在宅オペレータをマネジメントする方法とは?~在宅コールセンターの運営のコツ~

2024年2月29日掲載

在宅オペレータをマネジメントする方法とは?~在宅コールセンターの運営のコツ~

前回の記事では、在宅コールセンターをはじめるにあたっての3つの課題(壁)のうち「在宅コールセンターをはじめる際のシステム上の課題(導入の壁)」について解説しました。本記事では、2つ目の壁である遠隔地でのオペレータの教育やフォロー、勤怠管理など、運営上必要となる課題(運営の壁)について、前回に引き続きコールセンターの現状に詳しいビーウィズ株式会社の形柳氏に解説いただきました。

第1回目はこちら:「在宅コールセンター」とは? オペレータの採用率が10倍に? 

目次

ビーウィズ株式会社 形柳氏

形柳 亜紀 氏

ビーウィズ株式会社
経営企画部 部長

在宅コールセンターの3つの壁

前回の記事では、在宅コールセンターのメリットについてお話するとともに、はじめるにあたって立ち塞がる3つの壁のうち、「導入の壁」についてお話ししました。本日は「運営の壁」についてお話しします。

運営の壁とは、遠隔地でのオペレータの教育やフォロー、勤怠管理や紙のマニュアルのデータ化など運営上乗り越えることが必要となる壁のことです。

在宅コールセンターの3つの壁

在宅オペレータのマネジメントで理解するべき3つのポイント

センターに出社するオペレータでも、在宅で勤務するオペレータでも、マネジメントの重要なポイントは大きく変わりません。ただし、在宅オペレータのマネジメントでは就業環境の違いにより留意するべき点があります。この点をスーパーバイザー(マネージメント)がしっかり理解した上で、マネジメント設計することが大切です。

1. 在宅オペレータ特有の「労務管理」

在宅オペレータは、センターに出社しないことを前提とした場合、労働契約の締結や勤怠管理をどう行うべきかを考える必要があります。また、在宅勤務時の服装をどうするのかなど、会社としての考えも反映させる必要があるでしょう。

2. 在宅オペレータに求められる「リテラシー」

スーパーバイザーが直接会ってフォローアップできない環境であるため、在宅オペレータは、センターに出社するオペレータよりも、PCやネットワーク、セキュリティなどのリテラシーが必要です。

3. 在宅オペレータのマネジメントでは、「雰囲気」や「空気」は通用しない

在宅オペレータのマネジメントは物理的に目の前にいないため、スーパーバイザーとオペレータともに状況を雰囲気で把握することが難しくなります。そのため、お互いの状況の変化や困ったことを伝えあう仕組みが必要です。

在宅オペレータ特有の「労務管理」

在宅オペレータは、出社しない前提で労務管理を実施する場合、いくつか検討するポイントがあります。

ポイント① 労働契約

皆さんのコールセンターではオペレータとの労働契約をどのように締結していますか?

もし書面で契約締結している場合、書面をオペレータの自宅に発送し、会社に送り戻してもらうなどの手続きも発生してしまいます。可能であれば、電子契約できるようなシステムの導入が好ましいでしょう。当社(ビーウィズ社)ではこれまで、入社手続きはオペレータに出社いただいて対応していましたが、在宅コールセンター導入を機に、すべてWeb化しています。

また、センターに通えない地域に住んでいるオペレータだけでなく、オペレータの自宅のネットワーク回線の影響で、業務遂行が難しい場合の勤務継続についても検討しておく必要があります。

在宅オペレータの労務管理

ポイント② 勤怠管理

オペレータの勤怠はどのように管理されていますか? 

当社では、在宅勤務をはじめるまでは、紙の日報での勤怠管理を一部で行っていました。しかし、在宅コールセンターでは紙の日報を毎日承認することができないため、日報のWeb化を実施しました。

また、オペレータが欠勤や遅刻、早退をするときに、どのようにスーパーバイザーに相談してもらうのかを決めておく必要があるでしょう。特定のスーパーバイザーの連絡だけでは伝達しきれないこともあるので、グループチャットを作成しておくなど対応が必要です。仮に、インターネットがつながらないときにはチャットなどで連絡することも難しいため、センターの電話番号も勤怠連絡先としてしっかりと伝えておくことも大切です。

ポイント③ センタールールの考え方

当社においては、在宅オペレータとオンライン会議や面談などを実施し、コミュニケーションをとっていますが、この際に「ビデオでの顔出しを必須」としています。

これは、大切なお客さま対応をお願いするオペレータだからこそ、在宅勤務だからといえパジャマや無精ひげで対応されては応対品質に影響が出る、というのが当社の考えだからです。センターによっては、在宅オペレータは音声のみで会議に参加しており、顔を見たことがないと悩まれるセンター長もいらっしゃるようです。

自由すぎる文化にしてしまうと修正が大変になるため、はじめから服装や身だしなみのポリシーを決めておくのがよいでしょう。

在宅オペレータに求められる「リテラシー」

テレワークの一般的な問題として、「ネットワークに接続できない」というトラブルが生じることがあります。センターであればスーパーバイザーが直接パソコンを見てサポートできますが、在宅勤務の場合は、オペレータ自身である程度、原因を特定する必要があります。また、コールセンターではお客さまの情報をお預かりするため、オペレータのITリテラシー不足による個人情報の漏えいは絶対に避けなければなりません。

これらを避けるためのリテラシーがあるかの判断ポイントをご紹介します。

ポイント① 採用面接

採用面接では、応募者のPCリテラシーを確認しています。タイピングテストを実施するだけでなく、面接中に画面共有をしてもらい、「Windowsのエディションを確認してください」などの操作を見ることで、その人のITリテラシーを把握しています。

ポイント② リモートワーカー認定

当社では、「リモートワーカー認定制度」を導入しています。この制度では、対象となる研修を受講し、テストに合格しなければリモートワークは許可されません。リモートワーカー認定制度は「1 セキュリティコンプライアンス」「2 IT・PC・ネットワーク」「3 応対品質」の3科目から成り立っています。

在宅オペレータのリモートワーカー認定

在宅オペレータのマネジメントでは、「雰囲気」や「空気」は通用しない

センターでは、オペレータがヘルプを依頼していなくても、スーパーバイザーがオペレータの「雰囲気」や「空気」から困っているかどうかを察知し、サポートすることが可能です。

しかし、在宅オペレータの場合、そのような表情や雰囲気を読み取ることは難しいです。さらに、オペレータ自身もセンターであれば「今日はセンターが忙しそうだから頑張ろう」といった現場の空気をすぐに把握することができますが、在宅ではその把握が難しくなります。

これらを解決するためには下記ポイントが大切になります。

ポイント① エスカレーション

エスカレーションとは、コールセンター用語で「オペレータが解決できない案件をスーパーバイザーに相談すること」を指します。
在宅コールセンターでは、「チャット」を活用したエスカレーションが一般的です。しかし、この方法には課題が存在します。在宅オペレータ専用のスーパーバイザーを配置しているセンターでは、チャットを常時監視し、必要に応じてサポートを提供することが可能です。しかし、一部のセンターでは、センター出社のオペレータと在宅オペレータの両方を管理しているため、常にチャットを監視することが難しい場合があります。そのため、緊急時には内線を利用してエスカレーションを行うなど、お客さま対応に支障をきたさない運用方法の整理が必要となります。
当社では、Speech to text(音声認識・応対内容のリアルタイムテキスト化)を導入しており、テキストで状況を把握することで、在宅オペレータの異変を逃さないように努めています。

在宅オペレータの状況

ポイント② センターの状況や本人のパフォーマンスを積極的に伝えていく

コールセンターでは、「隣のオペレータが頑張っているのを見て、自分も頑張ろう」という向上心が生まれやすい環境があります。しかし、在宅環境ではほかのオペレータとの比較が難しく、センター全体の状況を把握するのも困難です。そのため、在宅オペレータに対しては積極的に情報を提供する必要があります。

例えば、朝礼で前日のセンターの状況を報告したり、休憩後に当日の応答率やよくある質問などお問い合わせの傾向をチャットで共有するなど、センターの状況を積極的に伝えることが重要です。在宅環境では、スーパーバイザーとオペレータの双方からの積極的なコミュニケーションが必要であることを互いに理解することが重要です。それによってコールセンターの文化や状況、雰囲気を感じ取ることが可能になります。

まとめ

今回は在宅コールセンターの運用面の設計について、ビーウィズ社の形柳氏から説明いただきました。在宅コールセンターは、採用コストや研修費の削減、離職率の低減による人員補充の必要性の減少など、大きなコスト削減効果を期待できます。しかし、従来のマネジメント手法だけでは十分な効果を得られない場合もあります。ソフトバンクでは、前回ご紹介した導入の壁である環境作りなど、お客さまのニーズにあわせた多様な提案が可能です。このブログを参考に、ぜひ在宅コールセンターの導入をご検討ください。

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