東日本旅客鉄道株式会社が運営する東京23区の中心を走るJR山手線(以下「山手線」)。多くの鉄道路線と接続しており、山手線全体で1日あたり最大500万人※の乗客が利用すると推定されています。ソフトバンクは山手線周辺でスマートフォンなどをご利用いただくお客さまに快適な通信環境を提供できるよう、継続的なネットワーク対策に取り組んでいます。
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地道な現地計測とテクノロジー活用でユーザー体感を調査
(左)ソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット統括 関東ネットワーク技術統括部 ネットワークソリューション部 課長
滝口 隆樹(たきぐち・たかき)
無線ネットワークの品質管理および維持向上を目的とした設計、最適化を担当。
(右)ソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット統括 関東ネットワーク技術統括部 東京ネットワーク技術部 課長
齊藤 健吾(さいとう・けんご)
東京都内の基地局の構築や管理を担当。
ネットワーク対策として、日頃からどのような取り組みを行っていますか?
滝口 「山手線周辺は非常に多くの人が行き交っているだけでなく、最近は動画などデータ通信量の多いサービスの利用が増えているため、トラフィックが多くなっているエリアの一つです。それに耐えうるネットワーク対策のため、私たちは日頃から『お客さまの体感』を重視しています。イメージしやすい例として、スマートフォンの画面上でアンテナが十分に立っていても実際はインターネットにつながらない、そういった “パケ詰まり” が起きないことが重要と考えています。基地局単位だけでなくスマートフォンなどの端末からの通信品質データも統計的に取得できる仕組みを使って、ネットワーク全体でモニタリングを実施。AIや機械学習も活用し、パケ詰まりが起きていないか細かく分析を行います。お客さまのご意見なども確認しつつ、品質低下が懸念されるエリアへの対策を進めます」
現地に出向き、調査も実施していると聞きました。
齊藤 「朝や夕方の通学・通勤時間帯は、駅周辺の利用者が特に多くなりますので、ユーザーの体感という観点から、ホーム上や電車走行中の電波状況や通信速度の計測を、現地で定期的に行っています。スマホを使用して計測を行うため、お客さまが利用する環境に近い形で把握が可能です。5Gの電波は人などの障害物があると減衰するため、空いている電車よりも満員電車の方が電波が届きにくくなることが想定されます。そのため、実際に現地調査で測定して確認しています」
基地局の配置やアンテナの出力を最適化し、トラフィック増加に備える
対策が必要な場合は、どのような対応を行うのでしょうか。
滝口 「基地局を高い密度で設置し、さまざまな周波数に対して状況に合わせたチューニングを実施しています。例えば、Sub6(3.9GHz帯)などの5Gのネットワークは広い帯域幅を利用できますが、周波数が高く混雑している電車内まで電波が届きにくいため、路線やホームをしっかりカバーできるようにアンテナ角度や電力の調整を行います。一方で、従来の4Gコア設備と5G基地局を組み合わせたネットワーク構成である『5G NSA』(ノンスタンドアローン方式)に利用するアンカーバンド(LTEネットワーク)の帯域幅は狭いため、トラフィックが集中して輻輳(ふくそう・電波の混雑)が起こらないよう、他のLTE周波数とのトラフィックのバランスを調整しています」
齊藤 「トラフィックの増加に対して基地局のキャパシティー不足が起きないよう、先回りの対策をしています。分析結果をもとに2023年度は山手線周辺で基地局を新たに追加したほか、既存のLTE基地局を5G基地局に移行するという物理的な対策も進めています」
今後の取り組みを教えてください。
齊藤 「今年度も品質の改善に軸足を置いて基地局の追加を進めていく計画です。5G基地局に関しては、動画などで必要とされる大容量通信が可能な、広帯域の高周波数3.9GHz帯(Sub6)の増強も進めているところです」
滝口 「Sub6(3.9GHz帯)については衛星通信への電波干渉の抑制のためエリアを縮小していましたが、衛星通信事業者の協力もあり、干渉条件が緩和されたため縮小していたエリアの適正化も行いました。これからも継続的にネットワークの品質維持向上対策を進めていきたいと考えています」
第三者機関の分析でソフトバンクが高評価を獲得
グローバル・モバイル・ネットワーク分析会社Opensignal社が、山手線周辺と主要駅である東京、品川、渋谷、新宿、池袋、上野、秋葉原を分析したレポート「山手線周辺のモバイル・ネットワーク・エクスペリエンス」を2024年3月に公表。「一貫した品質」のスコアでは84.5点と、最も高い評価を獲得しています。
特に5Gに関しては、動画を快適に視聴できる「5G ビデオ・エクスペリエンス」のスコアは75.9点と事業者間で同等のスコアでしたが、「5G アベイラビリティ」は優れた5G利用率を示し28.3点、快適にゲームが体感できる「5G ゲーム・エクスペリエンス」は89.7点とソフトバンクが最も高いスコアとなりました。
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掲載しているグラフは分析レポート「山手線周辺のモバイル・ネットワーク・エクスペリエンス」を元に、ソフトバンクでグラフを作成しています。
(掲載日:2024年8月7日)
文:ソフトバンクニュース編集部