
「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」というコンセプトを掲げ、SDGsの実現に向けて取り組んでいるソフトバンク。「SoftBank SDGs Actions」では、いま実際に行われている取り組みを、担当者自らの言葉で紹介します。34回目は、社員とその家族の健康維持・増進を図るとともに、働きやすい職場環境の整備にも力を入れた健康経営を推進しているソフトバンクの取り組みをご紹介します。

お話を聞いた人
ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事総務本部 人事企画統括部 人事企画部 Well-being推進課
吉橋 由美(よしはし・ゆみ)
2015年から健康経営の立ち上げに携わり、現在もWell-being推進の中心として施策を実施している。
目次
社員一人一人が自分らしく働ける環境を作る
ソフトバンクは、「社員一人一人が心身ともに健康で、常に活力あふれた集団であること」という理念を「健康経営宣言」で掲げています。「社員の健康意識が向上し健康増進活動へ自発的に取り組んでいる状態」「会社の健康に関する積極姿勢が社内外で認知されている状態」を目指し、健康経営に取り組んでいます。
この中核にあるのが「ウェルビーイング」という考え方です。ウェルビーイングとは、単に心と体が健康であることにとどまらず、仕事や人間関係なども含め、個人がよりよく生きていると実感できる状態を指します。

人事本部の安全衛生担当とWell-being推進室を中心に、人事・福利厚生・健康支援などの間接業務を専門に担うSBアットワーク株式会社のウェルネスセンターやグループ企業など、多くのパートナーと連携して運営をしています。

取り組みを始めたのは、まさに健康経営という言葉が世間的に広まり出した2015年頃からです。健康経営は社員にとっても会社にとっても意義のあることなのでソフトバンクでもぜひやるべき、という機運が高まり、人事部門から経営層へ提案しました。
当時、労働安全衛生を含む人事労務全般のサービスを担うグループ企業のSBアットワーク株式会社に健康管理に関する業務を中心的に担っていただいている状態でした。しかし、健康経営の推進を行うためには、社員の近くで働く実態や声に触れている人事自らが、健康を軸に主体的に取り組む必要があると感じ、SBアットワークに協力いただき、社内プロジェクトを立ちあげ、その後現在のWell-being推進室という専門部署が誕生しました。

今でこそ、「食事」「運動」「喫煙」「メンタルヘルス」「睡眠」「女性の健康課題」「ヘルスリテラシー向上」といった6つのテーマが明確に定められていますが、当初はそれらを体系的に整理した枠組みはありませんでした。そこで私たちは、「健康とは何か?」という根本的な問いから出発し、「食べる」「運動する」など身近な要素を一つ一つ見つめ直し、抜け漏れがないよう注意を払いながらテーマを丁寧に整理していきました。
プロジェクトが進行する中で、課題や施策をより的確に選定するには、明確な根拠が必要であると実感しました。そこで着手したのが、社員の健康習慣や関心、抱えている課題を把握するための「健康意識調査」です。
ウェルビーイングとパフォーマンスの関係を企業として初解明
「健康意識調査」によって社員の本音やニーズが可視化され、さらに健康診断やストレスチェック、人事データと組み合わせることで、真の課題や優先順位が明確になりました。受診率100%の健康診断データをもとに、保健師や産業医と連携し分析を進めた結果、睡眠の質が業務パフォーマンスや肥満に大きく影響していることが分かったんです。
また、ソフトバンクでは、自社開発のエンゲージメントサーベイを活用し、月次で社員の状態を把握しています。月次で取得した社員の充実度を年間スコア化し、社員の充実度を3グループ( 高・中・低)に分類してパフォーマンスとの関連を調査したところ、充実度の高い社員は低い社員より高パフォーマンス者の割合が約3.4倍であることが判明しました。

この取り組みは、企業として実データでウェルビーイングとパフォーマンスの関係を解明した初の事例として、人々の多様な幸福価値観と健康に向き合い認め合える社会づくりに特に貢献した事例を表彰する「WELLBEING AWARDS 2025」の「組織・チーム」部門で「GOLD」を受賞することができました。
社員の関心を引き出す施策設計と工夫
施策は「食事」「運動」「喫煙」「メンタルヘルス」「睡眠」「女性特有の健康課題」「ヘルスリテラシー向上」の6つのテーマを中心に、満遍なく取り組むようにしています。「より多くの社員が参加できること」や「地域差が出にくいこと」などを考慮しながら、優先順位をつけて施策を決定しています。
特に社員から好評だった企画を3つ挙げるとすれば、1つ目は、年に2回実施しているウォーキングイベントです。社内で「あのイベント、今年はいつから募集が始まりますか?」と尋ねられることもあり、「私たちが思っている以上に、楽しみにしてくれているんだ」と実感するようになりました。もともと200〜300人程度の参加から始まったこのイベントは、今では2,000人規模の応募数があるまでに成長しました。

2つ目は、「睡眠改善チャレンジ」です。一定期間チャレンジ形式で改善に取り組むもので、300人の定員は募集開始から1時間ほどで満員となり追加募集しましたが、それも半日ほどで満席になりました。非常に多くの反響があり「自分の生活を見直してみたい」という社員の意欲が確かにあることを実感しました。
3つ目は「遺伝子検査付きダイエットプログラム」ですね。個人の遺伝子情報をもとに、太りやすい体質や代謝の傾向などを分析し、最適な食事や運動方法を提案するプログラムです。「糖質で太りやすいタイプ」「筋肉がつきにくいタイプ」といった傾向を把握し、それに合ったアドバイスを受けられるため無理のないダイエットができます。実際に参加した社員からは高い満足度があり、これも定員がすぐに埋まるほどの人気でしたね。

施策全体を進めるうえで特に工夫が求められたのは、予算の中でどのように最大限結果を出すかという点です。社内やグループ会社のリソースを最大限生かし、パートナー企業とも連携しながら、一つ一つの施策を形にしています。また、さまざまな施策を通して、社員のニーズに合っていればしっかりと響くということを学びました。アイデアと柔軟な対応によって、より多くの社員に健康への関心を持ってもらえるよう努めています。その結果として、「健康経営銘柄」や「ホワイト500」、「DBJ健康格付」の最高評価などをいただくことができました。
健康を “自分ごと” としてとらえるきっかけを提供していく
さまざまな施策を行ってきた中で、健康意識の高い社員にはちゃんと届いているけれど、そうではない社員にこそ届けなければいけないという現実に気づきました。例えば、まだ体調に問題を感じていない社員は何も取り組みませんが、年齢を重ねて不調を感じ始めたときに初めて動き出します。でも本来は、若いうちから1つでもいいから自分に合った健康習慣を持ってほしいんです。このギャップを埋めていくためには、「健康を “自分ごと” としてとらえる」ことが不可欠だと考えています。そのため、今年度は「健康関心度の向上」を明確なテーマに掲げて取り組んでいます。
また、毎年10月に実施している「こころとカラダの健康月間」では、「見つけよう、わたしに合った健康習慣」というテーマを掲げました。この月間を通して、「毎日歩くようにしている」「在宅勤務前に軽い運動をしている」など何でも良いので、社員一人一人が「私、健康のためにこれをやっています」と言える状態を目指したいと思っています。

「健康を “自分ごと” としてとらえる」ことには、私自身の実体験があります。「遺伝子検査付きダイエットプログラム」を活用して実施したダイエットが成功して今でもその食べ方を実践できていたり、何となくで始めたウォーキングが継続できていたり、一つ成功体験があると「次もやってみよう」と自然と前向きになれたんです。何もしていなかった私が一個ずつ興味を持って成果を出して継続できているので、社員の皆さんにも社内施策を利用して得意なものを見つけてもらいたいです。
全社員に個別の支援をするのは現実的ではないからこそ、私たちがきっかけを用意し、最終的には社員が自走できる状態を目指しています。そのために、「これならできそう」と思える選択肢を多く用意し、一人一人に合った “引き出し” を増やしていきたいと考えています。
健康に無関心な人の行動を変えるには、届く言葉や工夫が必要です。意識の高い人は自然に健康を保ちますが、本当に支援すべきは健康への意識が低く数値に課題が現れている人たちです。忙しさや情報の届きにくさで取り残されがちな層に、どう働きかけるかを考え、今後も取り組んでいきたいと思います。
ソフトバンクの健康経営への取り組み

ソフトバンクでは、「心身の健康づくりに関する基本方針」にのっとり、社員の健康維持・向上を目指し、「健康経営宣言」を掲げています。
(掲載日:2025年8月19日)
文:ソフトバンクニュース編集部




