画像生成AIによる新しい取り組み ~イベントのイメージ画像制作~

2023年9月20日掲載

ソフトバンク,画像生成AI,取り組み,AI

本ブログでは、SoftBank Worldを象徴するイメージ画像の制作を、画像生成AIを用いて行った様子を、担当した社員へのインタビューをもとにしてお伝えします。ソフトバンク社内での新しい取り組みを、ぜひご覧ください。

目次

AIによる進化

私たちの生活を取り巻くデジタル化は、AIの進化とともに急速に進んでいます。インターネットやスマートフォンが私たちの生活にはなくてはならないものになったように、今後社会全体が、より一層AIとつながっていくものに変わっていくかもしれません。

この秋に開催された、法人向けのイベント「SoftBank World 2023」に向けた準備でも、生成AIを積極的に活用する取り組みが行われました。

今回は、日頃の業務ではBtoB向けの導入事例動画や、イベント用の映像コンテンツ制作に携わる山本が、画像生成AIを使ってSoftBank Worldのイメージ画像(以降、キービジュアル)を制作した様子をご紹介していきます。

ソフトバンク 山本洋平

山本 洋平

ソフトバンク株式会社
法人事業統括 法人マーケティング本部 マーケティング戦略統括部 コンテンツクリエイション部 2課

画像生成AIで取り組んだきっかけ

10月に開催するSoftBank Worldの運営に携わっており、イベントコンセプトに関わる制作を担当しています。

ソフトバンクでは、5月から約2万人の社員がソフトバンク版AIチャットを活用し、業務効率化の実現を目指しており、SoftBank Worldの「キャッチコピー」の制作にもChatGPTが利用されました。

このキャッチコピーがきまった後、私が担当するキービジュアルの制作も画像生成AIを使用して行うことになりました。

今回イベントのキービジュアルを作成するのに利用したのは、Adobe Photoshopの機能である「生成塗りつぶし」と「生成拡張」です。

これらは、アドビの画像生成AI「Adobe Firefly」の技術を活用している機能で、プロンプト(AIに対しユーザが入力する指示や質問)を入力することで、画像をゼロから生成したり、既存画像をアレンジすることが可能です。

例えば「生成塗りつぶし」なら、既存の画像を全選択して、プロンプトに「会議室を宇宙ステーションに変更して」と入れるだけで、色味やレイアウトは保ちながらも、簡単に画像をアレンジして生成することができます。

アドビ,生成塗りつぶし

また「生成拡張」を使用すると、画像を任意の方向に拡張でき、アスペクト比を簡単に変えることができます。

アドビ,生成拡張

今回の制作では、最初に一つのベースとなる画像を決めて、そこにアレンジを加えながら制作する方向で進めました。

ストーリーが制作の重要な鍵に。今回ベースとなった画像

集積回路,拡大写真

ベースとなる画像として選んだこの画像は、ワンチップマイクロ・コンピューターの拡大写真です。

ソフトバンクの創業者 孫正義が、19歳のころにサイエンスマガジンでこの画像を見たとき、感動のあまり涙が止まらなくなったというエピソードがあります。これは言うなれば「1970年代におけるテクノロジーの新潮流」の象徴だと感じました。

そして現在、生成AIをはじめWeb3.0やメタバースなど、新たなテクノロジーの台頭により、我々はまさに変革期の真っただ中にいます。

今年のSoftBank Worldのキャッチコピーである「テクノロジーの新潮流」と親和性が高いと感じ、約50年前のこの画像をベースに、現代版の「テクノロジーの新潮流」を体現するキービジュアルを作りあげていくことに決めました。

ChatGPTも活用し、画像生成のコンセプトも策定

孫は以前、この集積回路の写真が「未来都市に見えた」そうです。そのエピソードをもとに、ベース画像から未来都市を生成することにしました。

カラーやオブジェクトに関しては、ChatGPTを活用し検討を進めました。「テクノロジーの新潮流」から連想されるキービジュアルの色や図形にふさわしいものは何かをChatGPTに尋ねました。質問を繰り返した結果、色は「ブルー系」または「シルバー系」。オブジェクトに関しては「キューブデザイン」を取り入れることが良いというChatGPTの提案をもとにテクノロジーの要素を表現する方向性が固まりました。

全8段階を経て完成形へ

ここからは、ベースとなる画像とコンセプトをもとに、プロンプト適用量(AIによるアレンジ度合を指し、値が高くなるほど元画像の要素が薄れていく)を調節しながら画像生成を行いました。

まずは、コンセプトである未来都市を作る段階として、ベース画像から「生成塗りつぶし」を活用して二次元設計図を生成し、「生成拡張」で余白部分を調整。その後、この図面をもとにして三次元設計図を生成しました。

アドビ,プロンプト適用量

このあと、ChatGPTが推奨する色味やオブジェクトを取り入れるために、手動で色味を調整したり、「キューブ」という単語を追加したのですが、単にキューブという単語を取り入れただけではイメージとかけ離れてしまったので、色々と試した結果、「ホログラム」という単語を入れることでイメージに近づけていきました。

さらにプロンプト内容を工夫し、3Dキューブをメインとしたデザインに変更したり、「潮流」を感じられるようにキューブを配置したりを繰り返しました。途中、少しイメージと離れてしまったときには、集積回路の模様をランダムに追加したりして、サイバー空間を感じられるデザインになるように何度も画像生成を繰り返しました。最終段階では、元の「集積回路」の要素を損なわないように指示することで、完成形に近づいていき、最後は大きなプロジェクタに投影して、イベント会場に投影する際の見栄えも含めて調整を行いました。

アドビ,画像生成AI,ソフトバンクの取り組み

このように、プロンプトを8段階でチューニングしていくことで、集積回路と未来都市のエピソード、イベントのキャッチコピーとの親和性や、ChatGPTも活用など、さまざまな要素で構成された「ストーリー」にもとづいた、キービジュアルにたどり着くことができました。

ソフトバンクワールド,キービジュアル,画像生成AI

制作してみた感想と今後AIに期待すること

これまでは広告代理店にキービジュアルの制作依頼をし、デザイナーが制作していたので、今回のようにすべて内製で制作したのは初めての取り組みでした。

最終的に今回のプロセスで生成された画像は1,200枚近くにも及びました。これほどの枚数を限られた時間で人間が行うのは難しいので、AIによる画像生成は、アイデアの元を考えたり、発想の転換を行うよい経験になったと思います。

ただ、キービジュアルが表現する世界観やストーリー、メッセージは、人間によって生み出されるからこそ価値があり、人の心に響くのだと考えています。

そのため、全ての制作プロセスをAIで省略するのは難しいですが、工数のかかる部分をAIにサポートしてもらうという活用方法ができたと思います。

今回のノウハウを生かし、今後イベントのコンテンツ制作にもAIを活用していく予定です。クリエイティブ制作の世界においても、AIは良きパートナーになれると期待しています。

AIによって変わっていくクリエイティブ制作の世界

このようにソフトバンクでは、これまで専門分野の人間に頼っていたクリエイティブな制作にも、生成AIの活用を広げ、キービジュアル制作の内製化という初の取り組みに成果を出しています。

ぜひ新しい取り組みへの第一歩として、生成AIを検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

今回ご紹介した Adobe Firefly はアドビ社の製品です。詳しくは下記よりご確認ください。(記事上のプロンプトは一部英語で表記されていますが、現在は日本語にも対応しています)

関連セミナー・イベント

条件に該当するページがございません

おすすめの記事

条件に該当するページがございません