今や日常生活に欠かせないスマートフォン。毎日当たり前のように充電していますが、実は充電方法によってはバッテリーの劣化が進んでしまうこともあるそうです。大事なスマホですので、できればバッテリーに負担をかけないやさしい充電方法で長く使ってあげたいですよね。今回はスマホ活用の講座などを開催している増田由紀さんに、スマホの充電に関する正しい知識についてうかがいました。
目次
お話を聞いた人
スマホ活用アドバイザー・パソコムプラザ代表
増田 由紀(ますだ・ゆき)さん
2000年にシニア向けのパソコン教室を千葉県に開業。東日本大震災の際、災害時の情報収集・安否確認でネットの必要性を痛感し、タブレットやスマートフォンの活用講座にも注力。2020年からはオンラインスクールにリニューアル。著書に日経BP社『いちばんやさしい 60代からのLINE』『いちばんやさしい 60代からのAndroidスマホ』、アスコム出版『70歳からのスマホ使いこなし術』がある。
その充電方法、スマホのバッテリーに負荷をかけているかも!?
毎日、特に意識せずにやっているスマホの充電。しかし、充電のやり方次第でバッテリーへの負荷が変わってくるということを知っていますか? 習慣化している充電方法が実はバッテリーの寿命を縮めているかもしれません。まずはこちらのチェックリストで普段の充電方法をチェックしてみてください。
こんな充電していませんか? スマホの充電方法チェックリスト
- スマホを操作しながら充電している
- 電池残量が0%になってから充電している
- 直射日光が当たる場所で充電している
- 1日に何回も充電している(ケーブルを何度も抜き差ししている)
- 純正品や認証品ではない充電器を使用している
- 古い充電器をずっと使っている
- 毎回100%になった後も充電し続けている
あなたはいくつ当てはまりましたか? チェック多い人ほど、スマホのバッテリーに負荷をかける充電をしてしまっています。
ついやってしまいがち! スマホのバッテリーに負荷をかける充電方法とは
先ほどのチェックリストで挙げた充電方法はなぜスマホのバッテリーに負荷をかけてしまうのでしょうか? その理由はスマホのバッテリーに使用されているリチウムイオン電池の特性も関係しているようです。詳細について増田さんに聞いてみました。
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電池残量が0%になってから充電している
「スマホのバッテリーとして使われているリチウムイオン電池は、電池切れの状態で長期間放っておくと『保存劣化』と呼ばれる現象が起き、バッテリーの劣化が加速してしまいす。また、0%から充電すると通常よりも電力と時間がかかってしまうので、なるべく0%になる前に充電するようにしましょう」
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スマホを操作しながら充電している
「充電しながらスマホの操作をすると、スマホが熱を持ってバッテリーに負荷がかかります。基本的な操作だけならそこまで影響はありませんが、充電しながらのゲームや動画の視聴は要注意!
スマホを人間にたとえると、充電しながら操作するのは、ご飯を食べながら走るようなもの。このようにイメージすると、どのくらいの負荷をかけているのか理解できるかと思います。ついついやってしまいがちですが、なるべく控えるようにしましょう」
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直射日光が当たる場所でスマホを充電している
「リチウムイオン電池は熱に弱く、電池の温度が45度程度になると劣化するといわれています。夏場は特に、車の中のシガーソケットやUSBポートを使って充電したり、車内にスマホを置いて外出したりするのは避けましょう」
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1日に何回も充電している(ケーブルを抜き差しする回数が多い)
「リチウムイオン電池は、一般的に約300回の充電で2~3割ほど、約500回の充電で3~5割ほど、バッテリーの容量が劣化するといわれています。
また、充電を繰り返すことで、リチウムイオン電池の電流を流す働きが少しずつ弱まり、ためられる電気量が少なくなっていく『サイクル劣化』と呼ばれる現象も起こります。つまり、充電する回数自体を減らすことで、バッテリーの劣化のスピードを遅らせることができるのです。頻繁に充電しないとスマホの電池が持たないという人は、バッテリー自体が弱っている可能性があるので、バッテリーを交換するか、スマホ本体を買い替えましょう」
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純正品や認証品ではない充電器を使用している
「純正品や認証品の充電器なら問題ありませんが、それ以外の製品を使うと、必要以上の電圧でバッテリーに大きな負荷を与えてしまうことがあります。スマホは高価な機器なので、充電器もこだわっていいものを選びましょう。選び方がわからなければ、家電量販店などで店員さんに聞くといいですよ」
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古い充電器をずっと使っている
「充電に時間がかかるため、結果としてバッテリーへ負荷がかかります。スマホの進化にともない、充電器も進化しています。まだ使えるとついつい古いものを使い続けてしまいがちですが、スマホを買い替えたときは充電器も一緒に新調することといいですね」
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毎回100%になった後も充電し続けている
「100%充電された後も充電し続けると、電池の劣化を早める原因になります。人間でいえばおなかいっぱいなのにずっとご飯を食べさせられているようなもの。最近のスマホは満充電にならないようにプログラムされているものもありますが、古いモデルのスマホを使っている人は要注意です。
でも、しっかり充電できる時間は現実的に寝ている間しかないですよね。よくないとわかっていても、私もやってしまいます(笑) でも、こうしたことを知っているのと知らないとでは大違い。充電が完了したらケーブルを抜くように意識づけておけば大丈夫ですよ!」
スマホを充電するのはいつ?
「スマホを充電するタイミングは?」という質問に対して、ソフトバンクの社員の答えがこちらです。
社員は「寝ている間」に充電するのが最も多いという結果でした。

ソフトバンク社内アンケート(2024年6月)
スマホのバッテリーへの負荷を抑える正しい充電方法
どのようなことに気をつければ充電時にバッテリーへの負荷を抑えられるのでしょうか? 増田さんに正しい充電方法を聞いてみました。
① 100%になったらすぐに抜く
「可能であれば寝ている間の充電はやめたほうが無難。でも、やっぱり寝ている間に充電したいですよね。その場合は、朝起きてすぐにスマホからケーブルを抜けば、良いでしょう。
可能な人は、寝ている間ではなく、朝の準備中に急速充電をするなど、できる範囲で工夫をしてみてください」
② 20〜80%以内をキープし、20%を切ったら充電するようにする
「電池が0%になるのは確かによくないのですが、電池残量を過剰に気にして頻繁に充電するのもまたバッテリーに負荷をかけてしまいます。20%をひとつの目安として、20%を切ったら充電するというような使い方が理想的です。
ただし、これは自宅や会社など、すぐに充電できる環境での話。外出する際は出先で電池切れにならないように、しっかり充電しておきましょう。また、100%充電できていることに気がついたら、ケーブルをすぐに抜くようにしましょう」
スマホのバッテリーを充電しなきゃ… と思うタイミングは?
「残りのバッテリー残量が何パーセントぐらいになったときに充電しなきゃと思いますか」という質問に対して、ソフトバンクの社員の答えがこちらです。結果は、男女ともに大きな差がなく、残りの残量が30%を切るとそろそろ充電しなきゃ… となるようです。

ソフトバンク社内アンケート(2023年7月、回答数:178)
③ スマホ本体が熱くなっているときは充電しない
「ゲームをした後や動画を試聴した後などでスマホ本体が熱くなっているときに充電すると、バッテリーに大きな負荷をかけてしまいます。必ず、しばらく放置して本体の温度が下がってから充電しましょう。『スマホカバーをつけたまま充電すると熱がこもるから、充電するときはカバーを外したほうがいい』という人もいます。ただ、毎回カバーを外すのはさすがに面倒なので、苦にならない人だけやってみてくださいね」
④ 充電中のスマホになるべく日が当たらないように気をつける
「前述したようにリチウムイオン電池は熱に弱いので、直射日光が当たる場所ではスマホを充電しないようにしましょう。車の中だけでなく、自宅のリビングなどでも日が当たる場所で充電すると、こちらが思っている以上に熱を持ってしまいます。スマホを長持ちさせようと思ったら、『熱に弱い』という認識で扱うこと。そういうスマホへの気遣いがあれば、調子よく長く働いてくれますよ」
⑤ 急速充電できるPD対応の充電器を使って充電する
「新しいスマホに買い替えをしても、充電器は古いものをそのまま使っているという人は本当に多いんです。昔の充電器はW(ワット)数が少ないので、充電に時間がかかるんですよね。充電時間が長くなれば、その分スマホのバッテリーへの負荷がかかってしまいます。今ならせめて20Wはほしいところ。20WでPD(Power Delivery)対応の充電器を使うのがおススメです」
充電に気を使うならこちらも大事! 知っておきたい充電器の選び方
スマホに負荷をかけない充電をするためには、実は充電器の選び方も重要なのだとか。増田さんに充電器の種類と選び方のポイントを聞きました。
スマホの充電器は大きく分けて2種類ある
① 有線接続タイプ
コンセントにプラグを差してケーブルでスマホとつなぐタイプの充電器
② ワイヤレスタイプ
スマホとケーブルで接続せずに充電するタイプの充電器。スマホを充電器に立て掛けたまま充電するスタンドタイプや、スマホを充電器のサークル内に置くパッドタイプなどがあります。
パッドタイプはこのようにスマホを置いて充電します。
「充電する際にケーブルの抜き差しを繰り返すことで、ケーブルの傷みが早くなったり、接触部分が痛んだりします。そういう意味では、ワイヤレスタイプの充電器を使って負荷を減らすこともおススメです。
ただし、パッドタイプのものは気づかないうちにスマホがサークルからズレて充電されていないこともあるので、しっかり充電できているのか注意しましょう。また、ワイヤレスタイプの充電器はパワーが少ない商品もあるので、購入するときは必ずパッケージを見てW数を確認してください」
充電器を選ぶ際のポイントは?
「充電器は、基本的にW数が大きいほど充電速度が速くなります。昔の充電器は7~10Wくらいでしたが、今は20Wくらいのものがおススメです。性能としては、急速充電ができるPD対応のものを選びましょう。
また、『高耐久』と書いてある商品はケーブルが断線しにくく、安心して使用できます。逆に、あまりにも安価な商品は安心性に欠けるためおススメできません。充電器を購入するときは、値段だけでなく必ず性能も見て選びましょう。
パッケージを見ても性能がよくわからない場合は、家電量販店などで相談してみてくださいね。どういった性能の充電器が欲しいのか説明すれば適切な商品を選んでくれると思います」
充電器を選ぶ際は安全対策が施されているか確認しましょう

発火や焼損など、充電器が原因のトラブルを避けるためには安全機能が備わっている充電器を選びましょう。ソフトバンクのスマホには、「共通充電器」を推奨しています。MCPC認証(モバイル充電安全認証)を満たしていて、メーカーの動作検証が行われている製品です。
いざというときに役立つ! スマホの電池を長持ちさせる使い方
ここまでスマホに負担をかけない充電方法について紹介してきましたが、電池を長持ちさせる使い方をすれば、充電回数そのものを減らしていくことにもつながります。外出する際だけでなく、災害時などもしもの場合でも活用できる知識なので、ぜひ覚えておいてください。
① 操作音やバイブレーションをオフにする
「操作音やバイブレーションだけでなく、メールやSNS、アプリなどの通知設定をオフにすることでも電池の減りを遅らせることができます」
② 電波の弱い場所に長時間いないようにする
「地下や高層ビルなど電波の届きにくい場所、電波の安定しづらい場所にいると、スマホがなんとか電波を拾おうとするため、電池の減りが早くなります」
③ 液晶画面の輝度を低くする
「画面の明るさを上げると電池の減りが早くなるので、輝度が低い設定にしておくといいでしょう」
④ 複数のアプリを同時に起動しない
「一度に複数のアプリを使用したり、バックグラウンドで大量のアプリが動作していたりすると、電池の減りが早くなります」
⑤ 使わない時はWi-Fiをオフにしておく
「Wi-Fi環境のない場所でWi-Fi設定をオンにしておくと、接続先のWi-Fiスポットを探すために電池を消耗してしまいます」
⑥ 長時間外出する際はモバイルバッテリーを持ち歩く
「前述しましたが、0%から充電するのはよくないので、長時間外出する際は必ずモバイルバッテリーを携行して、0%になる前に充電するようにしましょう。
地震が多い日本において、スマホの充電が少ないままにしておくのは大きなリスクです。防災という観点でも持ち歩くことをおススメします。モバイルバッテリーも充電器と同じように新しいものの方が性能が良いので、古いものを使い続けず、適宜買い替えていきましょう」
スマホのバッテリー劣化のサインは?
「100%まで充電したのに、あっという間に電池が減って1日持たない… ということはありませんか? そんなときは、上記で紹介した方法を試してみてください。それでも電池の減りが早くて1日に何度もスマホを充電しないといけないようなら、バッテリー自体が劣化している可能性があります。バッテリーを交換するか、スマホを買い替えましょう」
スマホは毎日使う自分の相棒のようなもの。今回紹介した充電方法を取り入れて、なるべく長く使ってあげるようにしましょう。スマホによっては満充電を抑える機能を標準で搭載しているものもあります。0%のままにしておかない、満充電に気が付いたらケーブルを抜くなどのスマホへの気遣いを心掛け、記事の内容を普段の生活の中で無理のない範囲で取り入れてみましょう。
(掲載日:2024年6月12日)
文:吉玉サキ
編集:エクスライト