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スマホを扱うようにAIを使いこなす人材を育成したい。教育プログラム「AIチャレンジ」開発者の狙い

スマホを使うようにAIを使いこなす人材を育成したい。教育プログラム「AIチャレンジ」開発者の狙い

ソフトバンクが高校生向けに開発したAI教育プログラム「AIチャレンジ」。プログラムを開発した担当者に、AIチャレンジの開発経緯や今後のビジョンを深掘りして聞いてみました。

お話を聞いたのは、ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 CSR本部 CSR企画統括部 CSR推進部 教育企画課

門脇 哲太郎(かどわき・てつたろう)

課長
門脇 哲太郎(かどわき・てつたろう)

2016年より小中学校向けプログラミング教育の「Pepper社会貢献プログラム」プロジェクトマネージャーとして事業推進。2019年IoTチャレンジに続き第3弾の教育企画として「AIチャレンジ」を発表。

宮北 幸典(みやきた・ゆきのり)

宮北 幸典(みやきた・ゆきのり)

2016年からソフトバンクロボティクスで「Pepper 社会貢献プログラム」の教材開発を行う。2021年4月からソフトバンクのCSR本部で教育企画に従事し、「AIチャレンジ」のプロジェクトマネージャーとして事業を推進中。

社会との接続性の高さがプログラムの強み

社会との接続性の高さがプログラムの強み

AIチャレンジの開発経緯を教えて下さい。

門脇:日本が人口減少社会に突入しつつある中、将来的にさまざまな分野で人材が不足することが予想されています。そしてAI人材が不足するということも、経済産業省の試算で出ています。その課題に対して「何かできないか」と考えたことが開発のきっかけです。

AI人材の需給ギャップ
AI人材の需給ギャップ

出典:経済産業省IT人材需給に関する調査のデータを元に、当社にて作成

2019年に経済産業省で実施された「IT人材需給に関する調査」では、2018年から2030年の期間において、AI市場の需要の伸びについて複数の市場調査結果の平均値である年率16.1%と定めた場合、2025年には8.8万人、2030年には12.4万人の需給ギャップが生じると試算された。

AIがこの先の社会を変えていくと言われていますが、そのような社会を迎えるためには、AIカンパニーと自分たちで謳っているソフトバンクがAIを活用できる人材をどうしたら増やしていくことができるのかという視点で開発を進めてきました。

従来のAI教育とは、何が違うのでしょうか?

宮北:第1点目に、ソフトバンクとそのグループ会社はこれまでの業務経験から、AIを実際に社会でどう活用しているのかを教育現場にフィードバックすることができる立場にあるところです。

そのため、学校で考えられた企画や開発したAIを使った実例に対して、実務経験者としてプロの視点で講評するという仕組みをプログラムに入れています。このような社会との接続性の高さは、AIチャレンジならではです。これは、われわれが教育専門の企業ではないことが、逆に強みにもなっていますね。

第2点目は、授業で使う環境は、教育に特化した学校の中だけでしか使えないプログラム環境ではなく、社会で使われている実用的なツールを使っていることです。それらを教育の中で使うことによって、本当に課題解決してもらう体験ができるというわけです。

これまでソフトバンクが取り組んできた教育機関向けの施策とAIチャレンジのつながりや関連性はありますか?

宮北:最先端テクノロジーを使い、自ら課題を発見して解決できる能力を伸ばしたいという点が全ての施策に共通する根底の考え方になっています。

ソフトバンクはこれまで社会貢献活動の一環で、Pepperを軸にICT教育支援「Pepper社会貢献プログラム」や「Pepper×IoTチャレンジ」という施策を教育機関向けに進めてきました。「AIチャレンジ」はその延長として高校生を対象とした新たな取り組みになります。「AIを使って社会課題を解決する」というところに注力した、AIを学んで理解するプログラムを目指しています。

ソフトバンクの次世代育成支援 Pepperを軸に先端ICT教育による次世代育成支援

Pepperを使って、学習成果のアウトプットができるそうですね。

門脇:AIチャレンジでは、学ぶAIのタイプが大きく3つ「予測系のAI」「識別系のAI」「会話系のAI」に分かれています。その中でも会話系のAIはロボットとの親和性がすごく高いので、学校でPepperを使用できる環境があるようでしたら、ぜひPepperを使った成果のアウトプットを試していただきたいです。

宮北:生徒の発想の多様性を制限したくないと思っています。AIでロボットも動かせるんだ、という体験もしてもらいたいですね。

これからの社会では人類の労働力を助けるような知性を持ったロボット、つまり「スマートロボット」が活躍していきます。そのため自分たちでAIを使ってロボットを動かせるんだということを知り、体験してもらうことは重要だと思っていますので、Pepperを動かすことのメリットはそこにあるかなと思います。

  • 「AIチャレンジ」でPepperを用いる場合は、ソフトバンクロボティクス株式会社が提供する「Pepper for Education」または「Pepper 社会貢献プログラム2」への申し込みが別途必要です。

育てたいのは、AIを使いこなせる人材

情報専門の先生じゃなくても、教えられる教材なんですか?

宮北:はい。これまでの施策で培ったわれわれのノウハウや知見を生かした教師用指導書、授業用のスライド、資料などを用意しました。またヘルプデスクを設け、いつでも問合せにサポートできる体制を用意します。学校の先生方に寄り添いながら、授業をよりスムーズに進めていただけるような支援を心掛けていきたいですね。

門脇:よくAI教育というとデータサイエンティストとか、むずかしいコードを書くような理系的なイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか。でも、今回われわれが作ったプログラムは、エンジニアを養成するというより、課題を解決する手段としてAIをどう活用していくかという、どちらかというと“文系のAI人材”を育成するものといえます。つまり「AIプランナー」という仕事に代表されるような、AIを使った企画の立案や、AIのエンジニアとコミュニケーションでき企画や課題解決をマネジメントしていけるような能力を養うという内容にしています。

だからゼネラリスト向けでより実務的な学習を通して実際に社会に役立てることを目指したい。どう社会に役立てるかということをフォーカスして教えていくという形になりますので、学校の先生方も、数学やプログラミングの専門知識がなくても、十分に教えることができるものとしています。

より実践的な学習ができるということですね!

門脇:そうです。なので、最先端のAI事例を使った教材があることを学校の先生にぜひ知っていただきたいです。先進的な教育の取り組みとして、学校の特色としても打ち出していただけるのではないでしょうか。

AIチャレンジで使うAIツールは高校生にとって難しくないのですか?

門脇:いわゆるコードを書いたり、プログラミング言語を理解しないと作れないというものではありません。今後は、ビジュアルで組み合わせることによって誰もが簡単にやりたいことを実現できる「ノンコード」という環境が、ますますAIを活用する手法として主流になってきます。AIチャレンジでも、ソニーネットワークコミュニケーションズやGoogleの協力の元、高校生でもわかりやすいAIツールを教材に採用しており、コードを書かなくてもAIを作ることができる環境を提供します。

現場の声を生かし、進化し続けるカリキュラム

現場の声が生かし進化し続けるカリキュラム

カリキュラムの作成にあたっては、教育現場の声を反映したそうですね。

宮北:いろいろなご意見をいただくことができました。大きく分けて、次の4点に生かしています。

  • ①教材を全てクラウド型に
  • ②カスタマイズ可能な授業時間
  • ③コーディング要素を追加
  • ④成果発表の場を提供

まずはいかに使いやすくするかという環境の問題です。各学校のIT環境はそれぞれ異なりますから、新しい教材のセットアップも一律ではできません。時間もかかるので、ブラウザ上で全て完結できるよう、クラウド型で提供できるようにしました。

それから、授業時間は学校ごとにカスタマイズができるようにしました。最初は授業の10コマ分の教材セットを用意し、全てを履修してくださいとお願いしてたんですけれども、最終的にはやりたいところ選んで、実施いただけるように教材を「モジュール化」しました。好きなパートだけでも成り立つという構成しています。

あとは、基本的な環境は作りやすい「ノンコード」で提供しますが、「情報Ⅰ」などの授業では最低限のコーディング要素が必須になるので、AIを実装するときに、 コードを使ってパソコンの中で表現できるような環境を追加するということを予定してます。そして、成果発表の場として、コンテストなどを企画したいと思っています。

とても柔軟性が高いカリキュラムになっているんですね。

宮北:そうですね。これからも状況に合わせ、利用者の要望を取り入れながら良いものにしていきたいと思います。AIを学ぶということはまだ新しい分野なので、状況変化も激しい。学校の要望にも柔軟に対応していくべきだと考えてます。

また、対象が高校生ですからデジタルの良さも感じてもらうことも含め、教材を全てデータで提供するようにしました。いつでも最新版の教材を使ってもらえるよう、適宜変更や改善を行います。

柔軟なカリキュラム

基本的に対面での授業を想定した教材なのですが、オンライン授業にも対応できるように作っています。

オンライン授業も対応しているのですね。今後のAIチャレンジの展望を教えてください。

ビジョン

門脇:生徒のアイデアを社会実装していきたいなと強く思っています。例えば自治体が実際に抱える課題を解決するようなAIモデルを生徒が考えて、それを実装するお手伝いをわれわれがする。そんなことができたらすごく面白いなと思っています。

宮北:生徒の発想はわれわれでは思いつかないような、多種多様なすごく面白いアイデアがたくさん。例えば桜の花の画像から開花予測をするものとか。そのアイデアをその場で限りで終わらせないよう、ソフトバンクの事業として実用化できたらいいですね。生徒が社会に出る一歩手前の段階で本当に社会のことを考えて、学校の中で練習していただくというのは重要だと思ってるので、社会との接続性を高めていきたいなと思ってます。

生徒の皆さんがAIを学んで、今後は表計算ソフトみたいに、誰もがAIを使っていけるような社会になってほしいと考えています。AIチャレンジを通じてスマホを扱うような感覚で、AIが使いこなせる人たちが育ってほしいな思っています。

AIチャレンジの詳細は、こちらのページをご覧ください。

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(掲載日:2021年10月25日)
文:ソフトバンクニュース編集部

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