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“えーあいらん” ってなんですか? 基地局×AIがつくる未来を超マジメに考える

えーあいらんってなんですか?基地局×AIがつくる未来を超マジメに考える えーあいらんってなんですか?基地局×AIがつくる未来を超マジメに考える

「AI-RAN(エーアイ・ラン)」って知っていますか? それは、ソフトバンクが開発を進めている、未来のための大切なインフラです。流行りの「AI」を使ったすごい技術? 通信速度が爆速に? その実態をさぐるため、ソフトバンク先端技術研究所の開発責任者に、お笑いコンビ「ぺこぱ」の松陰寺太勇さんが迫ります。AI-RANは私たちの生活に何をもたらしてくれるのでしょうか。

PROFILE

  • 松陰寺 太勇
    TAIYU SHOINJI

    お笑い芸人

    1983年山口県生まれ。2008年、お笑いコンビ「ぺこぱ」を結成。M-1グランプリ2019で初の決勝進出を果たし3位に輝く。「時を戻そう」などの印象的なフレーズが大きな話題を呼び、一躍人気者に。テレビ、ネット、ラジオとさまざまな媒体で活躍中。

ソフトバンク株式会社 先端技術研究所 基盤&AI室 室長

山科 瞬(やましな・しゅん)

“えーあいらん” ってなんですか?

松陰寺

山科さんは、ソフトバンクでどんなお仕事をされているんですか?

山科

今取り組んでいるのは「AI-RAN」という新しい技術の開発です。

松陰寺

えーあいらん... ? えーあいって、あの「AI」ですか?

山科

はい、いわゆる人工知能ですね。松陰寺さんは普段AIを使うことはありますか?

松陰寺

めっちゃ使ってます。スマホにアプリを入れて、“AIさん” になんでも聞いてますね(笑)「ラン」は、走る... ?

山科

いえ(笑)RANは、スマホなどの端末と基地局をつなぐネットワークのことです。

松陰寺

そのRANとAIが一緒になったのが、AI-RAN?

山科

まさに。ソフトバンクはこれまで全国に通信ネットワークを張り巡らせてきましたが、未来の社会ではAIも通信と同じくらい重要なものになっていくと考えています。だったら通信とAIを一緒に提供していこうというのがAI-RAN。ソフトバンクが2023年に発表した考え方です。

松陰寺

そもそも基地局がよくわからないんですが...。

山科

基地局はスマホから受け取った通信データをインターネットに送ったり、インターネットからのデータをスマホに届けたりする、いわば「つなぎ役」。ビルの屋上や鉄塔などに設置されていることが多くて、通信量が多い都市部にはいたるところにありますよ。

松陰寺

その基地局にAIが組み込まれるんですね。どうなるんですか?

山科

一番大きな変化は通信速度が「速くなる」ことです。例えばスマホでアプリを使うときは、スマホから遠く離れたところにデータを飛ばして処理を行っているため、どうしても応答に時間がかかります。ですが、基地局にAIが搭載されれば、もっと近くで処理できるようになり、応答までの遅延時間は大幅に短縮されます。

山科

このように速くなることで、良いことがたくさんあるんですよ。例をお見せするために「人を追いかけるロボット犬」を作ってみました。

松陰寺

怖いじゃないですか(笑)!

山科

大丈夫。追いかけるのは不審者です。

松陰寺

なんだ、不審者か。それは追いかけよう。

山科

こちらをご覧ください。警備ロボット犬がカメラで不審者を認識し、追従するデモンストレーション動画です。画面の左側はAI-RANを使ったロボット、右側は従来のインターネットを使ったロボットです。

左側はAI-RANを使った場合、右側は従来のインターネットを使った場合

松陰寺

従来のインターネット経由のほうは全然、追跡できていないですね。AI-RANの方はちゃんとついていってる! 全然違いますね!

山科

これが実際に不審者を追いかける場面だったら... と考えると、AI-RANの重要性がお分かりいただけるかと。

松陰寺

よくわかりました!

山科

さらに言うと、実はこのロボット、何も考えていないんですよ。

松陰寺

... あ、なるほど! 判断しているのはロボットではなくて基地局にあるAIなんだ。

山科

そうです。現場でロボットが感知した情報をAIが解析して進む方向やスピードを制御しているので、ロボットはその指示に従って手足を動かしているだけなんです。

次々と変わっていく目の前の状況に対して、瞬時に判断できるようなロボットをつくるには、GPUという大きなコンピューターが必要なのですが、それをロボットに搭載しようとすると、サイズが大きくなって重くなり、さらにコストも増えます。そこで、このロボット犬のように、基地局のGPUでAI処理を行うようにすれば、ロボット自体に大がかりな装置は要らなくなります。この仕組みを活用することで、より多様なロボットの開発が可能になると考えています。

人間と違って “AIさん” は寝る必要がない

松陰寺

速くなる以外にも、 AI-RANによって変わることはありますか?

山科

RANとAIが共存することで、「RAN設備を効率的に使える」ようになります。実は基地局は常にフル稼働しているわけではありません。特に深夜から早朝にかけては通信をする人が少ないため、基地局は休んでいるような状態です。この時間帯をAIの処理に使うことで、設備を無駄なく有効活用できるんです。

松陰寺

どんなことをするんですか?

山科

勉強です。AIは学習を重ねることでどんどん賢く、使いやすくなっていくので、日中に集めたデータをもとに、夜中に学習させるんです。

松陰寺

なるほど、人間と違って “AIさん” は寝る必要がないですからね。

山科

そういうことです(笑)もう1つ、 AI-RANには「通信を賢くする」というメリットもあります。

松陰寺

賢く、というと?

山科

AIを使うと、通信のパフォーマンスを向上させられるんです。今は基地局ごとに通信環境を調整していますが、1つの基地局では対応できる能力に限りがあるので、1カ所にユーザーが集中すると通信がつながりにくくなってしまいます。時間や場所によって、ネットがつながりにくいな... と思うことはありませんか?

松陰寺

ありますよ! 混んでる時はどうしようもないですよね...。

山科

そこで私たちが考えているのが、AIを使って複数の基地局を連携させ、エリア全体のネットワークを最適化する仕組み。AIが人の動きを予測して、人が多いところに電波をしっかり届けられるように調整するイメージですね。これによって、より速く高品質の通信をお届けできると思います。

松陰寺

はー、すごい時代になってきたな。

山科

ぺこぱさんのライブに大勢の観客が集まったときも、会場はもちろん、皆さんの行き帰りの経路まで含めて、私たちが通信環境をしっかりサポートしますよ!

松陰寺

ありがとうございます。今のところ、僕らのライブに何万人も集まるってことはないですが(笑)

今やるのは、 “未来のため” のテクノロジーだから

松陰寺

昔に比べたら、インターネットってすごく速くなったじゃないですか。正直、今のままでもあまり不自由は感じていないんですが、それでもソフトバンクさんがAI-RANを提供しようとしているのは、どうしてですか?

山科

今は不自由していなくても、これからテクノロジーが発展してさまざまなサービスにAIが搭載されていけば、より高度なデータ処理が必要になる場面が増えるはずです。そのときのために、今から準備しているのが AI-RANなんです。

松陰寺

つまり、未来を見据えたテクノロジーなんですね。

山科

その通りです。私たちが目指すのは、ソフトバンクが全国に展開している通信網をAI-RANで更新すること。また、このAI-RANを世界で展開していくことです。その実現に向けて、米国のNVIDIAをはじめ、世界の通信・AI分野の先端企業や大学と連携しながら、研究開発を進めているところです。

松陰寺

どのくらい進んでいるんですか?

山科

今は実証実験の段階ですが、最短で2026年には一部のエリアで導入し、その後、段階的に全国へ展開していく予定です。

松陰寺

2026年はもうすぐですね! 僕は新しいテクノロジーが大好きで、どんどん取り入れていきたいタイプなので、楽しみです。車も自動運転を使ってますし。

山科

自動運転も、AI-RANが大きく貢献できる分野ですよ。例えば、運転中に前方の横断歩道の手前で車が路上駐車していたら、松陰寺さんはどうします?

松陰寺

横断歩道の手前での追い越しはNGだから、一時停止しますね。

山科

さすがです。では、AI-RANを使った自動運転車だったらどうなるかというと...。

AI-RANを活用した自動運転の遠隔サポート

山科

前方の危険を察知し、追い越し禁止エリアだと認識したうえで、ちゃんと一時停止していますよね。そして安全確認をしてから発進しています。

松陰寺

これって、AIが判断してるんですか?

山科

そうです。交通法規などの日本の交通知識と走行中のリスク対処法を学習させた、高性能な交通専用のAIが自動運転車にリアルタイムで指示しているんです。

松陰寺

もはや人間を超えてますよね! 人間は運転中に眠くてぼんやりすることもあれば、うっかりミスもあるけれど、AIはその心配もない。むしろ人間より安全運転ができるかも。

山科

そうですよね。今の自動運転は人間が遠隔で監視しているので、オペレーターの労力や負担も課題になっていますが、AI-RANが進化すれば、人の代わりにAIが遠隔操作することも可能になるんです。また、日本に外国の自動運転車が来た場合も、AIが日本の交通ルールを学んでいれば、スムーズに適応することができるので安心ですよね。

お笑いの世界では、まだ人間がAIに勝てる?

山科

私からも松陰寺さんにお聞きしたいんですが、今よりもっと便利にAIを使えるようになったら、お笑いにも活用できることってありますか?

松陰寺

僕らぺこぱはこの16年、ライブでのトライ&エラーを経てネタを磨いてきたのですが、例えば新しいネタができたとき、舞台で披露する前にAIでお客さんの反応をシミュレーションできるといいかもしれない。これまでは実際にお客さんの前でやってみて、スベッたら改良する、という流れを繰り返してきたけれど、AIで事前に試したらどうなるか。興味があります。

山科

AIが来場者の客層や好みの傾向などのデータを学習すれば、できるかもしれません!

松陰寺

ネタをつくることに関しては、今はまだ人間のほうが上だと思うんですよ。実際、どんなもんかと思ってAIに漫才を作らせてみたら、お笑いを始めて1年目の僕でも書かないようなネタを書いてきましたからね(笑)でも今日みたいな話を聞いていると、それがひっくり返る日もそう遠くないかもって気がしてきます。

山科

テクノロジーは今、とてつもないスピードで進化してますからね。

松陰寺

ソフトバンクさんには、そのスピードにキャッチアップしていってほしい。うわー、こんなことができるようになっちゃうんだ、すごい! っていう世界を見せてほしいです。

僕、VRゴーグルで遊ぶのも好きなんですが、そこにAI-RANが入ったらどんな体験ができるんだろうって、想像するだけでもワクワクします。

山科

VRも、AI-RANで大きく変わる可能性がありますね。今みたいな大きなゴーグルは要らなくなって、もっとコンパクトなデバイスで済むようになるし、人間の素早い動きにもスムーズに対応できるので、これまでにない没入感を体験できるはずです。

松陰寺

どんどん身軽になっていくイメージですね。

山科

そうですね。通信とAIを融合させることで、これまでにないサービス、新しい価値を提供していきますので、ぜひご期待ください!

松陰寺

めちゃめちゃ楽しみです。新しいテクノロジーでワクワクさせてください!

文・編集:X PROJECT編集チーム
写真:山﨑悠次

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