、O2Oとはベースとなる考え方が異なります。

データ活用

小売業では、レジで顧客が支払いをした際に得られるPOSデータをはじめ、顧客の属性、店内での行動履歴、ECサイトでの購入データ、Webサイトでの行動履歴など、日々さまざまなデータが生まれます。DXを推進して、これらのデータを統合して管理し、AIを使って分析するシステムを導入すれば、今まで従業員が作業をしていた決済業務や顧客データの管理などが自動化されるため、作業効率やミスを回避を始めとした従業員のストレスを軽減することが可能です。さらに、こうした業務の効率化と同時に、顧客エンゲージメントや売上向上につなげることができるでしょう。さらに、メーカ、小売業、卸売業が別々に所有していたデータを共有するシステムを整えることで、より効率化が進むと期待できます。

また、従来、実店舗で得られるデータは、POSデータやアンケート回答など限られたものでしたが、IoTやAIといった最新技術によって、その幅は広がっています。例えば、店舗に設置したカメラ映像から、顧客の属性や感情などを読み取り、消費者行動データを得ることもできます。こうしたデータを分析すれば、より効果の高いマーケティング施策や顧客一人一人に合わせた販売促進策を実施できるようになるはずです。

勤怠管理の効率化

さまざまな雇用形態の従業員を抱える小売業では大きな負担となっている勤怠管理ですが、DXを推進し、シフトの作成やタイムカード管理、勤務データの集計などを一元管理できるシステムやツールを導入することで、大幅な業務効率化が期待できます。自社で独自の勤怠管理システムを構築するという選択肢もありますが、手軽に利用できるクラウド型のサービスも多種あります。自社の規模や業務内容に合ったシステムやツールを選ぶことが重要です。

在庫管理の効率化

小売業では、常に多数の在庫商品を抱えているケースが多いと思われます。在庫管理にはかなりの労力が必要ですが、AIを活用すれば、在庫管理を自動化、省人化するとともに、販売状況や商品の在庫情報などからAIが将来の需要を予測し、RPAによる適切なタイミングでの自動発注が可能になれば、過剰な在庫や売れ残りの保管にかかるコストも減らすことができます。

社員教育の効率化

社員教育のデジタル化、オンライン化は、業務の効率化や従業員の負担軽減につながります。例えば、顧客対応や接客マナーなどの研修を動画にして配信し、PCやスマートフォンなどで従業員が見られるようにするなどの方法が考えられます。業務マニュアルや就業規則もデータ化し、従業員がアクセスしやすい環境を整えるといいでしょう。

単純作業の自動化

業務データをExcelファイルに転記する作業やFAXで届いた注文書の内容を基幹システムに入力する作業など、決まったパターンで繰り返し行わなければならない単純作業は、RPAツールを導入して効率化を図るのもひとつの方法です。RPAとは「Robotic Process Automation」の省略形で、業務を自動化するソフトウェア型のロボットのことです。最近では、RPAとAIを組み合わせることで、判断や分析を含む、より複雑な業務を自動化することも可能になりつつあります。前述の在庫管理の自動化などはその例といえます。

店舗運営の省人化

DXを進めれば、店舗の運営に必要な人員を減らして業務を効率化し、人件費を抑えることも可能です。都市部のコンビニエンスストア、スーパーマーケットなどの小売店では、店員がレジで商品登録のみを行い、顧客が自分で決済するセミセルフレジや、画像認識やバーコードスキャンなどで顧客自身が商品の価格を機械に読み込ませ、決済も自分で行うセルフレジを導入するところが増えてきています。

また、売り場に商品を補充する作業を効率化する技術も開発されています。従来、店舗の売り場では、従業員が棚を一つ一つ見て回って売れ行きをチェックしながら、商品の補充や陳列を行ってきました。この方法では、手間がかかる上に商品の補充が間に合わないことも多く、販売のチャンスを逃しかねません。

しかし、AIとIoTの技術を活用すれば、手間を大幅に短縮し、適切なタイミングで補充作業を行うことができます。AIとセンサ付きのカメラを連動させたシステムを導入している店舗では、顧客が商品を取ると、売り場に設置されたカメラが認識してカウントします。補充が必要なタイミングはAIが判断し、アラートを発して従業員に伝えます。従業員は、自ら売れ行きをチェックしなくても、アラートが出たときにだけ商品を補充すればいいのです。

このような省人化の取り組みは、コスト削減、業務の効率化、欠品回避につながります。

顧客・スタッフの安全確保

Eコマース化、オンライン化がどんなに進んでも、小売業において顧客との対面による接客がなくなることはないでしょう。実店舗での感染対策が欠かせないなかで、デジタル技術は、店舗を訪れる顧客や従業員の安全性を確保するためにも役立ちます。真っ先に挙げられる例は、店舗に非接触型のキャッシュレス決済を導入することでしょう。

そのほか、AIによる顔認証の技術とサーモグラフィカメラを組み合わせて、来店者の体温検知や従業員の温度測定・管理ができるAI温度検知サービスは、多くの大型店舗で導入されています。AIが店内の混雑状況を計測して、店舗入口のディスプレイやWebサイトなどで店内の混雑状況や入店制限の案内をするサービスを導入することも有効でしょう。これらの取り組みは、感染対策であると同時に、既存顧客のつなぎ止め、新規顧客獲得の可能性を広げる施策でもあります。

一方、新型コロナウイルス感染症の流行により対面でのリアルな交流が気軽にできない今、コミュニケーションに対する人々の渇望は高まっているとの見方もあります。そんなニーズを受けてアパレル業界を中心に増えているのが、顧客と店員双方の安全を確保しながらコミュニケーションを図れるデジタル接客です。店員から直接アドバイスを受けたり、質問したりすることができないというECサイトの弱点を補うために生まれたもので、オムニチャネルの手段としても注目されています。

DXの成功事例

次に、小売業でのDX成功事例を紹介します。

株式会社良品計画

衣服や生活雑貨、食品など幅広い商品を取り扱うブランド「無印良品」を運営する良品計画は、いち早くOMOに取り組み、成功を収めた企業として知られています。もともとリアル店舗中心に収益を上げてきた同社ですが、オンラインとオフラインの融合を図るため、2013年にスマートフォンアプリ「MUJI passport(ムジ・パスポート)」の配布をスタートしました。

アプリをダウンロードした消費者は、「無印良品」への来店時にアプリでチェックインしたり、店舗もしくはECサイトで買い物をしたり、サイトにレビューを投稿したりと、何かしら同ブランドとの関わりを持つことで、MUJIマイルをためることができます。ためたMUJIマイルの数に応じて、店舗、ECサイトにかかわらず同ブランドを利用する際に使えるMUJIショッピングポイントが付与されます。

「MUJI passport」の日本国内でのダウンロード数は、2020年8月時点で累計2,111万回に達しました。同社は、アプリを起点にしたサービスにより、顧客との関係性を強めて固定ファンを増やし、ECサイトの利用率を高めることに成功しています。また、アプリを介して収集した消費者の行動履歴のデータは、その後のマーケティングに生かされています。

日本コカ・コーラ株式会社

日本コカ・コーラでは、日本における自動販売機の多さに着目。下降傾向にあった自動販売機での商品の販売を促進するため、2016年、自動販売機と接続させるスマートフォンアプリ「Coke ON(コーク・オン)」を使ったマーケティング施策をスタートさせました。その内容は、同アプリをダウンロードしたユーザが対応する自動販売機でスマートフォンをかざして飲料を購入すると、スタンプが付与され、スタンプ15個でドリンクチケット1枚と交換できるというものです。

同アプリは、2020年10月時点で2,200万ダウンロードを突破。同社の施策は、IoTの技術を使ったDXの成功例といえます。

株式会社ローソン

ローソンは、2020年に、社長直轄の「デジタルトランスフォーメーション推進委員会」を設立。デジタル技術を活用した構造改革、本部の組織・風土の改革を行うとともに、戦略の浸透やIT人材の育成を強化すると発表しています。 これまでも同社は、2017年に設立した「オープン・イノベーションセンター」を拠点に実証実験を行いながら、さまざまな効率化・省力化策を進めてきました。2018年には、自動釣銭機付きPOSレジを、2019年には、一部の時間・店舗で、顧客が商品のスキャンから決済まで全てを自分で行う「ローソンセルフレジ」を導入。これらの取り組みは、従業員の負担を軽減し、顧客の待ち時間を短縮することにつながりました。

2020年には、スマートフォンを使ってQRコードを店頭の端末にかざして入店すれば、商品を手に取って店の外へ出るだけで自動的に決済できる「ローソンGO」の実証実験も開始されました。コンビニエンスストアでは、ピーク時間帯になると店内が混雑してレジに行列が発生しがちですが、「ローソンGO」を導入することで、混雑による販売機会ロスの削減につながると期待されています。その他、アプリによる自動解錠やセルフレジを活用した無人営業、品出しロボや電子タグを使った商品管理の実験も進められています。

変化の多い時代に顧客を育てていくには、デジタルの活用が不可欠

DX推進で実現できることは、多様化する消費者ニーズへの対応、業務効率化による働く環境の改善、人材不足の解消、人件費の削減、従業員と顧客の安全確保など、多岐にわたります。成功すれば、課題を解決するだけにとどまらず、多くのメリットを得ることができるでしょう。

DXはあらゆる分野で重視されていますが、特に小売業界では、その推進が急務とされています。変化の多いニューノーマル時代において小売業が成長を続けるには、消費行動を分析することで潜在的ニーズを的確につかみ、そのときどきで最適な商品・サービスの情報を届けて、潜在顧客や新規顧客を固定客へと育てていく必要があるからです。そのためには、データを活用したデジタルマーケティングが欠かせません。同時に、AI、IoT、RPAなどの最新のデジタル技術を使って、業務の効率化や単純作業の自動化、店舗の省人化などを進め、人材の能力をより生かせるように環境を整えることも重要です。

DXの導入や環境構築は、自社の課題の洗い出しから始まります。具体的なDXの施策を進める際には、専門技術や知識、多くの実績を持つ専門企業の力を借りることが、最も確実に成功に近づく道と言えるでしょう。ソフトバンクは顧客のDX推進を支援するだけでなく、社会課題を解決する新規ビジネスの立ち上げなどDXに関するさまざまなノウハウと技術があります。同社を相談先として検討してみましょう。

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