住みやすい街づくりのために、地域コミュニティにおいて中心的な役割を果たしている自治会や町内会。昨今では、地域内でのデジタル化が進み、回覧板や掲示板での伝達から、メッセージアプリやSNSなどで地域活動などの情報発信をする自治会や町内会が増えてきています。
ソフトバンクはLINEヤフーと共同し、地域コミュニティの維持・活性化を目指すため、コミュニケーションアプリ「LINE」を活用した地域コミュニティのデジタル化やデジタルデバイドの解消に取り組んでいます。
目次
活動の存続危機? 自治会が抱えるさまざまな現状と課題
そもそも自治会や町内会は、住みやすい豊かな街づくりを目指して、地域住民が自主的に設立・運営している団体です。生活に役立つ情報発信や親睦活動、地域の福祉、環境、防犯・防災など幅広く活動を行っています。
そんな地域コミュニティの中心的な役割を担う一方で、自治会役員の高齢化や役員の担い手不足などの問題が年々深刻化してきています。総務省が公開している「地域コミュニティに関する研究会報告書」によれば、2008年に実施した調査結果と比べて2020年は、役員の担い手不足や役員の高齢化、高齢化などによる組織維持困難と回答した自治会が顕著に増えていることが分かります。
さらに、全国600市区市町村における自治会の加入率を見てみると、2010年に78%であったのが、2020年には71.7%と減少傾向にあり、参加意欲の低下も課題となっています。
これらに加え、地域として対応すべきニーズが複雑化・多様化する今日においては、防災や高齢者・子どもの見守り、居場所づくりなどさまざまな分野での活動が自治会に期待されていますが、課題に対して包括的に対応することが困難となってきているのも実情です。また、地域活動における連絡調整などの業務を効率化するとともに、新たなサービス提供を可能とする手段としてデジタル技術の活用への期待も高まっています。
LINEを活用して自治会の活性化と業務を効率化。自治体向けのセミナーを開催
ソフトバンクとLINEヤフーは、自治会が抱える課題を解消すべく、LINEを活用して地域コミュニティの活性化や自治会の業務効率化を目指しています。2024年2月には、愛知県名古屋市の地域活動を支援する専門職員「コミュニティサポーター」に向けて、LINE活用講座を実施。セミナーを開催することになったきっかけや、LINE活用で期待することなどについて名古屋市の職員に話を聞きました。
名古屋市役所 スポーツ市民局地域振興課
竹橋 真悠(たけはし・まゆ)さん
名古屋市の自治会・町内会の現状や抱えている課題にはどのようなことがありますか。
加入率の減少や担い手不足といった課題に直面しています。地域活動の負担が一部の方に偏っていたり、役員の高齢化も深刻な問題で、持続可能な地域活動が困難な状況にあります。そのため、新たな参加者を見つけるためのアプローチや、地域活動の内容を広く理解してもらうための広報活動が重要となっています。
セミナーを開催したきっかけについて教えてください。
名古屋市には、ウェブやLINE公式アカウントを活用して、地域活動を「見える化」し、若い世代に情報を伝えている自治会があります。その活動を冊子や動画で紹介することで、他の地域団体にも広める取り組みをしています。しかしながら、事例の紹介だけではなく、もっと具体的な技術的支援が必要ではないかと考え、ソフトバンクとLINEヤフーに相談させていただきました。その結果、地域活動を支援する専門職員「コミュニティサポーター」を対象に、セミナーを開催することになりました。
自治会へはどのようにアプローチをしていくのでしょうか。
名古屋市は、地域団体などからの相談に応じて、運営や活動への支援・アドバイスを行う専門職員「コミュニティサポーター」がいます。最近では、LINE公式アカウントを始めとする情報発信ツールの利用に前向きな地域団体が増えてきて、その操作や活用について支援してほしいというご相談も増えてきました。現在は、それぞれの地域団体に個別支援をしているところですが、これからは講座の開催などもできるよう準備をしているところです。
LINE活用で期待することや、今後の自治会DXに向けた取り組みについて教えてください。
LINEは、写真や画像を使って活動内容を伝えるのにとても便利なツールです。LINEを活用することで、地域活動への理解を深めたり、参加者が増加することを期待しています。また、回覧物の配布など地域活動のちょっとした負担を軽くすることで、自治会の運営もスムーズになるのではないかと考えています。
今年度の取り組みとしては、LINEの使い方やLINEオープンチャットの活用、Googleサービスや生成AIの活用など、地域活動に役立つICTツールについて学び、体験する講座を開催しています。実際に体験してもらうことで、「これなら使えるかも」と感じてもらえたらうれしいです。地域活動をもっと楽しく、持続可能なものとするために、私たち地域振興課はデジタルツールの活用をサポートしていきます。
持続可能な地域社会の実現を目指して。ソフトバンクとLINEヤフーの取り組み
ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 CSR本部 地域CSR統括部 北海道・東北地域CSR部
高橋 奈美(たかはし・なみ)
地域に寄り添って社会課題を解決することをミッションに活動中。
LINEヤフー株式会社 サステナビリティ推進統括本部 CSR本部 CSR推進部 兼 会長室ソーシャルアクション推進室
齋藤 光希(さいとう・こうき)さん
2023年より、自治体や地域と共同し、LINEを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進。住民サービスの向上、地域活性化、防災対策など、地域課題の解決に取り組む。
自治会DXに注目した理由について教えてください。
齋藤 「自治会の高齢化や担い手不足が深刻な問題となる中で、デジタル化の動きも進んでおり、業務の効率化などが期待されています。デジタル化の良さは、時間や場所を問わず人々とつながることができることだと思います。最近では、自治会のコミュニケーションツールとして、幅広い年齢層になじみのあるLINEアプリを使ってDXを目指す自治会も増えてきています。サービスを提供しているわれわれとしては、LINEを通じて、地域が抱える問題の解決に貢献していきたいという思いで、全国の自治会に向けてLINEの活用講座を行っています」
ソフトバンクとLINEヤフーが一緒に取り組むことになったきっかけは何ですか?
高橋 「CSRの活動で、さまざまな自治体や自治会の方々とお話しする中で、デジタル化やDXについての相談を受けることが増えてきています。その中で、私が担当している北海道江別市から自治会業務のデジタル化の相談を受けました。ちょうどそのころ、LINEヤフー側で、自治会に向けて行われたLINE活用講座の取り組みがCSR側に事例として紹介されていたため、ぜひ一緒にできないかということで齋藤さんに協力のご相談をしたのがきっかけです。そこから両社で打ち合わせを重ね、初めてソフトバンクとLINEヤフー共同で、江別市でLINE公式アカウントの活用セミナーを実施しました」
齋藤 「LINEヤフーでは、自治会DXや地域のデジタルデバイド解消に取り組んでおり、2022年11月に兵庫県三田市で自治会向けに初めてLINE活用講座を開催しました。ソフトバンクとの取り組みとしては、北海道の江別市と、今年2月に名古屋市でも開催しました」
セミナーの反響はいかがでしたか?
高橋 「江別市、名古屋市ともに参加した方からは、セミナーの内容が役に立ったと非常に高い満足度をいただいています。ですが、セミナーを開催したから終わりということではなく、実際にLINEを導入するにあたっての必要なアフターフォローも大切ですので、一環したサポートで支援していきたいと考えています」
一緒に取り組むことで、どのようなことを期待しますか?
齋藤 「全国のさまざまな地域との接点を持たれているソフトバンクの地域CSRの皆さんと協力することで、LINEヤフーが持つLINE活用講座のスキームを横展開しながら、一緒に全国に広げられていけたら良いなと思っています」
高橋 「地域コミュニティの中心となっている自治会・町内会では、本当にさまざまな課題に直面しています。またここ最近では、地域の防災や災害など緊急時における地域住民への情報発信も重要視されています。そのときに役立つツールとしてLINEがあると思いますので、LINEヤフーと協力しながら自治会の課題解決につなげていきたいと考えています」
今後の取り組みについて教えてください。
齋藤 「LINEヤフーは企業ミッションとして、『「WOW」なライフプラットフォームを創り、日常に「!」を届ける。』を掲げています。都市や地域によってさまざまな事情を抱えていたり、向き合うステークホルダーも変わってくるので、多様な主体と共同しながら持続可能な地域社会をつくっていきたいです」
高橋 「地域CSRの役割としては、地域の課題に寄り添い解決を目指すことにあります。LINE活用をきっかけに、今後も地域コミュニティの活性化に貢献していきたいと考えています」
(掲載日:2024年6月14日)
文:ソフトバンクニュース編集部