「アジャイル型組織」に必要な人材育成とは?

「アジャイル型組織」に必要な人材育成とは?

(2021年2月24日掲載)

目次

変化の激しいこれからのデジタル時代において企業が発展し続けるには、柔軟でスピーディな対応ができる「アジャイル型組織」が適しているといわれています。これまで日本企業の多くは、ピラミッド型組織であり、従業員が新たな挑戦をしようとしても、都度上層部の承認を得なければならず、意思決定に時間がかかっていました。アジャイル型組織への転換を目指す企業は増えていますが、さまざまな壁にぶつかってうまくいかないケースも少なくないようです。本稿では、アジャイル型組織の概要や背景、メリット・デメリット、必要な人材の育成方法を確認します。その上で、複数の事例から、アジャイルな発想で自社の組織を変革していくためのヒントを探ってみましょう。

アジャイル型組織とは?

「アジャイル(Agile)」とは、「迅速」「俊敏」「素早い」などの意味を持つ英単語で、もともとはシステム構築やソフトウェア開発で使われていた開発用語です。開発前に全工程の計画を綿密に立てて、計画に沿って進めていく開発手法を「ウォーターフォール開発」と呼ぶのに対し、短いサイクルで試行錯誤を繰り返しながら進めていく開発手法を「アジャイル開発」と呼びます。仕様の変更に柔軟に対応でき、ウォーターフォール開発に比べ、短い期間で開発できるのがアジャイル開発の強みです。

IT業界では、この概念を組織に当てはめ、オープンで俊敏性のある組織を「アジャイル型組織」と呼んできました。近年では業種にかかわらず、新しい組織のあり方を表すビジネス用語として広く使われています。従来、日本の大企業のほとんどは階層構造になったピラミッド型の組織で、トップの権限が強く、意思決定に時間がかかりました。一方、アジャイル型の組織では権限が社員に分散されていて意思決定のスピードが速く、変化に柔軟に対応できるため、効率的に業務を進めることができると考えられています。

また、アジャイル型組織と同様に、次世代型の組織として注目されている概念に「ホラクラシー組織」と「ティール組織」があります。

前者は、2007年にソフトウェア企業の創業者であるブライアン・J・ロバートソンが提唱した概念で、役職や上下の階層のないフラットな組織を指します。権限はグループに委ねられていて、「ホラクラシー憲法」というルールにのっとって運営されていきます。後者は、2014年にフレデリック・ラルーがその著書において提唱したもので、「セルフマネジメント(自主経営)」「ホールネス(全体性の発揮)」「組織の存在目的」の3要素を備えた、個人に決定権がある進化する組織といわれています。アジャイル型組織、ホラクラシー組織、ティール組織は、いずれも権限が組織の一部に集中せず、分散されている点では共通しています。これらの新しい形の組織のことを、「自律分散型組織」または「自律型組織」と呼ぶこともあります。

アジャイル型組織が注目される背景

アジャイル型の組織のあり方が注目されている背景には、時代の変化があります。1990年代後半からのインターネットの発展とともに、デジタル技術を使って今までになかった新しい事業を展開して躍進する企業が続々と現れました。ビジネス環境が激しく変化し続けるデジタル時代の幕が開いたのです。それらの革新的な企業が起こした既存産業の存在を揺るがすほどのイノベーションは、「デジタル・ディスラプション」と呼ばれています。

これから先、企業が競争力を維持して生き残るためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)が不可欠だといわれています。DXとは、デジタル技術とデータを駆使しながら、時代のニーズにあわせてビジネスモデルや組織の変革を行うことを意味します。DXを実現し、新しいビジネスモデルを創出するには、従来型の組織よりアジャイル型の組織の方が有利だと考えられています。世界のトップ企業の多くがすでにアジャイル型の組織運営を行っていますが、日本でもアジャイル型組織への転換を図る企業が増えつつあります。

アジャイル型組織の特長

では、アジャイル型組織とはどんな組織なのか、より詳しく見ていきましょう。次に挙げるのは、アジャイル型組織が持つ主な特長です。

柔軟さと明確な目的意識

アジャイル型組織では、戦略を設計する際に、既存の価値観に縛られず、ゼロから価値を創造することを重んじます。また、顧客中心主義に基づき、顧客とその利害関係者の多様なニーズに応じて迅速に対応できるよう、軌道修正可能で柔軟なビジネスモデルを創出します。そして組織としての方針や事業の進め方に一貫性を保つため、行動の指標となる目的やビジョンを明確に設定しています。この指標は「北極星」と呼ばれます。

フラットな組織構造

アジャイル型組織の構造はフラットで、社員一人一人もしくはチームに権限が分散されています。従来型の組織では、管理職が従業員を管理し、指示を与えるという発想のもとに業務が進行しますが、アジャイル型組織では、従業員に責任と明確な役割を与えることで、各自が自律的に行動し、新たな価値を創出するような発想や独創的な解決策を生み出すと考えられています。

従業員の人間性が尊重され、人を中心にした組織文化が培われるのも特長です。アジャイル型組織は、組織全体が強い信頼関係で結ばれた一体感と団結力を持つコミュニティでありながら、年齢や立場にかかわらず、誰でも遠慮なく意見を言えるオープンな雰囲気を備えています。経営者は、従業員やチームがベストを尽くせるよう環境を整える必要があります。

スピーディなPDCAサイクル

企画、実行、改善という一連の業務サイクルが速いことも大きな特長です。例えばアジャイル型組織で新たな商品やサービスを開発する場合、従来型の組織のように完璧な出来を目指して企画に長い時間をかけるようなことはしません。迅速に成果物を形にして、まず市場に出し、顧客のフィードバックをもとに改善してまた市場に出す、という短期サイクルを繰り返します。積極的に実験して失敗し、そこから大いに学ぶことが求められます。

高度な技術力の維持

アジャイル型組織は、顧客のニーズや時代の変化にあわせて次々と新たなサービスを生み出したり、既存商品を柔軟にカスタマイズしたりしていきます。そうしたビジネスモデルには、最新のデジタル技術の力が不可欠です。従来型の組織でのテクノロジーは、業務の一部分を人に代わって行ってくれる便利な道具、もしくは情報システムとして活用されてきました。一方のアジャイル型組織においては、テクノロジーとビジネス自体がシームレスに融合していて、互いに補い合う関係です。常に新しいツールやシステム、テクノロジーアーキテクチャを積極的に導入することで技術力を維持しながら、顧客に新たな価値を提供し続けます。

アジャイル型組織のメリット

では、組織がアジャイル型になると、どんなことが期待できるのでしょうか。上記のアジャイル型組織の特長を踏まえた上で、主なメリットを確認していきましょう。

ビジネスチャンスをつかみやすい

チームごとに素早く戦略を立て、柔軟に軌道修正できるアジャイル型組織は、顧客のニーズや市場の変化に迅速に反応することができるため、いち早くビジネスチャンスをつかむことができます。また、失敗を恐れずにチャレンジする精神をもとに、新しい商品やサービスを開発しては試し、そこから学習するというプロセスを繰り返していくので、新たな発想が生まれやすく、時代を変えるようなイノベーションを起こしやすくなります。

意思決定までの時間が短い

従来、日本企業の主流であったピラミッド型の組織の場合は、従業員が何かに取り組む際に都度上層部へ段階的に承認を得る必要があります。そのため、意思決定されるまで動きがとれず、スピード感のある戦略が採りにくいことがありました。一方のアジャイル型組織では、組織構造がフラットで権限が分散されているため、意思決定が速く、業務全体がスピード感を持って進んでいきます。

従業員のエンゲージメントが向上しやすい

アジャイル型組織では組織としての方向性や目的が明確に設定されているため、従業員がビジョンを共有しやすく、組織の安定性を保つことができます。また、社内の雰囲気がオープンで、個人のチャレンジや提案を認め、お互いにサポートし合う姿勢が根づいているため、従業員のエンゲージメント(自社に対する愛着や思い入れ)が向上するというメリットもあります。

生産性の向上が期待できる

役割や責任を明確にした上で従業員に意思決定の権限を与えるアジャイル型組織での働き方は、従業員のモチベーションを高め、パフォーマンスを向上させます。さらに、スピーディなサイクルで業務を回していくことで、組織全体の生産性が大幅にアップすることが期待できます。

アジャイル型組織のデメリット

ここまではアジャイル型組織のポジティブな面に目を向けてきましたが、アジャイル型の組織運営にはデメリットもあります。また、従来型の一般的な日本企業のあり方とはかなり異なるため、転換を図る際には困難も伴います。次に、アジャイル型組織のデメリットや注意すべき点を紹介します。

着地点が定まらない

従来型の組織では、例えば商品を開発する場合、計画を綿密に立てた上でプロジェクトを進め、商品が完成すればプロジェクトも終了します。しかしアジャイル型組織では、成果物をつくっては改善する、というサイクルを繰り返していくため、プロジェクトのゴールが定まっていません。常によりよいものを求めて商品やサービスを改善し続けるという意識を根底に持っておく必要があります。

マネジメントが難しい

アジャイル型組織でのプロジェクトは、チームのメンバーが上司からの指示を待たずにそれぞれ自律的に判断し、チーム単位で話し合いながら意思決定していきます。それゆえ変化に強く、迅速で柔軟な対応が可能ですが、タスクが増えて複雑化しやすく、マネジメントが難しいという課題もあります。

プロジェクトマネージャには、メンバーを信頼して業務を任せながらも、適切なタイミングで業務の進め方や内容を検証して軌道修正していくという高いマネジメント能力が求められます。タスク管理ツールを活用するなどして、業務内容に応じて効率的にタスクを管理する工夫も必要です。また、能力の高い一部のメンバーに負担がかかりやすい側面もあるため、業務量が偏りすぎないよう配慮もしなければなりません。

組織の適性が限られる

ビジネス環境がめまぐるしく移り変わる現代社会では、誰もが自社の成長のために、アジャイルのようなトレンドの手法や新しい概念を他社に先んじて取り入れていこうとするものです。しかし、必ずしも新しい手法が正しく、古い手法が間違っているというわけではありません。

アジャイル型の手法や組織運営は、全ての企業に適しているとは言えません。例えば、従業員が進んで意見を出さない、失敗を恐れてチャレンジしようとしないといった社内風土の組織では、アジャイル型組織への転換は難しいでしょう。また、組織を構成する従業員一人一人に、積極性と自律性に加え、一定以上のスキルや能力が求められます。

企業風土やプロジェクトの規模、条件によっては、あらかじめ計画を綿密に立てた上で計画どおりに進行していくウォーターフォール型のほうが適している場合もあります。まずは自社やプロジェクトにどんな組織運営が適しているのか見極めることが重要です。

アジャイル型の組織と人材の育て方

上で述べたように、アジャイル型の組織運営を導入するには、従業員や組織そのものに適性が求められます。現状で組織力が備わっていないのであれば、社内の意識変革を行って人材を育て、組織全体の能力を高めていかなければなりません。ここでは、アジャイル型組織の構築に必要とされる人材の育成方法を考えてみましょう。

挑戦を促す組織文化を醸成する

アジャイル型組織では、組織全体が同じ文化を共有するひとつのコミュニティになることが求められます。人材育成の前に、まずはアジャイル型人材が育ちやすい環境を整えておかなければなりません。失敗を容認し、反対意見を受け入れ、軌道修正を前提に考えられるオープンな企業風土が、従業員の創造性やチャレンジするモチベーションを生み出します。

そうした組織文化が醸成されていないと、従業員が主体的な行動をとったときに、周囲が抵抗したり、従来のやり方にこだわったりして、組織変革がなかなか進みません。まずは、経営トップがアジャイル型組織への転換を強く決意し、全従業員に繰り返しその重要性を伝えていくようにしましょう。従業員が組織の目的や方向性を把握できるよう、経営戦略や企業としてのビジョンを共有することも重要です。

自律性を育む

アジャイル型組織に適しているのは自律的な人材です。自律とは人の支配を受けず、自らの規範で自分をコントロールすることを指します。自律的な人材は上司の指示を待ってそのとおりに動くのではなく、組織全体の目的にどうすれば貢献できるかを自分で考えて行動します。そのような人材を育てるには、業務の進め方について最初から最後まで指示を出すのではなく、本人が考える機会や時間を十分に与える必要があります。もちろん、考えた結果や行動に対しては、十分なフィードバックをしていくこともポイントになります。

経験やスキルに応じて、失敗を恐れずに責任のある仕事を任せていくことも重要です。失敗したら大変なことになるからと、リスクの少ない簡単な仕事ばかりさせていても従業員は成長できません。マネジメント層には、管理するのではなく、メンバーを信頼して業務を委ねた上で、本人が自分で考えて解決策を生み出すのをサポートするという高度で柔軟なリーダーシップが求められます。

個人に応じた目標設定で能力を引き出す

従業員の自律性を育むには、これまでの目標管理や人事評価制度を見直すことが求められます。というのも、従来型の組織では、具体的な受注数やアポイントの件数などの目標が上司から与えられ、目標を達成しないと高い評価を得ることはできませんでした。そのような評価制度のもとでは、従業員は組織全体の利益を考えず、個人や部署の成績を優先し、達成の可能性が低いチャレンジを避けるようになってしまいます。

アジャイル型組織の目標管理や評価の方法はさまざまですが、年次評価を廃止して、パフォーマンスマネジメントと呼ばれる手法を導入している企業が多いようです。パフォーマンスマネジメントでは、従業員自身のスキルやパフォーマンスの向上を目的とした目標設定をしたうえで、1on1ミーティング(マネジメント層とメンバーの定期的な面談)を通して評価していきます。

なかにはひとつの大きな目標とその達成に必要な複数の結果を設定することで、企業全体の目標とチーム・個人の目標を連動させる「OKR」と呼ばれる目標管理方法を取り入れている企業もあります。モチベーションが高まるきっかけや動機は人によって異なります。アジャイル型の組織運営では、個人の人間性を尊重し、その人に合わせた目標設定やマネジメントをすることで、成長とパフォーマンスを最大に引き出せると考えられているのです。

学習できる環境を整える

失敗を恐れずに迅速に開発を進め、フィードバックを受けて見直し、改善するというサイクルを繰り返すアジャイル型組織では、「常に学び続ける姿勢」が重視されています。そのため経営者やマネジメント層には、従業員が自発的に学習できる環境を整備しておくことが求められます。実務そのものから学ぶことはもちろん重要ですが、研修で新しい知識やスキルをインプットすることも必要でしょう。従業員がデジタルデバイスを使って自分のペースで学習できるeラーニングは、アジャイル型組織の人材教育方法としては最適と言えます。その他、上司と定期的に面談を行って相談に応じ、フィードバックで気づきを与える1on1ミーティングも、従業員の学びや成長につながる機会のひとつです。

コミュニケーション力を高める

アジャイル型組織では、顧客やステークホルダー(利害関係者)と緊密にコミュニケーションをとりながらリアルタイムでニーズを把握し、ともに事業を展開していきます。また、チーム単位で業務を進め、意思決定するため、日々、メンバーどうしで活発に意見交換を重ねる必要があります。そのためチームのメンバーには、高いレベルの対話力や交渉力が要求されます。オンラインでのメールやチャットのやり取りが日常化しているなかでは、文章表現力も求められるでしょう。アジャイル型組織への転換を目指すなら、まずは社内コミュニケーションの活性化を心がけなければいけません。従業員のコミュニケーションスキルをアップさせるための教育も必要です。

アジャイル型の組織運営を取り入れている企業の事例

海外では多数の企業がアジャイル型の組織運営で成功をおさめていますが、最近は日本国内の企業もアジャイル型の組織運営を取り入れはじめています。次に、国内外の事例をいくつか見ていきましょう。

スポティファイ・テクノロジー
アジャイル型の組織運営を行っている企業として最も知られているのが、音楽配信サービス『Spotify(スポティファイ)』を運営するスポティファイ・テクノロジーです。同社が導入した組織構造は「Spotifyモデル」と呼ばれています。

このモデルは非常に独特で、『分隊(Squad)』『部隊(Tribe)』『支部(Chapter)』『ギルド(Guild)』という4つのチームから成り立っています。まず、組織の最小単位は分隊と呼ばれる開発チームで、プロダクトオーナーを中心に同じ場所に集合して実務に当たります。プロダクトを通して関連する分隊がいくつか集まったものが部隊です。

分隊はそれぞれが意思決定権を持つ独立したチームですが、企業全体として団結力を持ってまとまるために、同じスキルを持つ人材を集めた支部と、同じ知識を共有したいコミュニティであるギルドが設けられています。従業員は、少人数の開発チームである分隊で自律的に業務をこなしながら、所属する支部やギルドのメンバーらともコミュニケーションを取り合います。

2006年にスウェーデンで創業した同社は、たった10数年で、音楽配信サービスの分野では世界最大手の企業に急成長を遂げました。アジャイル型組織運営によって業務効率と生産性を最大限に高め、社会のニーズをどこよりも早く捉えてきたことが、急成長の決め手になったと考えられます。

アクサ生命

日本国内においては、生命保険会社のアクサ生命がいち早くアジャイル型の組織運営を行っています。同社では、まずIT関連の複数の部門内を少人数の『分隊(Squad)』に分けました。その上で、各分隊をビジネス部門の組織と1対1に対応させたグループ作り、『部族(Tribe)』としました。

部族(Tribe)はIT部門のメンバーをビジネス部門に預けたようなもの、とされていますが、ビジネス部門とIT部門の関係性が緊密になったことには大きな効果があったとしています。また組織再編に加えて、ITエンジニアを採用して、システム開発の内製化をすすめています。また、短期間で開発と検証を繰り返す「アジャイル開発」を実行しています。こうした一連の改革の結果、システム開発のコストと期間を圧縮し、同時に部員の意欲向上にも効果が実感できたとしています。

ダイキン工業

空調機メーカのダイキン工業は、製品開発にアジャイルの手法を取り入れています。同社は、メーカと実際に商品を使う一般ユーザとの間に接点がないという課題の解決を目指し、オンラインプラットフォーム『DAIKIN LAUNCH X(ダイキン ローンチ エックス)』を開設。

「DAIKIN LAUNCH X」では、まず同社が開発中の製品情報を公開し、ユーザから集まった評価や声をもとに製品開発を進め、完成した製品の販売まで行います。アジャイルな手法を導入したことでユーザ目線の新製品を生み出し、発売後もユーザの用途や使い方の変化にあわせて改良をする体制が整いつつあります。

失敗を恐れずチャレンジする組織文化が、組織変革の土台になる

アジャイル型の組織は、変化の激しい時代においても新しいビジネスモデルを創出して業績を伸ばし、成長し続けられると期待されています。まだ国内での導入事例はそれほど多くありませんが、今後は組織をアジャイル型に転換する企業が増えていくはずです。

ただし、従来型の組織からアジャイル型組織への転換は、容易ではありません。というのも、序列を重んじ、完璧を目指すことをよしとする日本企業ならではの企業風土や価値観には、全従業員が主体的に行動し、失敗から学んで改善を繰り返すことが企業の成長につながるというアジャイル型組織の概念がなじみにくいからです。長年にわたって従来型の組織運営を行ってきた企業では、社内に抵抗が生じ、転換を阻む要因となるでしょう。

組織の形が変わることで、社内の意識や組織文化も追いついてくるという考え方もあるかもしれませんが、社内の理解や意識が高まっていない状態で無理に組織構造を変えると、思うような成果が得られない可能性もあります。アジャイル型への転換を目指すなら、まずは社内の意識変革を徹底して、アジャイル型組織に適した企業文化の醸成を促していくことが重要です。

全ての組織やプロジェクトにアジャイル型の手法が適しているとは言えない点にも注意する必要があります。組織変革では、自社の個性や強み、自社を取り巻くビジネス環境をよく見極めたうえで、よりよいモデルや手法を選び、慎重に進めていかなければなりません。なかには組織の一部分をアジャイル型にする、段階的にアジャイル型の手法を取り入れていくといった柔軟な対応が求められるケースもあるでしょう。まずは基本的な知識を身につけたうえで、自社の現状を踏まえ、アジャイル型組織への転換の可能性を探ってみましょう。