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セブン‐イレブン・ジャパン(以下セブン‐イレブン)、アスラテックとソフトバンクは2021年1月から自律走行型配送ロボット「RICE」を活用した実証実験を開始した。ソフトバンク竹芝本社内のセブン‐イレブン店舗からオフィスの各階へ、スマートフォンから注文された商品をロボットが届ける。
ソフトバンク本社のある「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」は地上40階建て。同じ建物内とはいえ、執務スペースからセブン‐イレブンの店舗までの移動は思いのほか時間がかかる。ビジネスシーンに潜む、もう1つのラストワンマイル──。「RICE」は解決することができるのだろうか。
本プロジェクトを推進したセブン‐イレブン、「RICE」を提供するアスラテック、そしてソフトバンクの3社の担当者に話を伺った。
株式会社セブン‐イレブン・ジャパン
企画本部 ラストワンマイル推進部
マネジャー
株式会社セブン‐イレブン・ジャパン
企画本部 ラストワンマイル推進部
新配送モビリティチーム
株式会社セブン‐イレブン・ジャパン
企画本部 ラストワンマイル推進部
新配送モビリティチーム
アスラテック株式会社
ロボットサービス事業本部 ロボットサービス事業推進部
部長
ソフトバンク株式会社
法人第三営業本部
物流における「ラストワンマイル」とは、配送拠点から顧客へ届ける最後の区間を指す。いかなる商品でもワンクリックで自宅にすぐ届く、そんな未来が来そうで来ないのは、ラストワンマイルの配送の煩雑さと、それに伴うコストが課題になっているからだ。
セブン‐イレブンは2020年6月にラストワンマイル推進部を設置。セブン‐イレブンの商品が全国どこでもすぐに届く、を実現するためさまざまな取り組みを実施している。
「店舗で待っているだけでなく、外へ打って出ようという試みは、実は20年以上前からはじめています。2000年に日替わりの弁当や惣菜を届ける「セブンミール」を開始。2017年にはネットで注文を受け付けて最短2時間で自宅へ配送する「セブン‐イレブンネットコンビニ」のテストを北海道エリアで開始しました。2020年にはエリアによっては最短30分でお届けできるようになっています」(石津氏)
ネットやアプリでの注文後に数十分で自宅に商品が届くというような顧客体験は、日本でもいくつかのフードデリバリーアプリがすでに実現させている。それらのフードデリバリーアプリはギグワーカーと呼ばれるスタッフを雇用している。配達エリアの付近にいるギグワーカーにネット経由でオンタイムに配達を依頼するという仕組みだ。
ラストワンマイルを実現させるための1つの有効な解決策であるようにも感じられるが、セブン‐イレブンはギグワーカーを雇用せず、独自の物流網を敷くことにこだわる。
「ギグワーカーによる配送網は都市部で生きますが、その他のエリアでは成立しにくいものです。現在、セブン‐イレブン店舗は全国に約2万1000店あります。全国一律でサービスを提供しようと考えると、どうしても独自の物流網が必要になるのです」(石津氏)
日本の生活インフラであるセブン‐イレブンだからこそ、全国にサービスを提供することにこだわる。しかし、そこで課題になるのがラストワンマイルの配送にかかるコストだ。
近年、配送の人手不足に加えて、最低賃金が上昇し人件費は高騰している。また配送が困難なエリアもある。24時間営業である点も、独自の配送網を敷くにあたっての大きな壁になる。
そこでセブン‐イレブンが配送手段のひとつとして活路を見出したのが、ロボットによる配送だ。2020年12月には福岡県の能古島でドローンを活用した商品配送の実証実験を行った。
「福岡県の能古島には商店がないため、近隣のセブン‐イレブンオーナーが週1回フェリーで島まで出張販売に出向いていました。フェリーの運賃などもあるため、オーナーさんのご厚意からの取り組みだったそうです。
そこでANAさんと共同で食品や日用品を注文後にすぐドローンで配送するサービスの実証実験を行いました」(長尾氏)
そして、能古島でのドローン配送の実証実験からも間もない2021年1月。セブン‐イレブンは次なるロボット配送の実証実験をアスラテック・ソフトバンクと共同で開始。スマートオフィスの実験場を標榜するソフトバンク本社を舞台に、ロボットによるビル内の配送実験を実施した。
「私たちは企業のオフィスビルにも出店させていただいています。ビルによっては来店いただくためにエレベーターを乗り継ぐ必要があったり、昼休みはエレベーターが混雑したりとお客さまに面倒をおかけしてしまうことがあります。
もしお客さまがいる階まで商品を運ぶことができれば便利なサービスになるのではと考えました」(石川氏)
Webサイトから注文をすると、建物内のセブン‐イレブンの店舗スタッフの持つ端末へオーダーが届く。
店舗スタッフが商品を「RICE」に詰めると、「RICE」はあらかじめ記録したビル内の地図を頼りに廊下を走行し、エレベーターに乗り、注文者の待つオフィスエリアの入り口まで自律走行する。
到着を知らせるメッセージとパスコードが注文者のスマートフォン宛に届いたら、パスコードを入力して商品を受取るという流れだ。
今回の実証実験で活躍した「RICE」の特長について、小野氏は次のように語る。
「『RICE』は香港のRice Roboticsが開発した自律走行型ロボットで、私たちアスラテックは日本の総代理店として事業を展開しています。
『RICE』の特長は2つ。1つはユーザフレンドリーなデザインです。ロボットに対して怖い、難しそうといったイメージを持っている方もいらっしゃると思うのですが、そういった心理的障壁がなくなるように可愛らしいデザインになっています。また、操作もタッチパネルで、スマートフォンのように直感的に行うことができます。
もう1つは柔軟なシステム連携。今回もエレベーターシステムと連携しながらフロアを移動したり、お客さまにショートメッセージを送付したりしています。例えば、通信連携してセキュリティゲートを通過したり、到着したらオフィスの内線電話を鳴らしたりすることもできます」(小野氏)
小野氏は「ロボットはさまざまなシステムと連携してこそ価値が発揮できる」と語る。今回、「RICE」による実証実験がスムーズに実施されたのは、従来の「セブン‐イレブンネットコンビニ」と接続させるにあたり「RICE」側の柔軟性が高く、またサービスを実現するにあたっての機能がすでに出来あがっている状態だったことが要因にあるという。
ソフトバンクの森田は、「RICE」をセブン‐イレブンに提案した理由として機能面とUI/UX面を挙げる。
「オフィス内の地図を作成して、受け取り地点を登録する。注文者のスマートフォンにパスコードを送ることができて、注文者がそのパスコードを入力すると『RICE』の蓋が開いて商品を取り出せる。そういった機能とUI/UXがすでに『RICE』に備わっていました。サービスの早期実現にあたって、大きなアドバンテージになったと思います」(森田)
実証実験を開始してから8ヵ月。コロナ禍で出社率が低いなかでの実施となったが、それでも課題と手応えの双方が得られた。
「やはり試してみなければどういうニーズがあるかは分かりませんでしたから。午後のおやつの時間に注文が増える傾向にあるとか、ロボット配送のニーズがどの時間帯にあるのかが探れたのは大きな意味がありました。
また、店舗スタッフが通常業務をしながら配送サービスを提供することができるので、省人化の面でも手応えを感じています。
今後の課題としては、注文が増えたときに現状のロボット1台体制では間に合わないのではないかということです。とはいえ、複数台で運用する場合に変更すべきルールはないか、そういったところは検討していかなければならないと思います」(石川氏)
今後の「RICE」を活用したロボット配送、及び今後のラストワンマイルの展開について、石津氏は次のように語る。
「各地のオフィスビル内にセブン‐イレブン店舗があります。それぞれのビルには数百人、数千人の方が働いていらっしゃいますので、その方たちに利便性を提供する新しいサービスとして展開していければと思います。
セブン‐イレブンは創業から47年経ちました。これからも変化しつづけていかなければならないと感じています。『セブン‐イレブンに足を生やせ』というテーマでラストワンマイルに取り組んでいますが、私たちの感覚ではまだ山の2合目に差し掛かったあたり。都市部では実現に近づいているエリアもありますが、全国2万1000店に展開するとなれば、さまざまな課題が山積しています。
今後はこれらの課題を解決していきながら全国のセブン‐イレブンに足を生やしていきたいです」(石津氏)
また、今回実証実験の場と配送ソリューションを提供したアスラテックとソフトバンクの両社も「RICE」の今後の展開に意気込みを見せる。
「今回の取り組みでは、ロボットをセブン‐イレブン様の一連のサービスに組み込んでいただけたのが良かったと感じています。ロボットの社会実装のために必要なのは、機能やスペックだけでなく、価値を生み出すことです。
今後もサービスと融合した形で、さまざまな場所で『RICE』の価値を提供していきたいと考えています」(小野氏)
「まずはソフトバンク本社で『RICE』を2台、3台と増やしていき、検証を進めていきたいと考えています。
ソフトバンクは今、スマートビルやスマートシティの文脈で日本全国の自治体や地域と連携しています。『RICE』をスマートビル、ひいてはスマートシティを形成するための重要なパーツと位置付けて、さまざまな場に活用を広げていきたいと考えています」(森田)
(取材日:2021年8月27日)
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