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2021年9月、世界経済フォーラム(WEF, World Economic Forum)により、世界で新たに21の「ライトハウス(Lighthouse、灯台)工場」が追加されました。
そのうち、中国車載電池メーカー大手「寧徳時代新能源科技股份有限公司(Contemporary Amperex Technology Co., Limited、以下CATL)」が電池製造業界として世界初のライトハウス工場として認定され、注目を集めています。今回は同社のライトハウス工場とデジタルトランスフォーメーション(DX) への取り組みを紹介します。
CATLは2011年に福建省寧徳市に設立され、パワーバッテリーシステム、エネルギー貯蔵システム、リチウムバッテリー材料などの事業を展開し、設立してから10年間で中国電池メーカー大手に成長してきました。
CATLは、今年5月に公開された世界的な経済誌『フォーブス(Forbes)』が発表した世界トップ公開企業2000社年次ランキング「2021 Global 2000」にて、売り上げ63億ドル、利益6.4億ドル、資産202億ドル、時価総額1,177億ドルで739位にランクインしています。
フォーブス年次ランキング「2021 Global 2000」
SNE researchのレポートによると、2020年度世界車載電池の市場シェアにおいて、電池の搭載量ベースでは、CATLはトップの24.8%を占めており、車載電池のリーディングカンパニーとしての座を固めました。ちなみに、2位はLG化学(22.6%)、3位はパナソニック(18.2%)でした。
2020年の世界車載電池シェア(NE researchのデータをもとに筆者作成)
2021年9月に認定されたCATLのライトハウス工場は、同社の寧徳工場でした。今回の認定はWEFから「製造プロセスの複雑化対応および製品生産の高品質需要に応えられるように、CATLは人工知能、高度な分析、エッジ・クラウドコンピューティング技術を使用することにより、3年間でセルあたり1.7秒の生産スピードでも欠陥率が十億分の一に抑えられ、労働生産率を75%の向上、年間エネルギー消費を10%の低減を実現した」と評価されています。
CATLの工場内部の様子(出典:CATL社Webサイト)
CATLは「電池の極限製造(Extreme Manufacturing)」を提唱しており、製品の欠陥を極限まで抑える製造体制として、複雑な生産プロセスにおいてより速いスピードでハイクオリティの電池製品を創り出します。
その結果、電池製品の欠陥率をPPM(Parts Per Million, 百万分の一)レベルからPPB(Parts Per Billion, 十億分の一)レベルまで低減することに成功しました。
欠陥率は十億分の一(出典:CATL社WeChatアカウント)
寧徳工場ではビッグデータやAIなどの技術を活用しています。たとえば、AI欠陥検査システムを利用してクラウド・エッジ・デバイスのシームレスな連携により、リアルタイムの欠陥検出能力を向上します。生産プロセスにおいては、3,600以上の品質チェックポイントを設けており、リアルタイムの生産最適化を目指しています。
工場内部品質チェックの様子(出典:CATL社WeChatアカウント)
WEFの報告によると、CATLは様々なビッグデータやAI技術を利用することで以下のような業務インパクトを実現しました。
CATLは2011年に会社設立してから電池生産のDXに取り組み、段階的に自動化(2011年〜2013年)、デジタル化(2014年〜2017年)、知能化(2017年〜)を進めてきました。
CATL社のDX推進の経緯(筆者作成)
CATLは2017年に知能製造戦略を策定し、ビッグデータ、人工知能、デジタルツインなどの技術を生かして高度なDXを推進。直近の2年間でDXを推進するための専門会社も立ち上げ、より一層のDX強化に力を入れています。
CATLは今回ライトハウス工場として認証された福建省の寧徳工場以外に、青海省西寧・江蘇省溧陽・四川省宜賓・広東省肇慶・上海市臨港・福建省厦門・江西省宜春・貴州省貴陽、及びドイツのエアフルトに工場を持っております。これらの工場に徐々にライトハウス工場のノウハウを横展開し、高品質・高効率・持続発展可能なグローバルマニュファクチャリングネットワークを構築すると計画されています。
CATL社の主な工場(出典:CATL社Webサイト)
CATLは他の電池メーカーと同様、製造品質の均一化保証、エンジニアリングプロセスの複雑化対応、大量設備の相互接続性・互換性・協働性向上、生産制御の高精度実現、膨大なデータの知能化処理、顧客ニーズへのレスポンスの迅速化などの課題にも直面しています。
これらの課題に対して、今後は生産ラインと人工知能、ビッグデータ、クラウドコンピューティングとの融合を図り、以下の三つに重点を置きながらDXを進めるアプローチを取っています。 * 伝統的な品質・コスト・効率・フレキシブルマニュファクチャリング(多品種少量生産に対応した製造)を重視する一方で、市場へのレスポンス、生産リスクへの対応、生産モジュールの再構築・再利用能力などを向上すること * 主要生産設備には、高度な技術で自己識別・自己適応・自己補充、および生産環境への自己調整能力を備えること * データ分析や人工知能などの技術を生かして予測可能で自動的な問題追跡能力を向上し、欠陥ゼロを目指すこと
CATLはわずか10年間で世界トップクラスの車載電池メーカーに成長できた背景には、中国電動自動車産業発展の「時流」、この時流に合わせた高度な電池「技術」、および会社設立当初から推進してきた「DX」などの要因が考えられます。
熾烈な競争の中で、CATLはこれまでの勢いが継続できるか、その経営手腕が問われています。今後も、引き続きCATLに注視していきたいと思います。
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