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2,600社と一緒にアスクルが挑む “捨てない” 事業。参加企業が増え続ける資源循環の仕組み

2,600社を巻き込みアスクルが挑む “捨てない” 事業。参加企業が増え続ける資源循環の仕組み

何度か使用された後は捨てられてしまうことが多い、オフィスの定番文具・クリアホルダー。
環境への取り組みが重視される中、クリアホルダーが資源循環に適したプラスチック製品だと着目したのが、アスクル株式会社です。企業だけでなく使う人の意識も変えていきたいと、みんなが参加しやすい「捨てない」ための仕組みを構築し、事業を通した環境への貢献に取り組んでいます。

立花さん

アスクル株式会社 コーポレート本部コーポレートコミュニケーション サステナビリティ推進

立花 丈美(たちばな・たけみ)さん

システムエンジニアとしてのキャリアを積んだ後、大学院で地球環境学を学ぶ。卒業後、アスクルに入社し、環境に関する業務全般に従事。趣味は、子育てが落ち着いてから始めたというサックスと日本舞踊。

また戻ってきたよ! リサイクル商品「Matakul」

2022年から発売開始されたアスクルのプライベートブランド「Matakul(マタクル)」。
アスクル独自に構築した使用済みクリアホルダー回収・リサイクルスキーム「アスクルの資源循環プラットフォーム」から生まれたシリーズです。使用済みクリアホルダーの提供を受け分別・再資源化し、あらゆる仕事場で、必要不可欠なクリアホルダー、ボールペン、ゴミ箱へと再商品化しています。

立花さん

「本シリーズのコンセプトは、『使い捨て』ではなく、『長く使える』循環可能な商材を選定し、商品化すること。ブランド名は、一度聞いただけで多くの人に覚えてもらえるように、使用済み商品が『また、戻って来る』ことをストレートに表現しています。使用済みクリアホルダーを原料としている商品には『Hello, I am back!』のマークが印字されているんですよ」

また戻ってきたよ! リサイクル商品「Matakul」

Matakulシリーズ

Matakulシリーズ

資源循環プラットフォームから生まれた、アスクルのプライベート商品のシリーズ。使用済みクリアホルダーを再生し、製品化する新たな循環の取り組みから生まれた環境に優しい商品です。

LOHACO(個人向け) ASKUL(法人向け)

資源循環プラットフォームはこうして生まれた

プラスチックのリサイクルに関する関心が高まっているものの、オフィス用品の回収・リサイクルが進んでいない現状があります。特に全国の事業所から大量に排出される使用済みクリアホルダーのほとんどは廃棄されることに。
そのような状況を背景に、販売事業者の責任としてアスクルはクリアホルダーの資源循環に着目。環境省「令和2年度脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」に選定され、クリアホルダーを対象とした実証実験に挑戦しました。

立花さん

「事業所で使用するクリアホルダーは、何度か使うと捨ててしまいますよね。ただ、クリアホルダーは単一素材であるポリプロピレンでできており、回収して同じ製品を作るという『水平リサイクル』がしやすい点が最大の特長なんです。形状も一定で、軽くてコンパクト。輸送効率も良い。トラックでの回収を考えた場合のコストも考慮し、クリアホルダーを選びました」

初めての実証事業の主な課題は2つ。「回収の仕組みを作りあげること」と「回収したクリアホルダーを原料として製品化すること」だったそうです。実証実験でこの2つのポイントに取り組んだ後、2022年に事業化しています。

立花さん

「当社はプラスチック商品を大量に仕入れ・販売しており、環境に対する責任があるという思いを常に持っています。2022年4月には『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律』ができるということを聞いていたので、本格的に検討を進めました。

国内のプラスチック資源のリサイクル状況を見ると、日本の場合、6割以上が燃やしてエネルギーにする『サーマルリサイクル』なんです。外国では、燃やすリサイクルはリサイクルとして認められていない国が多く、日本だけ特別な状況です。その中でも、『マテリアルリサイクル』を国内で行っているのは約4.5%しかありません。ここに対して、何かできないかいう思いに至りました」

資源循環プラットフォームはこうして生まれた

簡単で分かりやすい仕組み。参加企業が増え続けるその理由

実証実験がスタートした当初は、関係企業や取引先のサステナビリティ部門に1件1件電話し、声をかけて参加を募っていたと言います。当時二、三十社だった参加企業は、2024年8月現在、累計で2,646社にも及んでいます。

立花さん

「こちらからお声をかけて募っていた参加企業も、今では特に宣伝することもなく順調に増えている状況です。昨今のSDGsやESG経営への関心の高まりの中、企業として何かやりたい、やらないといけないという要望にマッチした結果だと考えています。

また、環境に良いことをやりたいと言っても、具体的に何をやったら良いか分からないという企業の担当者が多いのではないでしょうか。ダンボールを置いて『ゴミ箱の代わりにこっちに入れてほしい』と周知し、集まったものを配送するだけなので、参加しやすい点が本プラットフォームのメリットだと思います」

参加企業の声

  • グループ会社にとっても、資源の有効利用に取り組むことができた。
  • 環境問題を自分事として捉え、社員が改めて環境問題を考えるきっかけにしてほしい。
  • サーキュラー活動に何らかの貢献ができればと思っているところで、こうした取り組みに参画できてありがたい。
  • 長年環境問題への対応を検討してきたが、ようやく実務的に合致した事業と巡りあえた。

参加企業から集まったクリアホルダーは1箱110円で買い取り、同代金をTHE OCEAN CLEANUPに寄付。2022年4月から2024年3月までに1,091,310円の寄付を行っています。

簡単で分かりやすい仕組み。参加企業が増え続けるその理由

立花さん

「使用済みクリアホルダーを提供いただいた企業さまには毎月実績報告書をメールでお送りし、ご要望があれば、寄付証明書を発行しています。自社の実績については、廃棄物削減や資源循環などSDGs活動の一環として、統合報告書などに取りまとめている企業さまもいらっしゃいますね」

意識に変革を。環境に優しい商品を使うということ

資源循環プラットフォームの立ち上げから事業化に至るまで、一番難しかったのが製品化だったそうです。その背景には、メーカーが持つ品質に対する責任感。それは消費者である私たちの厳しい目が背景にあります。

立花さん

「参加企業から送られてきたクリアホルダーは分別した後、プラスチックのリサイクルセンターで原料となるペレットに加工。米粒のような形になるのですが、これをサプライヤーやメーカーに販売し、製品化しています。

届いたクリアホルダーを手作業で仕分け

届いたクリアホルダーを手作業で仕分け

リサイクル後のペレット

リサイクル後のペレット

実はリサイクル材と言っても2種類あるんです。一般的に使われているのは、工場で製造時に出た端材を使ったプレコンシューマー材というもので、バージン材とほとんど変わらないような品質のもの。その一方、一度市場に出回り、使用した商品をリサイクルしたものをポストコンシューマ材と言います。これを原料に製品化することは、メーカーではやったことがないというのが実情だったんです」

メーカー企業が製品化にあたって、重要視するのはやはり材料の品質。特に不純物の混入や原料の流れやすさを測るメルトフローレートなのだとか。

立花さん

「不純物の混入については、ペレットにする工程で排除しています。クリアホルダーをコンベアで破砕し、加熱して溶かした後、異物を除去するためのメッシュを押し通して流れ出てくる。ただ、製品の品質に問題のないような、細かいものはどうしても通してしまいます。

意識に変革を。環境に優しい商品を使うということ
意識に変革を。環境に優しい商品を使うということ

メルトフローレートについては、ひな形への流し込みやすさだったり、ちゃんと型にそって成形できるかという製造工程に関係するので、気にされるポイントですね」

アスクルではメーカーの懸念に応えるため、再生ペレットの品質を検査する専門の業者による定期的な検査を行い、メーカーに開示。一度市場に出回った後のリサイクル材なので、品質に若干のばらつきがあることを事前に開示し、説明しています。

立花さん

「バージン材でできた製品と比べて、著しく品質が劣るということではないんです。その点はメーカー企業だけではなく、消費者である私たちも認識すべきところだと思いますね。クリアホルダーで言うと、リサイクル材で作ったものは黄色くなったり、よく見ると黒い点々があったり、少しざらつきがあります。でも、それはリサイクル材の風合いなので、それを環境に優しい製品の良さとして受け入れていただきたいですね」

アスクルのEC事業を支えている大規模な物流網には、さらに取り組みを発展させるヒントがあると言います。

立花さん

「ポストコンシューマ材となるプラスチックは、リサイクルの工程がシンプルになる単一素材であることが望ましい。そういう意味でも、物流で必ず必要になってくる、段ボールなどを積み上げたときのぐらつきを防ぐストレッチフィルムや、固定するためのPPバンドはリサイクルの対象としてはかなり適しているのではないかと思います。作業で使うものなので、見た目のクオリティを重要視する必要もないものですしね。

『アスクルの資源循環プラットフォーム』は、資源循環の取り組みを促進する役目というだけでなく、事業としても成立することを目指しています。これからさらに重要となるリサイクルの取り組みについて、多くの企業の皆さまの知恵や協力を得ながら、さらに活動を広げていきたいと思っています」

(掲載日:2024年10月11日)
文:ソフトバンクニュース編集部

アスクルの資源循環プラットフォーム

アスクルの資源循環プラットフォーム

アスクルは限りある資源の有効活用、CO2の削減、そして私たちの販売者としての責任を果たすため、参加者の皆様に使用済みクリアホルダーを提供いただき、再資源化・再製品化する資源循環を実現していきます。

アスクルの資源循環
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