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テレビ東京系で放送されている経済ドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」。8月11日の放送では「AIは天使か悪魔か」と題し、AI開発の最前線を行く企業や、日本製のAIを開発しようと奮闘する日本人科学者の活躍が取り上げられ、その中で生成AIをさまざまな業務に活用しているソフトバンクの例も紹介されました。本ブログでは、番組で紹介された生成AIをソフトバンク社内ではどのように活用しているのか、詳しく紹介していきます。
現在ソフトバンクでは、約2万人の社員がソフトバンク版AIチャットを活用し、さまざまな業務効率化を目指しています。この秋に開催された「SoftBank World 2023」に向けた運営でも、生成AIが活用されました。
ソフトバンクの法人マーケティング部門に所属し、日頃の業務では対外コミュニケーションを行う部門の責任者である丹羽が、今回のキャッチコピーの制作について詳しく語りました。
ソフトバンク株式会社
法人事業統括 法人マーケティング本部 マーケティング戦略統括部 コミュニケーション部 部長
これまでのイベントでは、プロのコピーライターにキャッチコピーの制作をお願いしていました。内製で作るのは今年がはじめての試みです。まずは、過去のキャッチコピーの内容を振り返ったうえで、「今年のSoftBank Worldのコンセプトは何か」を、ワーキングメンバーでブレストするところから始まりました。
第一ステップとしては、プロンプト(ChatGPTに入れる指示書のこと)に入れるキーワードを検討し、「デジタル」「わくわく感」「社会と企業をつなぐ」など、キーワードをもとに、メンバー全員でChatGPTに質問を繰り返しました。
ChatGPTから当たり障りのない案が出てきたときは、みんなで知恵を絞りながら、プロンプトの変更や追加を試しました。例えば、イベント概要や集客対象、過去のキャッチコピー例、訴求したいテーマなどを具体的に入力するだけでなく、「もっと尖ったものをお願い!」と指示したり、「あなたは優秀なコピーライターです」と役割を与えたりChatGPTの回答案に対して賛同したり、褒めたりということも試しながら、何度も繰り返し生成を行いました。
このような試行錯誤を繰り返して、短期間で647個の案が集まりました。この数を人間だけで考えるのは大変です。さらにそのあとChatGPTによる採点で絞り込みを行うことにしたのですが、ChatGPTに入れられるプロンプトには文字数制限があるため、647個の案を一気に採点することができません。そのため、いくつかのグループに分けた上で予選を実施し、結果上位のコピー案を集めて本選を実施するという手順を取ることにしました。
そんな中、以前ソフトバンク会長の宮内が、生成AIやWeb3をテーマとして行った講演で掲げたタイトルを思い出しました。
「テクノロジーの新潮流。今、世界が動き出す」
この講演タイトルが、今年のSoftBank Worldのコンセプトにも合うのではと考え、これまで生成AIが生み出した案の中に、唯一人間が考えたこの講演タイトルを混ぜて選考を行うことにしたのです。果たして、どんな結果になるのかという期待感もありました。
ChatGPTはテキスト形式だけでなく、テーブル形式(=表形式)で回答をまとめることも可能です。そこで「イベントとの親和性」「ソフトバンクらしさ」「イベントへの期待感や参加意欲を醸成するコピーかどうか?」など5種類の採点項目を設定してChatGPTに採点してもらったのですが、項目や総合点の集計や選定理由のフィードバックなどを人の手で作業することなくまとめることができたのもChatGPTならではだと思います。
こうしてChatGPTによる選考を繰り返す中で、この「人が考えたキャッチコピー」も残り続け、ようやく最終選考に9つの案に絞り込まれました。
実は、最終的にジャッジするのはAIではなく「人間」だと、プロジェクト開始時から決めていたのです。そこで、関係部門の社員に対してアンケートを実施。82名が回答した結果、「人が考えたキャッチコピー」が突出した高得点を獲得しました。
これまでのプロセスを考えると、ChatGPTが作ったコピーを選ぶ方が「ChatGPTの社内活用事例」としては納得度が高いものになるのだと思いますが、もっとも大事なのはChatGPTが作ったコピーかどうかではなく、「イベントに最もふさわしいと思うコピーであること」だと考えていたので、最後はアンケートによって選ばれた、648個の候補の中で唯一人間が考えたコピーを選ぶことになりました。
すでに、今回のようなイベントや広告のキャッチコピー制作などにChatGPTを活用し始めている企業もあると思いますし、今後は急速に進んでいくと思います。
今回の試みを通して、人の発想では生み出せない、647個もの案を短期間で生み出すことができた点は良かったと思います。最終的に選んだのは、「人が考えたキャッチコピー」でしたが、「生成AIが仕事のパートナーとなって、より良いものを生み出すサポートをしてくれる」ということが分かりました。これこそが初めての取り組みにおける大きな成果でした。
これからも、私たちの業務はAIによって各段に効率化していくでしょうし、共存していく世の中になっていきます。しかし、人間の経験やノウハウは決して不要にはならない、むしろそれを活かして生成AIと付き合っていくのだと改めて感じました。
このようにソフトバンクでは、これまで人や経験に依存していた日頃の業務にも、生成AIの活用を広げています。生成AIによって仕事の効率が向上する一方で、さまざまなリスクや、人間の仕事が奪われる可能性なども議論されています。しかし、人間の仕事をサポートする存在として、活用することが求められているのではないでしょうか。今後のビジネスモデルでは、生成AIの技術を恐れるのではなく、新しい取り組みを検討していくことが重要となっていくでしょう。
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